“成功体験の呪縛”というジレンマ | Peanuts & Crackerjack

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$ピーナッツとクラッカージャック-BS20100629

長いシーズンも既に折り返し地点を過ぎ
後半戦に突入してきたライオンズですが

首位争いを演じてきた前半戦を支えてきたのは
もちろん安定してイニングを消化してきた先発投手陣。

特に素晴らしい投球を繰り広げてきた帆足さん、
そして岸さんの2人のはたらきは目覚ましく

メディアがさまざまにニックネームをつけるほど
それぞれが順調に連続して勝ち星を重ねてきていました。

そんな2人ですが

交流戦が始まる前後から傾向を研究され
徹底的に対策を講じてこられていました。

そしてそれと前後するようにして
帆足さん、そして岸さんは徐々に喫する失点が増え始め

大量失点となる登板ゲームもちらほらと見られ
勝ち星をなかなか順調に積み重ねられなくなっていきます。

さて、ここで問題提起をしてみたいと思います。

岸さんや帆足さんが今、思うように順調に
勝ち星を積み重ねていけないのは
いったい何に最も起因するものなのか?


考えられるのは

①積み重なってきた疲労から来る制球の乱れ

②各球団の講じてきた対策が功を奏し始めたこと


こういったところになるのでしょうが
ではここでもうひとつ問題提起を。

岸さんや帆足さんは①や②という要因があると
ほんとうに勝ち星を順調に増やしていけないのか?


わたしは答えは明確に“NO”だと思います。

というのもゲームの勝ち方は決して1つではないからです。

前半戦、交流戦が始まる前くらいまでは
帆足さんや岸さんを始めとした先発投手陣が

その素晴らしい制球とスピンとの投球で魅せ
最少失点でイニングをどんどん消化していくと共に

ライオンズ攻撃陣がクリーンアップを中心に
その一振りで必要最低限の得点を奪い

そしてクローザーのシコースキーさんが
最後のアウトを取りドアをキッチリ閉め
ゲームの勝利をもぎ取ってきました。

もちろんこのように
チームの軸を担う中心選手たちがキッチリしごとをこなし

“計算”し“期待”できる勝利を確実に
積み重ねていくことがベストなのですが

では、先発投手たちが様々な理由で
思うように制球できず、そして狙いを絞られ

順調にアウトを重ねていけないときは
チームはそのゲームを勝つことができず
またその先発投手たちには勝ち星はつかないのでしょうか。

当然のことながら答えはNO、ですよね。

そういう時こそゲームの勝敗は味方攻撃陣の得点にすべて委ね
自分は1点でも少なく、という粘りの投球を
時間と集中力とそして相手打者とをかけて展開し

たとえフラフラで安打を集中されたとしても
ここぞの勝負どころの場面でうまく最少失点にまとめ

イニングをのらりくらりと1つ1つ消化していくもの。

しかし、最近の岸さんや帆足さんは

どうも今シーズンここまでの素晴らしい投球で
順調に積み重ねてきた勝ち星、という成功体験が
逆に呪縛のように2人を縛り上げており

どうしてもそういった“理想”の投球に
今でもしゃにむにこだわり続けることが

逆に大量失点を喫する結果になっているのではないか、
そう思っています。

帆足さんで言えば右打者への外角へ
みごとに制球された直球とチェンジアップ、

そして岸さんで言えばどれも一級品のスピンと制球の
直球とカーヴ、チェンジアップ。

この今シーズン前半の素晴らしい“成功体験”がまずあり、

そしてそこに相手チームの様々な対策が追随してきます。

帆足さんで言えば右打者をずらっと並べるのではなく
これまで被打率の高い左打者をもいつも通り起用すること。

岸さんで言えば“緩”もしくは“急”のどちらか、
特にその代名詞ともなったカーヴに狙いを絞ること。

こういった対策に対して帆足さんや岸さんは、
いや正確にはずんどこさんを含めたバッテリーは、ですが

これまでと同じように素晴らしい投球ができるということを
キッチリ証明していきたいと思うがあまりに

今疲労が蓄積しつつあり制球が少しずつ
思うようにならないことも増えてきている時期にも拘らず

今までと同じく自分たちの投球できっちり抑え込むんだと

帆足さんであれば真っ向から過剰な意識を持って
巧打者の多い左打者に慎重さを欠いた投球をしたり

岸さんであればこちらも真っ向から過剰な意識を持って
とにかく直球を、“急”を相手打者に意識付けにいったりし

結局予想もできないほどの大量失点を序盤から喫し
味方攻撃陣が9イニングを使っても返しきれずに

自分には負けがつき、チームは敗戦を喫してしまう。

つまり上述の①制球の乱れ②対策の2つが
自分の負けやチームの敗戦へとつながっていくのは

自分たちが今シーズンこれまでの“成功体験”に縛られ
過剰な意識でもってそれをしゃにむに追求していこうとする、

そんな自分たちの勝手に作り上げた、招いた
泥沼、そして自滅だということなのです。

帆足さんは左打者に対しても苦手にしているわけではなく
ただ右打者に対し今シーズンは武器が増え
素晴らしい投球が可能になった故に

相対的に左打者の被打率のほうがグンと上昇しただけ。

岸さんにしても3球種の緩急の“コンビネーション”は
今でも健在な素晴らしい武器であるのです。

ただ対策に過剰に意識し反応することで
慎重な左打者への配球や緩急のコンビネーションを
自分たちで封印してしまうとともに

ちょうど今制球がこれまでよりもばらつく時期となれば

相手打者、チームの思うように序盤から多くの失点を許し
結果としてその対策は功を奏したということを
自ら証明することになるのです。

今日の初回の岸さんですが

左打者への内角への直球が思うように制球できず
シュート回転し打ちやすい真ん中高めへ何度も入ったのに

それでも2廻り目、3廻り目を考え
“急”を意識付けしようとしゃにむにそれでも投げ続け

いずれも田中選手、稲葉選手、糸井選手に
2長打1単打と痛打され3失点となります。


そこで2回からは前回登板から使いだした
スライダーを主に右打者に使い始めますが

この大きくビハインドを背負った場面で投げるスライダーは
まさに“かわし、逃げる”球種でしかなく

相手の狙い、意識を散らすことはできずに
2回に1点、3回に2点と計6点を失うことになります。

潮崎コーチが

-今日はキレも無く制球も悪い。
悪い時には悪いなりに抑える努力をするのが
ローテーションピッチャーのしごとです。
これも1つの勉強です-


と今日の岸さんを評していましたが

ずんどこさんも含め帆足さん、岸さんは
この時期に如何にして1つ1つ勝ち星を、そして
チームの勝利をもぎ取っていけるか、

手痛い失敗を何度か繰り返しながらも
その中でこれまでの成功体験の呪縛から自らを解き

そのヒントを1つ1つ掴んでいくことが
もっとも求められることだろうと思います。

今はしゃにむにこれまでと同じように
自分の素晴らしい投球で抑えていき連戦連勝でなくとも

制球もばらついているし相手の対策もあることだし
まあOKだとしていいのではないでしょうか。

それよりもゲームの勝ち負けは攻撃陣、



(※↑のヒットはクリさんの素晴らしい、鋭いスウィングの賜物です)

そして守備陣に委ねて






とにかく今、自分は

昨年までの自分、調子の悪い時期の自分は
どうやって何とか勝ち星をもぎ取ってきたかを思い出し

大量失点だけは防ぎながらイニングを1つ1つ重ねていき
チームの勝利の“可能性”が見える程度の投球をすること。

ひとがあれやこれやと口酸っぱくいったとしても
自分を苦しめている原因がこれまでの“成功体験”だけに

誰もが自分自身はどうしてもそれを素直には認めずに
疲労からくる制球の乱れや相手チームの対策など
別の原因に今の自分の苦しい現状を還元するもの、

それをなんとか気づかせてくれるのは
手痛い何度かの失敗の経験だけなのです。

交流戦開始前後から2人に見えはじめた
今シーズンそれまでの成功体験の呪縛と

それに起因する大量失点という大きな失敗の経験の数々。

いつ、どんなきっかけで
岸さんや帆足さんがその呪縛から抜け出し

また順調に勝ち星を積み重ねていけるようになるか。

それはシーズン終盤になり
その本来の制球が、スピンが戻るまでかかるのか、

それともその前に攻撃陣の援護のもと

思うようにアウトがなかなか取れず
思った以上に失点がかさんでも大量失点“だけ”を防ぎ
勝ち星を攻撃陣に感謝しながらも重ねていけるのか。

今後の2人、そして2人とバッテリーを組むずんどこさんが
その深部に潜むほんとうの問題点に気づくことと
それに対する創意工夫をこれからのゲームで魅せてくれること。

これから、2人の登板ゲームではぜひ
この点に注目しながら観戦していきたいですね。



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