stupid girl's peaceful life -2ページ目

北の地。

ある2月の寒い日、会社で上司から


「明後日、何か予定ある?」

と聞かれました。


「13時からの会議くらいです。」


「その会議、俺が変わりに出るからさ、

 ちょっと出張行ってくれない?」


「え?日帰りですか?どこっすか?」


「その気なら2泊くらいしてきていいよ~ぉ!

 北海道!」


「・・・!?ほっかいどおおおおおお?!」


2月の真っ只中、北海道の東の果ての町で行われる

お祭りに出席予定だった常務がどうしてもいけなくなってしまい、

代わりを命じられた上司も、どうしてもいけない用事があるということで

急遽、一番暇そうな私が行くことになったのでした。


スキーもアウトドアもテレビドラマも興味なくて、

旅行と言えば海外にしか興味なかった私のそれまでの人生で、

北海道なんて行こうとは一度も思ったことのない土地でした。



それなのに!よりによってこの2月の極寒期にぃいい!?

札幌でも函館でもなく、日本地図のあの上の端っこの最果て地までぇええええ?!

しかも、準備もなんもなしでいきなりあさってぇええええええ?????



と、絶句しながらも、

「向こうの役所の方から、空港まで迎えに来てくれるって言ってるし~

 常務の代わりなんだから、存分においしーいもんでも食べてきていいからね~」

と、のんきに手配をする上司に負け、私は産まれて初めての北海道に行くことに

なりました。


当日、飛行機にのって、

「ああ・・・寒いんやろなぁ~・・北海道とかいっても所詮狭い日本の田舎だし、

 自然だってアラスカの方がずっと雄大だし、せこせこしてて寒いだけで、

 寒い中ずっとお祭りに付き合わなくちゃなんないし、

 どうせ美味しいものったって接待で好きなもんなんて食えやしないしさ・・・。

 大体、北海道に行けていいとかみんな言うけどっほんとにそう思うなら絶対他の人がいくじゃん・・・。

 とほほ・・・。」

と存分に、ふてくされて寝ていました。


後20分ほどで着陸のアナウンスがあったその時に

飛行機がエアポケットに入ったのかガクン!と下がり、

油断して寝てた私は飛び上がって前の席に頭をぶつけて、机の上にあった

りんごジュースを頭からかぶってしまいました。


んもおおおおおお!幸先悪い!!!と、

とほほ気分はさらに増徴されつつ外を見ると・・・


そこは一面の銀世界でした。



「!?????」



産まれて初めて見る北海道のその地は 大きくて真っ白で・・・

見渡す限り真っ白なのです。

ところどころ、あれは・・?建物なのでしょうか。道なのでしょうか。

雪の凹凸がぽつぽつとあります。

道と思われる凹凸はまっすぐに規則正しくはるか彼方の地平まで伸び

まるで白いクリームのパッチワークのような広大な景色でした。


私は、思わず飛行機の小さな窓に顔を押し付けて見入ってしまいました。

その時の感覚は、なんていえばいいんでしょう。





「ここにあった!」


という気持ちでした。

長い間探していたものがここに、こんな近くにあった!

そんな気持ちでいっぱいになったのです。

ああ、私はこれを探して外国ばっかり行ってたけど

でも、こんな・・こんなとこにあったんだ!


という、何があったのかわからないけどとにかく

ひたすら私は窓の外のその大地を必死で見ていました。



到着して、すぐに迎えの車に乗せてもらい、私は会場に向かいました。

初めて会う北海道の人はみなとても優しくて素敵で

なにより、最初に感じた「ここにある何か」が「何か」想像もつかず

その答えがいつ出てくるのかわくわくしていたのでした。

そして、その旅の途中、視察である施設にいく途中に通過した

小さな町。


その町を車で走っているとき、私は本当に不思議な気持ちになりました。

初めてきたその町、

その町に何かある。

ここだ!

ここにきっとある。


何かはわからないのですが、私の心には「ああ!みつけた!」

というものすごい高揚感があふれて仕方がありませんでした。



私は、連れて行ってくれてる、取引先の方に

「ここはなんていう場所なんですか?」と聞きました。

「ああ。ここですね、日本で一番の酪農の町なんですよ。」


初めて聞くその町の名前を覚えきれず、

何度も聞き返して、そっとメモにとりました。



そして、いつか、この町に帰ってこよう。

と心に決めました。

きっと、ここに何かがある。




初めての北海道は、私の想像をまったく裏切り、とても素敵な場所でした。

真っ白な雪、海に広がる流氷、夜に町を歩きながら笑っていたりすると

笑ったまま口が凍りついてしまう。

寒いなんてもんじゃなくて、痛いくらいの冷たい空気。

そして、その冷たい外気から、建物の中に入ると、どのお店でも

やさしい空気がいっぱいになって向かえいれてくれる。

おそらく遠い昔は、ここまで寒い土地だと、外で過ごすなんて

命に関るかもしれないことだったのでしょう。

それから培ったのか、寒い外から建物の中に入ったよそ者にも

「寒かったでしょう?さ、中へ中へ」と町の人は存分に笑顔をくださいます。


たった1泊2日の出張で、私はすっかり北海道が大好きになってしまってました。


帰りの空港には前日にのみにいったバーのママさんや、宿泊したホテルの支配人さんや

バーのお客さんまでがなぜか見送りに来てくれて、単純な私はもうぼろぼろ泣きながら

飛行機に乗りました。


「また今度は、遊びに来ます!」



そして、その数ヵ月後、ウルトラ単純な私は

一人でまた北海道のその空港に降り立ったのでした。



良くして頂いた町の人に会うため。そして

もうひとつ。
あのとき見つけた「何か」を探しに行くためです。






記憶の音②

いつごろからはわからないのですがかなり小さいときから

繰り返し見ている夢がありました。



一面の原っぱを囲んだように木が生い茂っている公園。

その広い原っぱを私は一人で歩いているんです。

原っぱの上を、少し上を 滑るように歩きながら

道を進んでいくとやがて赤い特徴的な三角屋根の建物が見えてくる。


そのそばで家族が遊んでいるのです。

傍らには自転車が置いていて、

きっとお父さんが子供たちを連れて

遊びにきてるんだ。

子供が2人か3人とお父さんの家族連れ。

楽しそうに過ごしている。


いいなぁ。


私はその家族のところへ行きたくて

楽しそうなその家族のとこに近づこうとするんだけど

私は自分の道から外れられない。



家族は私に気付かない。




家族のうち一人だけ、小さな子供が私に気付きそうになって

振り返る。




その間流れているのは へたくそな練習中のエレクトーン?の曲が聞こえる。



そこでたいてい私の目が覚める。




そんな夢。





その夢は何度も何度も見て、だんだんはっきりしてきました。

家族連れの顔もなんとなく見えてきました。

オルガンのような音の曲もいつも同じなのです。

でも何の曲かはわからない。



目が覚めると、いつも 

「なんで、私に気付いてくれないんだろう」

と思ったりした気分がのこっていて

ちょっとした孤独感と、それと 

なんとなく懐かしい感じ。

それは、不快な感じじゃなくて。

その場所がとても素敵なとこなんです。


想像で作った場所かもしれないけど

だけど、あったら行ってみたいなずっと思っている場所。




私は、そんな夢を繰り返し見ていたことを

オルガンの彼女への手紙で書きました。



そして、しばらくして彼女から返事が来ました。





封筒を開けると、そこには写真が一枚入っていました。

それは一本の道の写真。



写真の裏にはこうかいていました。


「これは私の生まれた町です。

 あなたの夢に出てくる景色に似ていると思うので送ります」







その写真は、

まっすぐな土の道の両側に 木がずらっと並んでいる場所の写真。





???



私の見た夢は原っぱって書いてたのに。これ道じゃん。

どうしてこの子ったら、これが似てると思ったんだろう?

私は、その写真を何度も何度もみながら

彼女がそう思った理由を探してみました。

だけど、わかりませんでした。

そしてその写真を何度も見ているうちに私はなんとなく、

ああ、彼女も「生きてるんだ」って感じました。

手紙の返事はたまーにくるものの、ナゾの人といえばナゾの人の

彼女だから、だんだんと「実態の無い」人にも思えてきてたのです。

だから、この手紙を見て、

ああ、私がやり取りしているのは、やっぱり実在する人なんだなぁと

なんともいえないうれしさというか、妙な感動をしてしまいました。



写真を見ながら

どこなんだろな。

日本のどっかなんだよね

大体もしここだとしたとしても、ヒントもなんもないんだもん

これじゃあ、わかんないよー

私、あなたがどこの生まれかどころか

あなたの本名さえ知らないのに。うふふふふ。



なんて考えながら飽きることなくその写真を見ていました。


その人が

故郷に帰ったそのときに

まったく知らない私を思い出して、その夢を思い出して

そしてその景色をみせてやろうと思ってくれたことに

私はとてもうれしくて感謝しました。


私の夢に出てくる場所はどこか私だってわからないし

実在するのかといわれれば

たぶん、実在しない。

きっとテレビや写真で見た景色の断片を繋ぎ合わせているだけじゃないかな。

だから見つかるわけない。見つかるわけないのに

そんなの大人だったら誰でもわかるだろうに。


なのに

覚えてくれてたんだ。

その光景を。




ありがとう。


その写真を大事に大事に手帳にはさみ

私はときおり、その写真を見ていました。

彼女には嘘はつきたくなかったので正直に返事を書きました。


「私の夢の話を覚えていてくれてありがとう

でも正直に言うと残念ながらここじゃないと思う。

それでも、とても素敵な場所で、

何よりあなたが故郷に帰ったときに

この景色を見ず知らずの私に見せてやろうと思って

写真を撮ってくれたことが、とてもうれしい」

そんなことを書きました。

せっかく送ってくれたのに、ちょっと失礼?かなと

思ったけど、今まで彼女に対して送った手紙には

1つも嘘を書いていなかっただけに

いらないお世辞は書きたくありませんでした。

そして、きっとそれは・・・まったく彼女のことをよく知らないけど

でもきっとこの人ならわかってくれると信じていました。




今のようにネットが普及していない当時は

彼女の作品や活動の情報を得ることがなかなか難しかったのですが

かろうじて彼女が当時参加していた1つのバンドの事務所が

一番良くスケジュールを把握してらっしゃったので、

私は時々そこに電話をしては

新しいCDやライブの情報を聞いていました。

事務所のデスクの女の子も、もう事情をわかってくださっていたので

だんだんと電話をかけたら「ああ~○○さんの予定ですよね!」と

聞かずとも教えてくださるようになりました。



そして、一年ほど経ったあるとき、その事務所の方と

雑談交じりに話していたときにふと、違和感を感じたのです。

もしかして・・・?


「あの・・・ちょーと変なこと聞きますが…えっと・・・女の子ですよね?」


と私が聞くとそのデスクの方は


「!!やっぱり!?そう思われてたんですか?!

 stupidさんの話っぷりからしてもしかして、そう思われてるのかなぁ・・・?

 って私も時々思ってたんですよ~でもわざわざ言うのもおかしいし・・・(笑)

 違いますよぉ!あの方はよく間違われますが男の人なんですよ~!」と大笑いされたのです。



・・・私はずっと勘違いしていたのでした。





彼女は いえ 彼は

遠目でしか見えない舞台の上の姿も

華奢で、小柄で いつもうつむき加減で 

弾いていないときはまるでうって変わったように

キーボードの前に小さく静かにたたずんでいて、

そして黒くてきれいなストレートロングヘア。


ほんの数通ではあるけど、頂いた手紙の

特徴のあるまるい文字も、かわいい便箋も

そして控えめな文章も

とにかくがさつな私に欠けているものばかり持っていたので

疑う余地もなく、最初の第一印象のまま私は彼を女性と思っていたのです。


電話を切ったあと、

落ち着いて振り返って考えてみると

そういや、男の人っぽいとこもあったなぁ。

なんて、間抜けなことを考えたりして

今までの自分の長い長い勘違いに

おかしいやら申し訳ないやらでした。



まぁ男性でも女性でもいいや。

どっちにしても音は変わらないもの。










新しいとし。

さすがに、昨日から今日にかけては
何通かのメールをもらった。

昨日の夜11時58分の龍笛仲間の坊さんからの
フライングあけおめメールに始まり、
今年はどうも電波が増強されたのか
新しい年になったとたん、何通かのメールをもらった。

ありがとう。
みんな新しい年を迎えて
その喜びと期待を分かち合おうと
メールを友達に送ってるのだ。
みんなありがとさん。
フライング坊さんに
「メールしとる間があるならしっかり鐘つかんかwww。」
と返信をしつつ、0時丁度に送ってくれようと
してたヤツのオトボケっぷりを愛らしくありがたく
思った。


そして携帯メールは面倒でなかなか不精な
私も、何通か送った。
もらったメールへの返事と、
家族へ。


そして
迷いに迷ったが
送りたかったある人にも。




おめでとう  じゃないし

毎年、その人の家族に出していた年賀状も
今年はもう出せない。

ポストに入れれなかった
机の上の、毎年作っている彼女宛の
ノウテンキな私の年賀状を見ながら


その人を思った。




ご飯食べてるかな。
今日は一人でいるのかな。
泣いてないかな。



新しい年が、いつものように来ることが
きっと今のその人にとっては
身を切るほど切ない悲しい出来事かも
しれない。

どんな思いで過ごしているのかと
気になるのだが、そう思うと
新年をことさら強調するようなメールなんて
出せない。
そっとしておこうと思っていたのだけど。



だけどやっぱり
一度フトンに入ったものの
気になってメールをした。

新しいとし。
どうか、独りじゃないことだけは
忘れて欲しくないのだ。
ボキャ貧なのでなんていったらいいのか
わからんで、とにかく中途半端なおやすみメールにした。





朝に起きたら

寝てる間にも、たくさんの愛深き友達たちからの
メールが入っていた。

そして、その中に
その人からのメールの返事があった。



それは。



素敵なメールだった。



本人の承諾なしだけど
本当にサイコーなメールだった。

あんまりサイコーなので、
サイコーな一文だけ、披露させてもらう。
ごめんなさい。(事後承諾。)


「俺、頑張って生きてるよ。
 でも、この頑張りは、
 苦痛なんかじゃないから安心して。
 なんか、人として、大事なことを学んだんだ。」


そのメールを見て

私は、この1月1日が忘れられなくなったと思う。
私の鼻くそのような小細工メールなんてお見通しの
強い、美しいメールだった。
あたしゃこれまでの人生で
これほど美しいメールを見たことがなかったぜ。

そのメールを見て、
あたしゃ、自分の浅はかなうぬぼれに気付き、照れ笑いを
しつつも、
この力強いメールになんだかもう・・・
たとえが出来ないのだけど、なんだかもう。
とてもあたたかな気持ちになったのだ。

ぉおお!そうか。そうなんだ。
うん。会いたいよー私も会いたいぞ~!






悲しい思い出になるはずだったのに
切ない思い出になるはずだったのに
今度会うときはどんな顔したらいいか
わからなかったのに。


もしかしたら


もしかしたら。


いつか


長い時間がかかるかもしれんが、

勝手にこんなこと言ってたら
ほんと、いけないことかもしれないが。


ほんと
もしかしたら。



とても美しいかけがえのない日に
なるのかもしれない。

去年の9月27日。

 世界一のバイオリニストが神様のもとへ呼ばれた日だ。






ありがとう。
美しい友達よ。

新しいとしだよ。





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満月の夜。キラキラと光る。

この3日間、月がとてもきれいだった。




でっかいなー。


月。




おーい。誰か、今 この月を見てるー?




遠いところで今きっと誰かがこの月を見てるんだと

思うと、なんだかなんだかとても

不思議でずっと見てた。




昨日の明け方、ふと目が覚めると

寝室のベットからも月はずっとのぞいていてて。



私は、今、誰か私の友達が

この月を見てるかな?

と思い浮かべていた。




窓の端から端まで

ゆっくり移動する月を見ながら



ああ。きっと今、誰かがこのきれいな月をみながら

私を思い出してくれたんだ

だから、きっと目が覚めたんだと思った。




3ヶ月前、私は東京に行ってて


相変わらず余裕のないスケジュールで過ごしていた。




そこにメールが一通。


彼女からのメールだった。


「今どこにいるの?東京にいるんじゃない?

 居るなら顔を出しなさい。」


!?・・・う。

なぜわかったんだろ?



今回は会いに行きたい人がたくさんいて

ぷち仕事もあってスケジュールがきつくて、

方向音痴な私はタダでさえ時間がかかるので

だからちょっと彼女のトコにまでいける時間がないかと

思って、また今度にしようとしていた。



だけど、恐るべし勘。

私が東京に生息しているのに気付いた彼女から

出頭命令が届いた。




時間を見ると、次の約束まで二時間半ほどある。

彼女の家までここから40分くらい。

往復の時間を考えて一時間弱しかないが

それでも、彼女のそのメールは可笑しくて、

そして、あんなに忙しくて人気者の彼女が私をわざわざ

思ってくれたこともうれしくて

少しの時間でも、会いに行こうと決めた。



電話で道を聞きながら、彼女の家を探す。




方向音痴な私は、

電話を片手にぐるぐるぐるぐる、知らない町を

さまよった。




ようやく大きな木の下で手を振る彼女の姿が見える。




お土産に駅で買ったスイカを見て笑う。

「あんたらしいお土産やなぁ~。

 丁度、今レコーディング中やから、みんなで食べよう」



「え?!レコーディング中なん?そんな忙しいときに・・・言ってよ~」



「だって、そんなんゆうたら、あんた来えへんかったやろ?」



・・・この人は何でこう私の考えてることがわかるんだろう?

一緒に遊んだ時間はそんなに長くじゃないのに、なぜいつも

こうやって心を全開に開いてくれるんだろう?




彼女の家に向かう道すがら、うれしくて

その言葉を噛み締めた。





たどり着いた彼女の家は

とてもこんな都会とは信じられない 森の中の一軒家だった。




「クーラー壊れてんねん~暑いで~」



全開になった家の中から不思議な音が聞こえてくる。



「こんにちは。」



中にはメンバーの2人とエンジニアの旦那さんが

風の音とともに録音真っ最中だった。(笑)



そーっと隣の部屋に彼女と二人で移り、

久しぶりに話をする。




天気が良くて

風が気持ちよくて

彼女は抜けるように白い肌

頭も眉毛も抜けてしまっているのだけど

それがまるで陶器の人形のように

なぜかキュートにさえ見える。




「元気そうやん」

「せやろ?まぁ無理はしんようにしてんねんけど

 ぜんぜん元気やねんで。明日から、ツアーで

 関西へ行くねん。」

「私と入れ替わりやな~」

「そうよ。今回は来られへんやろけど、また次は来てよ」

「うん。行くよ。またやるの?」


「今日、忙しかったんやろ?ふふふ・・・でも、来てそうや~と

 思ってん。ちょっとでもええから話できたらおもってさ。」

「そうよ。びっくりした!なんでわかったんやろ?って(笑)

 またゆっくり時間とれるときにのんびりこようおもてたのに」

「夜でええねんで~。3人でドライブしようや。IKEAとか買い物いこうよ。」

「わ~行きたい行きたい。車あるなら買えるなぁ~(笑)」



くだらない話ばっかり(笑)



途中で彼女は

「ちょっと横になるわな」

とベットに横になって話しを続けた。




うちわでゆっくり、彼女と自分を扇ぎながら

隣の部屋からながれる、彼女の歌を聴きながら

ゆっくり話しをした。




「stupidのバイオリン。借りたままやなぁ~」

「あはは。あの安モンな。そうそう。でも、今日はこれから行くトコあるし、

 私のとこにあるよりこっちにあるほうがあいつにとってもええし。まだ預けとくわ。」

「アイリッシュ練習したらええねん。あんたそんなん好きやろ。」

「そうやなぁ。でも、難しいやん!」

「教えたるがな。」

「わはは。ものすごいゴージャスな先生やなぁ。」




「あのな。」

「ん?」

「無理したらあかんで。あんた、なんでも一生懸命になるやろ。

 無理せんとな。stupidは、自分ですぐ『普通の人』になろうなろうと

 するけど、そんなんせんでええねんで。

 あんた変わりモンやねんから(笑)。でもそれがあんたの一番のええとこやねんから」

「・・・ちょっと。私、こうみえてもついこの前まで普通のOLやってんで~。

 変わりモンから変わりモンって言われたら、普通の人になるんやからええやん!」

「ふふふ・・・。ほら、すぐそうやって、常識人アピールする。比べんでええとこと

 比べるからいつまでたっても自信ないねん。」




・・・彼女の言葉は的確で。

まるで姉のように時々厳しく優しく諭す。


いや。私がわかりやすいだけなのか?

いずれにせよ、うう・・・病気で戦ってる人に

心配させてるなんて、ほんと情けない話だなぁ。




1時間もない時間の会話。

だけど、

一つ一つの言葉が

ガラス玉のように形になって、私の心に残っている。




「そろそろ、行くわ」


「そうやな。ほな途中まで送ってくわ」



「大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。あんたのことやからまた迷子になるがな。行く行く(笑)。」




ゆっくり、駅への道を並んで歩く。




「来てくれてありがとうな。会いたかってん。」

「来て良かった。ありがとう。呼んでくれて。ほんとに。」

「また。おいでな。」

「うん。 治療、応援してるな。」

「うん。大丈夫やで~!」




坂の上から



彼女は手を振っていた。

ずっと、ずっと

見えなくなるまで。




見えなくなるまで。



この角を曲がれば、



彼女の姿が見えなくなる。




それがなんだかとても儚くて

私は、最後の角を曲がるのに少し躊躇った。




ばいばい。またね。





大きく手をふって、ジャンプして手を振って

角をまがって一気に駅に走る。


彼女はとてもきれいでキラキラしていた。





***************************




昨日は、東京からお友達が来ていた。

親しい人のお別れに来たそうで、

彼の話を聞くと、悲しい話なのに

でも、

「ボクのこと、とてもよくわかってくれてた友達なんだ。」

という言葉を聞いて

大人の男の人はいいなぁとおもった。


きちんと生きてない人からは出ない言葉だと思うので

心からそう表現できるその人の今までの生き方さえ見えるように思った。



私はそんなほんとの大人の人に、

なんて言っていいのかわからなくて、
何を話したらいいのかわからなくて
脊髄反射のように意味のない不要なたくさんの 言葉を発していた。



くだらない、ゲテモノ食の話や、

図書館で本を借りたなんて話をして

「くだらない話ですよねー」と判っているんだけど。

悲しいかな。

こんなとき、発する言葉を持っていない私は

ただ、言葉を連ねることしか出来ないのが恥ずかしい。


そして、彼はニコニコ笑って東京にもどった。
とても悲しい話だったのだけど、でも

暖かい気持ちになった。



よく考えると、私が癒されていたのだ。

人間っていいなぁ。






名前もしらないその人の友達のことを想像して、

きっとそういう人だから

満月の日だったんだぁと思った。





彼の友達を思い、私は

昨日の月はそういうことだったのかな?

と思った。



彼にその話をすればよかった。

ゲテモノ食の話なんかじゃなくてさ。





****************************

そして私は帰ってから

彼女にメールをした。




昨日の明け方月に呼ばれるまえ

私は夢を見た。



彼女の夢だった。


なぜ、彼女を突然思い出したのかというと

それは、きっと、昨日会った彼が、

彼女に会ったあのときに会った友達だったから。

それで、ふと思い出したんだよ。




だからだよ。



 

満月。きれいだよね。





「どうですか? 

  夢に出てきたよ。

 また、行くから

 バイオリン教えてね。」


言葉を選んで。

また会う約束をしようと思って。

すぐに電話がなった。


彼女からだ。


携帯に表示された彼女の名前に 

ほっと安心して急いで出る。



「もしも~し!元気か~~~!?」




「・・・・・・・ごめん・・・。」





声は          旦那さんの声だった。






彼女は。

森の中の彼女も




昨日。

突然召されてしまった。






満月だったね。




ね。ほんぢ。見た?


きれいな満月だったね。






満月の日にいくなんて


あんたらしいなぁ。

華やかで、キュートで

キラキラ光いっぱいで。

記憶の音①

もう14,5年前、仕事の関係で行ったある男性アーティストのコンサート。

正直言えばあんまり興味のなかったポップアーティストだったのですが

ステージやさんが、一緒に仕事している人だったので勉強のためにと

仕事仲間と見に行くことになりました。


ステージングはとてもゴージャスですばらしく、

お金をかけるといいものができるんだなぁと

舞台のセットや演出に目を奪われていました。


聞くとはなしに聞いていた演奏なのですが

そのうちにステージの左端に目が留まりました。

そこには、ステージから落ちないか?と心配するほど飛び跳ねながら

キーボードを弾く小さな女の子が・・・。




目の前で飛び跳ねるその子を見たとき

私は、もう目が点に。


派手なアクションで弾き続ける女の子。


ヤダなぁ。


というのが最初の印象。


楽器の種類は違うものの、私もずっと楽器を弾いていて

昔から楽器を弾くときにものすごいオーバーアクションの人とか見ると

どうしても冷めてみてしまうので、その子のヘッドバッキングばりばりで

飛び跳ねるような弾き方は一番苦手なものだったんです。


「あんな飛び跳ねてて、鍵盤に手が届かないじゃん。

 かっこより音、気にしろよ。」

そう思って見ていました。

私は、負けず嫌いで皮肉屋なので余計にそう思ったのでしょう。




ステージでは、その男性アーティストが

踊りながら熱唱しています。

歌詞や歌はぜんぜん好みじゃないのですが

音はさすがにいい音だなぁ~

ぼんやりと眺めているうちにふと気がつきました。


この音楽の中で一つ

とても美しい音が混じっているのです。


その音は、決して飛び出して聞こえるものじゃないのだけど

とってもバランスよく他の音をきちんと支えて、

時々、ちらっと、音と音の間からなんとも絶妙なタイミングとハーモニーで

聞こえてくる。

ごちゃごちゃとした音の渦をきちんと飛び切りの音に仕立て上げるような

とても、かっこよくてそれで 冷静で美しい音。


???これかぁ~


この音のおかげでこのコンサートの音が極上になってる??


で、どの人がこの音を出してる??



と探していると、





げっ。



あの子?!



「そんなはずない。そんなはずない!あんなふざけた弾き方の

 音がいいはずなんてない!」

そう思うんだけど、



「あ。そうそう、ここにこの音が来て欲しいんだ」


そう思うところで、出てくるその求めている音。

それはどうも、認めたくない?けれど

そいつが、その子が弾いているよう。


そんなバカなぁ~~・・


あんな飛び跳ねてて、ヘッドバッキングばっかして

自分だけの世界でまわりも見ていない状況で

こんな音が出せるわけないじゃん!


にわかに信じがたいのですが

それでも、

やはりその音は彼女の手の動きと合っている・・・。

やっぱりあの子が弾いているんだ・・・。





そしてコンサートが終わるころ、

私は、結局彼女の音ばかりを追って聞いていたことに気がつきました。

もんちっちみたいなその小さな女の子に

すっかり心奪われてしまいました。





そうして、しばらくたっても私の耳には

彼女の音がまだ残っていて、

どうしても忘れられません。


「あの子は絶対あの曲ではなくて、もっと

彼女にふさわしい音で弾いているはず。」

だけど、彼女のことはまったくわかりません。

わかっているのは、メンバー紹介のときに何とか聞き取ろうと

したときに「なんじゃら(聞き取れない)ちゃーーん」

といわれたその下の名前だけ。

その名前は小学校のときの担任の先生の名前と一緒でなんとかそこだけ

ききとれたのだけど。

それしか手がかりがない・・・。

顔だってずっとヘッドバッキングしてたから(笑)ぜんぜん見えなかったし

たとえ顔が見えても、人の顔をおぼえるのが苦手な私は絶対

わからないし覚えていても探しようがない。

どうして探したらいいんだろ?


思えば、名も知らない人の音にそこまで執着するなんて

そんなことは初めてだったので、こういう場合の探し方がわからないのです。

それに当時は今のようにインターネットもありませんでした。


でもどうしても私はあの子の音をもう一度聞きたくて

できれば彼女が本当に弾きたいと思っているバンドで弾いている音で

聞いてみたい。


ダメもとでそのときのコンサートの男性アーティストの

事務所に手紙を送りました。


当時は大変な人気のその男性アーティスト宛てにおそらく何百通とくる手紙。

そんな中、私の手紙には

「○月○日のステージの左端でキーボードを弾いていたなんじゃらさかねちゃんっていう子へ」

と書いた、ふざけたあて先で手紙を出しました。


ふざけてたんじゃないけど・・・でも思いつかなかったのです。

郵便屋さんに怒られるかなぁ・・と思いつつそれでも

何だか探さなくちゃ。という気持ちの方が強かったのです。

ダメもとで出した手紙のために、さすがに無理だったんだろうな

とあきらて忘れかけていたある日、


家に帰ると一通の茶色い封筒が届いていました。



送り主に心当たりはありませんでした。


誰これ?と思いつつ封筒を開けてみると、

中には手紙とカセットテープ、そしてライナーノーツらしき

ものが入っていました。


手紙には「私の音に興味をもってくれてありがとう。」などと書かれた短い文章が

おそらく書譜用のペンで書かれていました。



それは、彼女からの手紙でした。


あの手紙、

届いたんだ・・・。


あんなふざけた宛名で、

それでもちゃんとみんな届けてくれたんだ・・・。

そしてこの子は、私がどこの誰かもわからないのに

しかもすごく前の話なのに

わざわざ送ってくれたんだ。

いろんなことに驚きながらテープを聴きました。


それは想像とはまったく違って




静かなピアノの音、

おもちゃの太鼓のようなドラム、

叙情詩のようなギターやフィドル

そして、それに消え入りそうで

繊細で中性的で少し神経質そうなボーカルの入った

聞いた事ないのにひどく懐かしく思う音が入っていました。


なんていうんだろう。



想像をまったく裏切られた

その歌に私は少し困ってしまいました。


本当にあの子の音?

ステージから落ちそうなほど飛び回っていた彼女の音との

ギャップにも戸惑いましたが

それよりも、この歌を聴いた瞬間

思わず耳をふさいでしまいたくなったのです。


聞いているとなんだか忘れていたこと

忘れている大事なことを思い出せない

そんな気分を掻き立てるのです。


最初はその感覚にものすごい不安を感じてしまい

それで耳をふさぎたくなったのです。

もう少しで思い出せそうなのに。

でも思い出せない。

何か大事なこと忘れてるでしょう?

そんな感じ。

思い出せない自分の脳みそにいらいらしてしまう。




結局私は彼女の音にどんどん惹きこまれていきました。


思い出す必要がないから今は忘れているのだし。

だったらこのままでいいか。

そう思うと、半分思い出しそうなその気分が

とても心地よくて、一日中ヘッドフォンをつけっぱなし。


手紙に「何か感じたら教えてください。」

そう書かれていたので、せっかくわざわざ送ってくれた

彼女にきちんと返事を書かなくちゃと

思っていたのだけど、

だけど、すぐに書けない。

あまりに思考がまとまらなさ過ぎてどうしてもうまく書けない。


「あんまり上手に思い出せないけれど、何か思い出しそうな気持ちになる特別な音な

 気がするし。 もう少し聞いて何か思い出したらまた手紙を書きます。」

確かそんな返事を出しました。

それから時折、思いついたことを彼女になんとはなしに

手紙を書く。それはとてもくだらない内容で

本当の知り合いにそんな話をしたらきっと

「お前アホやなぁ」とか

「頭おかしいんちゃうか?」と笑い飛ばされるような内容でした。


そしてたまに彼女も思いついたように時々だけど返事をくれる。

世の中には、こんな私のバカな話を聞いて「バカ」って言わない人が

いるんだなぁ(笑)と思うようになり、

私は、そのうち彼女に 

どこの誰ともしらない彼女に

自分の中に浮かぶいろんな景色の話をするようになりました。


会ったことのない彼女だから

会うことのない子だからかもしれません。

実際にまわりにいる人たちには今まで話せなかったこと

彼女は決してそれをバカにしなくて。

ある日の彼女の手紙に

「不思議だね。同じようなこと考えることがあるよ。」

と書いてありました。


私はとてもうれしくなって、

その話は今までのなかでもとびきりとんでもない話で

書きながら

「マジで頭おかしいと退かれるんちゃうやろか。」と送ったあとも

やめときゃよかった・・と後悔するような内容だったのです。

ところが、彼女の返事ときたら。

ほんとに?同じようなことを?あんたもバカだねぇ~!って

笑いながら、この子どんな子なんだろう?

普段なにしてんだろ?と初めて思いました。


それまで、彼女が何歳でどんな声で、どこの町で生まれて、

普段どんなことしてて、どんな音楽が好きで、どんな顔してるんだろ・・・とか

そんなことは知りたいと思わなかったのですが、

そのときに初めて「彼女」が何者か知りたくなりました。











そして、


彼女とは会わないでおこう。


と決めました。

何も知らないほうがいいや。




私は、人の前ではどうしても先に壁を作ってしまいます。

本当は女々しいし、小心者だし、だから

そういうの見られたくないから、とにかく実際に会う人の前では

こっちの中に入ってこられないように。と先に壁を作ります。見えないように。


長い長い間

自分の話を人にすることはありませんでした。

自分の弱点を人に話すなんてそんなバカなこと。


だから

彼女には会わないでおこうと決めました。


彼女に会えば、きっと私はまた壁をつくってしまう。

せっかく、会えたのに。

また壁を作って、うわっつらだけの知り合いになってしまう。





私はもしかしたら、彼女じゃなく自分に手紙を書いていたのかもしれません。






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その子はあまり目立つ仕事はしていません。

だから音を聞ける機会はそうそうなくて

私は少ない音源を大事に大事に聞いていました。


私はいつも彼女の音を探していました。

いつもいつも。

CD屋さんに行けば、クレジットにはないから

お店の人に頼んで調べてもらったり

彼女の所属する事務所に電話して教えてもらったり。

私はいつも彼女の音を探していました。



ご自身のバンドでのCDはなかなか出ませんが

それでも、そうするうちにだんだんといろんな人の

アルバムで聞く機会が増えてきました。



最初にもらったテープは擦り切れそうになるので

何本も録りなおして聞き続けていました。



あんまり聞きこみすぎたのでしょうか?

いつからか、私はあることに気がつきました。

彼女の音に色がついているように見えはじめました。

町の中で

ふと聞こえる音でも、

この音だけは見えるのでわかります。

最初に気付いたときは不思議でなりませんでした。

あれ?また見えた。

と思って、後で調べてみると

その曲でやっぱり弾いていることがわかったり。


音色というのは本当に色がついているんだ

そう初めてわかりました。




その音は私には

たいていは金色に近い黄色っぽい、少し乳白色のような色で

聞こえ始めて、他の音と少し違って色がキラキラと変わるのだけど

だけど、安定するとまたもとの色に戻る。そう見えたのです。

そして、ルート音がAのロングトーンのときに紫に変わる。

そのパターンは独特の色あいで。


やはり何か特別な細工?がしてあるのかも?


今までそんなこと普通に歩いていて起こることなんてなかったのですから。

それに、

見えるように思っても、実は他の人の音では見えないのです。


もちろん、たとえその音だとしても

もしかしたら見えてないときもあるのかもしれません。

そんなときは気付かないからわからないのかもしれないし。




それ以来、他の人の「音色」を見ようともするのですが

やはり他の音ではほとんど見えないのです。

見えるような気がするときもありますが

それは自分の力ではありませんでした。