HAIKU日本大賞 大賞発表

 

 

   大賞       金剛の杖音亘り水温む

 

                           [ 大阪府池田市 宮地三千男 ]

 

 

(評)「水温む」とは、立春後の寒さが

   ゆるんできて池や沼、川などの水

   から冬の冷たい感じが消えて

   あたたまってきたことを言います。

   明るくなった日ざしに水面が

   きらきらとかがやき水辺の

   植物が芽を伸ばしはじめ水底の

   魚も動き出す。

   春の息吹が触覚、視覚を通じて

   感じられるようになります。

   「金剛の杖」という措辞からは

   「同行二人」と書かれた笠をかぶった

   遍路の姿が思い浮かびます。

   掲句では、金剛杖と「水温む」の

    取り合わせとして一句全体で遍路

   を詠ったところが巧みです。

   「同行二人」の弘法大師のお守り

   を受ける遍路の歩みを自然の

   造化のなかで見事に捉えています。

 

 

 

 

 

 

   大賞   老い二人ゆるりゆるりの桜人

                          [ 和歌山県橋本市 徳永康人 ]

 

(評)たった半月ほどで地に落ちてしまう

   桜とそれに反して長い時を経て

   仲睦まじさという得難い実を得た夫婦。

   それが「ゆるりゆるり」という擬音に

   うまく絡んでいます。

   桜を踏みながら遠くへと歩いていく

   この奥行きある写真も、そのテーマを

   浮かび上がらせていて、手練れが

   つくった写真俳句といえるでしょう。

 

HAIKU日本大賞 大賞発表

 

 

大賞      掌ほどの陽を得て冬すみれ

 

                       [ 徳島県板野郡 佐藤幸子 ]

 

(評)慈愛に満ちた一句です。「掌ほどの陽を得て」という措辞は、可憐に咲く冬すみれにたいして、まるで天上からやさしくスポットライトが当てられているような光景です。「掌」は「たなごころ」と言い、手のひらのことを表わします。小さな冬の日向の比喩として、掲句では用いられています。また、この「掌」は誰のものだろうかと想像がふくらみます。神仏の掌と考える方もあるでしょう。造化をつかさどる大きな存在を思い描いてもいいでしょう。宇宙と比して極小の冬すみれのいのちのかがやきを、うつくしく言いとめた作品です。この光景に出くわした作者のこころにも、あたたかい一条の光が差し込んだことでしょう。

 

 

HAIKU日本冬の写真俳句大賞結果発表

 

 

 

大賞   チェンバロの思惟の吐息か枯かづら

             〔神奈川県横浜市   楽ハイシャ〕

    

 

 

(評)びっしりと張り巡らされたかづらが複雑にいろんな悩みを抱えているようにも思えます。それとも誰も弾いたことがない楽譜でしょうか。長い思惟の時を抜けて、どんな響きを醸すのか、それはきっとため息にも命の賛歌にも聞こえるのでしょう。チェンバロが写っていないにも関わらず、情景だけでなく音まで想像させる、これぞ写真俳句という一作です。

 

俳句界12月号TOPICSに大賞作品など結果掲載!

 

株式会社文學の森発行の月刊誌「俳句界」12月号のTOPICSに大賞、特選、準特選、

写真俳句大賞の作品と作者名が掲載されています。是非、ご覧ください。

 

HAIKU日本2020夏の句大賞 

 腹筋百回百回分の夏の空    

                     大阪府大阪市 清島久門

 

特選

 社会的距離バスを待つ夏帽子  

                    神奈川県横浜市 竹澤聡

 赤牛のまつ毛を洗う夕立かな   

                    奈良県奈良市  堀ノ内和夫

 

準特選

 踝はわが吃水線海開き      

                   東京都青梅市  渡部洋一

 生きすぎていますと端居高笑い  

                    徳島県板野郡  秋月秀月

 背泳ぎの眼には成層圏の青   

                   愛媛県松山市   秋本哲

 

HAIKU日本2020写真俳句大賞

 向日葵の海に迷いて眼が回り  

                   神奈川県平塚市 八十日目

 

公募ガイド12月号PICK UP!

一般俳句と写真俳句の結果が掲載されています。

写真俳句は特選と次点が全ページで

カラー掲載されています。是非、ご覧ください。

HAIKU日本秋の句大賞 募集中!

 

澄んだ空、さわやかな風、心地よい虫の音など秋を五感で感じ取りましょう!

俳人たちは美しい季語を紡ぎ出しています。「秋の季語」で十七音に詠み上げましょう。

奥深い日本の秋をご一緒に楽しみましょう。
「秋の季語」の俳句を募集致します。初めての皆様のご応募もお待ちしています!


応募締切

令和2年11月30日(月)(封書の場合は当日消印有効)
結果発表
令和2年12月27日(日)(当サイト上で発表)
 

 
・大賞1点  賞金3万円、賞状と作品の短冊、阿波藍染の掛け軸
・特選2点  賞金1万円、賞状と作品の短冊、阿波藍染の掛け軸
・準特選3点 賞状と作品の短冊、阿波藍染の掛け軸
※記念品について詳しくはこちら

投句料
 
3句以内1組につき投句料1,000円が必要です(複数応募可)
題材 秋の季語

  • HAIKU日本大賞は特定非営利活動法人HAIKU日本が主催するものです。
  • 投句に際して、正会員・賛助会員である必要はありません。資格不問。
  • 応募作品は未発表のものに限ります。応募後の著作権は
  • 特定非営利活動法人HAIKU日本に帰属し、返却はいたしません。

◆郵送での応募方法

  1. 原稿用紙またはA4用紙などに、3句以内1組(複数応募可)の俳句と、
  2. 俳号(俳号を記入いただくと審査結果発表時に俳号で公開されます。本名非公開)
  3. お名前、フリガナ、団体名、お電話番号、ご住所、年齢、性別をご記入ください。
  4. 1組につき投句料 1,000円が必要です。
    郵便定額小為替1,000円(交換手数料100円)を郵便局でご購入いただき
  5. 上記の原稿用紙とともに封書に入れ、84円切手を貼付して以下へお送りください。

    ※現金書留で現金と原稿をお送りいただくこともできますが、切手代が519円かかります

    〒770-0028 徳島市佐古八番町5-19
    特定非営利活動法人HAIKU日本 投句受付係

 

◆当ホームページからの応募方法

  1. 以下の投句メールフォームページに必要事項を記入後、送信してください。
  2. 1組につき投句料 1,000円が必要です。投稿後、投句料のお支払方法を
  3. 記載したメールが自動送信されますので、応募締め切り日までに
  4. 投句料1,000円を郵便定額小為替1,000円または現金書留
  5. HAIKU日本 投句受付係までお送りください(当日消印有効)。
  6. 投句料の支払いをもって受付完了とさせていただきます。

    ※ネットバンキングによる送金も可能です。
    「ゆうちょ口座 総合:16220-16681371(普通:六二八店 1668137)」までお送りください。
    投句と送金がインターネット上や 携帯電話上で同時に完結いたしますので是非、ご利用ください。

投句メールフォームはこちら

 

 

HAIKU日本 写真俳句・秋 募集中!

写真俳句を募集しています。スマホやパソコン

  携帯電話から気軽に投稿いただけます。

 

*各季節ごとに写真俳句大賞1点、賞金3万円と賞状、記念品

   (天然藍染めの掛け軸、作品の短冊)を贈呈いたします。

 

*3句以内1組ごとに投句料1,000円が必要です(何組でも応募可)

 

写真は必ずご自身で撮影してください。

  写真俳句大賞は写真俳句連絡協議会

  (森村誠一名誉会長、中村廣幸会長)が担当いたします

 


募集期間と結果発表、応募規定はHAIKU日本大賞▲に準じます。

*応募方法は、PC&スマホか、もしくはガラケーかによって

  投稿方法が異なります。以下のページをご覧いただき、ご応募ください。

 

 

      PC・スマホからの写真俳句投稿はこちら

      ガラケーからの写真俳句投稿はこちら

 

 

大賞      

 

腹筋百回百回分の夏の空      [ 大阪府大阪市 清島久門 ]

 

(評)「腹筋百回」は八音です。字余りによる破調の句ですが、一句の中に三つある促音(小さい「つ」)によって、勢いとリズムが生まれています。また、「百回」という単語が繰り返し出てきています。繰り返しはリフレインという技法で、印象を強めたり、俳句のリズムをなめらかにしたりする効果があります。室内で腹筋をしていると、体を起こしたときに窓から夏空が見えたのでしょう。一回一回に気持ちを込めて集中して腹筋をしている様子がうかがえます。充実した達成感が伝わってきます。

 

特選 

社会的距離バスを待つ夏帽子   [神奈川県横浜市 竹澤聡]

 

(評)子どもたちのグループがきちんとコロナ対応をしているのを見ると微笑ましい光景ながら、こんな世の中になってしまったという実感をも伴ってきます。まだまだ変わるのか、先は見えない。コロナ禍が変えてしまった常識と世情を淡々と詠んだ一句。季語を「夏帽子」として視覚にも鮮やかです。戸惑ったまま春から夏へ突入していったコロナ禍の今だからこそ詠める味のある俳句です。

 

 

赤牛のまつ毛を洗う夕立かな   [ 奈良県奈良市 堀ノ内和夫 ]

 

(評)赤牛は日本固有の肉牛の品種です。季語「夕立」は激しい雨と共にその後の雨上がりを想像させ、洗い尽くされたかのような眩しく美しい光景が広がります。野山に生気が蘇り、草を食む赤牛のまつ毛は金色やオレンジ色に輝くことでしょう。「赤牛のまつ毛」に焦点を当てた観察眼の優れた一句となっています。

 

準特選

踝はわが吃水線海開き      [ 東京都青梅市 渡部洋一 ]

 

(評)「吃水線」は船が水上に浮かんでいる時の水面と船体との境界線のこと。踝(くるぶし)までしか浸かることができないという作者。水がまだ冷たくて、波に誘われるままに足を浸しているのでしょう。足元だけで海開きという嬉しい季節を感じて満足な景が浮かびます。素直な実感が伝わってきます。

 

 

生きすぎていますと端居高笑い   [ 徳島県板野郡 秋月秀月 ]

 

(評)縁側でのほっとして心落ち着いたひととき。「端居」という季語の持つ穏やかさと「高笑い」の取り合わせが楽しいですね。「生きすぎています」というそんな心境は、誰もが味わえるものではありません。楽しそうな笑い声が聞こえてきます。夏の夕、来し方と行く末を思いつつ詠んだ秀句。

 

 

背泳ぎの眼には成層圏の青     [ 愛媛県松山市  秋本哲 ]

 

(評)川や海で夏の空を見上げながら進む背泳ぎ。伸びやかな爽快感が伝わってくる一句。背泳ぎの眼は、「成層圏の青」を捉えています。成層圏にも届きそうな湧き上がるような思いは未来に向かっているのでしょうか。五・三・九の破調が若さと精悍さを呼び込み、その姿が夏空に眩しい。

 

秀逸句

麦秋の真つ只中の無人駅    [ 栃木県宇都宮市 平野暢月 ]

 

(評)「麦秋」は麦が実り黄熟する初夏の頃。「無人駅」を囲む黄金色の麦の穂と緑の山々がコントラストを作り出します。「無人駅」は句の着地点としても、「麦秋」の取り合わせとしても存在感を放っています。こんな駅に立ち寄れば爽やかな風の中、昔ながらの素朴な風景画のような世界に陶酔させられることでしょう。

 

 

羅で通す漢となりにけり     [ 埼玉県加須市 佐藤貴白草 ]

 

 

(評)薄絹や麻などで作った一重の和服が「羅(うすもの)」。盛夏に羽織る軽い装いです。「羅で通す」に背筋のすっと伸びた気骨ある風格が感じられ「男」ではなく「漢」と詠まれています。一本筋の通った一句一章がその意思を伝えており、「なりにけり」と言い切ったところも凛としていて作者の日常が見えてきます。

 

 

強かな蟻の足跡八合目      [ 東京都足立区 宮城六郷 ]

 

 

(評)高く険しい山の八合目で自分の足元に見つけた蟻。その「蟻」に「強かな」存在感を作者は感じています。作者の素直な感性にとても好感が持てます。聳え立つ山と小さな蟻の対比が鮮やかです。作者がやっと辿り着いた「八合目」の「強かな蟻の足跡」には、何か人生訓のようなものが隠されているかのようにも思えます。

 

 

眩しきはかくも灼けたる滑り台 [ 東京都八王子市 村上ヤチ代 ]

 

(評)「灼けたる」が夏の季語で真夏の直射日光に晒されていることです。最近は恐ろしい勢いで気象変動が起こり、気温は年々上昇しています。公園の「滑り台」の斜面がピカピカに光っていて、昭和からの使い古された鉄製の滑り台を想像します。灼熱の太陽の元で光を放つ滑り台は、作者のこれまでを象徴しているかのようでもあり、言い得て妙な境涯俳句としての魅力もあります。

 

曲がりつつ育つ胡瓜の自己主張   [ 神奈川県相模原市 

                            藤田ミチ子 ]

(評)「曲がりつつ」と接続助詞がうまく使われています。胡瓜は水分や肥料を適正管理することによって真っ直ぐに育てられ食卓に届きます。最近では、スローライフの自給自足が注目を集め、家庭菜園を楽しんでいる方も多いでしょう。「曲がりつつ」育ち個性を発揮しながら「自己主張」する胡瓜にも、しっかりと愛情を注ぐ作者の日常が詠み込まれています。

 

 

「新たな日常」知らずや蛇脱げり     [ 石川県金沢市 玲 ]

 

(評)「蛇の衣」や「蛇皮を脱ぐ」ではなく「蛇脱げり」と変化させたのが作者の個性。殻を脱ぎ終えた蛇が目の前にいるという面白さがあります。蛇が殻を脱いでみると、感染しないさせないの「新たな日常」が始まっており人々は窮屈さの中で息を潜めていました。コロナ禍の世の中に気づいて驚いている蛇がいるとの発想もユニークです。 

 

 

水溜り空を跨げば夏始   [ 山梨県南アルプス市 小林克生 ]

 

 

(評)季語「夏始」は、新緑が美しく吹く風も清々しい初夏の頃です。太陽のきらめきの中、「水溜り」には雨上がりの青空がくっきりと映り込んでいます。「水溜りを跨ぐ」ではなく「空を跨げば」と詠んだところに躍動感が感じられて、「夏始」の季語ととてもよく響き合っています。この動作が生き生きと伝わってくるリズミカルで心地よい俳句です。

 

 

黒揚羽舞う里山は音も無く   [ 長野県南佐久郡 高見沢弘美 ]

  

(評)“黒衣の天使”とも呼ばれる「黒揚羽」のイメージは気高さと儚さの同居。人影のない里山と空を舞う黒揚羽の静と動を詠んだ一句。「音も無く」がもう人のいない里山に現れた「黒揚羽」をクローズアップさせます。過疎によって日本の原風景が消えていきます。里山を縫うように飛ぶ黒揚羽の優雅な姿が、一層静寂を深くさせています。 

 

 

来ぬ人を許してしまふ水中花    [ 大阪府大阪市 清島久門 ]

 

 

(評)女性の句かと思いきや作者は男性。この句は、空想でも写実でもなく内面の具象です。ガラス瓶を軽く揺らすと水の中を漂う花。いつも受け身の「水中花」と「来ぬ人」を待つ受け身の恋。その心情を「水中花」に預けた一句。真実と嘘を併せ持つかのような「水中花」と「許してしまふ」の措辞とがよく似合っています。

 

 

大西日キッチンで肉解凍す     [ 大阪府大阪市 三木節子 ]

 

(評)「大西日」が実によく効いています。この作業に何か緊張感を漂わせます。「西日中」や「西日射す」などのじんわりとした季語ではこの迫力は出ないでしょう。じりじりと暑い夏の夕刻、「大西日」で肉を急速解凍させつつ、それを調理する作者の手際の良さを表わしています。キッチンを忙しく立ち回る作者の姿が見えてきます。

 

 

亡き母に愚痴をこぼして薄暑かな  [ 大阪府堺市 伊藤治美 ]

 

(評)「薄暑」は夏の始めの一番気候の良い時で、涼風や木陰がほしくなる気持ちの動き始める頃とされます。夏へと移る季節の中「亡き母」を想うひととき。作者の愚痴を仕方ないねとやさしく聞き流してくれることでしょう。人は過ぎ去ってしまったことをあれこれと悩むものですが、亡き母になら些細な事でも甘えることができますね。

 

 

慟哭の如そんなに泣くな梅雨の山  [ 大阪府枚方市 妃斗翠 ]

 

(評)「慟哭」は大声をあげて泣き悲しむこと。今年の梅雨はそんな梅雨であったかと思います。しっとりと降る梅雨のイメージとは様相が一変しています。豪雨で河川は氾濫し、山は耐え切れず土砂崩れを起こす。自然の脅威に為す術もなく息を潜める人間の心の叫びとも取れる一句です。「そんなに泣くな」という呼び掛けが切実です。

 

 

検温に始まる日々や七変化           

                     [兵庫県尼崎市

                               大沼遊山]

(評)「検温に始まる」の措辞が今の世情を語っています。手指消毒や検温が必須となり、そうした日常の変化に人は速やかに順応しつつ生きています。紫陽花は日毎に花の色が変わることから「七変化」と呼ばれます。「七変化」と詠むことで社会性を帯びた一句になったといえます。コロナへの対応で日々言動の変わる政治家らへの皮肉も交じっているのでしょうか。

 

 

ハイ!チーズ線香花火消えぬ間に   [ 兵庫県西宮市 

                               幸野蒲公英 ]  

(評)「ハイ!チーズ」と誰が言い始めたのでしょう。笑顔を写す定番の言葉になっていますが、これを俳句に仕上げた作者も素晴らしい。夏の夜のひとこまが映像としてくっきりと見えます。「消えぬ間に」が、人の運命にも似てどこか切ないですね。楽しくてほろ苦く、儚さゆえに美しい「線香花火」の一景です。深い余情を感じさせる一句。

 

 

短調の五月雨響くマンホール       [ 奈良県奈良市 緑風 ]

 

(評)「五月雨」は田植の頃の雨で、農家にとってはありがたい雨です。けれど降り続く雨は歓迎されないことも多いでしょう。「短調の五月雨響く」と雨音が寂しく作者の耳に届きます。「短調の」と音を聴かせ、何処からかというと「マンホール」から。「マンホール」の下五によって響いてくる雨音が臨場感を増してきます。

 

 

巣籠りの戸棚の隅の梅酒かな    [ 広島県尾道市 広尾健伸 ]

 

(評)“Go To トラベル”に乗ることなく「巣籠り」を続ける作者。楽しみは日々琥珀色に染まっていく「梅酒」なのでしょう。飲み頃となる日を心待ちにしながら、家に籠る一人の人間像が浮かびます。自分ではどうにもならないという心境を詠んだ作者のペーソスが滲み出た一句。

 

 

山雀や母に別れを告ぐがごと    [ 徳島県徳島市 深山風蒲 ]

 

(評)「山雀(やまがら)」は、愛らしい鳥で高音の鳴き声が特徴です。野鳥の中ではあまり人を恐れない鳥なので、よく母の庭にやってきていたのでしょう。さまざまな鳴き声で仲間に合図を送りますが、その鳴き声を作者は「母に別れを告ぐがごと」と詠んでいるので作者の母への心情と重なっているのかもしれません。

 

 

ドキュメント映画の和訳原爆忌 [ 香川県高松市 もりおかちか ]

 

(評)重厚な一句は、立場の違う国とその背景をも語っているかのような生々しさがあります。描き方は違っても悲惨さには変わりはなく、アメリカも日本もお互いに過去の暗い歴史を経験しています。二度と過ちを繰り返してはなりません。75年目の原爆忌に歴史の真実を収録したシーンが目の前に繰り広げられています。平和を願わずにはいられない作者の願いが届いてきます。

 

 

花樗村を出てゆく霊柩車       [ 大分県国東市 吾亦紅 ]

 

(評)「花樗(はなおうち)」は、淡い紫色の小さな花を房のように咲かせます。遠目には紫の靄がかかったような佇まいです。「霊柩車」との取り合わせによって、この句に独特の雰囲気を醸し出しています。心の内を抑え込んだ詩情豊かな作品。村を出ていく「霊柩車」を見送るかのような「花樗」の姿が情景を一層哀しくさせる一句です。

 

           俳句は世界最短の文芸です。    

     簡単に始められ奥が深い!

     一緒に楽しみましょう。

 

 

 

 

覚えておきたい有名な俳句~

Huruikeya Kawazu Tobikomu Mizunooto. Basyou
古池や蛙飛こむ水の音   芭蕉

Oh, the old pond. I hear the sound of a frog dive. ~Bashou Matsuo ~
この俳句は、最も有名な俳句のひとつで誰もが知っている。

古池にたたずんでいると、突然、蛙が飛び込んだ。

その水の音が、あたりの静けさを破ったが、

またすぐに元の静けさに戻った。

本当に静かだ。日本人の宝ともいえる一句。    季語:蛙(春)

 

Sizukesaya iwani simiiru seminokoe. Basyou
閑さや岩にしみ入蝉の声  芭蕉

Silence! Voice of cicadas soak into the rock. ~Bashou Matsuo~
あたりは、ひっそりと静まって物音ひとつしない。

その静かさの中で聞く蝉の声は岩にしみ入るように感じられた。

本来は賑やかな蝉の声だが、かえって さびしく物静かな情景だ。

                                                                季語:蝉の声(夏)

 

Kakikueba kanega narunari Horyuzi. Siki
柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺  子規

Eating a fruit of persimmon, the gong starts to ring from Horyuji Temple. ~Shiki Masaoka~
法隆寺は紀元7世紀に奈良に建立された有名なお寺。

法隆寺の門前のお茶屋で、柿を食べていると鐘の音が響いた。

あたりの静けさの中で、秋ののどかさが身に染みた。

古都の秋の風情を詠んだ俳句。                    季語:柿(秋)

 

Meniwaaoba yamahototogisu hatugatsuo. Sodou
目には青葉山ほととぎすはつ松魚  素堂

Green leaves in my eyes, a cuckoo in the mountain and the first bonito on my table. ~Sodou Yamaguchi~
初夏の俳句。木の葉は新緑。ホトトギスが山で鳴き始めた。 

目と耳の次は食卓に上った初鰹。初鰹の旨さは格別だが、

逆にこの句が初鰹の人気を不動のものにしたのかもしれない。           

                                                                 季語:青葉(夏)

 

Yasegaeru makeruna issa koreniari. Issa
痩蛙まけるな一茶是にあり  一茶

A thin frog! Don’t lose this wrestling game .Here I am, Issa.  ~Issa Kobayashi~
蛙がけんかをしている。痩せた蛙よ、頑張れよ。これは目の前の出来事でしょうか。

きっと、一茶の心象風景でしょう。おれがここについているぞ。

一茶は、蛙を自分に見立てて、励ましています。

                                                                 季語:蛙(春) 

 

Nanohanaya tsukiwa higasini hiwa nisini. Buson
菜の花や月は東に日は西に  蕪村

Rape blossoms! The moon is to the east and the sun is to the west.  ~Buson Yosano~
菜の花畑が一面に広がっていて、今まさに春の一日が暮れようとしている。

月が東の空に上り、日は西の空に沈もうとしている。この雄大な光景を、地球は繰り返しているのだ。

まさに、宇宙的なスケールを感じさせる句。 

                                                              季語:菜の花(春)

 

Huru yukiya meiziwa tooku narinikeri. Kusatao
降る雪や明治は遠くなりにけり   草田男

Falling snow! A last period of Meiji has passed very far. ~Kusatao Nakamura~
明治は1868年に始まった。日本が開国に踏み切った年だ。

 雪を見ながら過ぎ去った明治を作者は思った。

新しい時代にどのような感慨を持って、この俳句を口にしたのだろうか。

                                                                  季語:雪(冬)

Natsukusaya tsuwamonodomoga yumeno ato. Bashou
夏草や兵共がゆめの跡  芭蕉

Summer weeds, here is a mark of the soldiers’ dream. ~Bashou Matsuo~.
芭蕉は、夏草の中にいる。夏草が、かつてこの地が戦場だったように思わせる。

武士たちが、この地で戦ったのだろうか。まるで勇ましい武士たちの夢の跡のようだ。

人間が築き上げたものは、いつか自然に帰るだけなのだ。

                                                                   季語:夏草(夏)

 

Waretokite asobeya oyano nai suzume. Issa
我と来て遊べや親のない雀  一茶

Come with me and play with me, a sparrow separated from the parents.  ~Issa Kobayashi~「一茶の句は、現代人の感情にもストレートに響く。雀は、彼の愛するキャラクターのひとつだ。

                                                                季語:雀の子(春)

 

Matsushimaya aa Matsushimaya Matsushimaya. Bashou &Bou
松島やああ松島や松島や  芭蕉&田原坊

Matsushima! Oh, Matsushima. Matsushima! ~Bashou Matsuo & Bou Tahara~
松島の絶景に圧倒され、ついに俳句を作れなかったというエピソードが芭蕉の

『おくのほそ道』の中にある。芭蕉は、松島の言葉を繰り返すよりほかになかったというもの。

多くの日本人が芭蕉の俳句と信じ込んでいるが、定かではない。

                                                                季語:なし(無季語)