烏龍茶の本場=福建省のお茶の街=安渓にある、お茶市場へ。

どう考えても、お茶だらけだ。

 

案の定、お茶の市場に足を踏み入れると、お茶の山々がそびえていた。

 

歩き出して1分も経たないうちに、売り子のおばちゃん軍団に

ぴったりとマークされ、囲まれていた。

追っかけファンか、集団スリのように、どこまでもどこまでも

ついてくる。

 

市場には試飲コーナーがあり、交渉途中のお客と売り手がやってきては、

お湯をもらってお茶を飲む。

我らの長い交渉が成立すると、おばちゃん軍団は次なる獲物を

追い求め、波が引くようにサーっといなくなっていった。

そんな中、背後からさりげない声が。

「お茶を買ったなら、包装が必要だよ。

私が知っているところについておいで」(多分、そういう流れ)

 

てな訳で、お茶市場の二階へ。

 

後からわかったのだけど、このおばちゃんも、

売り子のおばちゃん軍団に混ざり、

最初から我らの交渉の行く末を黙って見守っていたらしい。

 

市場の二階には常設のお茶やさんが軒を連ね、

お店の前では黙々と茶葉の選り分け作業が行われている。

 

 

店にはどこも真空包装の機械があり、1回分の包装パックが

機械からどんどんはき出されていく。

 

おばちゃんは個別包装のパックをさらに箱詰めしていく。

店主は、待っている私たちにお茶を振舞ってくれた。

 

日本で飲む烏龍茶は茶色だけれど、

こちらで一般的に飲まれる烏龍茶は、焙煎されていないので、

薄い黄緑色をしている。

 

試飲の時もそうだったけれど、お茶に熱湯を注ぎ、

すぐその湯をカップに注いで捨てる。

茶葉を蒸らし、広げるために、まずお茶っぱをお湯ですすぐのだ。

 

カップが温まったら、カップのお湯を捨て、一番茶から味わう。

一番茶が出たら、カップにかぶせた蓋の匂いを嗅ぎ、

その茶葉の香りを確かめる。

 

やはり、高品質の茶葉は香りも高く、美味しい。

安いお茶は香りも味も薄い。

 

日本茶は三番茶くらいが限度だけど、

中国茶は10回くらい出るので、味や香りの変化を楽しむ。

三番茶、四番茶くらいが味も香りもピークのような気がする。

 

家では急須を使うけれど、お店などでは、

茶碗に茶葉とお湯を入れ、

蓋をして急須代わりにしていた。

葉っぱが広がって、茶碗からあふれんばかりになる。

それに熱湯を注ぎ、お猪口サイズのカップで

ちょびちょびお茶を飲んでいく。

 

日本の茶道はマナーや形式が大切だけど、

こちらの茶芸は、気張らずに中身を楽しむ、

そんな感じだ。

「芸」は、楽しめば良いのだ。

 

 

 

 

「厦門に行った」というと、決まって「??」という顔をされる。

厦門というよりも、福建省の方が日本では知名度が高いだろう。

そう、烏龍茶の産地として有名な。

 

というわけで、今回の旅はもちろん烏龍茶を買いに行くのも、

大切なミッション。

 

そのため、厦門から80キロほど離れたところに位置する、安渓という町に行った。

お茶市場、お茶屋さん、お茶の包装専門店、茶道具屋さんが

通りにびっしりと軒を連ねる。

町では、お茶産業に関わっていない人の方が少ないのでは?というぐらい。

行ったことないので勝手な想像だけど、豊田市におけるトヨタ関係者のような。

 

安渓の町は、ここ10年で開発・発展が進み、高層ビルがニョキニョキ、

空にそびえている。

古い建物と新しい高層ビルが景色の中に混じり合い、ミスマッチ。

日本の高度成長期もこんな感じだったのだろうか。

 

泊まったホテルは、新しそうな高層ビルの25階で、普段は見ない目線で町を見下ろす。

高層ビルと言っても、中国では必ず生活感が漂う。

隣の高層ビルに住んでいる住人たちは洗濯物を窓の外にぶら下げていたり、

なんと窓から外にゴミを捨てている姿も目撃。

高層ビルのふもとには、野菜や肉の売り子やミニ市場がわらわらと集まっている。

食堂や屋台も徒歩圏内にある。

 

ホテルの横は川が流れ、大きめの公園が隣接しており、人々の憩いの場だった。

絶対、朝は人々が太極拳をやっているに違いない。

と踏んでいたら、見事に裏切られた。

 

太極拳らしき動きをしているおじさんたちのグループはいたものの、ほんの数人。

すぐ横のスペースでは、その何倍もの人数と規模で、

ダンスグループが朝夕、活発にステップを踏んでいた。

 

公園を通らないと大通りのバス停に行けないので、朝に夕に目にしていた彼らの姿。

音楽を大きなスピーカー

(ロッカーのようなものがあり、そこに格納されている)で流し、

エアロビのような、歌謡番組のバックダンサーのような、ちょっと不思議な踊りを

楽しそうに踊っている。

 

女性がほとんどだが、中にはおじさん、おじいさんの姿も混じり、微笑ましい。

というのも、子供のお遊戯のような、可愛らしい仕草やステップの踊りだからだ。

日本では、老人が小首を傾げてゆらゆらと踊る姿って、あまり街頭では見れない。

 

踊りの振り付けもだけど、注目ナンバーワンは、皆が来ている服。

この格好でダンスしないでしょう、絶対。といういでたちなのだ。

動きやすいスポーツウェアや運動靴の人はほとんどいなく、

毎日、30度を超える蒸し暑い気候ながら、

化繊のブラウスやらローヒールの革靴、サンダルが主流。

どちらかというと、これから出勤や買い物ですか?という靴や服なのだ。

公園では、他にも、子供用のゴーカートが並べられていたり、

近所の老人風の人が地面に輪投げを用意していたり。

夕方や夜は、トランプや中国将棋の賭けに熱中する男たちと、

その勝負の行く末を見守る男たちの人だかりができる。

夜でも蒸し暑いので、シャツをみぞおちのところで折り返し、

丸い腹を見せている男が多い。

密かにブラトップの着こなしと呼んでいた私は、

いっそのこと胸から下を切ってしまえば良いのに、と思っていたが、

腹を隠すシーンもあるのか、潔くシャツを切っている人は見かけなかった。

 

お茶のことを書こうと思っていたのに、脱線してしまったので、次回

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の旅のハプニングは、台風。

 

厦門から泉州という街に移動しようとする前夜、それはやってきた。

 

雲行きが怪しくなり、雨がパラパラ降ったり止んだりし、

「もう台風は通過した」という情報もあった矢先だった。

 

夜、滞在していたアパートホテルの廊下から隙間風がビュービュー吹き込む。

 

窓の外で、風が夜じゅう吠えまくる。

 

あんなに激しい風の音を聞いたのは、初めてだった。

 

朝になり、早々とチェックアウトして長距離バスの駅に向かおうとしたところ。

 

町中にゴミや建物の破片が散乱し、車も人もまばら。

バス停でバスを待っていると、「バスは止まっている」との情報が。

 

それならば、と大通りまで歩くが、通りには片付けに大わらわの人と、

自家用車しかない。

道は街路樹が倒れている。

折しも、中秋の祭日で、開いている店も元々少ない上、

台風で断水、ところによっては停電に見舞われてしまったため、

あたりを見回しても数えるほどしか店が開いていない。

 

荷物を抱え、文字通り路頭に迷った我らは、

そのうちの一軒にとりあえず、入った。

こちらの人が朝食によくする、出来立ての豆乳や饅頭を売る店だ。

 

バーゲン会場のように人が店先に殺到し、文字通り飛ぶように売れていく。

 

聞けば、台風を見越して、昨日のうちから水を蓄えていたので、

今日も通常通り営業ができたという。

 

お客の大半を占める近所の人々は持ち帰りで買っていくので、

店奥のスペースで飲食する人は案外、少ない。

 

事情を説明し、仕込みをしている饅頭が出来上がるまで、

そのまま店で待たせてもらえることになった。

本当にありがたし。

 

饅頭が出来上がると、お客さんがまた押し寄せて来て、

あっという間に売り切れてしまった。

 

野菜まんと肉まん、普通に食べても本当に美味しい店だった。

人格も味に反映されるんだな。

 

気の良い店主夫婦は、バスなどの交通事情と泉州の情報を親切に調べてくれる。

 

街路樹が倒れたりして、厦門島の交通は飛行機も含め、全て遮断されたらしい。

そして、行き先にしていた泉州は、大雨で道路が川のようになり、

停めてある車が半分以上浸かっている写真を見せてくれた。

 

その時点で、私たちの小旅行は中止決定。

滞在していたホテルに出戻るが、もう泊まれる部屋は無いとのこと。

 

やっとの思いでチェックインしたホテルも、島全体の断水でトイレの水が出ない。。

 

翌朝には復旧したけれど、これほど水のありがたさと人情が

身に沁みたことはなかった。

 

日常生活は、というか、人生は、奇跡で成り立っている。