続き。

✤「」内の斜めの紫色の文字が久野さんの言葉、その下が私のバレエ的解説です。 

フロントポーズについて。

「軸足の内転筋に力が入ってないのは良くない」

軸足の内転筋に力を入れましょう、というのが久野さんの考え方だとすると、これはバレエと同じようで実は違います。

ロシアとかのバレエダンサーは内転筋に力は入ってません。

脚は完全に振り子になっているので、股関節と距骨しか使ってません。

距骨が振り子の重りです。

内ももラインは流すように使いますが、内転筋を収縮させるように使っているのとはまた違います。

マシンのヒップアダクションのような使い方はしません。


バレエ指導者が「内もも」というやや抽象的な言葉を使うことにも意味があります。

フィジークや筋トレをやっている人は動作を解剖学的に考えることで、筋肉そのものを意識しやすくなり、筋肥大に繋がる面はあると思います。

(最近の鈴木雅さんはボディメイク業界の人も解剖学ベースのトレーニングから卒業しないといけない、機能的でファンクショナルに動く体を目指すべき、と考えているようです)

バレエは脚の筋肉を大きくしたくないので「内転筋に力を入れて」とバレエの先生が言わないことは重要なんです。

「内転筋を使おう」と考えると、はっきりと筋肉を意識してしまうからです。

解剖学的に考えれば考えるほど、踊りとしては駄目です。


「軸足の恥骨を入れ込む」

恥骨で立つ感覚は、股関節で立つ感覚と一緒です。

日本人は鼠径部が引けてるので、恥骨をしっかり入れ込まないと股関節に力が入りません。

股関節に力が入らないと、内転筋にも力は入りません。

久野さんは、ポーズを股関節で考えているところが良いと思います。


「軸足の大腿四頭筋に力が入っているのは良くない、軸足の内転筋、ハムストリングス、お尻で支えると必ず下部腹筋が入る、骨盤後傾にしやすい」

大腿四頭筋に力が入っているのは良くない、これは当然バレエも同じです。


バレエの場合、ハムストリングスとお尻も使いません。

ハムストリングスは内ももの一部だと考えて大事に育ててる人もいますが、違います。

確かにハムストリングスを鍛えれば、内ももラインに近い場所が鍛えられるので簡単に安定させることが出来ますが、バレエ特有のしなやかさ、柔らかさ、軽やかさは出せません。


きちんと股関節で動ける人が強いのはハムストリングスではありません。


バレエは骨盤後傾になった後に、背中が上に行きます。

背中が上に行ったことでやや骨盤は前傾になります。

だから初めは後傾です。

甲出しは、踵を踏んだから甲が出るのと一緒です。


骨盤と胸郭が逆の回転をする感覚です。

タックインと背中が反るのが同時におきるような感覚です。


逆の回転があるから上に行けます。


海外の人は股関節に力が入って骨盤後傾になるから、みぞおちは緩んでます。

だからリンボーダンスも出来ます。

日本人は骨盤後傾にすると、みぞおちにも力が入ります。

呼吸も苦しくなります。


股関節だけに力が入って、みぞおちがリラックスしている人だったら背中だけの力で、股関節から背骨が生えているかのような姿勢になります。

そうなると呼吸は背中側に入るからすごく楽なんです。

声を出すのも歌うのもすごく楽。


この姿勢は「胸を反る」とは考えないほうが良いです。

胸を反る、と考えるとオードリーの春日さんみたくなってしまいます。

春日さんはみぞおちを開いてます。

背中側で操作が出来てません。

それは何故かと言うと背中と肩甲骨が固いからです。


「大腿四頭筋優位に立つと骨盤前傾になりやすい、下部腹筋が伸びちゃう」

これは鼠径部で折れてしまうから、下腹部が抜けます。


続く。