緊迫のシリーズ、まとめに入ります。

 

 

より。

 

 

さて。

日本のテレビはなぜこんなに弱いのか。

 

1.電波免許停止の影

検閲問題は後を絶たない。

2015年。
安倍政権下、菅官房長官はテレビ朝日とNHK幹部を呼び出し、元経産相職員 古賀茂明氏が不可解な事情でプロデューサーもろとも「報道ステーション」を降板した。「クローズアップ現代」でも、国谷裕子氏が「過剰演出」について涙ぐみながら謝罪した。

しかし。番組の姿勢は怯まず、政権追及の手は緩まず。

その結果…

2016年。
ついに、報道ステーション・古館伊知郎氏、ニュース23・岸井成格氏、クローズアップ現代 国谷裕子氏が、降板に追い込まれた。

放送法第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。


この第四条を根拠として、政権は「電波法第76条1項」、すなわち「電波停止の措置をとるぞ」とテレビ局を脅迫したのである!


白イタチのノロイ/「ガンバの大冒険」より

 

2.吉田茂 vs GHQ

しかし放送法第三条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」とある。

どちらが上なのであろうか?
それは、すべての法の根拠たる憲法を見なくてはなるまい。


憲法第二十一条

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。 通信の秘密は、これを侵してはならない。





ゆえに、
 

*2015年、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理委員会は、意見書の中で以下のように述べた。

「放送の不偏不党」「真実」「自律」は放送事業者に課せられた「義務」ではない。これらの原則を守るよう求められているのは政府などの公権力である。

(中略)そのため、電波法は政府に放送免許付与権限や監督権限を与えているが、これらの権限は、ともすれば放送の内容に対する政府の干渉のために濫用されかねない。

(中略)放送法第四条第1号各号も、政府が放送内容について干渉する根拠となる法規範ではなく、あくまで放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準、すなわち「倫理規範」なのである。

 

放送法第四条は、法規範ではなく倫理規範(放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準)である。

 

放送法第四条を根拠に電波停止を行うのは憲法違反の可能性が高い。それは根拠にはなりえない。

そもそも政府が番組内容にあらかじめ意見を付けることは憲法に違反する。
 

 


しかし、自民党にはその知識はない。

「放送法には規範性があり、違反があれば3ヶ月以内の業務停止命令ができる」(高市総務相、当時)
「単なる倫理規定ではなく法規であり、これに違反しているのだから、担当官庁が法に則って対応するのは当然」(安倍首相、同)
「予算を国会で承認する責任がある国会議員が果たして事実を曲げているかどうかについて議論するというのは当然のこと」(安倍首相、同)
「BPOは放送法を誤解している。NHKの調査報告書に放送法に抵触する点があったので必要な対応を行った」(菅官房長官、同)

故・亡国首相

 

しかし。

2014~2015年に、官邸が総務省に「政治的公平性」に関する法解釈の変更を執拗に迫り、ついに「個別の番組について政府が公平性を判断できる」との見解を出させるに至る。
このやり取りの文書が公表されたにもかかわらず、高市早苗氏は「捏造だ」と言い張って、現在何も変更されずにいるのだ。

独裁国家ならまだしも、先進国ではこんな例は見られない。

アメリカでは、FCC(連邦通信委員会)では、いずれの党も委員を過半数出してはならず

イギリスの Ofcom(通信庁)は国王からの許可状によってBBCその他を監督するのであり

ドイツでは州ごとに評議会が設置され

放送事業者の独立が保たれている。

しかるに本邦では。
政府から独立した行政委員会は存在しないのである。
 

 

いや、かつては存在した。

1950年、民法の開始のため、放送法と電波三法が成立した。
この時、GHQは、政治による放送の支配を警戒し、日本に電波監理委員会を設立した。
GHQは「この4条は問題である」と考えていた。

しかし、GHQと吉田内閣の押し合いにより、この条文は復活。

今や「検閲」の法的根拠にまでなっているのである。

吉田茂

 

そして、サンフランシスコ平和条約により日本は独立を回復し(たつもり)、同時に「日米安保条約」に調印した(独立を放棄した!)が、吉田内閣は直後にこっそり「電波監理委員会」を解散した(これだけ独立した💦)のである。

こうして、「権力を監視するはずのメディアを政府が規制する」という、いびつな構造が出来上がったのである。
 

3.ポチ達は手枷足枷を求めた

規制撤廃を求める声はなかったのだろうか?
 

旧Twiter、facebook、instagram…
インターネット、そしてその経営母体である外資系が、視聴者をテレビから奪い始めた。
abemaTV、Youtube、Netflix…
配信がテレビを凌駕する時代になってきている。

BBC、CNNなどは果敢にデジタル事業に参入していった。

 

 

2018年、これらの状況を受け、日本でも、規制改革推進会議において、日本の放送をグローバルで競争力あるものにするにはどうしたらいいのか、そのために、通信と放送、国内と海外という2つの境界を定めていた規制は緩和したほうがいいのかという議論があった。


その一環として「放送法第4条の撤廃」が検討されているという報道(共同通信)が日本を駆け巡った。

官邸は通信(インターネット)と放送の融合を進めるにあたり、規制のレベルを比較的自由なネットに合わせたい意向であった。

ところが、新聞・テレビ業界はそろって「反対」を表明する。

2023年3月、労働組合である「民法労連」は「政府による放送への圧力を排するために独立行政委員会の設置を求める」との声明を出している。

現場の良心は、自由自立を求めているのだ。
しかし、会社は職員の声を聴く気はないようだ。

 

 

 

テレビ業者が日本に「ジャーナリズム」が必要と思っているならば、規制撤廃は歓迎すべき状況であろう。

また、放送法第4条の運用の正常化を求めるはずであろう。

少なくとも、政府から独立した電波監理委員会の設置(復活)を求めるはずであろう。
 

なのになぜ、彼らはポチのように尻尾を振るか。


大きな恩恵があるのだ…!

テレビと新聞社を併せ持つ「クロスオーナーシップ」の温存。

会社の経営の保証。

新聞の再販売価格維持制度の温存など…

記者クラブという特権の保護!
(海外ジャーナリストの参入の障壁として悪名高い)



彼らマスコミは

手足を縛ってください
その代わりエサを下さい

そういって

そろってしっぽを振っているのである。

 

なんのことはない。

テレビにジャニーズを糾弾する資格はないどころか

ジャニーズを食い物にしたうえ責任を逃れたやつらだ…

国の保護のもとに!

 

4.覚悟なき日本人よ。そなたにジャーナリズムは無理だ。

前章を見れば、彼らには「報道」の覚悟など無かったことが明らかである。

成程、テレビは「力道山、大鵬、巨人戦」から始まった、娯楽のための装置であった。
 

そんなものに
「報道」を名乗ることを許したばかりか
頭脳まで預けた日本人。



いや、マスコミこそ
日本人代表ではないか。

 

©ぱりさいびと

 

 

もし

権力の望みのままに屠殺されるのが

少しでも嫌なら…

自分の頭で考えよう。


 

ふっと壁の裂け目から情報が見えたとき

それをどう見るか

 

 

嘘をついてるのは誰か

隠されてることは何か



電波の向こうに、何が起こっているのかを。

 


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参考文献
「放送事業規制の日米比較と日本の問題点」鶴田達成、共立女子短期大学紀要。2018.1

「シンポジウム欧米メディアのマルチプラットフォーム展開~アメリカCNNとPBS(公共放送)、イギリスBBCの報告から」大墻敦/田中孝宜、放送研究と調査、2018.1

「焦点:動き出す放送法改正、政府は公平規制緩和に意欲」志田義寧、ロイター、2018.3

「テレビ・新聞が慌てた「放送法4条騒動」の不毛」東洋経済オンライン、2018.4
「諸外国の公共放送ーインターネット時代のサービス、財源」清水直樹、国立国会図書館。2019.3
「電波三報 成立直前に盛り込まれた規制強化」村上聖一、放送研究と調査。2020.7
「政府による放送への圧力を排するために独立行政委員会の設置を求める」民放労連、2023.3
その他。