らぶばなです。59丁目のアパートでの思い出をシリーズにして数話お届けしたいと思います。アパートではこんな思い出があったのではないかなという妄想シリーズです。。。 お楽しみ頂ければ幸いです。!
59丁目アパートメントの思い出シリーズ
「アッシュを巡るアパート内バトル」
第五話:2人はライバル
「夕食は何にしようかな? 親子丼。。。それとも唐揚げにサラダか?」
英二は買い物リストを手にし、まだ決めていない今夜のメイン料理を考えていた。一階にあるスーパーに入ろうとした時、背後から声をかけられた。
「Hi! エイジ!」
振り返ると、嬉しそうに手をふるニキータが立っていた。英二もにっこりと笑いかける。
「やぁ、ニキータ。」
最近はスーパーでこの少女とよく出くわす。今週はすでに3度目だ。特に決まった時間に買い物をしているわけではない。ニキータは暇さえあればしょっちゅうここに来ているのだろう。
「今日はバレエのレッスンなの。なのにママったらまだお化粧してるのよ。退屈だからここに来ればエイジに会えるかなって!」
「はははは。。。困ったなぁ。。。」
アッシュと暮らす部屋に部外者を入れるわけにはいかなかった。たとえ小さな少女だとしてもだ。
「エイジ、うちに来てよ」
「ダメだって、ハウスキーパーはしないって言ってるだろう?」
「違うわよ、私たち友達でしょ?なら遊びに来てくれたっていいじゃない。クリスの家がだめなら、うちなら構わないわ!大歓迎よ」
「う、うーん。。。考えて。。。おく。。。」
押しの強さと、キラキラ輝く瞳を見ると どうにも断りづらかった。
「ニキータ、今週はクリス見た?」
英二の質問に、ニキータは少し意外そうな表情を浮かべた。
「え? いや、見てないけど。。。」
「?? そ、そうか。ならいいや」
それほど関心なさそうなニキータの反応に、英二は違和感を感じた。
「エイジ、私も買い物に付き合っていい?」
「僕はいいけど。退屈じゃない?」
「ぜーんぜん!」
ニキータは英二の横にほとんどくっついてきた。
「あははは。。。」
(ときどき、なんか変だと思うことがあるんだよな。。。)
クリスのことが好きなのに、英二はニキータ自らアピールする姿を見たことはなかった。初めて会った時の高圧的な態度から、ニキータはてっきり押して押して何とかアッシュに近づこうとしているのだと思ったが。
買い物を終えた2人がエレベーターホールで待っている時、外出していたアッシュが玄関ホールに向かって歩いてくるのが見えた。
「あっ、クリスが戻ってきたよ!」
ニキータが喜ぶと思い、声かけてあげると彼女は嬉しいどころかむしろ嫌そうな口調で「えっ?」と答えた。
ドアマンと軽く挨拶をしたアッシュはこちらを見た。シンプルなベージュのカーディガンに白いシャツ、デニムという姿なのに彼の見事なスタイルと気品ある立ち振る舞いのためか、まるでハイブランドのモデルのように見えてしまう。
英二は爽やかな笑顔と共に手を振って「おかえり」と言うと、アッシュも穏やかな笑顔で「ただいま」と答えた。
「今日は早かったんだね。夕食、一緒に食べるだろう?」
「あぁ、今夜は何?」
「テリヤキチキンとグリーンサラダはどう?」
「いいな、俺も手伝うよ」
そう言って彼は英二が持っていた買い物袋を軽々と手に取った。
「手伝ってくれるのかい?あ。。。荷物も、持ってくれてありがとう」
アッシュから料理の手伝いを申し出るだなんて珍しいことだった。
「あぁ、そうだ!」
(ニキータのこと忘れてた!クリスと話すチャンスなのに)
悪いことをしたと思い、英二は後ろを振り返った。だがそこには誰もいない。
「あれ?いない。。。」
すぐそばにいたはずの少女の姿が忽然と消えていた。
(恥ずかしいから帰ったのか?それにしても過剰反応だな)
「どうした?」
「いや。。。何でもない」
エレベーターが1階で止まり、中からニキータの母親のロンダが出てきた。
「あら、クリスにエイジ!」
「どうも、こんにちは。いつもエイジがお世話になっています」
”雇い主”らしくアッシュが爽やかな笑顔と共に挨拶をすると、ニキータの母親は少し照れながら「うちの子はどこへ行ったのかしら?またスーパーかしら?」とつぶやきながら店内に入って行った。
「行こう」
「うん」
エレベーターの扉が閉まる瞬間、アッシュは大きな観葉植物の後ろに隠れて様子を伺っていたニキータと目が合った。
「あかんベー!」
英二との時間を邪魔された彼女は顔を真っ赤にさせながら思い切り舌をだした。
フッと含み笑いをしたアッシュは英二の頭頂部に顎を置き、同じように舌をだした。
驚いたように目を見開くニキータが、何か言おうとした瞬間に扉は閉まってしまった。
英二は頭頂部に鈍い痛みを感じた英二は抗議の視線を親友に送った。
「イタタタ。。。何?」
「べっつにぃー、何でもないよーだ」
軽く舌を出しながら、悪ガキっぽい口調でアッシュは答えた。
「何なの、そのこどもっぽい話し方。。。?」
「実際にオニイチャンより”こども”だよ?」
怪しげな微笑みとともにアッシュは答えた。
「ま、まぁそうなんだけどさ。。。」
「お腹すいたー。早くご飯作ってよ」
今度は駄々っ子のような言い方だ。珍しくコロコロと言い方が変わる。
「さっき、手伝うって言ったろ?」
「言ったっけ?覚えてない」
よく言えば英二に甘えている態度なのだが、英二にすればわがまま言い放題のようにも聞こえてしまい、ムッとした彼は買い物袋から小さなかぼちゃを取り出した。
「ハァっ? カボチャも一緒にチキンと煮込んでやる!」
英二はアッシュの顔にかぼちゃを近づけると、彼は視線を逸らし、直立不動でロボットのような口調で答えた。
「。。。ボクも手伝います。だからそれ以上ボクに”それ”を近づけないで」
「よろしい。帰ったら君のエプロンを用意するよ。ノリノリくん付きだけどね」
「俺のエプロン? しかもノリノリ付いてるのかよ!」
呆れるアッシュに英二は手のひらに乗せた小さなかぼちゃをもう一度近づけた。
「何も問題ありません。。。」
「よし、じゃぁ帰ろうぜ!」
「。。。。。わかったよ」
ニコニコと嬉しそうな英二の後を一定の距離を保ったまま、アッシュは彼の背中を追いかけて2人の部屋へと戻った。
*続*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!腹いせにいじわるしたアッシュは、無意識的に英二によって罰をうけたようです。よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
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