2024年4月5日 金曜日

 

 4月5日の朝刊にこの方の死亡記事が載りました。

 

 山本弘さん死去 朝日デジタル

 

 SF小説家で「と学会」初代会長の山本弘さんが亡くなりました。

 68歳でした。

 「まだ若い」と言うのが率直な感想です。

 ご冥福をお祈りします。

 

 山本さんのご著書は全く読んでいません。

 ただし山本さんが会長を務めていた「と学会」の編集した「トンデモ本の世界」シリーズは面白く読みました。

 

 この三冊です。

 

 

 「トンデモ本の世界」

 記念すべきシリーズ第1冊。

 1995年洋泉社より発売。

 1999年1月宝島文庫入り。

 その後2006年洋泉社文庫になりました。

 

 宝島文庫で発売されてすぐに購入。

 とても面白く、再読もしました。

 

 

 

 「トンデモ本の逆襲」

 トンデモ本シリーズ第2弾。

 これも文庫化後すぐに購入しました。

 ただし前著「トンデモ本の世界」に比べるとインパクトはかなり薄れました。

 山本さんが言うように「トンデモ本は異曲同工」なのでそうなります(^^;

 彼自身「インパクトのある本しか買わないように心がけている」とも書いてましたね(^^;

 

 

 「トンデモ超常現象99の真相」

 かつて「学研の科学・学習」でお世話になった学習研究社も超常現象を扱う本を多数出していてそれらを読んで結構信じていたものです。

 いや、だから「認めたくないものだな、若さゆえの過ちと言うものを」と言うではないですか(笑)

 この本はそう言う「若さゆえの過ち」を木っ端みじんに吹き飛ばしてくれました(^-^)

 

 他にも山本弘さん単独名義で「トンデモノストラダムス本の世界」も読みました。

 これは1999年過ぎて価値がなくなったから(笑)処分してしまいました。

 しかしかつては五島勉センセイの「ノストラダムスの大予言」シリーズの最後の方や加治木義博センセイの「真説ノストラダムスの大予言」を読んでいた私には為になる本でした(^^;

 …「若さゆえの過ち」をばらしてど~する(^^;

 

 …と言う次第で「と学会」Jのスタンス、「懐疑主義」「反陰謀論」あるいは「トンデモは笑いのめせ」と言う論調には大いに共感していたものです。

 前述したように私も陰謀論、似非予言、超常現象に親和的だった時代があったのです。

 「認めたくないものだな、若さゆえの過ちと言うものを」(笑)

 オウム真理教事件でこれらの論理のヤバさに警戒心を高めた私には「と学会」シリーズは良い教材でもありました。

 最近は前述の三冊は再読していませんが、「トンデモ超常現象99の真相」は今でも読む価値のある本だと思います。

 

 と言うことでかつては「と学会」会長だった山本弘氏の「トンデモ」に対する姿勢には全面的に賛同だったのです。

 が…、

 数年前から山本さんの考えに全面的に賛同できなくなりました。

 あくまで「全面的に」賛同は出来ないという事。

 概ね賛同はできます。

 

 何が賛同できないのか。

 それは「トンデモは笑いのめせ」と言うスタンスです。

 

 山本さんの「トンデモ」つまり超常現象、陰謀論、似非科学、疑似科学に対するスタンスは「科学的に正しい事を語り続ける」そして「それが分からない奴はどうしてもいる。そう言うやつは笑いのめすしかない」と言うものだと思います。

 そりゃあ「科学的に正しい事を語り続ける」べきでありましょう。

 それは当たり前のことです。

 人間という生命体が存在する限り、いつまでも続けるしかありません。

 

 人間は悲しいのですが、所詮は弱い生き物です。

 理由があって「科学的に正しくない事」を信じざるを得ない人もいます。

 以外とそう言う人の方が普通かもしれません。

 だから「科学的に正しい事を語り続ける」べきなのです。

 

 しかし山本弘さんあるいは彼と「トンデモ」に対するスタンスを同じくする人は意外と「科学的に正しくない事」を信じざるを得ない人が意外と沢山いる事には気づいていないのか、あるいは知っていても必死に目を背けているのではないか、と思ってしまうのです。

 

 と書くと「科学的に正しくない事を信じざるを得ない人たちがそんなに多数いるわけないだろう、お前もトンデモの一人だ!」と言う声が上がりそうです。

 しかし現実にそうとしか思えないのですから仕方ないでしょう。

 

 なぜならこの世には「十字架に磔にされて死んだはずのイエス様が復活した」と言う科学的にあり得ない教えを信じる人が数億はいるのです。

 (一応10数億はいるとされますが、形ばかりの信仰も多くなっているので控えめに書いてあります。)

 私もその一人(^_-)-☆

 他にも神様からお告げされたとされる聖典クルアーンを信じる人、すなわちムスリム、イスラム教を信じる人だって数億はいます。

 しかし神様からクルアーンが伝えられたと言うことは科学的には説明できません。

 でも信じている人が数億もいます。

 

 …と言うと「何でそんなものを信じているんだ!」と「科学的な思考」に囚われた人は言います。

 だから「そんな阿呆な事をする人なんか信じられない!だから笑いのめすのだ!」と山本さんと同じことを言い始める人も出てくるのですね。

 

 しかし山本弘さんや彼らの支持者たちには残念な事ではあるのですが、人間は「科学的に正しい」事を信じたり、実行したりするだけでは生きられないのです。

 人間は「弱い」のです。

 悲しいのですがこれが現実なのです。

 具体的に書くことはしませんが。

 人間は所詮は「弱い」生き物です。

 

 山本さんのように「科学的に正しい」事を信じて「宗教的なもの」を否定する、あるいは「トンデモ」を信じている事は批判すべきではあるけど「トンデモ」を「やむを得ず信じるしかない」くらい弱い人の心理を理解しようともしない人にはこの事が分かってないらしい。

 と言うよりも目を背けているのではないだろうか。

 「人間はどうしようもなく」弱い存在であることが。

 

 アメリカでは今年末に行われる大統領選挙を巡って大変な事になっています。

 いや、アメリカだけでなく世界も巻き込んで。

 

 トランプ前大統領のニュース一覧 NHK

 

  アメリカの前大統領ドナルド・トランプ。

 前回2020年の大統領選挙で民主党のジョー・バイデン氏に(合衆国二人目のカトリック信徒の大統領と言う事は日本では意外と知られていません)敗れて再選できず、今年の大統領選で返り咲きを目指している大富豪。

 彼の大統領時代の政策は?なものが多いですが、それでも熱狂的な支持者がいます。

 2021年に起きたアメリカ連邦議会議事堂乱入事件は熱狂的な支持者が起こしたもの。

 トランプ自身も扇動したと言われます。

 彼の言動も本当にトンデモ。

 何しろ自らが訴追されている裁判を「陰謀」と言ったり、2020年の選挙結果を「盗まれた」と言って結果を認めず、その言動を多くの支持者が支持しているのです。

 と学会流に言えば「トランプ自身はトンデモだし、トランプ支持者はトンデモ集団であると言ってよい」と言われても仕方ない。

 

 ところが頭の痛い事に支持者にいくら正しい事を言っても彼らは信じない。

 それどころか「お前こそ嘘つきだ!」と反論されるなら良い方らしい。

 罵倒されたり、喧嘩になる事も珍しくないらしい。

 ましてやと学会流に「笑いのめす」なんてやったらどうなるか。

 あまり考えたくもないです。

 

 誤解しないでください。

 私はトランプ支持者がトランプを支持することは批判します。

 しかし彼らがどうしてトランプを支持せざるを得ないのか、その理由そして動機を理解する意志は持たないといけないと思います。

 そしてそこから一歩進んで「どうすればトランプ支持者はトランプを支持せずにすむようになるのか」あるいは「トランプ支持者のように陰謀論を支持する人たちが陰謀論を支持するのを止めるようになるのか」を考えるべきであると思っています。

 (なかなか実行できていませんが。)

 つまり「行動のもたらす悪い結果は支持しないし批判すべきである。しかしその行動の動機となる要因あるいは理由については少なくとも理解する意志は持つべきである。」

 そして「その動機が悪い結果に結びつかないようにするにはどうしたらいいのか、そしてその動機を別の良い結果に導くことは可能なのか否か」を必死に考えるべきなのではないでしょうか。

 それが肝心な事だと思います。

 

 山本さん、あるいは「と学会」の「トンデモは笑いのめせ」と言うスタンスは上記の「その動機が悪い結果に結びつかないようにするにはどうしたらいいのか、そしてその動機を別の良い結果に導くことは可能なのか否か」についてあまり考えていないように思います。

 言い方は悪いですが「トンデモは弱者だから切り捨てて良いのだ」と言う傲慢な考えが潜んでいないだろうか。

 さらに言えば「人間は科学的に、合理的に、理性的な考えに基づいてのみ行動すべきであり、それは出来るはずなのだ。それが出来ないとは信じられない。それが出来ないのは弱虫だ。そんな弱虫の事なんか考えなくても良いのだ。笑えば良いのだ」と言う思い上がり。

 山本さんも人間はそんな簡単に割り切れるものではない事ぐらいは分かっていたはずです。

 だって「と学会」メンバーには占い師さんの稗田おんまゆらさんがいましたものね。

 確か彼女は「トンデモ本の逆襲」で笑われたはずですが…(^^;

 

 (※と学会はあくまで 「著者の知識の欠如や妄想により、著者の意図とは異なる楽しみ方ができる」トンデモ本をバードウォッチングのように楽しむ」探求・愛好団体 、との事なので稗田おんまゆらさんもオッケーなんですけどね。)

 

 

 「トンデモ本シリーズ」に書かれていた山本さんの文章には上述のような傲慢さ、あるいは上から目線のようなものをしばしば感じたものです。

 

 山本弘さんの死去の報をきっかけに、かつての山本弘さん、あるいはと学会の支持者としての反省を踏まえての今の「トンデモ」に対する考え方を述べてみました。

 皆様はどうお考えになるでしょうか。