2018年6月25日
近づく「セカンド・コールド・ウォー」の足音
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
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(iStock.com/flySnow/Purestock)
20世紀後半の世界は「米ソ」冷戦時代だった。そして今世紀に入り、じわじわと「米中」両国の対立がヒート・アップしてきた。「第2次冷戦時代」が近づいてきている。
世界的ベストセラー『文明の衝突』の著者サミュエル・ハンティントン博士(故人)に筆者がインタビューしたのは、今から23年前のことだった。
当時、ハーバード大学政治学部長の要職にあった教授を研究室に訪ね、2時間近くにわたり、現代文明の将来についてじっくり話をうかがったが、その中で、彼が吐露したある衝撃的な“予言”が今も脳裏に鮮明に焼き付いている。
(GregoryBaldwin/iStock)
「これまで世界は、米国とソ連という東西2超大国の対立に振り回されてきたが、ソ連崩壊により冷戦時代にピリオドを打った。だが、21世紀には『第2次冷戦時代』がやってくる。それは米国と、新たに台頭してきた中国との対立だ」
奇しくもこの博士の予言通り、21世紀とくにトランプ共和党政権発足以来、米ソに代わって米中関係の様々な面できしみが生じ始めており、世界を巻き込んだ「第2次冷戦時代」到来への警戒感も広がりつつある。
つい最近では今月に入り、世界第1位の米国と第2位の中国との間の「関税戦争」がエスカレートしてきた。
まず、トランプ米大統領は15日、知的財産権の侵害を理由に、制裁措置として米国向け中国製品818品目に対し500億ドル(約5.5兆円)相当の輸入関税を課すと発表した。すると中国は翌16日、対抗措置として米国からの農産品、自動車など659品目に対し計500億ドル相当の輸入関税上乗せを発表した。
これを受けて、トランプ大統領はさらに18日、「中国に不公正な取引を変えさせるためにさらなる措置が必要だ」として、ライトハウザー米通商代表に対し、新たに中国製品に対し2000億ドル(約22兆円)相当の追加課税措置を取るべくその対象品目の検討を指示した。
中国も黙っていない。翌19日ただちに、中国商務省が声明を発表「米国が追加制裁すれば、中国も、量と質を組み合わせた総合的な措置を取り、強く反撃する」と強調した。
両国の応酬がさらにどこまで続くのか、先行き不透明のままだ。
だが、このような米中間のさや当ては、貿易・経済関係にとどまらない。それ以上に懸 念されるのが、政治、軍事そして地政学的な戦略面での相克だ。
キッシンジャーの警告
この点に関してはすでに、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が去る2011年1月、ワシントンポス紙に「米中冷戦を回避するために」と題する論考を寄稿、次のように警告していた。
「米中間の冷戦は、核拡散、環境、エネルギー、地球温暖化などの諸問題に包括的かつグローバルに取り組まなければならない時に、多くの地域で各国を論争の中に巻きこんでしまうことになりかねない。それだけに両国は互いの国家主義的な野望を自制し、世界秩序確立のために協力し合う必要がある」
ところが実際には、今世紀に入り、両国とも世界秩序より国益最優先の政策を推進する姿勢が鮮明化してきている。とくに目立つのが、中国の軍事拡張だ。中でも太平洋全域における海軍プレゼンス強化の勢いは止まらない。
「AsiaTimes」紙によると、それは具体的には、2011年に始まった。この年、中国はアラビア海に面したパキスタンの小さな漁港グワダールを2億5000万ドルを投じて軍事利用可能な近代的な貿易港への改造に着手、そして2015年には習近平国家主席が同港から中国西部にかけての3200キロに及ぶ道路、鉄道、石油パイプラインのための「中国―パキスタン経済回廊」建設構想を明らかにし、そのために460億ドルもの巨費を投じると発表した。
中国政府はその後、公式には軍事的意図に関しては何も言及してこなかったが、パキスタン海軍が翌2016年になって、グワダール港に軍事施設を設置、すでに中国から寄贈された戦艦2隻も他の艦船とともに配属されていることを明らかにしている。
同じく2016年、中国は太平洋に面しアフリカ東端のソマリアとエチオピアにまたがる半島「アフリカの角」のジブチに主要海軍施設の建設に着手、アラブ産油国への足がかりを確保すると同時に、インド洋でも中間地点に位置するスリランカとの間で、数10億ドルに達する対中借款帳消しと引き換えに、戦略軍事拠点となるハンバントタ港の割譲を受けることで合意済みという。
こうした中長期的軍事拠点づくりを中心としたいわば“静かな軍拡”と対照的なのが、南シナ海、東シナ海そして西太平洋への展開を視野に入れた中国海軍の力ずくの示威行動だ。
南シナ海に関しては、2016年7月、中国国務院発表の白書の中で、領有権をめぐりフィリピン、ベトナムなど近隣諸国で係争中のスプラトリー諸島に滑走路や「街」を建設するなど軍事拠点化の動きが活発化している。
これと並行してとくに空母戦力の強化にも拍車がかかり始めた。
アメリカはどう対峙するのか?
2012年9月、ウクライナから買い受けた空母の船体を改造した「遼寧」が初就航以来、今度は大連で純粋な国産本格空母の建造を開始、当初、2020年とされた就航も予定より早まる見通しで、近々にも初の試験航行が行われるという。
これに続いて上海で、より性能の優れた3隻面の通常型空母、そして4隻目の原子力空母建造計画もすでに公表されている。
空母は実戦配備となった暁には、米軍の場合、通常、駆逐艦、巡洋艦、フリゲート艦からなる複数の護衛艦のほか、攻撃型潜水艦と補給艦合わせ6隻で編成される「空母打撃軍」(略してCSG)として行動する。中国も今後、同様の行動様式を踏襲するとみられ、実際に3隻目、4隻目が登場した場合、その存在は極めて威圧的で大きなものとなる。そして米国防総省関係者の間では、このまま中国海軍の増強が進めば「2030年までに南シナ海全体が“中国の湖”となる」との不吉な予測まで出始めている。
とくに、中東からの石油に依存する日本にとって、南シナ海から東シナ海にかけてのシーレーン(海上輸送路)の安全確保は今後将来的に死活的に重要となるだけに、中国海軍の動きをとくに注視していく必要があることはいうまでもない。
ではこうした中国の軍事攻勢に対し、アメリカはどう対峙しようとしているのか。
実はオバマ前政権発足当初から、米政府内でも対中警戒論が高まり、着々と対応策を講じてきた。
2014年3月、オバマ大統領自らがオーストラリア国会で米軍戦略の「アジアへの転換」を基調とする重要演説を行い、南シナ海に面する同国ダーウィン基地への米海兵隊1個大隊本格投入を発表、さらにその1か月後には、フィリピンとの間で、同国5カ所の軍事基地への米兵力駐留を認める防衛協力協定の締結にこぎつけている。
さらに同政権下で、在日米軍施設についてもフィリピン・スービック、豪ダーウィンそしてシンガポール各基地との統合運用体制も確立、南シナ海をにらんだ“同盟の鎖”構築に取り組んできた。
トランプ政権下では、マティス国防長官が今年6月18日、海軍大学での講演の中で、ロシアの台頭と並んで中国が米国のライバルとなってきたことに触れ「中国は現存する世界秩序の書き変えという長期的野望を抱いている」として、その対応策として①より致命的破壊力のある戦力増強②軍事同盟関係の強化③国防総省の効率の良い組織への改編―の3点を挙げた。
気がかりなのは、マティス国防長官も力説した日本、韓国、オーストラリアなど同盟諸国との関係強化だ。
トランプ大統領は就任以来、「アメリカ・ファースト」を前面に打ち出し、NATO(北大西洋条約機構)軽視発言、アジアの新たな同盟の柱になるはずだったTTP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、日、豪、韓同盟諸国に対する貿易制裁など、自ら同盟関係に水を差す言動を繰り返してきている。
このままでは、中国との「第2次冷戦」の前途は多難と言わざるを得ない。
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><キッシンジャー「米中冷戦を回避するために」
よく言うわ。
日本を憎んで、中国と手を組んで、中国を今のようにのさばらせた張本人が“回避するため”に
>両国は互いの国家主義的な野望を自制し、世界秩序確立のために
協力し合う必要がある
結局、中国の横暴に屈してアメリカに譲歩しろと。バカか!
もうとっくに新冷戦は始まっとるわ!
>中東からの石油に依存する日本にとって、南シナ海から東シナ海にかけてのシーレーン(海上輸送路)の安全確保は今後将来的に死活的に重要となる
この原因を作ったのもアメリカ。
日本を疑ってPassing,Nothingし、中国を信頼して軍事技術さえ供与したのはアメリカ。
尖閣をあいまいにして領土問題があるかのようにしたのもアメリカ。
だからキッチリ責任を取ってから滅べ!と言うのです。
そして原発の再稼働もままならない日本に、イラン原油禁止とか。
そういえば尖閣にイラク並みの原油が埋まっているという話はどうなった?
じゃあ日本はこの際、堂々とここを掘る宣言をしたらいいんじゃね?