ブラジル丸は次の停泊する港にベレンに向かった。
そこはアマゾン川の河口にある港「研修所から一緒だった沢山の友達が降りていく」
「いやだな、行きたくない」どんどん船が進むが、気持は反対なっていく。
「着くな」弱虫な自分の気持ちとは関係なく、アマゾンに向かっている。
小雨の降る中、ベレンに着いた。
港が浅瀬の為に、沖にしか停泊出来ない港だ。
日本からずっと一緒だった仲間達は「ここでお別れ」
研修所で喧嘩した奴、ホノルルで一晩夜を明かした人、ハリウッドに一緒に行った人。
「皆ここで降りて行く」「寂しさが、胸一杯にこみ上げてきた」
タグボートのような船で、ピストン輸送で人を送って行いく。
「がんばれよ! 元気でな!」何度も何度も繰り返して怒鳴った。
全ての人が降りたら、船は無情に動き出した。
岸の向こうには、ジャングルの様な茂みが見える。
「降りた仲間達は、今日からこの未開発地との戦い」
「自分の目には、売られて行く様にしか見えない」
「どうして、移民なんかしようと思ったのかな」とてつもない不安が襲ってきた。
次の港がリオデジャネイロ。そして、最後の港がサントス。
そこで自分も降りる「本当に行くのがいやになって来た」
「でも、後には引けない、行くしかない」
アマゾンの地で降りた多くの仲間とは、ここ別れて以来会ったことがない。