前記事に書いたが、野村證券の新入社員のノルマの１つは
「お金持ちの新規開拓１００件」だ。
当時、長崎支店では、もう１つ別ノルマがあった。
「金曜日は、新人が合コンを開く」
悪しき伝統が脈々と受け継がれていた。
野村證券の新入社員は、縁もゆかりもない地に配属され、
明生寮という独身寮に入る。
僕が入社した時には、当然、２年目、３年目、、の先輩社員が
いたわけだが、彼らも独身だから同じ寮に住んでいた。
会社でも一緒、プライベートでも一緒、これはかなりしんどい。
首都圏ならば、様々な支店の社員が入る大きな寮になるが
地方の場合、寮＝同じ支店のメンバー、となるわけだ。
毎年、２人ずつ新入社員が配属されたから、主に２０台の社員が
１３人で住んでいた。
独身男の関心事と言えば、オンナ。
全員、縁のない地に来ているから、楽しみは限られる。
女性との出会いは限られていたから、合コンは大切な場だ。
先輩社員に「でや？」「仕事はしてるのか？」と言われれば
それは「今週の合コンは、大丈夫だろうな」という意味で、
若手社員にとって新人の価値は「合コン」をやり続けられるか、
だったから、僕らは毎週、必死にセッティングしていた。
野村證券では、新入社員に顧客は与えられない。
ゼロから自分で新規開拓した顧客が、自分の顧客となる。
顧客を抱える先輩社員は、相場が動いている時は注文が入るから
外に出られない。
一方、既存顧客がいない新入社員は、外に出て飛び込み営業するのが
仕事だからある意味自由。
知り合いが一人もいない僕らは、そちらも完全な新規開拓だ。
当時は、スマホも携帯電話もない時代。
その状況で毎週の新規開拓は厳しい。
イエデン（自宅の固定電話）を聞き出さなくてはならないからだ。
営業先の受付嬢に声をかけたり、道で声をかけたり、片っ端から声をかけ
ネタ作りに精を出した。
合コンにも、ハッキリと上下関係がある。
それは年次よりも数字。
〝数字が人格″とは、まさにその通りで、数字を出している人は
年次が下でも立場が強い社風。
とはいえ１９９２年当時、新入社員が数字を出せる環境になく、
僕らに人格はなかった。
とにかく飲まされ、潰され、使われる、という立場だった。
僕もそうだったが、体育会出身者が多い会社だったから、
少し前まで〝神様″といわれる４年生であり、この落差はハンパない。
とはいえ、大学時代に１年生を経験していたから、
下っ端扱いにはすぐに慣れたのだが。。
そんなだったから、先輩との合コンで美味しい目にあずかることは
ほとんどない。
仕事ができる人というのは、そういう場でも力を発揮するわけで
その上、あの上下関係を見せつけられては、女性も僕らは眼中にない。
状況の打破を試みるわけだが、３勝１０敗くらいがやっとだった。
それが分かっていたから、隠し玉は出さなかったが、、。
とはいえ、セッティングされるのを待つだけの先輩たちは、
面倒なことにクオリティにも厳しい。
隠し玉を大切にしたい気持ちと、クオリティの調整が難しかった。
にしても俺、なにしてたんだろ。。
さて、悪いことばかりに思える合コンだが、そうでもない。
これが後々僕を追い込むことにもなり、救うことにもなる。
つづく。
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