音楽始→バンドマン、学校卒業した途端→フリーター『バンドマンの社会学』 | 高校日本史テーマ別人物伝 時々amayadori

高校日本史テーマ別人物伝 時々amayadori

高校日本史レベルの人物を少し詳しく紹介する。なるべく入試にメインで出なさそうな人を中心に。誰もが知る有名人物は、誰もが知っているので省く。 たまに「amazarashiの歌詞、私考」を挟む。


○『新言語秩序  - NEW LOGOS ORDER - 』ってこーゆーことなのかもしれない?

◇ 2018年 amazarashi 武道館ライブ『朗読演奏実験空間「新言語秩序」』



◇NHK「100分de名著」テキスト
 リチャード・ローティ
『偶然性・アイロニー・連帯』



・NHKテキスト(p.30)より

 続く第二章「自己の偶然性」でローティは、原因というものは発見されるのではなく、ことばによって発明されるものである、したがって、「人が自分という存在の原因の根拠をしっかりと辿る唯一の方法は、自分の原因についての物語を新しい言語で語ることなのだ」と述べています。
 (引用終わり)


◇ amazarashi『アオモリオルタナティブ』

〈あっち行って こっち行っても
 君はもうきっと大丈夫
 自分の成り立ちを知ってこそ
 理想の成り行き描けるんだ 〉



○拭いがたい「むなしさ」、生活にまつわる諸相、飛び跳ねて歌い昇華

◇ amazarashi『空っぽの空に潰される』
〈嫌なものを嫌と言ってたら
 こんな今日に流れ着いた
 だから今日は記念日だ
 戦った僕の記念日だ
 ただ一つだけ問題がある
 全くもって虚しい今日だ
 楽しけりゃ笑えばいいんだろ
 悲しい時は泣いたらいいんだろ
 虚しい時はどうすりゃいいの?
 教えて 教えて 〉



◇『「むなしさ」の味わい方』きたやまおさむ(元バンドマン、精神分析学、作家) 岩波新書 2024年



・(p.24~26)より

〖悲しくてやりきれない〗

 「むなしさ」といって、私が最初に思い浮かべるのは、かつて所属していたフォーク・クルセダーズの歌「悲しくてやりきれない」(サトウハチロー作詞、加藤和彦作曲)の一節です。

◇ザ・フォーク・クルセダーズ
 「悲しくてやりきれない」歌詞
(*省略、歌ネットを参照のこと)


 この歌の二番で「むなしさ」という感覚を歌っています。しかし、サトウハチローさんの詩に「救いはないだろうか」とある通り、歌ってみたところで、その思いはなかなか救われないものなのです。ここが「むなしさ」の難しいところで、メロディを付けて歌いあげても、結局、その思いはどうしようもないのです。
 「むなしさ」というものは、救いがないものであり、どうすることもできず、取り返しがつかないものなのです。その「仕方のないこと」もまた、「むなしさ」につながる。空っぽであり、実態として何もないので、それを捕まえてどうにかしようとする試みさえ無駄になってしまいます。だから、「むなしさ」はさらに深まってゆく。


・(p.11~13)より

〖「むなしさ」を理解してもらうことの難しさ〗

 表舞台で人を喜ばせ、熱狂させる一方、その裏には「むなしさ」があります。常に華やかな表舞台に立ち続け、人に感動を与えていて、平凡な日常のない人生というのは、考えられません。常に表には裏があって、そこに「むなしさ」を伴うギャップがあるわけです。
 私が敬愛していた永六輔さんが亡くなった後、こんな歌詞が見つかりました(その後、加藤登紀子さんが曲を付けて、「ともだち あなた 戦う心」という唄になっています。拙著『コブのない駱駝』(岩波現代文庫、2021年)にも掲載)。

 淋しさには耐えられる
 悲しみにも耐えてみよう
 苦しさにも耐えてみて
 耐えて耐えて
 耐えられないのは虚しさ
 虚しさ 空しさ
 虚しさが 耐えられるのは
 ともだち あなた 戦う心

 あんなに多彩な活躍を見せていた永さんが、「耐えられないのは虚しさ」であり「空しさ」だとする歌詞を書き残していました。「むなしさ」が一番、つらい情緒だとうたっています。そのことに、楽しげな表舞台の永さんを記憶している方は、驚かされると思います。
 でも、永さんはその耐えられない情緒を詩(唄)にしました。歌詞にすることで、表現活動として昇華させ、乗り越えようとしたのでしょう。日々、表舞台と裏舞台の落差を感じているからこそ、それをどう乗り越えるかという術(すべ)も身につけていたのです。いや、それは私と同じで、「間」ができたので、そこを埋めるべくしてただ歌が生まれたということなのかもしれません。

 (~中略~)

 「むなしい、むなしい」と言ったところで、その感覚が人に大きな共感を呼び起こすということは、考えにくいのです。でもそれが、言葉で言えて、誰かに伝わったと思うだけでも、感動することがあります。

 (引用終わり)



◇朝日新聞 2024.3.1(金)
 朝刊1面 連載コラム
 鷲田清一「折々のことば」3014

「人類の音楽というものは、その生活の基盤に密着しているのではなく、逆に離陸しなければならないということ」 ・・小泉文夫

【鷲田清一:評注】
 朝鮮半島の雅楽や民謡には三拍子が濃厚に現れる。二足歩行の人間がなぜ三分割リズムで歌うのかを調査した民族音楽学者は、仕事唄が仕事の最中(さなか)でなく、それを回想して歌われていると考えた。そして表現表現の根拠も、言語や身体運動といった生活の近辺ではなく、そこから跳躍する相で問うべきだと。『音楽の根源にあるもの』から。

 (引用終わり)


*私注 「生活の基盤に密着」ではなく、さりとて「日常生活から乖離」でもなく。その境目、「生活→跳躍→歌」での “跳躍=離陸・昇華” の瞬発的位相にこそ音楽表現の源があるのではないか、と。


○思い立ったが吉日、好きになったら命懸け、いつ割れるとも知れない薄氷の上をきょろきょろビクビク勇んで走ってきた!


◇読売新聞 2024.2.25(日)
 朝刊 15.文化面 書評欄

◇『夢と生きる バンドマンの社会学』野村駿(著) 岩波書店

 主に愛知県で活動するバンドマン35人にインタビューを重ね、若者が夢を追うことを選択し、断念していく過程を考察した社会学の新鋭による労作だ。
 夢を追うバンドマンたちは、ライブハウスの仲間らとの共同体に支えられ、売れることや音楽を続けることを目指す。一方で、学校卒業後に正規就職、結婚、家庭を築くという標準的ライフコースとは異なるがゆえに、周囲からの批判や否定にもあう。
 著者は本研究までライブハウス未体験だったというが、多様性がうたわれる時代に、標準が人々に強い葛藤や不安、抑圧をもたらしている現実を鮮やかに浮かび上がらせた。

 (引用終わり)



◇「web岩波 たねをまく」
 著者インタビュー
〖「普通」から外れて夢を追うということーー 〗


◇「週プレNEWS」
 著者インタビュー
〖「成功という夢を追うバンドマン」。彼らへのインタビュー調査で見た “正しい生き方” の呪縛 〗
*「週刊プレイボーイ」サイト内記事、ムフフな広告が表示されたりしますので奥手な方はご注意下さい。



◇『夢と生きる バンドマンの社会学』野村駿(のむらはやお、教育社会学・労働社会学)岩波書店 2023年



◇『夢と生きる バンドマンの社会学』上置出版サイトより

〖この本の内容〗

 人生を賭ける夢に出会えたことの幸福と困難・・・。いつの時代にも少数派ながら「卒業したら就職する」という、普通とされる生き方を選ばない者がいる。夢は諦めに終わるのか、形を変えて続くのか? 数年にわたる二十代から三十代のバンドマンへの貴重なインタビュー調査をもとに現代の「夢追い」のリアルな実態を描き出す。


〖目次〗

 はじめに

 I「夢追いの社会学」の試み

序章 夢追いの社会学に向けて

1 夢追い研究の到達点と課題
2 夢追いを「若者文化と進路形成」の問題として捉える
3 分析枠組み・・「若者文化と進路形成」に向けて
4 調査の概要

第1章 夢追いの戦後史・・若者はいかなる将来の夢を抱いてきたのか

1 将来の夢を跡づける
2 複数のデータをつなぎ合わせる・重ね合わせる
3 将来の夢の変化の全体像・・JGSS-2006による分析
4 夢追い志向か、それとも安定志向か?
5 将来の夢のゆくえ・・現代の夢追いの特徴とは何か

 Ⅱ 夢を追い始める

第2章 来歴と条件・・夢追いの選択に踏み切る

1 夢追いの幕開け・・〈教育〉と〈若者文化〉の関係から
2 音楽活動を始める
3 音楽活動を中心とした進路形成
4 夢追いの選択に踏み切る条件
5 〈教育〉から〈若者文化〉へ・・「適応―離脱モデル」の視点

第3章 フリーターか正社員か・・夢追いに伴う働き方の選択

1 フリーターとして夢を追い始める
2 なぜフリーターを選択するのか
3 なぜフリーターであり続けられるのか
4 そもそもフリーターになるべきなのか・・正社員バンドマンの存在
5 夢を追うためにフリーターになるか、正社員になるか

 Ⅲ 夢を追い続ける

第4章 夢の中身と語り方・・夢を変えて追い続ける

1 バンドマンはいかなる夢を追うのか
2 夢の中身が変わる
3 夢の語り方も変わる
4 夢の変化の背景
5 夢を変えるからこそ夢が追い続けられる

第5章 夢の調整と破綻・・集団で夢を追う方法

1 バンドマンとしての夢追い、バンドとしての夢追い
2 バンドZの来歴
3 互いの夢を共有する
4 解散とその後・・共有された夢の破綻、そして別々の人生へ
5 集団で夢を追い続けることのリアリティ・・「音楽性の違い」とは?

第6章 批判と抵抗・・ライブハウス共同体の機制と陥穽

1 批判されても夢を追い続ける
2 標準的ライフコースとの攻防
3 夢追いは反動的に維持される
4 ライブハウス共同体という準拠集団
5 ライブハウス共同体の生成・波及・限界
6 夢追いはどこまで続くのか

 Ⅳ 夢を諦める

第7章 挫折か納得か・・夢を諦める二つの契機

1 「仲間がどんどんいなくなる」
2 第一の契機・・身体的・精神的問題を抱えて
3 第二の契機・・無視できなくなる将来への不安
4 だれのせい?・・「やりたいこと」と自己責任の共振
5 夢追いの先へ・・標準的ライフコースの呪縛

第8章 夢追いバンドマンのライフヒストリー・・選択・維持・断念のつながり

1 夢追いライフコースをトータルに描く
2 分析の焦点
3 夢追いの選択から維持へ
4 そして夢を諦める
5 夢追いの幕引き

終章 夢追いからみる現代社会

1 本書の知見
2 夢と生きる軌道・・四領域モデルからの考察
3 「正しく生きる」とは何か・・夢を追わせる社会・夢が追えない社会
4 今後の課題と展望

 引用文献
 初出一覧
 おわりに

資料
その1 研究参加者のプロフィール
その2 職業分類の細目(第1章)

 (引用終わり)



◇ amazarashi『名前』
〈音楽を始めてからは
 “バンドマン” と呼ばれたけど
 高校卒業した途端
 “フリーター” って
 どうなのさ? 〉



◇ amazarashi『ひろ』
〈いつも見送る側
 それでも追いかけた
 間に合わなかった夢を憎んだ 〉

〈やりたい事をやり続ける事で
 失う物があるのは
 しょうがないか
 やりたい事も
 分からなくなったら
 その後におよんで
 馬鹿みたいだな 〉

〈ガキみたいって言われた
 無謀だって言われた
 それなら僕も
 捨てたもんじゃないよな
 誰も歩かない道を選んだ
 僕らだから 人の言う事に
 耳を貸す暇はないよな 〉



◇ amazarashi『未来になれなかったあの夜に』
〈夢追い人(びと)とは ともすれば
 社会の孤児(みなしご)だ 〉



◇ amazarashi『街の灯を結ぶ』
〈行こうか戻ろうか
 進退を突きつける
 現実は常にシビアで情もなく
 生活費に世間体に将来の安定に
 全部かけたルーレットは
 やおら回りだし
 「勝ち負けじゃない」とは
 苦し紛れに言うが
 勝たなきゃならぬ理由も
 少なからず背負った 〉

〈始めは青く眩しい夢物語
 多くの少年が未来へと勇み
 へましたって転んだって
 泣いたり笑ったり
 それを青春と呼んで
 社会へ旅立ったり
 次第に脱落者は増える
 一人また一人
 逃れられぬ幼児性
 モラトリアムの闇
 残りわずか数人の馬鹿が
 傷を舐め合い 
 気付けば一番馬鹿な僕が一人

 一人一人消えてく街
 日暮れの駅 迎えは来ない
 勇気も覇気も野心もない
 それでも生きる僕は何? 〉



◇ amazarashi『風に流離い』

〈夢とか希望とか未来は

 今の僕にとっては脅しだ

 その類いの漫画 小説

 映画 音楽は資源ゴミ

 昔は夢もあるにはあった

 その夢が枕元でほざく

「おまえじゃ駄目だ

 この役立たず

 特別と思うなゴミ屑」 〉




◇再び『アオモリオルタナティブ』

〈 くたばる為に生きた訳じゃねえ

 歩いた道程(みちのり)を

 負けや恥と吐き捨てるな

 それこそが君の

 成り立ちなんだから! 〉