コンゴ東部で続く「戦争兵器としての集団レイプ」 問われる国連PKOの在り方 | 碧空

コンゴ東部で続く「戦争兵器としての集団レイプ」 問われる国連PKOの在り方

碧空-コンゴ クリントン
(昨年8月 東部コンゴを訪問して現地女性の歓迎を受けるクリントン米国務長官(背中)
“flickr”より By U.S. Department of State http://www.flickr.com/photos/statephotos/3814090310/# )

【「世界最大の紛争」または「アフリカ大戦」】
アフリカ中央部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)における紛争、その後の「不安定な平和」については、これまでも取り上げたことがあります。

隣国ルワンダでのフツ系住民によるツチ系住民の大虐殺で50~80万人が犠牲になったのが1994年。
ルワンダではツチ系の反政府勢力が政権を握り、現在のカガメ大統領のもとで飛躍的な経済成長を遂げています。
(対立を克服したとして国際的に評価の高いカガメ大統領ですが、野党を弾圧して独裁的になっているのでは・・・という批判も一部にはあります。)

ツチ系勢力による政権獲得によって、報復を恐れたフツ系住民が大量に隣国ザイール共和国(現在:コンゴ民主共和国)に逃げんこんだことによって、今度はザイールで内戦が勃発することになります。
このコンゴ紛争による死亡者数は540万人といわれ、「世界最大の紛争」とも呼ばれています。
また、第二次紛争ではザイールの地下資源に対する周辺国の思惑もあって、周辺各国が参戦し「アフリカ大戦」とも呼ばれています。

****世界最大の紛争*****
1996-1997年 第一次紛争
大虐殺の後、ザイール共和国(現在:コンゴ民主共和国)に逃げた多くのフツ族が難民になりました。その中に反政府軍がいました。ルワンダ政府は、ザイールにいる反政府軍の活動に制圧をかけました。その時、アンゴラ共和国やウガンダ共和国、ブルンジ共和国各国にとってもザイールにそれぞれの反政府軍がいたため、ルワンダと手を組み、参戦しました。結果、ザイールが敗北し、新しい政権がザイール共和国から「コンゴ民主共和国」に改名しました。
1998-2003年 第二次紛争(アフリカ大戦)
再びルワンダが中心となり、コンゴ民主共和国への侵攻を開始しました。しかしコンゴ民主共和国政府は、アンゴラやジンバブエなど周辺数カ国から、軍事支援を得て大きな大戦へと発展しました。そのため、今度はルワンダやウガンダからの攻撃を抑えることができました。その後、膠着状態が続き2002~2003年に包括的な和平合意がされました。
2003-現在
2003年までに周辺国軍が撤退完了し、暫定政府が設立されました。2006年には総選挙が行われ、現職のジョセフ・カビラ大統領が当選しました。一方で、イトゥリ州と北キヴ州を中心に地方レベルの紛争が続きます。そのため、不安定な「平和」になっています。

この紛争は新聞などでは、「内戦」と呼ばれています。しかし実際は、「直接軍事投入8カ国」、「間接的関与11カ国以上(例:お金や武器の投入)」、「他国から複数の反政府勢力が活動している(「国境なき武装勢力」)」が現状です。また国際連合の調査の結果、20カ国以上(ヨーロッパ、アメリカなど)からの企業が紛争と関連したビジネスに関与していることが分かりました。NGOによる調査結果からは、アメリカ・中国・ロシア・南アフリカなどからの弾丸が発見されています。以上より、アフリカ大陸の多くの国々が参戦している国際紛争、政府と政府を倒そうとする反政府勢力の「国」をめぐる紛争、国や政府とは関係なく、資源や権力などをめぐる武装勢力同士の戦いであるローカル紛争があり、コンゴ民主共和国の紛争は一つの紛争ではないといえます。
またこの紛争の人道被害ですが、死亡(540万人)原因が軍による被害はたった6%です。残りの94%は、病気や飢えの非暴力です。紛争では一般市民が狙われます。その狙われた人々が逃げる場所には、食べ物や水、保健サービスなどはないため、飢えや病気にかかることがあげられます。また、地域によっては約70%の女性が性的暴力をうけています。(社会貢献・国際協力入門講座 
http://panasonic.co.jp/cca/welfare/ryukoku_kouza/series_1/index_8.html より)
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【「鬼畜の行い」】
現在、特に問題となっているのが、今も東部で活動を続けるフツ系武装勢力によるものともされる集団レイプです。
****戦争兵器としての強姦が続くコンゴ*****
◆女性に対する暴力で、家族だけでなくコミュニティの心をも破壊するというおぞましい軍事行動
内戦が続くコンゴ東部の村では先月のある週末、性的暴力による襲撃で少なくとも179人の女性が反政府武装勢力に乱暴された。国連が8月23日に明らかにした。被害女性の大半は、子供や家族が見ている目の前で、1度に2人から6人の男に強姦されたと、あるNGO(非政府組織)はニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
コンゴの東部一帯では、被害者だけでなく家族やコミュニティの心を破壊し、意気を沮喪させる武器として強姦が使われてきた。約1年前には、その中心地であるゴマをヒラリー・クリントン米国務長官自らが、警備責任者の反対を押し切って訪問した。

◆PKO部隊の基地のすぐそばで
クリントンは、妊娠中に暴行されて流産してしまった女性の話を聞いて涙した。クリントンはこうした暴力を「鬼畜の行い」と強く非難し、被害者救済のために1700万ドルの支援を発表した。吐き気をもよおす今回の残虐行為に関しても、彼女が非難声明を出してくれるといいのだが。
低所得層のための調査報道に力を入れる米インナーシティプレスは、国連の責任を問う。国連はコンゴで市民を保護するための平和維持活動(PKO)に年間10億ドルを費やしている。だが今回の集団レイプは、PKO部隊の基地からわずか30キロの場所で行われたという。24日には国連安保理も召集されたが、コンゴの強姦という戦争兵器についてはとうとう取り上げられなかった。【8月25日 Newsweek】
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09年のコンゴ訪問時で“涙した”クリントン長官ですが、現地の性暴力に関する公開討論会では、「約束の安売りはしたくありません。名刺を渡すためだけにここを訪れたわけではないけれど、わたしが『魔法のつえ』を持っているわけではないことも、事実です」と、アメリカの力での解決が困難なことを吐露。これまでのアフリカ訪問国で自分とバラク・オバマ米大統領が繰り返してきたメッセージ――自分たちの運命を司っているのは結局自分たちである――を繰り返したとのことです。【09年8月12日 AFPより】

コンゴ東部における集団レイプについては、08年当時、国連報告をもとに英国the economist誌が記事を書いていますが、その要旨を翻訳したものがhttp://anond.hatelabo.jp/20080509024354 に記されています。
いささか気分が悪くなるような内容ですので、ここにはコピーしませんが“政府の軍隊や反政府組織のリーダーはレイプをたいした攻撃とは見なしておらず、なんの手も打っていない。「戦闘員はヴァージンをレイプすれば無敵になれると信じている」と言われている。”とのことです。

【何の対応もしなかったMONUSCO】
上記Newsweek記事では国連安保理がこの犯罪行為を取り上げなかったとしていますが、26日の安保理の特別会議で断罪されています。
****国連安保理、大規模レイプに法の裁き求める コンゴ民主共和国*****
26日に行われた国連安全保障理事会の特別会議は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)で7月から8月にかけて、女性や子ども約200人が被害を受けた大規模なレイプを非難、関与した者を探し法の裁きを受けさせるよう同国に強く求めた。
23日に国連が発表した報告によると、隣国ルワンダのフツ族反政府勢力が流入しているコンゴ民主共和国東部北キブ州ルブンギの村落周辺で、7月30日から8月3日の間に起きた集団レイプの被害者は女性や子ども、少なくとも179人に上るという。

■国連PKO・コンゴ安定化団の対応の遅れに非難集中
26日の米紙ニューヨーク・タイムズは、集団レイプが発生した時期、近くに駐留していた国連平和維持活動(PKO)の国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)は、ルワンダの反政府勢力が村落を占拠していることをつかんでいながら、早く介入しなかったのは何故かと糾弾した。
米仏の呼びかけで開かれた同日の安保理特別会議でも、出席国からMONUSCOの対応の遅れを非難する声が相次いだ。議長国を務めるロシアのビタリー・チュルキン国連大使は会議後、コンゴ民主共和国政府に「一連の襲撃について速やかに調査し、実行者を裁判にかける」よう要請する声明を発表した。また国連PKO最大の2万人を派遣していながら何の対応もしなかったMONUSCOについて「機能すべきように機能しなかった」と批判した。

■ルワンダ反政府勢力が関与か
国連の潘基文(パン・キムン)事務総長の報道官は、94年のルワンダ大虐殺以降に国境を越えて逃れ、コンゴ民主共和国東部を活動拠点としているルワンダ解放民主軍(FDLR)と民兵組織マイマイ(Mai-Mai)が村落を襲撃した際に、集団レイプが起きたと非難している。一方、FDLRは集団レイプへの関与を否定している。
ルワンダの少数民族ツチを中心に約80万人が殺害された16年前のルワンダ大虐殺に関わったとして、ルワンダ政府に訴えられているFDLRは、ツチ主導の勢力がルワンダの政権を掌握する前にコンゴ民主共和国東部へ逃れた。以降、この地域では、政府軍であるコンゴ民主共和国軍(FARDC、政府軍)まで含む幅広い武装集団による住民襲撃やレイプが数多く報告されている。

■毎日14件のレイプが発生
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入り最初の3か月間だけで少なくとも1244人の女性がレイプの被害に遭っている。毎日14件のレイプが発生している計算になる。【8月30日 AFP】
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ルワンダの大虐殺でも国連PKOはこれを放置し、多くの犠牲者を見殺しにしたとの評価があります。
今回のコンゴ東部の集団レイプも、PKO部隊の基地からわずか30キロの場所で行われています。
集団レイプを犯した当事者が断罪されるべきは当然ですが、米紙ニューヨーク・タイムズが糾弾しているように、国連PKOの在り方が問われています。