2023年10月1日 日曜日
 東京都美術館「永遠の都ローマ展」に行きました。
 古代ローマファンの私にはとても感激する内容でした(^-^)
 
 

 

 


 

 永遠の都ローマ展 公式

 

 冒頭に書いたように私は古代ローマのファンです。

 だから2009年についに憧れのローマに行った時はもう感激でした。

 何しろ古代ローマの中心地 フォロ・ロマーノの跡地には今も当時の遺構がゴロゴロしてますからね(^-^)

 

 

 2009年撮影した写真です。

 

 

 

 

 圧倒されました。

 この時のローマ旅行で私は古代ローマを源とするヨーロッパ文明の凄さを思い知らされました。

 なぜならこのフォロ・ロマーノは新しくても4世紀までさかのぼりますからね。

 日本ではまだ大和朝廷が出来たばかり?ぐらいです。

 

 

 コロッセオ。

 当時の闘技場。

 皇帝ウェスバシアヌス・ティトゥスの親子が80年に完成。

 80年、つまり1世紀です。

 日本では北九州のミニ国家の奴国が中国の後漢の光武帝に使節を派遣したのが57年です。

 それから間もなくローマでは早くもこんなすごいものを作っていたのです。

 

 蛇足ながら、欧米各国は今でも古代ローマを意識しています。

 米国、フランスの国会の上院は日本語で「元老院」と言いますが、これは古代ローマの議会で貴族が集い、帝政時代も皇帝に助言する機能を担っていた元老院の名前をほぼ踏襲しています。

 ローマの元老院は senatus 、米国上院はsenate  フランスはsenat。

 この米国、フランスで18世紀に起こったアメリカ独立革命、フランス革命はローマ共和制を模範の一つとしたのも事実ですし。

 これ以上言い出すときりがないですが、教養のある人は古代ローマの事をきちんと学んでおいた方が良いでしょう。

 

 と言う事でこの「永遠の都ローマ展」は行きたいと思っていました。

 今回の展覧会はローマのカピトリーノ美術館のコレクションを元にしてます。

 カピトリーノ美術館は2009年の時も行っているはず・・・です。

 証拠はこれ。

 

 

 マルクス・アウレリウス・アントニヌス騎馬像。

 

 ただ、カピトリーノ美術館には行っているはずなのですが、あまり良く覚えていません。

 だから行ったかどうか、ちょっと自信がないのです。

 

 長い前置きになりましたが、展覧会鑑賞日記に入りたいと思います。

 会場着は10時でした。

 今回の展覧会は土日は時間制になっています。

 そのため、それほど混んでおらず、ゆっくり鑑賞できました。

 古代ローマを扱った展覧会は人気が出ると思いますので早めに行かれることをお勧めします。

 

 うっかりしていました。

 古代ローマ、古代ローマ、と書いてしまいましたが、それだけではありません。

 カピトリーノ美術館は歴代ローマ教皇のコレクションを元に構成されています。

 だから当然ルネサンスやバロック時代の絵画も充実しています。

 今回の展覧会ではグイド・レーニなどの作品もあります。

 

 古代ローマ、ルネサンス、バロック絵画などで70数点と少なめですが、とても充実した展覧会だと思います。

 

 展覧会の構成です。

 

 Ⅰ ローマ建国神話の創造

 Ⅱ 古代ローマ帝国の栄光

 Ⅲ 美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想

 Ⅳ 絵画館コレクション

 Ⅴ 芸術の都ローマへの憧れ 空想と現実のあわい

 

 残念ながら撮影は禁止です。

 ただし2点のみ撮影可能です。

 その写真は後ほど掲載します。

 

 カピトリーノの牝狼(複製) ブロンズ オリジナルは前5世紀。

 オリジナルを写した写真は古代ローマ史を取り上げた書籍には良く掲載されています。

 牝狼がローマ建国の祖、ロムルス、レムスの双子に授乳している場面が表されています。

 

 豹と猪の群像 1世紀 大理石

 猪の喉笛に豹が神着いた瞬間を見事にとらえた彫刻です。

 豹、猪ともとても表現が細かく、写実的です。

 

 「イリアス」の石板 前1世紀末 大理石

 ローマの建国神話を表した石板。トロイから脱出してローマ近郊にたどり着き、ローマ建国の祖となったアイネイアスを描いた石板。

 しかしアイネイアスだったら「アエネーイス」じゃないの?と思ったのですが、帰宅後説明を見ると前1世紀となっています。

 納得行きました。

 ローマの大詩人ウェルギリウスが「アエネーイス」を書いたのはアウグストゥスの時代ですからそれより以前の時代に「アエネーイス」を書けるわけがないですね。

 ちょっと補足しますと今ルネサンスの大詩人ダンテ・アリギエーリの「神曲」を10数年ぶりに再読しています。

 

 

 この「神曲」でダンテと地獄・煉獄巡りをするのが誰あろう、ローマの大詩人ウェリギリウスです。

 そんな事情があって上述の事を考えてしまったでした(^^;

 

 アウグストゥスの肖像 1世紀初頭 大理石

 アウグストゥスと分かってしまうくらい良くあるアウグストゥスの顔をしています。

 

 トラヤヌス帝の肖像 2世紀初頭 大理石

 そう言えばトラヤヌスはあまり肖像を見た事がないです。

 五賢帝最高の君主と言われることもあるのですが。

 

 ハドリアヌス帝の肖像 330年頃 大理石

 これもハドリアヌスらしいな、と感じる肖像でした。

 ハドリアヌスは上述のトラヤヌスの縁戚で、トラヤヌスの後継者です。

 

 カラカラ帝の肖像 212~217年 大理石

 「暴君」と言われるカラカラ帝の肖像。

 何だか眉間あたりが怒っているように見えます。

 どうもカラカラの肖像はいかにも暴君らしく見えてしまうんですよね。

 「コイツ、キレてるんじゃないの?」と言う気がしてしまいます(^^;

 

 カピトリーノのヴィーナス 2世紀 大理石

 今回の展覧会の目玉作品です。

 確かにこの像は素晴らしいです。

 手のしぐさで恥じらいを表した女性の姿です。

 

 コンスタンティヌスの巨像の頭部(複製) 石膏にブロンズ

 コンスタンティヌスの巨像の左手(複製)   〃

 オリジナルはいずれも330~337年 ブロンズ

 

 コンスタンティヌスの巨像の左足(複製) ガラス繊維強化プラスティック

 オリジナルは312年 大理石

 

 このコンスタンティヌスの巨像には複製とは言え、ぶったまげました。

 さすが大帝コンスタンティヌス!

 コンスタンティヌス大帝と言えばやはりこれでしょう。

 

 

 2009年撮影したコンスタンティヌスの凱旋門。

 もっとも元は対立皇帝マクセンティウスが制作していたものを変造したものです。

 パリのカルーセル、エトワール両凱旋門はフランス皇帝ナポレオン1世がこの門を真似した作ったものですね。

 そう言えばナポレオンも古代ローマ帝国の皇帝を意識していましたね。

 フランス第1共和政の独裁者になった時も古代ローマ共和国の執政官、すなわちconsulを名乗りましたし。

 

 アンニバレ・カラッチ「悔悛の聖フランチェスコ」1583年頃

 カトリック教会で一番人気のある聖人アッシジの聖フランチェスコ様を描いた作品。

 はい、私の守護聖人様です(^-^)

 十字架を前に手を広げて感激?を表すフランチェスコ様の姿が描かれています。

 実物では気づきませんでしたが、図録の写真をじっくり見ると手に何かが描かれています。

 もしかしたらフランチェスコ様に現れたとされる聖痕なのでしょうか。

 フランチェスコ様はそれだけすごい聖人様なのです。

 私もこの方の名前を頂いたのはちょっとまずかったかな、と思っているくらいでして(^^;

 

 ドメニコ・ティントレント「キリストの鞭打ち」1590年代

 イエス様が十字架に付けられる前に鞭打たれた場面を描いた作品。

 この作品を見て2004年に後悔されたメル・ギブソン監督の映画「パッション」でイエス様が鞭打たれるシーンを思い浮かべました。

 

 グイド・レーニ「ルクレツィア」1640~42年

 バロック期の巨匠、レーニの描いたルクレツィアの肖像。

 ルクレツィアと言えばこれも古代ローマですね。

 彼女の自殺をきっかけに王政ローマの打倒、共和制への移行へとつながったとされています。

 

 ピエトロ・ダ・コルトーナ「聖母子と天使たち」1625~1630年

 聖母子と天使を描いた作品、なおですが、今まで見慣れたのとは違ったタイプの聖母子像です。

 普通はマリア様は正面を向いていますが、こちらのマリア様は横顔です。

 そしてマリア様は何だかごく普通の、ありふれた母親に見えてきます。

 何か注文者に意図があったのでしょうか。

 

 ジョヴァンニ・バティスタ・ピラネージ「トラヤヌス記念柱の正面全景」1774~75年

 ピラネージは日本でも知られた版画家。

 町田市立国際版画美術館にも優れたコレクションがあります。

 ところでこの作品に描かれたトラヤヌス記念柱ですが2009年撮影したのか、自信がありません。

 これかな、と思える写真があるのでそれを掲載します。

 

 

 シルエットになってますし、良く分からないのです。

 

 ドメニコ・コルヴィ「ロムルスとレムスの発見」(ピーテル・パウル・ルーベンスに基づく)1764~1766年

 ローマ建国の祖ロムルス・レムスの双子が見つけ出された場面を描いています。

 しかしどうも右の双子を見つけた少年が羊飼いに見えてしまいました。

 そのためもしかしたらこの作品はルカ福音書に描かれたイエス様の誕生の場面を思い出させるように描かれているのかな?とも思えました。

 

 最後に撮影した2作品の写真を掲載します。

 

 

 

 

 

 

 

 トラヤヌス記念柱の浮彫を石膏で複製したもの。

 複製ですが、浮彫の造形の見事さが良く分かります。

 なお、トラヤヌス記念柱は113年建設されています。

 113年は日本では107年に日本のどこかのある国の師升王が中国の後漢に朝貢して間もない頃。

 いやあ、古代ローマはすごかったのですね。

 

 私の子供の頃の1980~1990年代の日本では「もう欧米に学ぶものは何もない!」なんて豪語する声が結構あったことを覚えています。

 おいおい。

 古代ローマを今も誇りにしている欧米諸国に学ぶものはもう何もないって(^^;

 よくもまあ恥ずかしい事が言えたものです。

 この展覧会を見て一層そう感じました。

 

 鑑賞時間は1時間半だったと思います。

 特設ミュージアムショップで絵葉書4枚、公式図録を買いました。

 

 

 ローマにまた行きたくなる展覧会でした。