◆4WD(AWD)は雪道最強ではない…そのワケは?
今週末の天気予報では南岸低気圧が近づいているそうで、もしかすると関東でも「雪」が降るのでは…、と心配されていた。なんとか「冷たい雨」で済みそうなのでよかったですね。もちろん冬なので、地域によってはスノードライブの季節です。降雪地帯に出かけると、様々な積雪・凍結路面に遭遇します。
ひと昔前に比べるとスタッドレスタイヤの性能が飛躍的に進化したことから、そういった多様な雪道の路面でも安全に走れるようになりました。
さらに、4WD+スタッドレスの組み合わせは最強というイメージが定着しています。果たして、本当なのでしょうか。
4WDとは「四輪駆動」の意味ですが、“Four Wheel Drive”の略称であり、「AWD」や「4×4」も同意語です。
その名の通り、四輪にエンジンの力(駆動力)を伝える駆動方式です。でも、ひと言で「4WD」と言っても、そのシステムは実に多様です。
2WD(FR・FF)と4WDの切り替えが任意でできる「パートタイム4WD」では、トヨタ「ランドクルーザー70」やスズキ「ジムニー」などがこの機構を採用していました。
この「パートタイム4WD」システムは半世紀以上前からあるもので、燃費の抑制と舗装路での走りやすさを考慮して考案されたものです。
一方、現代のクルマに多く採用される4WDシステムでスタンダードになっているのが「フルタイム4WD」です。
前輪と後輪の間に差動装置(センターデフ)を持っており、乾燥路面のコーナー、曲がり角を走る時に“タイトコーナーブレーキング現象”が起こらないのが、パートタイム4WDとの違いです。
フルタイムと言っているものの、常に四輪に駆動力が伝わっているシステムばかりではなく、多くの場合は通常はFFで走り、前輪が滑り出すと後輪に駆動力が配分されます。
この駆動力配分を受動的に行うシステムが「パッシブアクティブトルクスプリット(もしくはスタンバイ4WD)」、電子制御を使って能動的に行うのが「アクティブトルクスプリット」となります。
軽自動車やコンパクトカーなどはパッシブトルクスプリットのシステムを使っていることが多く、実質はFF車とそれほど変わりません。
しかし、昨今ではパートタイム、フルタイムに限らず「ESC(電子制御スタビリティコントロール)」の装備が全モデルに義務づけられているため、雪道のコーナリングにおいては、スリップする危険性が大幅に下がったと言えるでしょう。
ESC(横滑りの回避を支援するブレーキ電子制御システム)の余波は、燃費優先で旧態依然なシステムと言われてきたパートタイム4WDにも、その機能の人的操作不要論が投げかけられました。
また、アクティブトルクスプリット式4WDの場合は、車両のヨー状態、タイヤの空転状態などをセンサーで細かく検知し、瞬間的に各輪への駆動力配分を変化させるため、走破力や安全性がさらに高まります。
特に現在のクルマは、電子スロットルの採用が一般的なので、車両がスリップする危険性をいち早く察知した場合、ドライバーの操作状態を越えて安全側に車両を制御するようになっています。
こうしたことを考えれば、4WDはそもそもの性能をさらに進化、制御と動作を深化させていることに間違いありません。
つまり、雪道を安全に走れるという点では、4WDは2WDに勝っていることは間違いないと言えるでしょう。しかし、クルマは雪道を駆動システムだけで走っているわけではありません。
◆4WD性能以外にも重要な部分は?
昨今、雪道用タイヤとしてはスタッドレスタイヤに加えて、オールシーズンタイヤも一般的になりつつあります。
オフロード4WD用であれば、スノーフレークマークの付いたマッド&スノータイヤもスタンダードです。
どのタイヤの雪道性能も進化が著しく、特にスタッドレスタイヤの凍結路性能は目を見張るものがあります。
しかし、こうした雪道タイヤでもその性能を発揮できるスピードレンジや状況には限界があり、それを越えた状態で走行した場合にスリップを起こすのは自明の理です。
特にアクティブトルクスプリット式4WDの場合、コンピュータが性能の上限をどんどん上げるため、ある意味でスタッドレスタイヤの性能限界を超えるところまで“走れてしまう”のです。
もし、このレンジでスリップを起こしてしまった場合のリカバリーはプロドライバーでも容易ではなく、限界点の低い2WDよりも甚大な被害を被る可能性が高くなってしまいます。
『4WD』は、たしかに雪道で優れた走破性を発揮するシステムですが、タイヤの性能を超える走りはできません。
停止する際も同じことが言えます。様々な電子デバイスで空転を防止する制御や制動距離抑制機能(ABS)が働いたとしても、タイヤがグリップしなければスーッと滑っていってしまいます。
特に4WD車は2WD車よりも重量が重くなるため、ストップするための制動は不利な条件で行うことになります。
ひとつだけ言えるのは、深雪からのスタック脱出においての性能面では、4WDは2WDより大きなアドバンテージを持っています。
かつては脱出性能が低いと言われたフルタイム4WDでも、一部のシステムではESCオフやドライブレンジの選択を行うことによって、パートタイム4WDに近い性能を発揮できるようになりました。
前に引く力、後ろから押す力の両方が働く4WDは、間違いなく深雪走行では有利です。
但しこうした状況では、いくらトラクションコントロールを有したクルマでも、結局はタイヤのトラクション性能が失われれば(滑って)動けません。
結局なところ、4WDシステムはESCやABSといったいざという時のためのシステムと同列と考えて走るのが無難であり、絶対的な信頼を寄せるのは過信と言えます。
冬場の移動経験から雪道を安全に走るために必要なのは、高い性能を持ったスタッドレスタイヤと、十分に安全なマージンを確保した走り方、そして雪道に対しての知識が必要なのです。
これが揃っていれば、FF車などでも楽とは言いませんが、十分に安全に走行することができるといえるでしょう。でもね…、急がないのであれば雪の時に出掛けないのも一考ですね。なにせ「急」の付く運転や操作は避けなければなりません。
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