からっぽ。

彼女への思いが砕けた今、心の中には何も残っていない。

何も手につかず、無気力に過ごす日々が続く。

はずだった。


僕の手がないと歩けない子がいる。

意味もなく「ひぐ」と僕の名前を呼んでくれる。

「膝の上に座らせて」と頬をすりよせ甘えてくれる。

僕のために怒ってくれる。

憎まれ口を叩きながらも、いつも僕を必要としてくれる。


こんなバカな僕を「好き」だと思ってくれる子がいるんだ。

こうなることをずっと望んでた。

『孤独』なんて手のかかる感傷に目を向けてる暇はない。


空っぽのはずの心を

子ども達がはち切れそうなほどに埋めてくれる。

弱くなった心にはそれさえも痛い。


悲しいのかうれしいのかわからないけど、

不意に大声を上げて泣き出したくなる。


僕は不幸なほどに幸福すぎる。

身を焼くような激情じゃないけど、
彼女に会えない日が続くと全身を絡めとるこの感情はきっと僕を殺す。
誰にも負けない。
誰よりも彼女を想っている。
僕の幸せは彼女無しでは成立たないに決まってる。
心からそう思う。

だけど、それはあくまで僕自身の都合であって彼女には全く関係のない話。
分かっている。
だから。
受け入れなければ。
彼女が他の男を選んでいたとしても。
情けない。
さっき村上さんに会ったばかりなのに、もう寂しくなってる。
と言うより、頭の中が彼女のことで一杯だ。
今日はもっと顔を見たかったのに…。
疲れた表情は忙しいから?
俺のこと、ホントはどう思ってる?

彼女の一挙一動に振り回される。
彼女に会えない日が続くとまっすぐに立っている自信さえない。
弱くなった。
夢の為に全てを捨てて一人で生きて行くつもりだったあの時よりずっと。
でも、今なら分かる。
何だって賭けれると思えたのは、何も持っていなかったからだ。
僕なんかを必要として笑いかけてくれる子供達も、目標とする人も、彼女への想いも、何一つ捨てられない今とは違いすぎる。

何も奪わないで欲しい。
これ以上を望むなと言うなら従うから。