らぶばなです。アッシュ生存設定で英二はなぜか音信不通中です。英二そっくりなモブが出て来ますのでご注意を。。。続きをお楽しみ頂ければ幸いです。
「君の面影を追って(10)」
「今夜は満月か。。。」
奥村英二として捉えられたリンジ・ホワンは呑気に夜空を見上げていた。拉致された工事現場ではビルの外側に組み立てられた足場とそれを保護するシートが全体的にかかっている。
「へっくしょん! 寒いな。。。」
リンジはアッシュがこの場に来る可能性について考えていた。
(アッシュは来るんだろうか。。。? 俺はリンクスの仲間でもないし、そもそもエイジじゃないんだからな。。。)
半ば諦めムードでリンジはふてくされて床に大人しく転がっていた。その様子を見て、彼をここに連れてきた連中は彼から少し距離を置き、外の様子を気にしていた。
しばらくすると、連中がざわざわと騒ぎ始めた。
「おいっ!」
「アレじゃねぇのか!?」
「よく確認しろ!」
(なんだよ、うるせーな。。。)
ウトウト眠りかけていたリンジは、まぶたをこすりながら声のする方向に顔を向けた。連中がざわつきながら何かを確認している。
「アッシュが来たぞ!いいか油断するな!」
リンジは心臓の鼓動が速くなるのを感じた。驚きとほんの少しの喜びとが混じりあった不思議な気分だった。
「。。。。!!」
(アッシュが来た!!でもなぜ。。。? )
アッシュは約束通り一人でやってきたその理由がわからず、リンジは混乱した。
リンジを捉えた連中は、建設中のビルの入り口でアッシュを出迎えた。
「約束通りきたぞ。あいつはどこだ?」
「すぐ会わせてやる。まずは銃をこっちによこせ。妙な真似をするとあいつを殺す」
「。。。。」
アッシュは銃を放り投げた。
「両手を上げて頭の後ろで組め。それからこっちに来い」
言われた通りにすると、連中はアッシュと共に簡易階段を昇って、リンジの方に近づいてくる。カンカンと音が大きく響いてくるにつれ、リンジは冷や汗が頭から流れてきた。
ランタンの光がアッシュの顔を照らした。彼は警戒するように険しい目つきで周囲の様子を伺っている。そしてリンジと対面し、彼が無事であることが分かると深いため息をついた。
「。。。どうやら無事のようだな」
アッシュはどこか呆れ顔だった。
「アッシュ、どうして。。。?」
戸惑うリンジの前にニヤついた連中の一人が、手首を拘束していた縄を切った。
「ほらよ、ご褒美だ。」
解放されたリンジはアッシュの元に駆け寄った。リンジの顔は怒りで真っ赤になっていた。
「バカじゃねぇのか!? 。。。『本物』はもうすぐここに来るんだぜ? 分かってるのか? 俺のことなんて放っておけばいいのに! エイジが人質になっちまったとでも本当に思ったのか?」
早口で責めたてるリンジに対して、アッシュは無表情のまま冷静に答えた。
「おまえと英二は別の人間だとちゃんと認識している。。。俺はお前を助けに来ただけだ。」
「。。。。どうして? 仲間でもないのに」
気まずいのか、顔は俯いたまま目だけを上に向けてリンジはアッシュを見据えた。
「さあな。。。。たぶん、お前の目が『助け』を求めていたからだと思う」
「。。。。」
男が銃を構えたままアッシュに近づいてきた。アッシュは両手を頭の後ろで組んだままだ。
「おい、アッシュのポケットに武器が入っていないか確認しろ」
別の男がアッシュのデニムジャケットとジーンズを確認し、何も入っていないことを確認して頷いた。
「よし」
「俺は約束通りここに来た。こいつをここから解放しろ」
「アッシュ!俺を助けても意味はない!突然転がり込んできた俺があんたに助けられるだなんて耐えられないよ。。。」
「おまえを放っておいたら英二に怒られそうだ。あいつならきっとお前を助けるだろう」
その言葉を聞いて、リンジの動きが止まった。
「。。。。」
アッシュは自分を囲んでいる連中に視線を向けた。
「俺をどうする気だ?」
リンジに背を向けてアッシュは鋭い視線で敵を睨みつけた。
だがその直後、アッシュの腹部に衝撃が走った。
「。。。ウグッ!!」
至近距離からリンジがアッシュのみぞおちに向けて強烈な膝蹴りをした。息が一瞬できずに思わず咳き込みながらアッシュはその場に崩れてうずくまった。
「あははは! あはははは!」
頭を抱えながら、リンジはまるで酔っ払いのようにフラフラと体を揺らしながら心底可笑しそうに笑っていた。
「あんたって。。。! あんたってやっぱりお人好しだな! 絶対に俺を助けに来ると思ったよ。。。!」
「。。。ゴホッ、ゴホッ! 。。。。リンジ?」
アッシュがリンジを見上げると、見たこともないくらいリンジの表情は歪んでいた。人を蔑むような黒い笑顔だった。
「ひっかかったね、アッシュ。 俺はあいつらの仲間だよ。。。。」
リンジはニヤリと怪しく笑った。
*続*
(あとがき)
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