
二期会「パルジファル」9月13日・初日へ。
ワーグナー作品としても<舞台神聖祭典劇>とある
特別で、最後の楽劇。
台本から作曲までワーグナー自身で書いたもの。
13年間のバイロイト独占上演から世界各地での上演となった。
二期会では45年ぶりの公演となる。
初演のパルジファル宮原卓也氏もみえたとか。
なにせ
1幕 2時間
2幕 1時間
3幕 1時間半
見る側も、それなりの覚悟でないと。
クラウス・グートの演出。
すでにチューリヒとバルセロナで
上演されているプロダクション(提携公演)。
物語は第一次世界大戦の1914年に設定。
2幕では対戦後の復興期へ、
3幕では独裁政権への展開。
上野文化会館には回り舞台はないので、
バルセロナからもってきた(!?)とか。
押さえたトーンの建物、階段、
上下になった空間が物語を視覚的にもかたる。
さらに映像が効果的につかわれる。

歌い手の大健闘。
男性の低声・バスのグルネマンツ(小鉄和広)、
深い厚い声を聴かせる。
やはりバスのクリングゾル(泉良平)、
魔的なものがもっとほしいようだが、
響き、声がよくとぶ。
バリトン・アムフォルタス(黒田博)
苦悩を、まさに血を吐くように歌う。
無垢な愚か者から名を知って、
目覚め、王となるパルジファルを福井敬が歌う。
3幕の聖杯をまもる王となったバルコニーのところでは
なぜか市谷の三島(由紀夫)をふと彷彿とした。

そしてクンドリ(橋爪ゆか)。
このクンドリ各幕でみせるキャラクターが異なる。
2幕の誘惑の場ではもっと官能的でも、と。
3幕のマグダラのマリアを思わせる敬虔な女性に。
叫び、笑い、歌う、なんという強い声。
ワーグナー歌いは特別な歌い手、としみじみ思う。
飯森の指揮が素晴らしい。
重厚なのだが、音がやわらかいというか、
魔的なワーグナーの音が染み入ってくる。
読売交響楽団が良く共鳴(な)る。
じつに濃密な世界を堪能できた公演!

指揮:飯守泰次郎
演出:クラウス・グート
アムフォルタス:黒田博
ティトゥレル:小田川哲也
グルネマンツ:小鉄和広
パルジファル:福井敬
クリングゾル:泉良平
クンドリ:橋爪ゆか
美術:クリスチャン・シュミット
照明:ユルゲン・ホフマン
映像:アンディ・A・ミュラー
振付:フォルカー・ミシェル
合唱指揮:安部克彦
舞台監督:大仁田雅彦
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
画像はいずれもチューリッヒ歌劇場
◆「パルジファル」演出 クラウス・グート
http://www.nikikai.net/enjoy/vol290.html
◆「パルジファルの舞台裏」 舞台監督 大仁田雅彦
http://www.nikikai.net/enjoy/vol290_02.html