かつて一緒に活動していたお仲間Iさんに会って、少しだけ立ち話をした。
彼女は同年だがスポーツを続けていただけあって、今でもすらりとしていて姿勢も良く羨ましい限りである。
私「お久しぶり。お元気?今日はお出かけですか?」
I「今、そこの店でお昼を食べてきたの。一人分だけ作るのも、面倒だし食べに来たの。」
私「そうよね。いつもこのお店が多いの?」
I「そう、毎日ここまで歩いてくるの。スポーツはもう止めたから、運動不足にならないように。早足で歩いてくるの。」
私「なかなか運動が出来なくて。決まって運動出来ていいわね。」
I「私はスポーツ止めても、歩くのは早いのよ。行きも帰りもサッサッと歩くの。私は、早く歩くの。」
このあたりから、何か違和感を感じる。
ちゃんと会話の受け答えはしているのだけれど、昔の彼女に有ったにこやかさや明るい朗らかな雰囲気が減って、少し硬さが気になった。
以前なら冗談と受け止めた「大きな家で部屋数も多いから掃除が大変」も、大真面目な表情で言われると「そうよね。大きな家だもの、大変よね。」としか返せない。
突然「お天気が悪くなりそうだから、帰らなきゃ。」と、回れ右をして帰っていった。
「またね。」と返しながら、ある疑念が湧いてきた。
夫に話すと、彼女は夫を亡くしてからまだらボケになってきたと言う。
彼女は息子家族と暮らしているが、共働きの息子夫婦も学生の孫も気付いていない。
ご近所は噂はするも、誰もそれを知らせる人はいない。
急いで施設に入る必要はなく、このままもう少し自由に生活させてあげるのが、彼女の幸せかもしれない。