皆さま、こんにちは!らぶばなです 。アッシュのタイムワープ話の続きです。名前のあるモブ女の子登場しますのでご注意くださいませ
〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜
「俺が叶えたかった望み」
第四話:謎の少女
閻魔大王に与えられたワンルームで俺は荷ほどきを始めた。箱から荷物を取り出してフローリングの上に置く。だがその手はいつの間にか止まっていた。この夢のような世界に俺はまだ戸惑っていた。
俺の望んだものについて考えていた。
(一体俺は何を望んだ?)
この”設定”から、それは英二に関する何かであることは明らかだ。だがどうしても理解できないことがいくつかある。どうして高校生の英二である必要があるのだろうか?
(確かあいつ、大学生って言ってただろ?)
俺の年齢に合わせた設定なのかもしれない。俺はスクールに通いたかったのか? 英二と一緒に?
(。。。どうも、しっくりとこない)
常に生きるか死ぬかの状況だったとはいえ、呑気な高校生活を送ることを望んだとは思えない。それならば、俺の命と引き換えにグリフやショーター、スキップが生き返ることを望む。
閻魔大王は俺の他の望みも知っていたはずだ。だが誰かの生死に関わるものは叶えられないと言った。
「あぁ、わからねー、何かヒントは。。。? こんなんじゃ、あっという間に半年経っちまうぞ?」
俺はヒステリックに叫んだ。すると窓からコンッと何かがぶつかった音がした。
窓を開けると、傘を手に持った英二が俺に向かって笑っていた。どうやら傘の先端で俺の窓を小突いたようだ。
「やぁ、アッシュ。久しぶり」
俺はニヤッと笑って答えた。
「あぁ、英二。1時間ぶりだな」
「。。。荷ほどきは順調かい?」
「整理整頓は苦手だ。全部床にぶちまげてやった」
「うーん、それは休憩が必要だな。」
「おまえがくれた愛読書でも読めと?」
俺は視線を床に転がっている少年サ●デーに向けた。
「それも良いんだけど。。。もし飯食ってないなら、うちで食べていけよ。母さんに君のこと話したら、一緒に夕食どうかって」
「え。。。おまえのうちで?」
「あぁ、簡単なものしかないけど。その後よければ僕の部屋で。。。」
「行く!」
食い気味に俺は返事していた。
「はやっ!」
「スッゲー腹減ってるんだ」
(それに英二の部屋を見てみたい)
ひょっとして俺の願望が「英二の部屋を訪れること」かもしれないしな、と俺は自分自身になぜか言い訳をしていた。
結果として、俺の望みはそうでは無かったようだ。だが俺は奥村家の家族と対面し、きちんと挨拶をして夕食をご馳走になった。
英二の母親は入院している父親に代わってパートが忙しく、ほとんど家を留守にしているようだ。細かい家事は妹と祖母が交代でしているらしい。女ばかりで口やかましいから嫌だと英二は言っていた。俺はもっと口やかましい女どもを知っているから、奥村家の女性たちはとても慎ましくて穏やかに見えた。
驚いたのは食事だ。俺が見たこともないようなヘルシーでまともな飯だった。簡単なもので恥ずかしいと英二の母親は照れていたが、正直言って俺の胃袋的にはパーフェクトだった。豆腐に野菜、新鮮な魚に地元のコメ。。。どれも俺の口にあったので、珍しくライスのお代わりをしてしまった。
高校生の英二は家事など全くしていない様子だったが、のちに英二が俺に作ってくれる食事は母親から自然と受け継いだものなのだろう。メニューがよく似ていた。
そして俺にとって恐怖の納豆も食卓に並んでいたが、それだけは丁寧にお断りした。
***
制服が手元に届くのに1週間かかるということで、俺はシンプルな白のシャツにジーンズ。。。要するにいつもの格好で通学することが許された。
隣に住む英二が自然と俺の世話係として教員の間で認識されるようになり、俺の通学初日は英二と一緒に行くことになった。
ドアを開けると、教室は一瞬にてどよめいた。
「ウオォ。。。!!」
皆俺を見て固まっている。口元を手で押さえて叫ぶのを我慢している女子生徒、あんぐりと口を開けてボーッとしている男子生徒。。。
俺は思わず肘で英二を小突いた。
「オイ、一体なんだ?ここにいる奴らは外国人を見たことがないのか?」
「。。。。はは、みんな君があまりにカッコ良いからびっくりしているのさ。悪気はないよ。」
確かに俺をジロジロ見てはいるが、俺が今までくらっていた嫌な種類の、セクシュアルなものでは無かった。
「ふぅん。。。まぁ、いいけどよ。。。まるでオリの中にいる動物みたいな気分だぜ」
身の危険がない分ずっとマシなのだが、学校生活を送ったことのない俺にとってこれはキツい。慣れない視線に俺はどうして良いのかわからなかった。
「いやぁ、それだけ君は魅力的ってことだよ。僕、君のことを自慢に思うよ!」
何てことないと言った口調で英二は笑って言い切った。
「。。。。。」
英二が俺を自慢に思うと言っただけで、なぜか俺の胸は高揚した。我ながら単純だ。視線には慣れないが、きっとすぐ見飽きるだろうと思うことにした。
担任教師からの説明の後、簡単な自己紹介をしろと言われて俺は日本語で挨拶をした。なぜか俺が日本語を話すたびに生徒たちは「オォっ!」「すげー!俺より上手かも」と反応してくる。
日本での生活に慣れていない俺のために、教師は英二の席のひとつ前に座るよう俺に指示した。
***
「ねぇ、見た?アスランくん!」
「あぁ、イケメンの留学生よね。でも日本語が上手!」
「カッコいいなぁー彼女とかいるのかな?」
休み時間毎に色々な人間が俺を見るためにやってきた。
「おーい、アッシュ。食堂行こうぜ?お昼ご飯持ってきてないだろ?」
英二が声をかけてきた。正直腹は減っていないが、どこかに逃げたい気分だったので丁度よい。
俺たちは食堂にある売店でパンとおにぎりを買い、英二オススメの陸上部員が使用するグラウンドにあるベンチに腰掛けた。
「特等席だな」
「いいだろ?時々僕もここで休憩するよ」
「どんな時に?」
「うーん、ちょっと疲れた時とか、気分が乗らない時とか」
「へー、意外だな。おまえ、いつもニコニコしているし、友達からよく話しかけられてるから。。。」
「。。。試合前とか、ちょっとナーバスになっちゃうんだ。悪気はないのはわかってるけど、先生や友達から”期待”されると辛い時があるよ」
「。。。。」
俺は焼きそばパンを口に頬張りながら、英二の横顔をみた。
グラウンドの遠くを見る英二は何か迷っているような表情だった。
「棒高跳びの選手ってこの学校に何人いるの?」
「5人くらいかな」
「おまえ、関西地区のトップなんだろ? インターハイでトップも狙えるほどの実力だって。。。。隣の席の女子が俺に話しかけてきた。俺は聞いてもいないのに」
「あはは、モテる男は辛いね。トップかぁ。。。どうだろう。関東にすっごい強い選手がいるんだ。僕は一度も彼に勝てたことがない」
「インターハイっていつ?」
「2ヶ月後だよ。」
「。。。俺、絶対に応援する」
「本当?嬉しいな。。。アッシュに応援してもらえると力が湧いてくるよ」
「お前の練習記録はある?動画は?試合はもちろん、練習中のものもあれば全て見せてくれ」
「。。。え、どうしたの?」
「あぁ、ライバルのことについても調べないとな。お前のコーチは誰だ?紹介してくれ」
「。。。アッシュって陸上経験者だっけ?」
「全くない。ルールも知らない」
「。。。。ぷっ!あははは!真面目に言うからてっきり。。。騙されたぁ!」
「え?俺は本気だけど。。。分析してお前を絶対にトップにしてやろうと思って。。。」
「もう、僕がプレッシャーで押しつぶされそうになっていると思ったからそんなこと言ったんだろう?」
「え、だから本気だって。。。」
その時、俺たちの座るベンチに影が差し、誰かが目の前に立っていることに気がついた。ふだんの俺なら気配に気がついただろうが、やはり英二がそばにいると調子が狂う。
「英二くん」
すらりと背が高く、黒髪をポニーテールにした女子生徒だった。肌の色が白く、目は大きくてまっすぐ英二を見つめている。セーラー服がよく似合っていて、スカートの裾から見える足は膝から足首までまっすぐで綺麗なラインだ。
愛らしい顔と綺麗なボディラインをしているので、この田舎ではきっと目立つだろう。
(。。。この子、誰だっけ? クラスメイトではないよな。。。)
「あ。。。」
その子をみて、英二は戸惑うような表情を見せた。
「参ったな。。。見つかったか」
そう言って英二は頭を掻いた。
「またこんな所にいたんだ。また試合のことで悩んでるのね?」
(”また” ?”悩んでる?” 随分英二のことをよく知っていそうな口ぶりだな。。。)
アッシュは無遠慮に真横から女子生徒を観察していた。
「あ、留学生のお友達も一緒だね。ごめんね、邪魔して」
金髪翠目で誰もが羨むほどの美貌のアッシュが横にいるのにその存在にすぐ気づかないはずがない。アッシュはピンときた。この女子は英二に特別な感情を抱いていることを。
そして英二が休憩時間にこのベンチに座る意味を理解している。それだけ他の生徒より英二と近しい距離にあるということを。
「いや。。。」
何だかモヤモヤする気持ちを落ち着かせようとアッシュは深呼吸をした。
「ねぇ、英二くん。困ったことがあるならいつでも。。。何でも話してね。」
「うん。。。ありがとう」
どこか煮え切らない態度の英二をアッシュは不審そうに見ていた。
(嫌なのか?そうじゃないのか?)
その時、女子生徒の友達たちが声をかけてきた。
「リホー!!次、体育でしょ? 更衣室行くよー」
「うん、今行くーまたね、英二くん」
リホ、と呼ばれた彼女は英二に笑顔を見せて手を振って去っていった。
「。。。。ふぅー」
なぜか深いため息をつく英二を見て、俺はちょっと意地悪な気分になった。おいてけぼりをくらったような気持ちだったからだ。
「英二、何で元気なくしてんの?」
わざとニヤニヤしながら聞いてみたが、英二は俺の意図には気づかず地面をみたままオニギリに食いついた。
「いや。。。あ、カツオブシ買いたかったのに梅干し買っちゃった。どうりで酸っぱいわけだ。。。」
独り言のように英二は呟いた。
***
昼食後、俺たちはックラスに戻ってきた。英二がトイレに行っている間、チャンスとばかりに隣の女子がまた俺に話しかけてきた。適当に流していたが、ふと先ほどの女のことが気になった。
「。。。なぁ、リホって知ってる?英二と仲よさそうだったけど」
「え、リホ。。。!? あぁ、英二くんのね」
含みのある言い方に俺はピクッと反応した。
「ーはっ?”英二の” って?」
「えっと。。。色々と噂があって、私もハッキリとは分からないんだけど、英二くんの元カノらしいよ」
「。。。元。。。カノ?」
何かの聞き間違いかと思った。現実の俺は、少し前あいつに’’ガールフレンドはいるのか?”と聞いたらあいつは照れ臭そうに”女友達なら。。。”答えたのだ。ハッキリ問い詰めた訳ではないが、俺は勝手に英二は今までガールフレンドはいたことがないと思い込んでいた。
まさかの言葉に俺は頭を何かで殴られたかのような衝撃を受けた。背中から冷んやりと汗でて気持ちが悪い。隣の女子は俺が日本語を理解していないと思って、余計なことに再度説明してきた。
「あぁ。。。元カノってのは、か・の・じ・ょ! 昔のガールフレンドってこと!」
その言葉に俺の思考と体は完全に硬直した。何かがポキっと折れたような音がしたように思う。
*続*
お読みいただきありがとうございました 。 アッシュ、本気で英二のコーチしようと思っています(笑)めちゃくちゃ分析してくれそうだけど、英二には冗談としかとってもらえないところがかわいそう(涙)
モブ女の子出てきますので、ちょっと苦手だと思われた方ごめんなさいね。でもあまり出しゃばりませんのでご安心を。。。
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