もうひとつの句がこちら。
「海程」共鳴二十句と二句鑑賞は
三回の連載になります。
蛍火を映して少し水でゐる 柳生正名
この蛍、わが身の火・ひかりを水面に映し、
自身で見たのだろうか。沢にいたのか、どうか。
「ものおもへば」おのが身をこがし火をともしている
と知ったのはいつのことか。
群れから離れゆく蛍。
水鏡に映るひかりから彷徨(さまよ)い出で、
「あこがれいづるたま」は水となっているのか。
たまさか<水> となるそんな蛍。
水でありたい蛍とは、
みずから望み「少し」「水でゐる」蛍とはなにか。
「水でゐる」この「ゐ」、
蛍のかたちをおもわせませんか。
(鑑賞 山本 掌)