岩手県立大船渡高校の佐々木朗希投手が夏の岩手大会決勝戦に出場しなかったことが世間を騒がせている。
監督の英断だとする賛成派の意見が優勢のようだが、その一方で反対派の意見も根強い。
その理由のひとつとして、監督の采配に一貫性がなく、野球関係者から見ると首を傾げたくなるような経緯がある。
監督自ら「4月の骨密度測定の結果、まだ全力投球に耐えられる体ではない」と明かしていたにもかかわらず、大会直前の練習試合で連日登板(70球、140球)させたり、4回戦では延長12回(194球)を完投させている。
問題の決勝では、4番バッターの佐々木投手を外野手として起用することもなく(春季大会では4番・ライトで出場)、3日前に好投した2人の投手も使わずに、10点差で敗れている。
勝負を捨てていたと言わざるを得ない采配だ。
「地元の仲間と一緒に甲子園に行きたいから大船渡を選んだ」という佐々木投手の思いや、日増しに高まる周囲の期待も知っていたはず。
そんな彼がなぜこんな采配をしてしまったのか?
それは【成功恐怖】(→2016.03.03「成功恐怖」)という言葉で説明がつく。
4月上旬のU-18代表候補選手合宿で時速163キロの投球を見せてから、佐々木投手への注目度は急上昇した。
金の卵を預かる監督にも取材が殺到しただろう。
例年3回戦までに姿を消す夏の岩手大会での優勝、つまり甲子園出場も現実味を帯びてきた。
もしそうなれば、監督自身も一躍時の人。
周りの環境が劇的に変わってしまう。
・・・・・
怖くなったんだね。
自分では当然「優勝したい」「優勝させてやりたい」と思っているのだが、いざそれが実現しそうになると、心のどこかで恐怖を感じてしまう。
人は「自分はこういう人間だ」という自己イメージを持っていて、それを変えてしまうことが起こりそうになると、変化を嫌う潜在意識がブレーキをかける。
それも顕在意識にはわからないように(無意識に)、巧妙かつ完璧に任務を遂行する。
※潜在意識と顕在意識については過去の記事2016.03.01「目覚めよ!生きよ!」を参照
今回一番印象的だったのは、春季大会の試合後マスコミに骨密度測定の結果を漏らし、(あくまで無意識に)佐々木温存での敗退に予防線を張ったことだ。
そもそもメディカルチェックの結果はアスリートの大切な個人情報であり、軽々しく公表すべきでない。
ネガティブな情報なら尚更だ。
しかしこれが功を奏し、決勝での佐々木温存は“選手ファーストの大英断”と賞賛された。
しかも、甲子園に出場しなかったことでこれ以上注目されることはなく、マスコミの取材もなくなるだろう。
普通の高校教師、野球部監督に戻れる。
潜在意識の任務完了、つまり【不成功防衛】完了である。
いつか彼が【成功恐怖】という言葉を知った時、自分の采配が一貫性を欠いた理由を理解できるだろう。
あの決勝で最善を尽くさなかったのは決して“選手ファースト”のためではなく、自らの心の問題に過ぎなかったのだと。
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