映画「OUT 1」についてのメモ | Carlos Danger Is Here

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ヘイナーウ!

ヘイナーウ。ジャック・リベットの上映時間十三時間という大長編、「OUT 1」を再見したのですが、そのときに思ったことを、三回目に見る時のために、ここにメモしておきます。んで、ネタバレをたくさんやります。

 

まず最初に、英語版WIKIPEDIAにあるこの映画のあらすじは、ピントがずれていると思う。秘密結社「13」は、機能していなくて陰謀に絡んでいない、というへんね。

 

映画の舞台は1970年らしいが、キャラの多くは1960年代からの政治活動に参加しているんだよね。大っぴらではなくて、地下に潜ってやっている。ポーリーンの店というのは、官憲の目を誤魔化すための隠れ蓑。リリーとエミリはここで殺人までやっている。

 

リリーとトーマスの演劇グループは、どう考えても秘密政治活動のための細胞だよなー。リリーのグループでは、エレインとマリーはなんかの陰謀に加わっていると示唆されている(男の二人は、無関係?)。トーマスのグループでは、ベアトリスとそのボーイフレンドの関係に、なにかありそう?この二つのグループ、公演とかしてカネを稼ごうとしていない。

 

名前はよく出るけど結局現れないキャラが、三人もいる(ピエール、ジョージ、イゴア)。そいでイゴアは失踪中。裏で、実力者の権力争いみたいなのがあるというヒントだよね。

 

要は、具体的な陰謀についての描写はないけれど、陰に隠れた権力者たちがなにかをやっているという匂いはプンプンしている。「13」ではなくても、別の秘密結社が社会を動かしているということだよねー。

 

リヴェットの世界観では、こうした裏の権力者は邪悪な存在である(と思う)。で、サラというキャラが、その邪悪さを体現していると俺は解釈した。エピソード7の終わり、あとエピソード8のでだしでは、催眠術でコリンとエミリを操ろうとしたわけじゃない?サラは、ベアトリスとトーマスの関係に絡んだりして、トーマスのグループを潰しもした。

 

リリーのグループを潰したローランドも、やっぱ悪の手先か。(最後、ルーシーは電話でローランドについて、なんとフレデリークに伝えたのか?)競馬で百万フランクを儲けたというのはありそうもないことで、悪の勢力がそう仕組んだんではないかねー。

 

つーことでこの映画のテーマは、裏に潜んだ隠微で邪悪な権力に芸術とか美しいことが潰されてしまって悲しい、ということなのでは?

 

あと、解釈がつかなかった部分について、メモしておきます

 

①鏡の重要性ーデイビッド・リンチの映画では、ランプが出てくると、異世界の描写が始まることになっている。この映画では、鏡がそういう役割を果たしているのでは?エピソード8での、エミリと鏡のシーンは、エミリが発狂しているということなんではと、俺は思った(イゴアが戻って来たというのは、だから幻想で、エミリはピエールに消される運命なのでは)。

 

②キャラの二面性ーコリンには、喋れないふりをしているときと、やたらと饒舌なときの二つのモードがある。フレデリークにも、長髪モードとボーイッシュモードの二つがある。この二人はわかりやすいキャラなので、その二面性も明確。他のキャラにも、隠している人格みたいなのがあるのか?トーマスには、演劇の演出家、「13」のポンコツメンバーという二面以外に、なにかある気がする。

 

③なんでシーンをぶち切った?ーリベットは、ロングテークがお好き。この映画でも、ワンテークでバリバリ先に進んじゃうことがよくある。でも、妙なところで画面が突然暗転したり、関係ないところにカットしたりするあたりもある。暗転は、暴力的なことがあったという示唆ではと今回思った。次に見る時に、この点について注意していきたい。

 

13時間ということで、見ることについてビビる人もいるかもしれんが、それぞれが一時間半程度の長さの8エピソードの映画として構成されているので、はっきり言って最近のネットフリックスなんかのドラマと同じ構成。長々と続く演劇リハーサルのシーンは、人によっては見る気を削がれるかもしれんが、長さ的には最近のテレビドラマと変わらないんだから、そのこと自体は困難ではない筈。今回見て、BINGEしやすい、見やすいということに気が付いて、意外でした。時代が、リベットに追いついたということかに。どっとはらい。