○AIが人間を超える日
◇日経新聞 2024.8.11(日)朝刊
26面「科学の扉:サイエンスNext Views」記事より部分要約
万能型の人工知能(AI)、通称「汎用人工知能(AGI)」の登場が近づいているという。あと2~3年、2027年前後には開発に成功すると噂されており、その実現シナリオを基に世界各地で開発競争が熾烈さを増している。
その後は汎用人工知能がAI開発を自動化することで研究開発のペースが急加速し、更に1~数年をかけて、人間の能力をはるかに超える「人工超知能(ASI)」の時代に入ると展望されている。
(部分要約終わり)
汎用人工知能(AGI)の段階で既にほとんどの人間に比肩するか、もしくは多くの分野で勝るほどの性能を示すというのに、2030年前後にはそれを更に凌駕する人工超知能(ASI)の出現が予見されていると。
少し前まで、それはもっと先の話だとされていた。「シンギュラリティ(技術的特異点)」=自律する人工知能が自己改善をくり返し、人間を上回る知性を獲得すること。それは早くて2045年頃の事だと予測されていたが、どっこい数年後にはその域に到達する可能性が高まっている。
早い早い、早過ぎる! 当然ながら人類の技術史の中でも最速の成長速度でもって、世の有りさまを一変させる大革新が起きようとしている。
しかも2~3年とか6~7年なんて、大人ならちょっとぼうっとしてる隙にあっという間に過ぎちゃう時間ですよ?(←体感時間には個人差があります。)
どんどんスケジュールを前倒しして迫ってくるその瞬間に、人間側はうまく対応することができるのか、激変する技術革新の時代にうまく適応していくことができるのか・・?
○人間がゴリラを超える日
◇『〔決定版〕夢をそだてる 科学の伝記120』講談社 2022年
▼山際寿一(やまぎわじゅいち、人類学・霊長類学者)
特別インタビューより引用
〖 ゴリラとすごすなかで学んだこと 〗(p.41)
たとえばゴリラが人間よりすぐれているのは、からだの大きさや力の強さとは関係なく、いつも相手と対等につきあおうという気持ちが強いこと。そしてケンカがはじまれば、かならずなかまが仲裁に入ること。
あああっ!?
「超AIが人間を上回る」とか「人類の偉大な知性がAIに敗れる」とか言う以前に、まだゴリラにすら勝てていなかったッ!!
いや、「ゴリラに “すら”」ってのはゴリラたちに失礼ですね、訂正いたします。
「“たかが” 人間」の猿知恵、種として人間より機能的に優れている生き物なんて幾らでもいる。「知性」といってもその知性が何なのかすら未だ分からず、もて余している人類。私達もまた進化の途上にある。
実際、ニンゲンは猿から進化してきた種ではあるが、類人猿たるゴリラの社会性に学ぶべき点が多々あるのは前掲の引用文から予感されるだろう。
そのゴリラの習性を紹介した山際壽一さんは、日本のゴリラ研究の第一人者。ゴリラの生態や社会性を通して人類の進化や人間社会のあり方などを研究している。
「人間とは何か?」「社会とは何か?」という大きな疑問の答えとなる可能性が、類人猿の行動や社会性の中にあるのではないか、と考えてこの分野に進んだそうだ。
なぜ人間種が地球上でここまで繁栄するに至ったのか? その要因は色々と考えられますが。道具の高度な使用、言葉と文字の発明、文明社会の形成・・etc.。
そこで山際さんは、人間の長所をこのように述べている。
◇前掲『科学の伝記120』同じ項より
山際:
いっぽう人間のすごいところは、「動く自由」「集まる自由」「対話する自由」という、三つの大きな自由をもっていることです。
人間はいろいろな場所へ行き、さまざまな人やものに出会い、対話し、気づくことによって大きく複雑な社会をつくってきました。
(引用終わり)
技術的な革新だけでなく、人同士が移動して集まり、交流し対話し合ってきたことで、力の結合と知の交歓が漸進的に行われてきた。それが人間社会に進歩と向上をもたらしたのだ。
ひるがえって今の人類、この「人間のすごいところ」を自ら手放そうとしているように映る。
「(自分のテリトリー=思想・領土・国益 から)動かず」「(自分たちと異なる人々との対等の会合の場には)集まらず」、したがって「対話せず」。
これでは出会いや対話が生まれようがなく、その後の気づきや和解や共助・協力もない。この分断と排除の流れの先には、「文明社会の崩壊」が待ち受けているだけのように思える。崩壊の入り口は、すぐそこまで迫っているのかもしれない。
つまり現時点の人類は、
「AIに追いつかれるのが先か、ゴリラに追いつくのが先か!」
という激しいデッドヒートのさなかにある(?)。
それも結論はあと数年の内には出てしまう、人類の緊急課題。
どうせAIにはすぐ追いつかれて、瞬く間に抜き去られちゃうんだろうから。せめてそれまでに、ゴリラ社会の繊細な友愛と節度ある社交性には何とか追いついておきたいものである。
・・・・・・。
そういや『僕とロボコ』に出てくるガチゴリラ(某ジャイアンと某ブタゴリラの善性を足して煮込んで濃縮120%にしたような好少年)って、語尾が「ウホ」で頑丈な怪力自慢なんだけど、骨の髄から筋金入りのヒューマニストなんだよねぇ・・・。