ローマ法王レオ14世とトランプ大統領の対立 物議を醸すキリストになぞらえたトランプ大統領投稿画像
(トランプ大統領が12日にSNSに投稿した画像【4月14日 NHK】)
【レオ14世誕生当時、トランプ支持者からは「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も】
現代日本は一般的に宗教が希薄な社会ですが、世界的には例外的で、多くの国では宗教は社会、ひいては政治に大きな影響力を有しています。 その代表的な存在が世界のカトリック信者を束ねるローマ法王です。また、宗教が政治と密接に結びついている国のひとつがアメリカです。(アメリカ政治への影響力を強めているキリスト教福音派については、4月3日ブログ“変質するアメリカ政治 民主主義の劣化 強まる専制主義的傾向 増大する宗教保守派の政治への影響”でも取り上げました)
最近、バチカン、特にローマ法王レオ14世とトランプ大統領の確執が話題になっていますが、アメリカ出身者として初めて教皇に選ばれたレオ14世に関しては選任当時から“言葉の端々で非常にアンチトランプ的なものをアピールされている”“「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も見受けられた”というように、価値観の点で新教皇とトランプ大統領及びその支持者との間には溝もありました。
****初の米出身教皇誕生 Z世代男女の宗教離れと保守化の狭間で揺れる米国 在米ジャーナリスト「トランプさんが相当嫉妬してるだろう」*****
「皆さんに平和を」「平和が皆さんとともにあるように」アメリカ出身者として初めて教皇に選ばれたレオ14世のこの挨拶は、瞬く間に大きな反響を呼び、特にアメリカ国内では祝賀ムード一色となった。(中略)
初の米出身教皇誕生!トランプ氏が「相当嫉妬しているのでは」
お祝いムードに包まれる一方、アメリカの政治的立場にどのような影響を及ぼすのかという点も議論になっている。フリージャーナリストの津山恵子氏は以下のように説明した。
「レオ14世が誕生したとき最初に思ったのは、これはトランプさんが相当嫉妬してるだろうなと思った。それから(レオ14世は)清貧の人ということで、 労働者を大切にするとか、移民を大切にするとか、 分断をなくすということもおっしゃっていた。だから、言葉の端々で非常にアンチトランプ的なものをアピールされている」
SNSでは、トランプ支持者たちがレオ14世を「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も見受けられたという。(中略)
レオ14世は就任後初の説法で、「第三次世界大戦が断片的に起こる状況では、世界の指導者たちに対して『二度と戦争を起こさないでください』と訴えたい」と述べた。このメッセージは、分断しかねない世界情勢の中で、平和の重要性を改めて世界に問いかけるものであった。
果たしてアメリカ出身のトップによる、駆け引きは今後どのようになっていくのか。津山氏は以下のように述べた。
「今の中国に対する関税の問題のように、バチバチになることはないと思う。心の底では面白くない教皇だと思っていても、ニコニコしあって、カトリック信者、ひいては人口の半分以上いるキリスト教信者を支持者として取り込んでいこうと考えていると思う」
“トランプ教皇”の自画像が示す米の教皇への憧れ
政治と宗教が選挙などにも強い影響力を持つアメリカで(中略)トランプ大統領は中間選挙に向けて、教皇とどう向き合っていくのか。(中略)
トランプ大統領は、少し前に自分が教皇に扮したAI画像をSNSに投稿している。これについてトランプ大統領自身は「自分がやったわけではない」と述べているが、アメリカ全体が持つ教皇への憧れを反映しているとも考えられる。
ただ、トランプ政権とレオ14世のスタンスには距離があるとみられている。新しい教皇レオ14世は同性愛者には距離を置いている可能性があると指摘されているものの、移民や貧しい人に寄り添う姿勢を持つ。また、ニューヨークタイムズによると、レオ14世にはクレオールという黒人の血が4分の1ほど混じっていると報じられている。こうした事からSNS上ではコアなトランプ支持者から反発の声も上がっているという。
また、レオ14世は枢機卿時代にXのアカウントを持っていたとみられ、その際、「J・D・バンスは間違っている。イエスは他者への愛を順位付けすることを求めていない」と題したカトリック専門メディアの記事を紹介していた事からトランプ政権とは距離を持つのではないかという見方が強い。
報道ベンチャーJX通信社、代表取締役の米重克洋氏は以下のように分析する。
「(中略)宗教と政治は、アメリカで切り離されてはいるものの、必ずリンクする」
宗教×政治 Z世代の女性が離れる一方…男性は“真逆の行動”
ピューリサーチセンターの2023〜2024年の調べによると、アメリカのカトリック教徒の人口は、アメリカの人口のうちキリスト教信者は62%(2億4460万人)いる中で、プロテスタントの人口が40%(1億3200万人)、カトリックが19%(6600万人)となっている。
さらに詳しく見ていくと、カトリック信者の53%が共和党を支持し、43%が民主党を支持しているという結果となり、必ずしもカトリック信者=共和党ではないことがわかる。
アメリカの歴史の中でカトリック信者だった大統領は、J・F・ケネディ大統領とバイデン大統領の2名でともに民主党だ。一方、トランプ大統領はプロテスタント信者で、バンス副大統領はカトリックと、政治家も宗教と密接に繋がっている。
宗教が支持する政党に影響することについて、米重氏は以下のように述べた。
「宗教というものが、自分たちの集団をある意味代表すると定義するような存在として、政治や選挙に大きく影響するケースがある。日本に住んでいると、例えば、仏教だからこの政党を指示するという発想は、あまりないと思うが、アメリカやヨーロッパでは、宗教が投票先の選定に結構影響する」
Z世代のキリスト教徒の間では、この力学がはっきりと表れている。アメリカ生活調査センターの調査では、無宗教であると回答した世代別の男女比が、Z世代、特に女性で驚くべき早さで教会を離れている一方で男性は教会に留まっているという点が指摘されている。
このようにアメリカ国民の宗教観が変化している中、トランプ政権と新教皇の距離も変化していくのか、トランプ大統領は、どのように新教皇と向き合っていくのか。さじ加減が非常に難しい局面を迎えている。
このような現状について、津山氏は次のような見解を示した。
「2024年、トランプ氏の選挙集会に何回か行ったが、そこで出会ったZ世代(大学生の男性たち)は、経済のことを心配していた。(バイデンの経済の中では)自分たちが自分の親のように車を2台持ったり、あるいは家を買ったりできない。だから、トランプ氏を支持して投票すると言っていて、そういうZ世代の男性を中心とした保守化の傾向をトランプ氏と選挙陣営は先読みしていたと思う。
ただ、ここに来て、反対の立場の政治的思想を持った教皇が誕生したため、仲良くして、さらにカトリック教信者だけではなく、キリスト教の信者の票田を広げていこうという考えは絶対にあると思う」
また、最近になって改宗してカトリックとなったバンス副大統領について、津山氏は「うがった考え方かもしれない」と前置きし、次のように述べた。
「彼がカトリック信者になったのは2019年で、2023年に上院議員に当選している。そのときに人工妊娠・中絶に反対であるカトリック教の立場などを利用して、自分の政治的キャリアに役立てていこうと考えていたと思う」
トランプ大統領と考え方異なる教皇選出は「歴史の皮肉」
世界的に見ても、アメリカに振り回されている現状の中、アメリカ出身者が新教皇となったことについて、米重氏と津山氏はそれぞれ次のように述べ、締めくくった。
「アメリカを中心にした世界の秩序がちょっとずつ変わる中で、トランプ大統領とは考え方が異なる方が教皇に選ばれたことは、歴史の皮肉というか、いたずらっぽいところは感じる。また、世界的に見ても、信仰を持つ人の割合が減っており、教会や宗教のあり方と社会との関係性が変わっていく中で、教会も変化をしていかないといけない。そういう変化をしていかないといけない中で選ばれた新しい教皇でもある」(米重氏)
「大きな視点から言うと、2016年に誕生したトランプ型の世界以降、ブレグジットなど含み保守が進むなか、寡占あるいは独裁型の政治が広がっていくという流れは、現状止められないと思う。それに抗っているのが、戦後80年続いてきた西欧型の自由民主主義の世界だが、レオ14世という多少リベラルなリーダーが現れたというのは、その80年続いた体制を守ってきた人たちにとってはグッドニュースだったと思う」(津山氏)(『ABEMAヒルズ』より)
【2025年5月15日 ABEMA Times】
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【中世欧州歴史の教皇権と王権の対立を見るような激しい批判の応酬】
“多少リベラルな”レオ14世とトランプ大統領の関係について“バチバチになることはないと思う”という見たても上記記事ではありましたが、就任後初の説法で『二度と戦争を起こさないでください』と訴えたレオ14世にとってイラン戦争で揺らぐ世界の現状、その元凶となっているアメリカの政治については看過できないものを感じているのでしょう。政治の在り様に関して辛辣な言葉も。
それに対し、もともと価値観が異なるトランプ大統領・政権も強烈に応戦・・・ということで“バチバチ”状態に。
****「神は戦争起こす指導者の祈りを拒絶」、ローマ教皇が異例の発言****
ローマ教皇レオ14世は29日、戦争を始め「血にまみれた手」を持つ指導者たちの祈りは神に拒絶されると述べた。イラン戦争が2カ月目に突入する中、異例の強い発言となった。
教皇は復活祭前の聖週間の始まりとなる「枝の主日」にサンピエトロ広場で行った講話で、イラン戦争を「残虐極まりない」と非難し、イエス・キリストはいかなる戦争の正当化にも利用することはできないと言明。「これがわれわれの神、平和の王イエスだ。イエスは戦争を拒絶される。誰も戦争の正当化にイエスを利用することはできない」と訴えた。
さらに「(イエスは)戦争を起こす者たちの祈りを聞き入れず、拒絶し、『たとえあなた方が多くの祈りを捧げても、私は聞かない。あなた方の手は血にまみれているからだ』と言われる」と、聖書の一節に言及した。
一部の米当局者は、拡大する戦争の発端となった米・イスラエルのイラン攻撃を正当化するため、キリスト教用語を用いている。【3月30日 ロイター】
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****米政府、教皇の「反戦説教」に反論 米軍兵士への祈りを正当化****
米ホワイトハウスは30日、ローマ教皇レオ14世が、戦争を仕掛ける者の祈りを神は拒絶すると発言したことを受け、イランとの戦闘に従事する米兵士のために祈る行為を正当化した。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、教皇の発言に関する記者からの質問に対し、「軍の指導者や大統領が、国外で国のために尽力する軍人やその関係者のために祈るよう国民に呼びかけることに、何ら誤りはないと考えている」と答えた。(中略)
一方、ドナルド・トランプ政権の閣僚たちは、自らのキリスト教信仰を前面に押し出している。
ピート・ヘグセス国防長官は先週、国防総省で行った祈りの中で「正義の敵、そしてわれわれの偉大な国家の敵に対し、すべての砲弾がその標的を射抜かんことを」と述べていた。
レオ14世の発言に対し、カトリック教徒のレビット氏は、米国はユダヤ・キリスト教的価値観に基づいて建国されたと述べた。
また「指導者や軍隊は、国家の歴史の中で最も激動した時期にも祈りを捧げてきた。多くの軍人に話を聞けば、彼らが祈りに感謝していることがわかる。実際、それは非常に気高い行為だと私は考えている」と付け加えた。
レオ14世は先週、中東地域の100万人以上の人々が避難を余儀なくされていると言及し、交戦中の当事者に対し、対話を行うよう促していた。【3月31日 AFP】
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トランプ大統領がイランに関して「今夜、一つの文明が完全に消え去り、二度と元に戻ることはないだろう」とし、「私はそのようなことが起きるのを望まないが、おそらくそうなるだろう」と投稿した件にかんしても・・・
****レオ14世教皇、トランプ氏の「イラン文明破壊」発言に「容認できない」****
(中略)ワシントン・ポスト(WP)などによると、レオ14世教皇はこの日、(中略)記者団に対し、「今日、われわれが皆知っている通り、イランのすべての国民を対象にした脅威があった」とし、「これは本当に容認できないこと」と述べた。(中略)
続いて「善意を持つすべての人々に、常に平和を追求し暴力を拒否することを要請する」とし、「特に多くの人が不当だと言う戦争が拡大し続けており、何も解決できていない戦争を拒否することを求める」とした。
イランに向けては「交渉のテーブルに戻ってほしい。対話し、平和的な方法で解決策を見いだそう」とし、「特に子どもたち、高齢者、病人、この続く戦争で犠牲になり、そして犠牲になるかもしれない多くの人々、罪のない人々を記憶しよう」と訴えた。
また「民間インフラに対する攻撃は国際法に抵触するだけでなく、人間が犯し得る憎悪・分裂・破壊の兆しであるという点をすべての人々に想起させる」とした。(後略)【4月8日 中央日報】
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トランプ大統領は「謝罪することは何もない」としてさらに批判の声を強めています。
教皇と世俗国王の対立、力関係の推移は欧州歴史のメインテーマの一つであり、「カノッサの屈辱」(1077年)とか「アヴィニョン捕囚」(1309年)といった歴史の転換点も世界史の教科書で目にしたところです。
そんな歴史が蘇るような出来事。米国防次官がバチカン大使を「アヴィニョン捕囚」を示唆して恫喝したとか、しないとか。(国防総省は否定。バチカンも、恫喝じみたやりとりがあったかについては公式には明らかにしていません)
****米国防次官がバチカン大使を恫喝か、「アヴィニョン捕囚」示唆と報道 国防総省は否定****
米国防総省の高官がバチカン(ローマ教皇庁)の駐米大使に対し、ローマ・カトリック教会が米国の取り組みを支持しなければ軍事的対応も辞さない、と受け取れる漠然とした脅迫を行ったと米メディアが報じた。米国防総省の報道官は9日、問題の発言があったとされる1月の会談は「敬意あるもの」だったと表明し、報道内容を否定した。
(中略)これに先立ち、ザ・フリー・プレスは1月の会談が緊張した雰囲気の中で行われたと報道。エルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)がピエール枢機卿に対し、米国には「世界で望んだことを何でもできる」軍事力があると警告し、ローマ・カトリック教会は「米国側に付いたほうがいい」と述べた上で、14世紀の「アヴィニョン捕囚」の脅威をほのめかしたと伝えた。
「アヴィニョン捕囚」とは、フランス国王フィリップ4世が軍事力を用いてバチカンを掌握し、教皇ボニファティウス8世に退位を迫った末、教皇聖座をローマから南仏の片田舎アヴィニョンに移して複数の教皇にフランス滞在を余儀なくさせた時期をさす。
ザ・フリー・プレスによると、国防総省の当局者らは教皇レオ14世が1月に行った演説で「対話を促進し、すべての当事者間の合意形成を目指す外交が、力に基づく外交に取って代わられようとしている」と述べたことに憤慨していたとされる。(後略)【4月11日 Forbes】
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トランプ大統領、更にバンス副大統領からはレオ14世に対する異例の批判が続いています。
****トランプ氏が教皇非難「核兵器への弱腰な姿勢は到底受け入れがたい」「私がホワイトハウスにいなければバチカンにいなかっただろう」****
米国のトランプ大統領は12日、自身のSNSで、ローマ教皇レオ14世がイランの核兵器保有を容認していると一方的に主張し、「核兵器への弱腰な姿勢は到底受け入れがたい」と非難した。米大統領がローマ教皇を非難するのは異例だ。
トランプ氏は、米大統領を批判する教皇は望まないと投稿し、「過激な左派に迎合することをやめ、政治家ではなく偉大な教皇になることに専念すべきだ」と主張した。教皇が米国出身であることを理由に「米国人というだけで選ばれた。私がホワイトハウスにいなければ、(教皇は)バチカンにいなかっただろう」との持論を展開した。(後略)【4月14日 読売】
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****バチカンは「道徳問題に専念すべき」 バンス米副大統領****
ローマ・カトリック教会の教皇レオ14世が中東での紛争を厳しく批判したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領が不快感をあらわにする中、J・D・バンス米副大統領は13日、バチカンに対し「道徳問題に専念する」よう求めた。
バンス氏はFOXニュースのインタビューで「バチカンは道徳問題に専念し、米国の公共政策の指針は米国大統領に任せるのが最善だと思う。一概には言えないが確実にそう思う」と語った。(後略)【4月14日 AFP】
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【トランプ大統領 自身をイエス・キリストに似せた画像を投稿 民主主義国リーダーとしての致命的な資質欠損】
こうしたトランプ大統領・政権とバチカン・レオ14世が“バチバチの状態”にあるなかで、トランプ大統領から出されたのがキリストになぞらえたトランプ大統領の姿。
****トランプ大統領 キリスト教保守派からも批判 投稿の画像めぐり****
アメリカのトランプ大統領が12日にSNSに投稿した画像をめぐり、自身をイエス・キリストに似せたものだとして、支持基盤のキリスト教保守派の一部からも批判の声があがりました。その後、投稿は削除され、トランプ大統領は「私を医師に見立てた画像だと思った」などと釈明しましたが、波紋を呼んでいます。
トランプ大統領は12日、生成AIで作成されたとみられる画像をSNSに投稿しました。
画像は、医療従事者や両手を合わせた女性らに囲まれたトランプ大統領が、横たわった男性の額に光る手をあてているというものでした。
これについてはトランプ大統領の支持基盤のキリスト教保守派の一部からもトランプ大統領をイエス・キリストに似せた画像だとして、「どうしてこのような投稿をするのか理解できない」とか「これはひどい冒とくだ」などと批判の声があがりました。
投稿はその後削除され、トランプ大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に対し「確かに私が投稿した」と述べた上で「私を医師に見立てた画像だと思った。人々を癒やす私を医師になぞらえたもののはずだ」などと釈明しましたが、FOXニュースが投稿について「与野党双方のアメリカ人を不快にさせた」と伝えるなど、波紋を呼んでいます。【4月14日 NHK】
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自身を「王」になぞらえたり、「神」になぞらえたりして楽しむ・・・病的に肥大した承認欲求・自己顕示欲のあらわれであり、全ての政策決定に影響する民主主義国リーダーとしての致命的な資質欠損だと考えます。
敬虔な信者は問題視するでしょう。票にも影響。
“元牧師でワシントン大のライアン・バージ教授(政治学)は「トランプ氏は2024年大統領選でキリスト教徒の圧倒的多数の票を獲得したが、その支持を急落させる言動だ」と指摘。「『MAGA』(米国第一主義運動)を好むカトリック信者は大勢いるが、教皇よりもMAGAを優先することはない」と説明した。”【4月14日 東京】
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ハンガリー・オルバン首相、総選挙敗北で退陣へ 親EU路線野党圧勝でEUのウクライナ支援に道筋
(総選挙の直前、米国のバンス副大統領とステージ上から手を振るオルバン首相【4月13日 CNN】)
【「非自由主義的民主主義」】
EU加盟国でもあるハンガリー・カルバン首相の「非自由主義的民主主義」と呼ばれる西欧的価値観とは相容れない独特な政治姿勢、親ロシアの外交姿勢、それゆえにEU指導部と移民政策やウクライナ支援などで対立し、結果的にハンガリーがEUの分断・不協和音の震源地ともなっていたことは再三取り上げてきましたが、そのオルバン首相が総選挙で劣勢にあって政権交代が視野に入ってきたことは、4月4日ブログ「ハンガリー EUの“トラブルメーカー”オルバン首相 総選挙敗退・退陣の可能性」でも取り上げました。
*****ハンガリー・オルバン首相の独自の政治姿勢・・・非自由主義的民主主義*****
オルバン・ヴィクトル首相の政治姿勢は、しばしば「非自由主義的民主主義(illiberal democracy)」と呼ばれ、西欧のリベラル民主主義モデルとはいくつかの重要な点で異なります。
1. 「非自由主義的民主主義」の明確化
オルバン首相は2014年以降、自ら「リベラルではない民主主義」を掲げています。
選挙は実施するが、司法・メディア・市民社会への統制を強めるという形で、「多数派の意思」を強調する統治スタイルです。
西欧民主主義は権力分立、少数派の権利保護、独立した司法を重視するのに対し、ハンガリーでは行政権の集中傾向が強いと批判されています。
2. メディア・司法への影響力拡大
公共放送や主要メディアが与党寄りに再編、憲法裁判所や司法制度の改編・・・これにより、EUは「法の支配の後退」を問題視し、制裁措置や資金凍結を行ったことがあります。
3. 強いナショナリズムと主権重視
移民受け入れへの強硬な反対・・・「キリスト教的ヨーロッパの防衛」という価値観
EUの介入への反発・・・2015年の難民危機以降、移民排斥政策はオルバン政権の中心政策となりました。
4. 対ロシア・対中国姿勢
EU・NATO加盟国でありながら、ロシアとのエネルギー関係を維持 また、中国の投資を積極的に受け入れるなど、西欧主要国よりも現実主義的・多極的外交を展開しています。
5. 家族政策の強化
多子世帯への減税、出産奨励政策、伝統的家族観の強調・・・これは人口減少対策であると同時に、保守的価値観の制度化とも言われます。
総合評価
オルバン政権は「選挙による正統性は維持するが、リベラルな制度的制約を弱める体制」と評価されることが多いです。
支持者は「国家主権と伝統的価値の防衛」と評価し、批判者は「民主主義の質の後退」と見ています。【4月4日 ChatGPT】
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【トランプ政権、オルバン首相を支援 バンス副大統領が現地入りして“選挙干渉”ととれる応援】
移民に厳しく、EU指導部と対立するオルバン首相はトランプ大統領と親和性が強く、イラン情勢で超多忙なはずのアメリカのバンス副大統領が7日、ハンガリーを訪れオルバン首相と会談。12日に行われるハンガリー総選挙で、同国を16年間率いてきたオルバン氏が政権の座を失うかもしれないとの見方が出る中、バンス副大統領はオルバン氏への強力な支持を表明するなど、選挙に干渉するような発言を展開しました。同時に、EUを痛烈に批判しました。
****米政権、選挙干渉強める ハンガリー首相支持表明****
ハンガリーを訪問したバンス米副大統領は7日、オルバン首相との会談後の記者会見で、12日のハンガリー議会総選挙での与党勝利に向け「できる限り首相を支援したい」として支持を表明した。
トランプ米政権は2月にもルビオ国務長官がハンガリーを訪れてオルバン政権の継続を訴えており、選挙への干渉を強めた。
首都ブダペストでバンス氏と共に記者会見したオルバン氏は、両国関係はトランプ大統領の就任により「黄金時代を迎えている」と述べ、謝意を示した。トランプ氏もオルバン氏支持を明言している。 トランプ氏は昨年1月の2期目就任後、良好な関係を築く外国首脳らを選挙戦で公然と支持。【4月7日 共同】
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オルバン首相とEU指導部嫌いという共通項があるバンス副大統領は昨年2月にドイツ・ミュンヘンで行った演説で、欧州指導者たちが言論の自由を制限していると非難し、欧州(EU)と米の対立が抜き差しならないところにきていることを明らかにした経緯もあります。
****ヴァンス米副大統領がハンガリー訪問、オルバン首相の再選支持 EUを痛烈批判****
(中略)
ヴァンス氏はオルバン氏との会談後、EUとウクライナを激しく非難した。
EUについては、「私がこれまで目にした、あるいは耳にした中で最悪の、外国による選挙干渉の一例だ。(中略)なぜなら向こう(EU)はこの男(オルバン氏)を嫌っているからだ」と述べた。
さらに、今回の訪問の「理由の一つは」「(ベルギー)ブリュッセル(にあるEU本部)の官僚による干渉が、実に恥ずべきものだった」からだとも述べた。
その後、オルバン氏の選挙集会で演説したヴァンス氏は、「(中略)私は誰に投票すべきか具体的に言っているわけではないが、ブリュッセルの官僚たち、あの人たちの言うことに耳を貸すべきではないと申し上げたい」と述べた。
演説の最後には、「週末に投票へ行き、オルバン・ヴィクトルを支持してほしい。彼は皆さんのために立ち上っているのだから」と呼びかけた。
EU加盟国の指導者たちはこの数週間、ロシアによる侵攻が続くウクライナに数十億ユーロ規模を拠出する支援策にオルバン氏が拒否権を行使したことに、不満を募らせてきた。オルバン氏は昨年12月の時点ではこの支援策に同意していた。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「甚だしい背信行為」だと述べた。
それでも、EUの指導者たちはハンガリー総選挙に巻き込まれることは慎重に避けてきた。
今回のヴァンス氏の発言は、昨年2月にドイツ・ミュンヘンで同氏が行った演説で、欧州指導者たちが言論の自由を制限していると非難した内容を思い起こさせるものだった。
ウクライナについて
ヴァンス氏はこの日、ウクライナ政府が外国の選挙に干渉したという、根拠のない主張も繰り返した。「ウクライナの情報機関の内部勢力が、アメリカやハンガリーの選挙を、自分たちに有利になるようにしようとした。彼らはそういうことをするんだ」。
オルバン氏は、ウクライナとウォロディミル・ゼレンスキー大統領への敵対姿勢を、自身の選挙戦の柱としている。(後略)【4月8日 BBC】
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【オルバン首相の反ウクライナ・親ロシア姿勢】
ハンガリーとウクライナの対立は、ウクライナに数十億ユーロ規模を拠出する支援策にオルバン首相が拒否権を行使する一方、ウクライナがロシア産原油をハンガリーに運ぶパイプラインの修復を故意に遅らせて、ハンガリーへの石油供給を阻害しているとオルバン首相が主張して、ゼレンスキー大統領が武力行使も示唆するほどに激しさを増しています。
オルバン政権の親ロシア姿勢は、最近のスキャンダルにあらわれています。
****オルバン政権、外相がロシアにEU機密情報を定期的に提供*****
ハンガリー政権をめぐり最近浮上したスキャンダルも、オルバン氏の人気に影響を与えたとみられる。
流出したのは、シーヤールトー外相と複数のロシア高官との間で交わされた、数年間分の私的な通話内容だ。
通話記録によると、シーヤールトー氏はEU首脳会議での機密の協議の内容を、ロシア政府に定期的に提供していたとされる。また、ロシア政府の要請に応じて、ロシア当局者を制裁リストから外すよう働きかけたとされる
シーヤールトー氏はロシア側との通話について、「通常の外交活動」だと主張している。【4月8日 BBC】
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【EU指導部はオルバン首相を激しく非難】
EU指導部は、特にウクライナ支援阻止の点でオルバン首相を激しく批判しています。
****欧州諸国から非難を浴びるオルバン首相****
オルバン首相の姿勢は、欧州諸国から非難を浴びている。
フィンランドのペッテリ・オルポ首相は、「(オルバン首相は)選挙戦でウクライナを武器として利用している」と批判。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、オルバン首相の言動はEUとウクライナに対する「重大な背信行為」に当たると指摘したほか、EUのアントニオ・コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)は同首相が欧州を「脅迫」していると非難した。
EUの執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長とフランスのエマニュエル・マクロン大統領はハンガリーに対し、ウクライナに対するEUの支援を直ちに承認するよう求めた。(後略)【4月9日 Forbes】)
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【12日総選挙結果・・・・野党圧勝、オルバン与党の敗北、16年ぶりの政権交代】
・・・・・ということで、ハンガリー国内だけでなく、EU指導部、ウクライナ、アメリカ、ロシアがそれぞれの思惑で注視していたハンガリー総選挙の結果は・・・・選挙前の予想通り、あるいはそれ以上の野党の勝利、オルバン与党の敗北、16年ぶりの政権交代でした。
*****ハンガリー総選挙、野党が3分の2超獲得へ EUと関係回復図る****
ハンガリー総選挙(1院制、定数199)が12日に投開票され、新興保守系野党「ティサ(尊重と自由)」の圧勝が確実となった。欧州連合(EU)に懐疑的なオルバン・ビクトル首相(62)が2010年から長期政権を率いてきたが、16年ぶりの政権交代となる。
ハンガリーはEU加盟国だが、親露的なオルバン政権はロシアの侵攻にあえぐウクライナとたびたび対立。EUのウクライナ支援案を阻止するなどして、EU内で批判されてきた。
一方、ティサはEUとの関係回復を掲げており、EUやウクライナに対するハンガリーの政策は転換するとみられる。
ハンガリーの中央選挙管理委員会によると、開票率95%の時点でティサは総議席数の3分の2を超える137議席を獲得する見込み。オルバン氏率いる中道右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」を中心とした与党連合は55議席にとどまっている。
ティサのマジャル・ペテル党首(45)は12日夜、「ハンガリー人は欧州に票を投じた。ハンガリーはEUと北大西洋条約機構(NATO)の強い同盟国となる」と勝利宣言した。
EUや欧州各国の首脳からは、ティサの大勝を歓迎するコメントが相次いだ。EUの行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長はX(ツイッター)に、「ハンガリーは欧州を選んだ。一つの国が欧州への道を取り戻した。(欧州)連合はさらに強くなる」とのコメントを出し、ハンガリーとの関係正常化に期待を示した。
一方、オルバン氏は「これからは野党として国に仕える」と敗北を認めた。厳しい移民政策や「ばらまき」とも言える減税政策などで支持されてきたオルバン政権だが、汚職問題がつきまとってきた。
ティサのマジャル氏は、こうした政権の汚職体質を糾弾して支持を拡大。24年にティサで政治活動を始めたばかりだが、長期政権への不満を強める民意を背景に勢いに乗った。
オルバン氏はウクライナ支援の争点化をはかり、ティサを「EUとウクライナの手先」と批判。「ティサが勝てば戦争に巻き込まれる」と主張していた。
オルバン氏と価値観や政策が近いトランプ米政権も応援に乗り出し、7日にはバンス副大統領がブダペスト入りしてオルバン氏支持を表明していた。【4月13日 毎日】
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【親EU路線の野党勝利で、EU首脳やゼレンスキー大統領が祝福】
このところトランプ大統領との確執、域内極右勢力の台頭などネガティブな話題が多かったEU指導部にとっては久々の明るいニュースでしょう。ウクライナにとってもEUのウクライナ支援融資が可能になるということで国の命運にかかわる出来事です。
*****ハンガリー総選挙 親EU路線の野党勝利受けEU首脳やゼレンスキー大統領が祝福のコメント****
12日に投開票されたハンガリー総選挙で親EU路線の野党が勝利したことを受けて、ヨーロッパの首脳らが祝福するコメントを発表しています。
ハンガリーの総選挙では、16年間政権を担いEU加盟国でありながらウクライナ支援に度々反対してきたオルバン首相の与党に対して、EUとの関係回復などを訴えてきたマジャル氏率いる野党が勝利しました。
選挙結果を受け、EUのフォンデアライエン委員長は「ハンガリーはヨーロッパを選んだ。EUはより強固になる」と祝福しました。
また、フランスのマクロン大統領はマジャル氏に電話したと明らかにし、「フランスは、この勝利を民主主義への参加、ハンガリー国民のEUの価値観へのコミットメント、そして、ヨーロッパにおけるハンガリーの地位にとって歓迎すべきものだと考えている」とコメントしています。
そして、ウクライナのゼレンスキー大統領は「両国の利益、そしてヨーロッパの平和・安全・安定のために、会談や共同での建設的な取り組みを行う用意がある」と歓迎するコメントを出しています。【4月13日 TBS NEWS DIG】
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EU指導部にとっては反ウクライナ・親ロシア・反移民という“トラブルメーカー”が消えるというだけでなく、オルバン首相は欧州極右勢力とも近い関係にあって、“欧州極右のイデオロギー的な先駆者、各国右派をつなぐネットワークの中心人物”という存在でしたので、オルバン首相の退陣は欧州極右勢力の勢いをそぐことにもなるという点でEU指導部に好都合な話になります。
****オルバン首相と欧州極右勢力の思想的な共通基盤****
オルバン政権(与党フィデス)は、欧州の極右・右派勢力と以下の点で一致しています。
反移民・国境管理強化
伝統的価値観(家族・キリスト教文化)の重視
EUの権限拡大への反発(主権重視)
リベラル民主主義への批判(オルバンは「非自由主義的民主主義」を提唱)
このため、フランスのマリーヌ・ルペンや、イタリアのジョルジャ・メローニなどと価値観が近いとされます。【4月13日 ChatGPT】
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米軍が基地使用する英領チャゴス諸島 モーリシャスへの主権移譲にチャゴス諸島出身者が反対する現実
(【2025年5月23日 BBC】)
【米英共同軍事基地のために島の住民を追放し帰還できないようにした歴史】
日本人には聞きなれない名前ですが、インド洋のど真ん中にイギリス領の「チャゴス諸島」という島々があって、その中の最大の島、ディエゴガルシア島は米軍も使用する米英共同軍事基地として使用されています。
*****チャゴス諸島*****
チャゴス諸島は、インド洋にある諸島。オイル諸島という旧名もある。モルディブの南1,600kmのところにあり、7つの環礁を中心とした60以上の島で構成されている。最大の島はディエゴガルシア島。(中略)
19世紀よりイギリス領インド洋地域の一部としてイギリスが支配し続けたが、旧英領でかつて同じ植民地であったモーリシャスも領有権を主張し、返還を要求してきた。国際連合をはじめとする国際機構もこれに同調し、モーリシャスへの返還が働きかけられてきた結果、イギリス政府は2024年10月3日にモーリシャスへの返還を発表し、両国は2025年5月22日に合意文書に署名した。
歴史
(中略)6世紀にポルトガルによって発見された後、18世紀から住民が定住し、1814年よりイギリス領となった。イギリス領モーリシャスの管轄として統治されていたが、1965年にモーリシャスから分離された。1968年にモーリシャスが独立した後も、イギリス領として残された。
20世紀半ばには住民は2,000人ほどとなっていたが、1967年から1971年にかけてモーリシャスへ移住させられている。
1965年、チャゴス諸島は英領モーリシャスの一部であり、モーリシャスが自治権を持っていた。この年、イギリスの当時の外務大臣であったマイケル・ステュワートと、後にモーリシャスの首相となるシウサガル・ラングーラムの間の秘密合意(密約)でチャゴス諸島を分離することを条件にモーリシャスが念願の独立を果たし、またチャゴス諸島と引き換えに、イギリスがモーリシャスに400万ポンドを支払うことが決定した。
1966年の英米間の合意により、チャゴス諸島の中で最大面積を持つディエゴガルシア島が、50年間アメリカの軍施設として使われることになった。その後20年の延長も認められており、実際に2016年から20年間の延長がなされている。アメリカが島の全住人を追放することを求め、1968年から1974年にかけて英米によって追放政策が実施された。
2010年にはチャゴス諸島の周辺海域を海洋保護区に指定したが、その真の目的は海洋保護区にして漁業活動などを禁止して、島での生活基盤が成り立たないようにすることで、チャゴス諸島民の帰還を阻止することであったことが、ウィキリークスにより判明している。【ウィキペディア】
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モーリシャス独立時の密約、基地使用のために全住人の追放を求めるアメリカ、住民の帰還を阻止するための海洋保護区指定・・・・いささかドロドロした話ですが、ほんの数十年前は政治的には常識的な行動だったのでしょう。そのあたりは今も変わらないかも・・・・。
【英政府はモーリシャスへの主権移譲で合意したものの、トランプ大統領の反対で棚上げ】
上記説明にもあるように、イギリスと(かつては同じように英領であった)モーリシャスは、チャゴス諸島をモーリシャスへ返還することで合意していますが・・・・合意では、基地についてはイギリスが賃料を支払う形で99年間管理権を維持する内容になっているようです。
モーリシャス現政権の対外スタンスは、一言で言えば「非同盟・バランス外交(マルチベクトル)」です。その中でアメリカとの関係は「良好だが最優先ではない」という位置づけになります。
****モーリシャスのアメリカとの関係*****
基本路線:非同盟・実利重視
モーリシャスは伝統的にどの大国にも過度に依存しない外交を展開し、インド洋の小国として安全保障よりも経済・投資・貿易を優先する姿勢を見せています。
アメリカとの関係
アメリカとは対立関係ではなく、協力的関係
主なポイント
貿易・投資(特に繊維・金融・ICT分野)
アフリカ向け経済枠組み(AGOAなど)の恩恵
海洋安全保障・違法漁業対策で一定の協力
ただし、安全保障で米国に全面依存する関係ではない
チャゴス諸島問題との関係
モーリシャスは一貫してチャゴス諸島の主権返還を要求
ただし現実的にはディエゴ・ガルシア島の米軍基地については存続を容認する柔軟姿勢
つまり 、「主権は返せ」 「ただし米軍は残ってよい」
→ これは明確にアメリカとの関係を悪化させないための配慮【4月12日 ChatGPT】
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“ディエゴ・ガルシア島の米軍基地については存続を容認する柔軟姿勢”とのことですが、上記のような姿勢はその時の国内外の政治環境によって変わることも十分にあります。
インド洋のど真ん中、中東にもインドにもアフリカにも睨みをきかせられる場所を考えると、アメリカの基地使用継続を不安定にするようなことにはトランプ政権は賛同しないのでは・・・・と素人でも考えますが、実際、(いったんはアメリカとして認めたものの)トランプ大統領から横やりが。
トランプ大統領の反対を受けて、スターマー英首相はモーリシャスへの主権移譲合意を棚上げすると発表しています。
なお、3月20日、イランがディエゴガルシア島にある米英共同軍事基地に向けて、中距離弾道ミサイル2発を発射したと報じられました。このミサイルは同基地の手前に落下して実質的な被害は出なかったものの、イランのミサイル技術が約4,000キロ離れた遠距離の標的まで到達可能であることを示したと評価されています。
逆に言えば、少なくともそれまではイランが攻撃可能な範囲の外側に位置していると考えられていたことも、この基地の重要性のひとつでしょう。
****英政府、チャゴス諸島の主権移譲を棚上げ、トランプ氏の反発受け*****
キア・スターマー英首相は、イギリスがインド洋のチャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲する合意を棚上げすると発表した。スターマー氏とドナルド・トランプ米大統領との関係が悪化するなか、同諸島のディエゴ・ガルシア島にイギリスと共同軍事基地を置くアメリカが、正式にこの合意を認めなかったため。
トランプ氏は当初、この計画を支持していたが、最近ではスターマー氏に合意の撤回を求めていた。今年1月にはこの計画を「大いなる愚行」「完全な弱さからくる行動」と非難していた。
イギリス政府関係者は、この合意を完全に放棄しているわけではないとしているが、議会が解散するまでの数週間に、関連法案を成立させる時間がなくなったと述べている。一方で、5月中旬に行われる「国王の演説」(政府の施政方針演説)に、新しいチャゴス法案が盛り込まれる見通しは立っていない。
関係者によると、この条約を発効させるために法的に必要とされる、アメリカとの正式な交換書簡を、イギリスは依然として受け取っていないという。
イギリスは昨年5月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲することで合意した。この合意では、チャゴス諸島最大のディエゴ・ガルシア島にある英米共同軍事基地の管理権をイギリスが維持し、年間1億100万ポンド(約216億円)で99年間、借り直すことになっていた。
トランプ氏は今年2月、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「ディエゴ・ガルシアを渡すな」と書き込み、批判的な姿勢を表明。「われわれの偉大な同盟国にとって汚点となる」と主張した。
この発言の前日、アメリカ政府はこの計画を正式に支持すると表明したばかりだった。
政府は2月、合意が一時停止されたことを否定したが、その数時間前には、閣僚の一人が議会で、法案成立の手続きを「一時停止している」と述べていた。
英政府の報道官は、「ディエゴ・ガルシアは、英米双方にとって極めて重要な戦略的軍事資産だ」と述べた。
「その長期的な運用上の安全を確保することは、これまでも、そして今後も、我々の最優先事項だ。これこそが、この合意の全理由だ」、「我々は今も、この合意が基地の長期的な将来を守る最善の方法だと考えているが、合意を進めるのは、アメリカの支持がある場合に限られると、常に述べてきた。我々はアメリカおよびモーリシャスと話し合いを続けている」と、英報道官は話した。
2月末に始まった米・イスラエルとイランの紛争では、イランが自国から約3800キロ離れたディエゴ・ガルシア島の米英共同軍事基地を攻撃目標にしていたことが明らかになっている。(中略)
イギリスは1960年代後半に、アメリカにディエゴ・ガルシア島での軍事基地建設を提案し、数千人の住民を島から強制的に移住させた。以降、住民の帰還は認められていない。
チャゴス諸島の出身者の一部はモーリシャスやセーシェルに移住したが、一部はイギリスに移住し、主にウェストサセックス州クロウリーなどに住んでいる。
多くのチャゴス諸島出身者は、この合意を裏切りだと受け止めており、将来、故郷に戻ることができるよう、イギリスが諸島の主権を維持することを望んでいる。
合意を強く批判してきた最大野党・保守党と野党・リフォームUKは、棚上げの発表を歓迎した。
保守党のケミ・ベイドノック党首は、「もしキア・スターマーのチャゴス降伏が、今その正当な居場所、つまり歴史のゴミ捨て場に収まったのなら、それは保守党が初日からこれに反対する闘いを主導してきたからだ」と述べた。
「(合意棚上げに)これほど時間がかかったこと自体、すでに我々のものだった重要な軍事基地を使用するために350億ポンドを支払い、イギリスの主権領土を引き渡そうとした首相に対する、いっそう痛烈な告発だ」
リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、「これは素晴らしい知らせ、待ち望まれていた知らせだ。いま政府は、重大な過ちを正し、チャゴス諸島出身者が故郷に完全に再定住できるよう支援しなければならない」と述べた。
野党・自由民主党の外務担当報道官を務めるキャラム・ミラー議員は、「チャゴス合意の扱いは、保守党政権下での開始から、現在の労働党政権下に至るまで、完全に混乱している」と述べた。
また、「だが、トランプ氏の気まぐれな対応は、彼がいかに信頼できない人物かを示している」と指摘した。【4月11日 BBC】
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【イギリスからモーリシャスに主権を移譲する合意に関して、多くのチャゴス諸島出身者が裏切りだと受け止めている現実的背景】
興味深い点は、イギリスからモーリシャスに主権を移譲する合意に関して、“多くのチャゴス諸島出身者は、この合意を裏切りだと受け止めており、将来、故郷に戻ることができるよう、イギリスが諸島の主権を維持することを望んでいる。”ということ。
一見する逆のようにも思えますが、そこには現実的な理由があります。
****チャゴス諸島の主権移譲に対する住民の反発****
チャゴス諸島をめぐる「主権移譲に対する一部住民の反発」は、単なる領土問題ではなく、強制移住の歴史・帰還権・安全保障・生活再建への不信が複雑に絡んでいます。ポイントを整理すると以下の通りです。
1. 強制移住の歴史(最大の背景)
1960〜70年代、イギリスはディエゴ・ガルシア島に米軍基地を建設するため、約1,500〜2,000人の島民(チャゴシアン)を強制的に追放 移住先は主にモーリシャスやセーシェル
多くは貧困や差別に直面し、「故郷を奪われた」という強い被害意識が形成された
→ このため、彼らにとって問題の核心は「領土」ではなく“帰還の権利”と“歴史的正義”
2. なぜ「英国主権維持」を望む声があるのか
一見すると不思議ですが、理由は現実的です。
(1) モーリシャスへの不信感
モーリシャス政府は主権を主張しているが、具体的な帰還支援策が不透明
チャゴス諸島出身者の政治的影響力は小さい→「主権が移っても、自分たちの生活は改善しないのでは」という懸念
(2) 英国の方が補償・権利保障の期待がある
英国は過去に一定の補償金を支払ってきた 英国司法に訴える手段がある 一部は英国国籍を取得済み
→ そのため「加害者ではあるが、まだ交渉相手として頼れるのは英国」という複雑な心理がある
3. 帰還問題と米軍基地の存在
ディエゴ・ガルシア島は現在も米英にとって極めて重要な軍事拠点であり、中東・アフリカ・アジアへの展開拠点
安全保障上の理由から大規模な民間帰還は制限される可能性が高い
→ つまり、主権がどちらにあっても「実際に自由に帰れるか」は別問題
4. 「裏切り」と感じる理由
今回の主権移譲合意に対し、一部チャゴス諸島出身者が反発するのは:
自分たち抜きで交渉が進んだ 帰還の具体策が不明確 モーリシャスに主権が移ることで英国への法的訴えが難しくなる可能性 「補償や権利が弱まるのでは」という恐れ
→ その結果、「主権移譲=自分たちの立場がさらに弱くなる」と受け止められている
まとめ
チャゴス諸島問題で「英国主権維持を望む声」があるのは、強制移住という歴史的被害、モーリシャスへの不信、英国の方が権利保障の交渉相手として現実的、米軍基地の存在により帰還が不透明・・・といった要因が重なった結果です。
つまりこれは「脱植民地化」 vs 「当事者の生活と権利」が必ずしも一致しない典型的なケースと言えます。
【4月12日 ChatGPT】
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台湾・国民党の中国との関係を重視する戦略に重なる中国に取り込まれた香港のイメージ
(10日、鄭麗文主席(左)と握手を交わす習近平総書記。【4月10日 新華網日本語】)
【アメリカの台湾支援を牽制すべく、国民党主席訪中を厚遇する中国】
中国の台湾統一問題が東アジア・世界の大きな関心事となっている中、連日報道されているように、台湾最大野党・国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席が訪中し、習近平国家主席との会談を行っています。
****習近平氏、台湾の国民党トップと9年半ぶりに会談 「対話」演出***
中国共産党の習近平総書記(国家主席)は10日、北京で台湾最大野党、国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席(党首)と会談した。両党トップによる会談は2016年11月に習氏と国民党の洪秀柱主席(当時)が北京で行って以来で9年半ぶり。
鄭氏は中台の和解と対話を促進すると訴えて、25年11月に主席に就任。習氏の招待に応じて7日から中国を訪れている。【4月10日 毎日】
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鄭氏は中国との対話再開や連携を重視しており、主席を選ぶ選挙戦でも「台湾人が自信を持って『私は中国人だ』と言えるようにしたい」と中国ナショナリズムを強調していました。そのため、鄭氏のもとで最大野党国民党の対中傾斜が強まることが予想されていました。
****習氏と会談の台湾野党主席・鄭氏とは 巧みな弁舌、異例の経歴****
中国共産党の習近平総書記(国家主席)と10日に会談し、「台湾独立への反対」で意見が一致した台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(ていれいぶん)主席(党首)とは、どのような人物なのか。
「1回と言わず、100回でも会う用意がある」 56歳で党を率いる鄭氏は、かねて習氏との会談に強い意気込みを示していた。
中国・雲南省出身の国民党軍人だった父と台湾生まれの母を持ち、大学時代に民主化を求める学生運動「野百合運動」に参加。台湾独立を主張して民進党に入った後、2005年に国民党に移るという異例の経歴を持つ。国民党では巧みな弁舌が評価されて、立法委員(国会議員に相当)などを歴任した。
「全ての台湾人が誇りを持って『私は中国人』だと言えるようにしたい」
25年10月の主席選挙では当初ダークホースとみられていたが、中国のアイデンティティーを強く重視する姿勢を打ち出して当選。頼清徳総統や与党・民進党に対する歯に衣(きぬ)着せぬ批判でも知られ、国民党支持層の中の与党に対する不満を、うまくすくい取った。
「台湾と中国は本来対立する概念ではなく、民進党政権の脱中国化政策で作り出された」というのが持論だ。
ただ、各種世論調査によると台湾全体では台湾人意識を持つ住民が多数派だ。今年3月に行われた世論調査では、鄭氏に対して不信感を持つ住民の割合は5割を超え、信頼しているとの回答は3割を切っている。
また党内でも、勢いのある演説に評価の声がある一方、その支持基盤は強固とはいえない。昨年10月には、独メディアのインタビューでウクライナ侵攻について問われ「プーチン露大統領は独裁者ではなく、民主的に選ばれたリーダーだ」と答え、内外からの批判を呼んだ。【4月10日 毎日】
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訪中した鄭麗文氏は8日には、江蘇省南京にある党の創設者である孫文の墓所「中山陵」を訪ね、中台の現状を「日本帝国主義の刃に切り裂かれた傷が癒えていない」と表現し、日清戦争後の台湾割譲とその後の日本統治を批判しました。高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁をきっかけに対日批判を強める中国政府や共産党と歩調を合わせた・・・とも指摘されています。
また、「両岸(中台)の中国人」などの表現を使い中台の一体性も強調。「私たちはともに両岸の和解と団結を促進すべきだ」などと語っています。
10日は訪中の目的である習近平国家主席との会談に臨みましたが、中国側は友好ムードを演出。アメリカの台湾支援を牽制する狙いがあると見られています。
****台湾野党主席と会談した習総書記、友好ムード演出…米国の台湾支援に歯止めかける狙いか****
中国の習近平(シージンピン)・共産党総書記(国家主席)は、10日の台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(ジョンリーウェン)主席との会談で「両岸(中台)は家族」と強調し、友好ムードを演出した。5月のトランプ米大統領の訪中を前に、米国からの大規模な武器購入に慎重な国民党との連携を利用し、米国の台湾支援に歯止めをかける狙いがあるとみられる。
握手14秒
北京の人民大会堂で行われた会談の冒頭、両氏は14秒間にわたって握手した。習氏は国民党側の出席者に向かって「両党指導者の会談は、(前回の2016年11月から)まもなく10年になる。前回はどなたが参加しましたか?」と笑顔で語りかけるなど和やかな雰囲気で始まった。今回の会談の意義を「共通する家庭の平和と安寧を守るものだ」とも述べ、国民党との連携を進める意向を示した。
一方、中国が敵視する台湾の与党・民進党の頼清徳(ライチンドォー)政権については、「『台湾独立』は台湾海峡の平和を破壊する元凶だ」と述べて敵意をあらわにした。
国民党との対話再開は、トランプ氏の訪中への布石でもある。習政権は、米中首脳会談を通じて、昨年12月にトランプ政権が承認した台湾への大規模武器売却に歯止めをかける狙いがあるとみられている。今回の国共トップ会談を通して「頼政権こそがトラブルメーカー」と主張することで、対米工作の材料にする意図もありそうだ。
対日でも共同歩調
会談で習氏は、日本の台湾統治を念頭に「台湾占領という困難な時代にあっても、台湾同胞は中華民族意識を持ち続けた」と述べ、中台の一体性を強調した。鄭氏も「台湾海峡を外の力が介入する」舞台としないようにすべきだと語り、日米などの「干渉」に反発する習氏に歩調を合わせた。
国民党によると、鄭氏は8日に江蘇省南京にある国民党創設者の孫文の墓(中山陵)を参拝した際、台湾が日本に統治された歴史に触れ、中台の間で「日本帝国主義のやいばによって切り裂かれた傷口がいまだに癒えていない」と批判していた。【4月11日 読売】
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****中国の習氏、台湾・国民党主席と異例の会談 世界の紛争に言及して平和訴え****
中国共産党の習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)は10日、台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(チョンリーウェン)主席と会談した。世界で続く紛争に言及して平和の必要性を訴えるとともに、台湾独立に反対する中国政府の姿勢を改めて示した。
国民党主席と習氏の会談は約10年ぶり。数週間後にはトランプ米大統領が習氏との会談のため訪中する予定で、台湾問題が主要議題に上るとみられている。
習氏は北京の人民大会堂で、「今日の世界は平和とは程遠く、それだけに平和が一段と貴重になっている」と発言した。
中国政府は過去10年間台湾の政権を担ってきた独立志向の民進党との対話を拒否している。中国は台湾を自国の一部と主張し、将来的な武力行使も排除していない。近年は台湾周辺での圧力や軍事演習を強化しており、緊張がエスカレートして地政学的衝突に発展する可能性に懸念が高まっている。
習氏は「海峡両岸の同胞は中国人であり、一つの家族だ」と発言。中国政府は「台湾独立に反対するという共通の政治的基盤の上で」、台湾の政党と協力する用意があると言い添えた。
鄭氏は「両党のたゆまぬ努力を通じ、台湾海峡が潜在的紛争の焦点ではなくなり、外部勢力の介入の舞台にもならないこと」を望むと表明した。
鄭氏による訪中は、台湾の与党が米中両政府からプレッシャーにさらされる中で行われた。中国政府が台湾周辺での軍事的圧力を強化する一方、米政府は停滞している400億ドル規模の防衛予算案の可決を促している。
鄭氏率いる国民党は中国政府との関係改善を重視しており、台湾議会で防衛予算案の成立を阻んできた。
台湾ではトランプ氏は台湾を米中対立の駒程度にしか見ておらず、台湾の未来への関心はないのではないかとの懸念が一部にある。専門家は中国政府がこうした懸念に乗じていると指摘する。
5月に予定される習氏とトランプ氏の首脳会談では、貿易や技術を巡る対立と並び、台湾問題が主な議題になりそうだ。
中国政府は長年、台湾問題を米中関係の最も敏感な側面とみなしており、昨年12月に発表された米国と台湾の110億ドル規模の武器取引を強く非難している。これは記録に残る中で最大規模となる。【4月10日 CNN】
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「国民党と共産党は政治的な信頼を強固にして手を携えて祖国統一という未来を作り出さなければならない」と語る習近平国家主席に対し、台湾の民進党政権は、「民主主義を守り続ける」などと警戒感を示しています。
****中国 習主席 台湾国民党トップと会談“祖国統一という未来を”*****
中国の習近平国家主席は台湾の最大野党 国民党の鄭麗文主席と会談し、「台湾独立」に反対する立場を強調し、「国民党と共産党は、祖国統一という未来を作り出さなければならない」と呼びかけました。台湾の民進党政権は、「民主主義を守り続ける」などと警戒感を示しています。(中略)
国営の新華社通信によりますと、習主席は「中国大陸と台湾は1つの中国に属する」とした上で、「『台湾独立』と外部からの干渉に反対しなければならない」と強調しました。
そして、国民党との対話の強化に意欲を示し、「国民党と共産党は政治的な信頼を強固にして手を携えて祖国統一という未来を作り出さなければならない」と呼びかけたということです。
一方、鄭主席も「台湾独立」に反対する立場を示し、「制度的で持続可能な対話と協力のメカニズムをさらに計画・構築すべきだ」と述べました。
中国は「独立派」とみなす台湾の民進党政権とは対話を行わず、台湾周辺で軍事演習を繰り返すなど圧力を強めています。(後略)【4月11日 NHK】
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【中国との関係を重視するという国民党の戦略の危うさ】
中国との関係を重視するという国民党の戦略については、もちろんそれによって経済的な利益はあるものの、どうしても強力な引力を持つ中国に引きずり込まれてしまうと懸念を拭えません。
中国に呑みこまれてもかまわないと腹をくくっているなら理解できますが、台湾の国際的立場を維持したまま、中国との経済関係を強化して利益を得るということが可能とは思えません。 台湾の現状を維持したまま、中国との関係強化が可能だという国民党の自信はどこから生まれるのか?
*****国民党の中国との関係を重視する政策****
ご指摘の通り、「中国との関係強化=最終的に取り込まれるのではないか」という懸念は、台湾内部でも強く共有されています。そのうえで、中国国民党(国民党)が「現状維持+対中関係強化は両立可能」と考える背景には、いくつかのロジックがあります。
① 「完全な統一」ではなく“曖昧な現状維持”を前提としている
国民党の基本立場は、いわゆる「独立でも統一でもない」状態です。これは過去に形成された「一つの中国だが解釈はそれぞれ異なる」という枠組み(九二共識)に依拠しています。
中国側:最終的な統一を前提
台湾側(国民党):中華民国としての実質的独立を維持
つまり国民党は、「あえて曖昧さを残すことで衝突を避ける」という戦略です。この“戦略的曖昧さ”こそが、現状維持の装置だと考えています。
② 経済的相互依存が「安全装置になる」という発想・・・国民党の中核的な信念はここです。
台湾企業はすでに中国経済に深く依存 中国も台湾の半導体などに依存
この「相互依存」がある限り、中国は軍事的に台湾を壊す選択を取りにくい、という考え方です。
つまり「深く結びつけば、むしろ戦争は起きにくい」というロジックです。
これは冷戦後の欧州(EU統合)などでも見られた発想で、決して独自のものではありません。
③ 中国側の「段階的統一」戦略への読み
国民党は、中国(特に習近平政権)がすぐに武力統一するよりも経済・社会・人的交流で“自然統合”を進めるという戦略も併用していると見ています。
ここで国民党は逆にこう考えます:「交流を増やしても、政治統一は別問題としてコントロールできる」
つまり「経済は開くが、主権は守る」という切り分けが可能だという前提です。
④ 「米国依存だけでは危険」という現実認識
国民党は、対中接近の裏側に別の不安も持っています。
台湾の安全保障は事実上アメリカ合衆国に依存 しかし米国の関与は将来も確実とは限らない このため「対中関係を安定させてリスク分散するべき」という発想になります。
⑤ 過去の成功体験(馬英九政権)
馬英九政権(2008〜2016)では直行便拡大、観光客増加、貿易拡大を実現しつつ、政治統一には進まなかったという実績があります。
国民党にとっては「うまくやればバランスは取れる」という成功体験が強い自信の源です。
ただし、中国に取り込まれる懸念は非常に現実的・・・実際には、国民党の戦略には明確なリスクがあります。
■ 非対称依存の問題
台湾の対中依存 > 中国の対台湾依存→ 力関係は圧倒的に中国有利
■ 経済→政治への波及
投資・ビジネス・人的交流→ 世論や政治に影響が及ぶ可能性
■ 香港の前例
「一国二制度」が実質的に形骸化→ 台湾社会の強い警戒感
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結論(核心)
国民党の自信の源は一言で言うと:「コントロール可能な範囲で中国と付き合える」という前提
しかしこれは経済依存が政治従属に転化しない、中国が現状維持を許容し続けるというかなり楽観的な前提に立っています。
現実の対立構図
台湾内部ではこの問題は明確に分かれています:
国民党:リスクを取りつつ安定と利益を取る 民主進歩党:距離を取り主権を優先【4月11日 ChatGPT】
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【経済依存から中国に取り込まれた香港との比較】
香港の「一国二制度」が決定的に形骸化したのは2010年代後半の政治的動きでした。
主な転換点:2014年:雨傘運動 2019年:逃亡犯条例反対運動 2020年:香港国家安全維持法施行
この2020年の国家安全法が、制度的に一国二制度を大きく変質させた決定打となりました。
ただ、香港の中国化の背景として、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で香港経済は深刻なダメージを受け、そこからの回復を中国経済に頼ったことが香港の中国依存体質を強めたことがあります。
****2003年に流行したSARSが香港にもたらした影響****
① SARS後に起きた構造変化
香港経済の打撃と中国依存への転換:香港は2003年のSARSで観光・小売・不動産が急落、失業率上昇、経済の信頼低下という深刻な打撃を受けました。 その回復策として中国本土との経済統合が急速に進みます。
CEPAと中国人観光客の流入
CEPA(経済連携強化協定)締結 中国本土からの個人旅行(自由行)解禁 中国資本・企業の流入拡大
結果:香港経済は本土依存型にシフトしました。
② 「経済依存」が「政治的影響力」に変わったメカニズム・・・ここが核心です。
段階1:経済的結びつきの深化:観光・不動産・金融で中国の影響力拡大、香港企業も中国市場依存を強める
段階2:利害関係の変化:香港の財界・不動産業界→ 中国との関係維持が最優先に 親中エリート層が強化されました。
段階3:政治への波及:行政長官選出や政策に影響 民主化圧力より安定・対中関係重視【4月11日 ChatGPT】
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台湾・国民党の中国経済への接近路線を見ていると、中国に取り込まれていった香港のイメージが重なります。
*****中国依存に関する台湾と香港の比較*****
結論から言うと、台湾が香港と「同じ道」をそのままたどる可能性は低いですが、別の形で中国の影響力が強まるシナリオは現実的に存在する、というのが多くの専門家の見方です。
① 香港と台湾の決定的な違い・・・まず、この点を押さえることが重要です。
■ 主権の有無
香港:中国の一部(高度な自治)
台湾:事実上の独立国家(独自の政府・軍・選挙)
この違いは本質的です。香港は制度上、中国に組み込まれていたため、最終的な統制強化が可能でした。
一方、台湾は軍隊、選挙による政権交代、独自の外交関係(限定的ながら)を持つため、同じプロセスはそのまま適用できません。
■ 国際環境
台湾にはアメリカ、日本などの関与があります。これは香港にはなかった要素であり、中国が一方的に制度を変えるハードルを大きく引き上げています。
② それでも「似た構造リスク」は存在する・・・ここが重要なポイントです。
同じ道ではないが、似た圧力は確実に存在します。
■ 経済依存 → 政治影響
台湾も対中貿易依存、台湾企業の中国進出という構造を持っています。
このため、企業・地方経済・一部政治勢力が対中関係の安定を優先する圧力になります。これは香港で起きたプロセスと共通しています。
■ 世論・情報空間への影響
中国は近年、メディア・SNS・経済インセンティブを通じて影響力を拡大する手法を強めています。
これは軍事ではなく、内部からの変化を促すアプローチであり、香港でも一部見られた手法です。
結論:台湾が香港と同じ道をたどる可能性は低いが、経済依存・情報戦・内部政治を通じて、より緩やかで見えにくい形の影響力拡大は十分に起こり得ます。
最終的に台湾の帰結を決めるのは、中国の圧力の強さ、国際環境、台湾内部の世論・・・この3つのバランスです。
【4月11日 ChatGPT】
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パレスチナ・ガザ地区 停戦合意発効から半年 相次ぐ死者 難航する和平計画 イラン戦争で関心低下
(パレスチナ自治区ガザ中部デイルアルバラで6日撮影 【4月7日 ロイター】)
【停戦合意発効から半年 今も相次ぐ死者】
昨年10月にパレスチナ・ガザで停戦が発効してから10日で半年が経過します。イスラエル軍は局地的に攻撃を続けており、停戦後も犠牲者が後を絶ちません。
****ガザ地区 停戦合意発効から半年 発効後の死者は730人超****
パレスチナのガザ地区をめぐる停戦合意が発効してから10日で半年になりますが、イスラエル軍の攻撃による死者が730人を超え、住民の犠牲があとを絶ちません。イラン情勢の影響で、住民からはガザ地区への関心が低下することを懸念する声があがっています。
パレスチナのガザ地区では去年10月、アメリカ主導の和平計画に基づき、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で停戦合意が発効し、暫定的な統治を監督する「平和評議会」が発足しました。
ただ、焦点となっているハマスの武装解除やイスラエル軍の撤退に向けては大きな進展は見られず、国連によりますと、いまも物資の搬入は制限され、多くの人がテントでの避難生活を強いられています。
イスラエル軍はハマス側の合意違反などを主張し、散発的な攻撃を続けていて、ガザ地区の保健当局は9日、合意発効後の死者が738人にのぼると発表しました。
先月、中部ザワイダへの攻撃で息子の妻を亡くしたという女性は「イスラエル軍は民間人を攻撃している。彼女は家庭を守る平和な女性だった。停戦合意が発効し、安全に暮らせると思っていた」と話していました。
そのうえで「これまでは何かあればガザ地区について各国が発言していたが、いまは誰も味方をしてくれない」として、アメリカとイスラエルによるイランへの軍事作戦の影響で、ガザ地区への関心が薄れていると訴えていました。【4月10日 NHK】
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9日には、仮設テントで授業を受けていた小学3年の女児が授業中にイスラエル軍の銃弾を受け死亡する事件が起きています。
****イスラエル軍の銃撃、ガザで女子生徒を死亡させる****
イスラエル軍は木曜日、ガザ地区北部の町ベイトラヒヤのテントで開かれていた授業に出席していた若い女子生徒を射殺したと、保健・教育当局が発表した。
教育省によると、小学3年生のリタジ・リハンさんはクラスメートの前で銃弾に倒れ、周囲は”強い精神的ショック “を受けたという。
その後、保健当局によると、ガザ地区北部と南部での2回の空爆で、他に3人のパレスチナ人が死亡し、木曜日の死者数は少なくとも4人となった。
医療関係者によると、ガザ地区北部のジャバリアの病院付近でイスラエル軍による空爆があり、少なくとも2人が死亡、南部のハーン・ユーニスでは別の空爆で1人が死亡した。
イスラエル軍はいずれの事件についても直ちにコメントを発表しなかった。
昨年10月からの停戦の下で、イスラエルは依然としてガザ地区の半分以上を占領している。イスラエル支配地域のほぼすべての建物は平らにされ、住民は追い出されている。
そのため、200万人以上のほぼ全住民は、ガザ地区の約3分の1に閉じ込められ、そのほとんどが間に合わせのテントや損壊した建物の中で、ハマスが率いる政権の管理下で生活を再開している。
ガザに避難した子どもたちは、学校が広範囲に破壊されたにもかかわらず、ボランティア教師による授業を受け、混雑したテントの中で熱心に学んでいる。
こうしたその場しのぎの教室は、厳しい天候、資源不足、治安上のリスクなど、厳しい課題に直面している。
10月の合意発効以来、700人以上のパレスチナ人が殺害され、武装勢力は3人のイスラエル軍兵士を殺害した。パレスチナ人によると、イスラエル軍は黄色いコンクリート標識の一部を西に移動させ、占領されていない領域に侵入しているという。イスラエルはこれを否定している。
イスラエルによるガザ攻撃は、ガザの保健省によれば、71,000人以上の死者を出した。戦争の引き金となったのは、2023年10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃で、イスラエルの集計によれば、約1200人が死亡した。【4月10日 ARAB NEWS】
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6日には学校近くの避難民居住区へのイスラエル軍の空爆があり、少なくとも10人が死亡したとのこと。
****ガザ学校近くで空爆、死者10人超 パレスチナ人避難民密集地域****
ガザ保健当局者によると、パレスチナ人避難民が暮らす学校の外で6日、イスラエル軍による空爆があり、少なくとも10人が死亡し、数人が負傷した。空爆前には、イスラエルが支援する民兵組織が人々を拉致しようとして学校を襲撃し、一部のパレスチナ人住民と衝突したという。
当局者らによると、イスラエル軍の無人機(ドローン)がミサイル2発を発射した。
同地域はパレスチナ人避難民が密集する場所で、民間人の死者がどれほど含まれているかは、すぐには明らかになっていない。
医療関係者によると、ガザ市でオートバイで移動していたパレスチナ人1人がイスラエル軍の空爆で死亡し、子ども1人が負傷した。さらにガザ中部でもイスラエル軍が車両に発砲し、1人が死亡した。一連の攻撃による死者は少なくとも12人に達した。
イスラエル軍は、「識別標識のない車両」が「警告射撃」を受けた後も部隊に向かって加速し続けたため発砲したと説明した。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、ガザでWHOの業務委託先の職員が、治安上の事案で死亡したと発表した。WHOはガザから南部ラファ経由でエジプトへ向かう医療搬送を、追って通知があるまで停止した。【4月7日 ロイター】
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“この事案の正確な経緯は依然として不明だが、目撃者によれば、マガジの東側に民兵組織が設置した検問所をハマスの治安要員が攻撃したことが、衝突の引き金となったという。
また、イスラエルのドローンが民兵組織を支援するために介入し、3カ所でハマス要員を攻撃したという。”【4月7日 BBC】
上記【ロイター】記事にある“イスラエルが支援する民兵組織”とは、「イスラエルと公式に共同してハマス掃討や治安維持にあたっているパレスチナ人組織」というものではなく、ガザにはハマスと敵対する様々な組織が存在し、ハマスと敵対するという共通の利害から、イスラエルから情報やときに物資・資金の提供を受ける緩い関係が成立しているケースもあることを指しています。
****“イスラエルが支援する民兵組織”とは****
ごく限定的・非公式な形で、イスラエルと利害が一致し、結果として「支援を受けている」と見られるパレスチナ人武装グループは存在し得る。ただしそれは、いわゆる「治安維持パートナー」とは性格が大きく異なります。
■ 想定される実態
ロイターのいう「イスラエルが支援する民兵組織」は、一般に次のようなタイプを指している可能性が高いです。
1. 反ハマス系のパレスチナ武装勢力
ハマスと対立関係にある地元武装集団
氏族・地域単位の武装グループ
過去にファタハ系に連なる流れを持つ者もいる
これらはハマスの統治への不満、権力争い・利権争いといった理由でハマスと衝突することがあります。
2. イスラエルとの「間接的な関係」
ここが重要なポイントですが、「支援」といっても通常は以下のような形です。
情報提供・接触 一部の行動を黙認 場合によっては物資・資金の流入が疑われる
つまり公式な同盟関係ではなく、利害の一致による非公開・非制度的な関係です。
■ ただし誤解しやすい点
この種の報道から「イスラエルとパレスチナ民兵が協力して治安維持している」と理解するのは正確ではありません。理由は以下です。
・統制された協力関係ではない(指揮系統は共有されていない 作戦を共同で計画しているわけではない)
・非常に流動的で不安定(今日協力的でも、翌日には敵対する可能性 内部抗争や犯罪行為(拉致・略奪)も多い)
・住民からの正統性が弱い(イスラエルの「協力者」と見なされるリスク)
民兵自身が治安を悪化させる要因になる場合もある
■ 歴史的に見るとこの構図は珍しいものではなく、イスラエルは過去にも 敵対組織を分断するために対抗勢力を利用、ただし長期的な安定にはつながらないケースが多いという経緯があります。
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■ まとめ
ロイターの表現は、ガザ内部にハマスと対立し、結果としてイスラエルと利害が一致する武装グループが存在する可能性を示唆しています。
ただしそれは正式な「協力関係」でも治安維持のパートナーでもなく、極めて限定的・非公式・流動的な関係にとどまる、というのが実態です。【4/10 ChatGPT】
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【難航するガザ和平計画「第2段階」 ハマスの武装解除問題】
イラン戦争にかまけて、記憶が曖昧になってしまいましたが、半年前に合意された和平計画については、今年1月14日、第1段階(停戦、イスラエル軍の一定ラインまでの部分撤退、人質・囚人の交換、人道援助の搬入量増加)を終えて、第2段階(ガザの再建と完全な非武装化)に入ったとされています。
****アメリカ、ガザ和平計画「第2段階」開始を発表 技術官僚による暫定的統治機構を設置****
アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使は14日、パレスチナ・ガザ地区に関して、ドナルド・トランプ米大統領の和平計画の第2段階の開始を発表した。第2段階では、ガザにパレスチナ人テクノクラート(技術官僚)による暫定的な移行統治機構が置かれることになっている。
イスラム組織ハマスとイスラエルは昨年10月、和平計画の第1段階に合意。戦闘を停止し、イスラエルからガザに連れ去られた人質とイスラエルにいるパレスチナ人囚人をそれぞれ引き渡したほか、イスラエル軍が部分撤退し、ガザへの人道援助の搬入量を増やした。
ウィトコフ特使は、第2段階ではガザの再建と完全な非武装化が進められると説明した。非武装化には、ハマスや、パレスチナのほかの勢力の武装解除が含まれる。(中略)
しかし第2段階には、今後問題になり得る重要なポイントが二つある。
一つ目は、ガザの非武装化だ。ハマスはこれまで、独立したパレスチナ国家の樹立なしに武装解除はできないと主張している。二つ目は、イスラエル軍のガザからの完全撤退だ。イスラエルは第1段階の部分撤退には応じたが、完全撤退については約束していない。
ガザでの停戦もぜい弱で、ハマスとイスラエルは互いに、相手が停戦合意に違反していると非難し合っている。ハマス運営のガザ保健省は、昨年の停戦発効後もイスラエルがガザを空爆し、450人近いパレスチナ人が殺害されたとしている。
国連によると、ガザの人道状況は依然深刻で、不可欠な物資の制限なき搬入が必要だと強調している。(後略)【1月15日 BBC】
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当初から予想されたようにハマスの武装解除は難航しています。
****武装解除の問題が和平計画の障害に****
武装解除の問題は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が示した20項目の和平計画における第2段階への移行を進めるうえで、大きな障害の一つとなってきた。
ハマスの代表団は先週、エジプトとカタール、トルコの仲介者とカイロで会談。アメリカが主導する「平和評議会」が求めている武装解除に対する最初の回答を示した。
イスラエルとハマスの戦争終結を目的として設立された同評議会は、国連安全保障理事会の承認を受けている。アメリカが示した和平計画の第2段階には、ハマスの武装解除とガザ再建が含まれている。
ハマスの軍事部門のアブ・ウバイダ報道官は5日、トランプ氏の和平案の第1段階におけるイスラエル側の約束が履行されるまでは、いかなる武装解除の議論も受け入れられないと述べた。
「このような粗雑な形で武器の問題を持ち出すことは受け入れられない」、「敵が戦車と破壊によって我々から奪えなかったものを、政治や交渉の場で奪うことはできない」と、とウバイダ報道官は強調した。(後略)【4月7日 BBC‟ガザで10人殺害されたと現地情報筋、イスラエルの空爆やハマスと民兵組織の衝突で”】
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【イラン戦争の影響で更に困難も 最大の問題は関心の低下か】
ハマスの武装解除だけでなく、イラン戦争の影響で資金拠出や「国際安定化部隊」(ISF)編成なども難しくなっています。
****停戦半年 ハマス武装解除難航 ガザ復興資金停滞****
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦が発効してから、10日で半年。中東では米国・イスラエルとイランの戦闘の影響で、ガザの和平に向けた協議に大きな注目は集まっていない。最大の懸案であるハマスの武装解除を巡っても双方の合意には至っておらず、先行きは見通せない状況が続いている。
「ガザの和平計画は国際社会も支持している。今こそ実施に向けて合意すべきだ。イスラエルとパレスチナ双方のためにも、猶予はない」。元国連特別調整官(中東和平担当)で、ガザ暫定統治機関「平和評議会」のガザ上級代表を務めるムラデノフ氏は1日、X(ツイッター)でこう指摘し、和平計画を進めるように訴えた。
イランでの戦闘を受け、ガザの和平計画を巡る協議は一時、中断を余儀なくされた。ただ、3月中旬には平和評議会がハマスに対し、武装解除に向けた計画を提示。ハマス側が受け入れるかが焦点となっている。
ロイター通信によると、計画は5段階に分かれ、計8カ月間かけて実行する。第1段階では、ハマスから統治権限を引き継ぐ「ガザ行政国家委員会(NCAG)」が行政と治安を掌握。第2段階でイスラエル軍が戦車などの重火器を撤去し、「国際安定化部隊(ISF)」が展開する。
第3段階が最も重要とされ、ハマスが重火器をNCAGに引き渡し、地下トンネルの破壊を受け入れる。その後、第4段階としてNCAGがハマスのライフル銃などの軽火器の回収や登録を行い、イスラエル軍が撤退を開始。最終段階でイスラエル軍は「安全保障区域」をのぞき完全に撤退し、ガザの復興に着手する。
この案について、ハマス側は受け入れに難色を示している。4月1、2日にエジプト・カイロで開いたカタールなどの仲介国との協議では、イスラエル軍がガザで攻撃を続けたり、占領地を拡大したりしていると批判。これらの問題が解決されない限り、武装解除を巡る交渉には応じないとの立場を強調した。仲介国は受け入れに向けて圧力を強めているとみられるが、先行きは見通せない。
ガザの復興資金を巡っても、イランの戦闘が影を落とす。サウジアラビアなどの湾岸諸国など9カ国が計70億ドル(約1兆1000億円)以上を拠出する予定だったが、これらの国ではイランの攻撃による被害が相次ぎ、資金拠出が滞っているという。
ガザの治安維持を担う国際部隊であるISFを巡っても暗雲が漂っている。インドネシアは約8000人の部隊を派遣予定だったが、プラボウォ大統領は3月中旬、派遣を「延期する」と表明した。イランでの戦闘を巡り、国民の多数を占めるイスラム教徒を中心に、米主導のガザの和平計画に関与することへの批判が高まっているためだ。インドネシアはISF最大の派遣国になる見込みだっただけに、参加が見送られれば、計画全体に影響を及ぼす可能性がある。
ガザ保健当局によると、停戦発効後のガザ側の死者は700人を超えた。2023年10月の戦闘開始以降の死者数は計7万2000人以上に上っている。【4月10日 毎日】
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最大の問題は、国際社会、和平案提唱者トランプ大統領のパレスチナ・ガザへの関心の低下でしょう。
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米大統領とNATO事務総長の会談で欧米間の“決裂”は回避 グリーンランド問題再燃 新たな欧州安保
(ルッテ事務総長(左)とトランプ大統領(2025年6月のNATOサミットで)【4月9日 Bloomberg】)
【「トランプのささやき役」ルッテNATO事務総長】
以前から取り上げているようにトランプ大統領と欧州の間の溝・確執は、トランプ大統領がアメリカのNATO脱退に再三言及するなど根深いものがあります。特にイラン戦争に欧州が協力的でなかったことがトランプ大統領としては腹に据えかねています。(4月2日ブログ“トランプ大統領、イラン戦争への欧州の不協力を理由にNATO離脱に言及するも、2日演説では言及なし”)
****トランプ氏、対イラン作戦で非協力的なNATO加盟国から米軍撤退検討=報道****
トランプ米政権は、米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦に非協力的だったとみなされる北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部を罰する計画を検討している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が8日、政権関係者の話として報じた。
報道によると、非協力的とみなされる国から米軍を撤退させ、より協力的だった国に配置する内容が含まれるという。ロイターはこの報道を確認できていない。【4月9日 ロイター】
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加盟国は別にアメリカの臣下でもありませんから、NATOの守備範囲外の中東でアメリカが勝手に始めた戦争に協力しないからといって、意に沿わない加盟国を“罰する”という発想自体に問題があるように思えますが。 トランプ“王”には、そういう話は通用しないようです。
欧州側としては言いたいことは多々あるところですが、現実問題としてアメリカ抜きの欧州安全保障は困難なため、何とかトランプ“王”をなだめる必要があります。
この“なだめ役”を担っているのがルッテNATO事務総長です。
****【解説】 トランプ氏がNATO離脱についてまた発言、今回はどんな意味があるのか****
(中略)
NATOの指導者、なかでもマルク・ルッテ現事務総長は、アメリカのNATO残留がトランプ氏にとってもアメリカにとっても利益になると説得するのに、再び時間を費やすことになるだろう。
ルッテ氏は、(前任者の)ストルテンベルグ氏と同様、予測不可能なトランプ氏を味方につけようと公私を問わず尽力していることから、「トランプのささやき役」と呼ばれている。称賛という武器を駆使する元オランダ首相のルッテ氏は、今年初め、NATO加盟国デンマークの半自治領のグリーンランドを「奪う」と脅したトランプ氏を、危機の瀬戸際から引き戻す上で重要な役割を果たしたと広く見られている。
一方でルッテ氏は、アメリカのイランとの戦争について、トランプ氏が「全世界を安全にするため」に行っているとして断固支持しているのは行き過ぎだとして、NATO加盟諸国から批判を浴びている。
ただ、ルッテ氏の最優先事項は、ウクライナや中東、そしてホワイトハウスからの脅威が高まる中で、77年の歴史を持つNATOを崩壊させないことにある。【4月2日 BBC】
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ただ、ルッテ氏がトランプ大統領をなだめようとして示す融和的な姿勢・発言には批判もあります。
****NATO事務総長の親トランプ姿勢に欧州で疑問、同盟の結束問われる****
NATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長の対米姿勢について、欧州から疑問の声が上がっている。
2月28日に米国とイスラエルが同盟国と協議しないままイランを攻撃し、欧州首脳らが混乱と経済的打撃を懸念して身構えていた中、ルッテ氏はテレビでトランプ米大統領の決定を擁護し、欧州は「極めて喜んでいる」と述べた。
しかし実際にはそうではなかった。匿名を条件に述べた事情に詳しい関係者によると、欧州の同盟国は、ルッテ氏のトランプ氏に対する融和的な姿勢が適切なのか、あるいは実際に効果を上げているのか疑問を抱き始めている。
ルッテ氏はトランプ氏と関係を築いたものの、トランプ氏はウクライナ支援を削減し、ロシアの財政を潤し、イランとの戦争で世界経済を揺さぶった。関係者の一人は、ルッテ氏がイラン戦争に強気の姿勢を示したことで、トランプ氏にNATOは自分の行動を支持してくれると期待させた可能性があると懸念を示した。
トランプ氏はNATOの意義を繰り返し疑問視し、加盟国に圧力をかけ、つい先週も離脱をほのめかした。8日にはルッテ氏がホワイトハウスを訪れ、あらためてNATOの立て直しに向けた対応に当たる。ルッテ氏は、ホルムズ海峡での船舶保護や対イラン攻撃への基地提供を加盟国が拒否したことに対するトランプ氏の怒りを和らげようとするだろう。
問われているのはNATOの結束だけでなく、世界における欧州の立場そのものでもある。NATOに対する米国の関与への疑念が強まる中で、欧州は、同盟国の防衛を拒む米国という、第2次世界大戦以来直面したことのない軍事・経済の現実に備えようとしている。
NATOの元報道官で英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のオアナ・ルンゲスク氏は「これはまさに、米国と欧州の敵が見たいと望んでいる光景だ」と述べ、「ロシアと中国にとっては夢のような状況だ」と語った。
欧州の外交当局者によると、ルッテ氏の長期的な目標は、今年7月にアンカラで予定されているNATOの年次サミットを確実に開催することにある。この緊張した状況を踏まえれば、それだけでも成果と言える。
最終的には、ルッテ氏がトランプ氏を称賛しようと批判しようと、その劇的な決断を止めることはできないとの認識が共有されていると、別の欧州外交当局者は語った。
「過酷で報われない仕事だ」と、ルンゲスク氏は語った。【4月9日 Bloomberg】
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【トランプ・ルッテ会談 「最悪の事態」は回避 グリーンランド問題は再燃】
そのルッテNATO事務総長とトランプ大統領の会談が8日、ホワイトハウスで行われました。ルッテ氏は“王”の不満をさんざん聞かされたようです。
****アメリカの「NATO脱退」議論か…ルッテ事務総長と会談のトランプ氏「我々が必要とした時にいなかった」****
米国のトランプ大統領は8日、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長とホワイトハウスで会談し、対イラン軍事作戦について協議した。
トランプ氏はNATO加盟各国が軍事作戦に非協力的だったとして不満を強めており、米国の脱退の可能性も議題になったとみられる。会談は、非公開で行われた。
ルッテ氏は会談後、米CNNのインタビューで、トランプ氏と「率直でオープンな議論を行った」とし、「欧州諸国の大多数が基地の提供や上空通過に協力的で、責務を果たしている」と説明したと明らかにした。トランプ氏が「多くのNATO加盟国に明らかに失望している」とも述べた。
ルッテ氏は、米国のNATO脱退についてトランプ氏と意見を交わしたかどうかを明らかにしなかった。キャロライン・レビット米大統領報道官はこの日、会談前に行われた記者会見で、NATO脱退に関しても協議するとの見通しを示していた。
トランプ氏は会談後、「NATOは我々が必要とした時にそこにいなかったし、また必要になった時もいないだろう」と自身のSNSに投稿し、改めて不満を表明した。
ルッテ氏はトランプ氏との会談に先立ち、ルビオ米国務長官とも会談し、ロシアのウクライナ侵略や、米国とNATO加盟国との連携強化や負担の分担などについて協議した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは8日、トランプ米政権が、対イラン軍事作戦で非協力的だったNATO加盟国から米軍を撤退させ、協力的な国に駐留させることを検討していると報じた。対イラン攻撃を巡っては、イタリアやスペインが米軍の基地使用を拒否した。【4月9日 読売】
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トランプ大統領は、イラン戦争への欧州の非協力ももちろんですが、グリーンランド問題についても相当に根を持っているようです。
****トランプ大統領「グリーンランドを渡そうとしない」 NATOの対応を批判****
アメリカのトランプ大統領は欧米諸国が加盟する軍事同盟のNATO=北大西洋条約機構について、「グリーンランドを渡そうとしない」と批判しました。
トランプ大統領
「実を言うと、すべてはグリーンランドから始まった。我々はグリーンランドが欲しい。NATOは渡そうとしない。それで私は(NATOに)『バイバイ』と言った」
トランプ大統領は6日、NATOについて、イラン攻撃の際に「我々を助けなかった」と述べたうえで、NATOへの不信のきっかけは自身が領有に意欲を示すグリーンランドへの対応にあると主張しました。
トランプ大統領は今月、イラン攻撃への支援不足を理由にNATOからの離脱を真剣に検討していることを明らかにしています。【4月7日 TBS NEWS DIG】
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今回のルッテ氏のトランプ大統領との会談はアメリカがNATOから手を引くという「最悪の事態」は回避されましたが、トランプ大統領が根に持つグリーンランド問題がまた蒸し返されたようです。
****米NATO会談で「最悪の事態」回避 グリーンランド問題は再燃か****
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は8日のトランプ米大統領との会談で、米イスラエルによる対イラン軍事作戦での欧州側の立場を説明した。
トランプ氏は会談後、NATOへの失望とともに、米国による領有を主張するデンマーク自治領グリーンランドについて「忘れるな」と自身のソーシャルメディアに投稿した。欧米間の亀裂を深めたグリーンランド問題が再燃する可能性がある。
「2人の良き友人同士の話し合いだった」。ルッテ氏はトランプ氏との会談後、米CNNテレビのインタビューでそう強調した。
トランプ氏は、欧州諸国が対イラン軍事作戦に「非協力的だ」との不満を募らせてNATO脱退の可能性に言及してきた。会談の焦点は、ルッテ氏がトランプ氏の怒りを和らげ、米欧の軍事同盟への関与低下を食い止めることができるかだった。
会談内容の詳細は明らかにされていないが、ルッテ氏はCNNで「トランプ氏は私の話に注意深く耳を傾けてくれた。欧州諸国の大多数が基地の提供や後方支援、領空通過の許可などで協力した事実を指摘した」と説明。NATOが機能不全に陥る最悪の事態は回避できた模様だ。
グリーンランド再浮上も
ただし、トランプ氏は会談後に自身のソーシャルメディアで「グリーンランドを忘れるな。あの広大で管理がずさんな氷の塊を」と投稿している。
グリーンランドを巡っては、トランプ氏は1月、南米ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した直後に「安全保障上の懸念」を理由に領有を主張。軍事行動の可能性も排除しない姿勢を示し、反対する欧州8カ国に追加関税を課すと表明した(後に撤回)。欧州側は反発し、欧米関係の悪化があらわになった経緯がある。
この時もルッテ氏がトランプ氏と会談し、米国とNATOで北極圏の安全保障などを含めた将来の枠組みを構築することで合意し、トランプ氏の態度が軟化した。トランプ氏の今回の投稿の意図は不明だが、グリーンランド問題が米欧間の懸念として再浮上する可能性がある。
真意測りかねる欧州
NATO脱退の可能性をちらつかせるトランプ氏だが、大統領の一存で決定できるわけではない。米国防権限法は脱退に上院の3分の2以上の賛成などが必要と定めている。しかし、トランプ氏が米軍の関与を低下させれば、NATOの防衛力維持が困難になるのも事実だ。
また、欧州の安全保障の最優先事項であるウクライナへの支援を巡っては、NATO加盟国は「ウクライナ優先要求リスト(PURL)」という仕組みで米国から兵器を購入し、ウクライナに供与している。英紙フィナンシャル・タイムズによると、トランプ氏は対イラン軍事作戦への欧州諸国の姿勢に逆上し、こうした支援をやめると脅したという。
米国とイランは2週間の停戦で合意したものの、予断を許さない状況が続いている。トランプ氏の場当たり的な対応に欧州側が真意を測りかねる場面も増えてきており、欧米関係の悪化に歯止めがかかるかは見通せない。【4月9日 毎日】
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ルッテ氏からはトランプ大統領“懐柔策”として、NATOによるホルムズ海峡の航行安全確保に向けた海上任務の実施が示されたと思われます。
****NATO、ホルムズ海峡で任務検討=米との関係維持も狙い―独紙報道****
ドイツ紙ハンデルスブラット(電子版)は8日、欧州外交筋の話として、北大西洋条約機構(NATO)がホルムズ海峡の航行安全確保に向け、海上任務の実施を検討していると報じた。まず有志連合として開始し、7月にトルコで開かれるNATO首脳会議で正式任務に移行する構想が浮上しているという。
同紙によると、任務は米国のNATOへの関与確保につながるほか、同盟の価値を米国に示す狙いもある。
NATOのルッテ事務総長は8日、ワシントンでトランプ米大統領と会談し、対イラン軍事作戦を巡り生じた加盟国間の対立の解消を図る見通し。この構想については、トランプ氏を懐柔するための「見返り」となる可能性があるという。【4月8日 時事】
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【欧州側 新たな欧州安保の形を模索する動き】
ただ、欧州側としてもトランプ大統領をなだめるだけではもうすまない・・・という空気も強まっており、フランス・マクロン大統領のフランスの核の傘を欧州に広げる構想など、新たな欧州安保のあり方を模索する動きも出ています。
欧州の中でもトランプ大統領との確執が目立つのが左派政権のスペイン・サンチェス首相。その歯に衣着せぬ発言から、トランプ大統領にはスペインとの貿易を断つと脅迫されてもいます。
****スペイン首相、今回の中東戦争は2003年イラク戦争より「はるかに悪い」****
スペインのペドロ・サンチェス首相は25日、米イスラエルによる対イラン攻撃で始まった中東戦争は2003年のイラク戦争よりも「はるかに悪い」シナリオを呈していると警告した。
サンチェス氏は議会で中東戦争について、「違法なイラク戦争と同じシナリオではない。われわれははるかに悪い事態に直面している。はるかに悪い。その潜在的な影響は、イラク戦争よりもはるかに広範囲かつ深刻だ」「今回は、不条理で違法な戦争だ。経済、社会、環境に関する目標達成を阻害する残酷な戦争だ」と述べた。
穏健左派・社会労働党を率いるサンチェス氏は、ドナルド・トランプ米大統領にスペインとの貿易を断つと脅迫されているにもかかわらず、対イラン攻撃のためにスペイン南部の基地を米軍に使用させることを拒否している。
サンチェス氏は、2003年に米国が始めたイラク侵攻は目的を達成できなかったばかりか一般市民の生活を悪化させたと指摘し、燃料や食料品価格の急騰、移民危機、欧州でのイスラム過激派による攻撃につながったと述べた。
サンチェス氏は、対イラン攻撃が何百何千万人もの人々にイラク戦争と同様の経済的影響を与える可能性があると警告。
「すでに目の当たりにしているように、中東に投下される爆弾はすべて、最終的には私たちの家計を直撃する」「世界を炎上させる者がいる一方で、その灰をかぶる者がいるのは不公平だ。スペイン人や他の欧州人が、この違法な戦争のために懐を痛めなければならないのは間違っている」と述べた。
イラク戦争への言及は、スペインの有権者の共感を呼ぶかもしれない。
当時政権を握っていた中道右派・国民党(旧国民同盟)がイラク戦争を支持し、軍を派遣したことは多くの国民に嫌われ、大規模な抗議デモも起きた。
一部のアナリストは、このことが2004年3月の総選挙での社会労働党の予想外の勝利への道を開いたと指摘している。
選挙の数日前には首都マドリードでイスラム過激派による凄惨な爆破事件が発生。国際テロ組織アルカイダの分派が犯行声明を出し、イラクからのスペイン軍撤退を要求した。
スペインの全国紙パイスが6日に公表した世論調査によると、スペイン国民の過半数(53.2%)が、南部にあるロタ海軍基地とモロン空軍基地を米国に使用させないというサンチェス氏の判断を支持している。 【3月26日 AFP】
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サンチェス首相もやみくもにトランプ批判をしている訳ではなく、国内の反トランプ・反イラン戦争の世論を受けて、強硬姿勢が政治的にメリットがあると踏んでの発言でしょう。
そのスペイン・サンチェス政権は、新たな欧州安保の形としてEU統合軍創設を進めるべきだとしています。
****トランプ氏発言が欧州安保の動き誘発、統合軍創設も視野=スペイン外相***
スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外相は7日、トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)加盟国への不満を表明し、NATOからの離脱の可能性に言及していることが、欧州諸国による安全保障に関する新たな動きを誘発していると述べた。欧州連合(EU)は統合軍の創設に向けて前進すべきだとも言及した。
アルバレス氏はスペインの民間テレビで、離脱に関してはトランプ氏が判断するものだとしながらも、米同時多発テロ後にNATO加盟国が米国に連帯を示したと強調。「NATOは欧州と米国の双方にとって互恵的な同盟だ。ただ、米政権の発言や姿勢は、欧州が主権や防衛において新たな一歩を踏み出させる契機となる」との見解を示した。
アルバレス氏は「われわれは自国民の安全や抑止力を自らの手で確保する必要がある」と言及し、EUの統合軍の創設に向け、防衛産業の統合を進めるべきだとの考えを示した。デジタル単一市場や資本市場での連携深化も促した。【4月8日 ロイター】
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もちろん、実際にEU統合軍創設という話になれば様々な解決すべき問題が出てきますが、こういう話が表に出てくること自体がトランプ大統領がもたらした欧州とアメリカの間の溝、新たな関係構築の必要性を示しています。
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イラン戦争「2週間停戦」 “わらつかんだ”トランプ大統領 イラン側の成果は体制求心力と海峡支配
(2週間の停戦を受け、集まる人々(テヘランで8日)【4月8日 WSJ】)
【“わらつかんだ”トランプ大統領 急転直下の「出口」駆け込み】
ホワイトハウスはイラン攻撃の「2週間停戦」について「米国にとっての勝利だ」と強弁していますが、とてもそのような状況でないことは誰の目にも明らかです。
****2週間停戦は米国にとって「勝利」 ホワイトハウス****
米ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は7日、イランとの交戦における2週間の停戦を称賛し、米国にとっての「勝利」だと述べた。
レビット氏はX(旧ツイッター)への投稿で、「これはトランプ大統領と素晴らしいわが軍が成し遂げた、米国にとっての勝利だ」「わが軍の成功が最大限の交渉力を生み出し、トランプ大統領とそのチームが困難な交渉に臨むことを可能にした。そして今、外交的解決と長期的な平和への道が開かれたのだ」と述べた。 【4月8日 AFP】
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実態は、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖による原油価格の高騰で国内外の世論が悪化し、トランプ大統領は更に成算の見込めない「文明消滅」の大規模攻撃に踏み切るのか・・・追い込まれていたと思われます。
****緊迫から一転 米とイラン、なぜ停戦合意 トランプ大統領の狙いと今後【ワシントン中継】****
急転直下、停戦に合意したアメリカとイランですが、その背景に何があったのか、NNNワシントン支局長の山崎大輔記者が解説します。
■土壇場でイランが“ホルムズ海峡の開放を保証”か
──トランプ大統領の狙いは何なのでしょうか。
原油価格の高騰で追い込まれていたのはトランプ氏の方でしたので、「ホルムズ海峡の開放」を条件に合意することを優先しました。
そして、アメリカメディアが先ほど、舞台裏を報じました。
それによりますと、停戦発表の直前までアメリカ軍の当局者たちも、大規模攻撃の準備を進めていて、停戦を予想していなかったということです。
ただ、イランが土壇場でホルムズ海峡の開放を保証したため、急転直下、停戦に舵を切ったとみられます。また、原油価格の高騰を避けたい中国も、友好国であるイランに停戦に応じるよう促したともみられています。そして最終的には、イランの最高指導者モジタバ師がアメリカとの停戦を進めるよう、自ら指示したということです。(後略)【4月8日 日テレNEWS】
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“意識不明状態”とも言われる最高指導者モジタバ師に最終判断する能力があったのかどうかは定かではありませんが、イランが「ホルムズ海峡の開放」をのんだことで「急転直下」で「出口」に駆け込んだ・・・といったところ。
****トランプ氏、土壇場で停戦合意の舞台裏 「文明消滅」と警告から一転****
バンス氏が交渉に加わり、トランプ氏が決断。しかしホルムズ再開への道はまだ不透明
(中略)トランプ氏の決断は土壇場のものだった。事情に詳しい米当局者によると、トランプ氏がパキスタンの提案について十分な説明を受けたのは8日午後遅くで、停戦を発表した自身のSNS投稿の約2時間前だった。提案が自身の条件を満たすかどうかの判断は、トランプ氏ただ一人に委ねられていたという。
具体的な進展は見えず
「この長期的問題の解決に近づいた」とトランプ氏は主張しているが、問題の沈静化に向けた具体的な進展は、ほとんど示されていない。
「トランプ氏が今夜、出口戦略を選んだこと自体には安心している」と、リバタリアン系シンクタンクのディフェンス・プライオリティーズで軍事分析部長を務めるジェニファー・カバナー氏は述べた。
「ただし、譲歩の仕方は最悪だった。事前に緊張を極限まで高めたことで、自身の信頼性と米国の力に対する国際的認識へのダメージは非常に大きいものとなった。これは米国にとって明確な戦略的敗北だ」ともカバナー氏は指摘した。(後略)【4月8日 Bloomberg】
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「大統領が2週間の停戦を受け入れた決断は、イランがホルムズ海峡を開放することが前提ではあるが、大統領が求めていた出口を与え、一時的な勝利を主張することを可能にする」(アトランティック・カウンシルで中東安全保障を担当するジョナサン・パニコフ氏)【同上】とのことですが、「イラン軍との調整や技術的な制約を考慮した上で、今後、2週間にわたってホルムズ海峡の安全な航行が可能になるだろう」(イラン・アラグチ外相)の発言に見られるように、イランの海峡コントロールを事実上認めた内容にもなっています。
トランプ大統領・アメリカ政府はこれまで、イランは表向きには強硬姿勢を見せているが、水面下ではより柔軟で交渉に前向きだと主張してきていますが、アメリカ側の要求とイラン側が「犯罪国家であるアメリカに10項目の計画を受け入れさせることで、歴史的な勝利を収めた」とする要求とは未だ天地の開きがありますが、トランプ大統領としてはとにもかくにも「2週間停戦」という「出口」に駆け込まざるをえなかったといったところでしょう。
その意味では中林美恵子氏の「トランプ氏としては出口を求め、わらをもつかむ思いだっただろう」という指摘が妥当かも。
****わらつかんだトランプ氏=中林美恵子・早稲田大教授―イラン・識者談話****
トランプ米大統領はイランの発電所を攻撃すると言っていたが、市民に影響が出る戦闘には米国内からも大きな批判が出ていた。相当な勝算がなければ踏み切れない状況で、トランプ氏としては出口を求め、わらをもつかむ思いだっただろう。
イランが要求するホルムズ海峡の管理や制裁解除などの10項目は米国の求める条件とは懸け離れており、2週間の交渉は非常に困難なものになるとみられる。交渉期間を延長する可能性はあるが、11月にはトランプ政権の政策実行力を左右する中間選挙が控えており、トランプ氏は時間との闘いになる。
トランプ氏には、イランに譲歩を迫るためには戦闘再開という軍事カードしかないが、交戦が長引くほど熱狂的支持層「MAGA(マガ)」からも批判が強まる。中間選挙に対する熱量が下がり、票に直結する問題だ。
新たな合意がオバマ政権時代に結ばれたイラン核合意よりも劣る内容になれば、野党民主党にとっては大きな切り札になる。トランプ氏流の言い回しで玉虫色に脚色し、米国民を納得させられるかにトランプ氏の今後の政治的命運が懸かっているといえる。【4月8日 時事】
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【イラン側の「成果」の一つが、イラン体制が思いのほか強固であることを内外に示し、体制への不満も強かった国内にあって、むしろ求心力が強まったようにも見られること】
「犯罪国家であるアメリカに10項目の計画を受け入れさせることで、歴史的な勝利を収めた」というイラン側の主張もプロパガンダ的なレトリックで、“トランプ氏は投稿で、イランから「10項目の提案」を受け取ったと明かし、今後の交渉の基盤になるとの認識を示した。”【4月8日 読売】ということで、あくまでも“今後の交渉の基盤”として認めただけで、その内容をアメリカが認めた訳でもありません。
言うまでもなく、今回戦争でイラン側が被った被害は甚大なものがありますが、「成果」としてはイラン体制が思いのほか強固であることを内外に示し、体制への不満も強かった国内にあっては、アメリカ・イスラエルの期待に反して、むしろ求心力が強まったようにも見られることでしょう。
****テヘラン、停戦合意に安堵と喜び 反体制派は「自由への道閉じた」****
米国とイランの停戦合意が発表された8日、連日の爆撃を受けてきたイランの首都テヘランでは安堵と喜びの声が上がった。一方で、イスラム体制の崩壊を期待してきた住民からは落胆の声も漏れた。
イラン国営テレビは8日早朝、テヘラン中心部の広場で国旗を振りながら停戦を祝う市民らの姿を放送。女性アナウンサーが「完全な勝利」と繰り返した。
「ようやく不安なく眠ることができる」。主婦サラさん(26)は、トランプ米大統領がインフラへの大規模攻撃を警告していたことを挙げ、一時停戦を歓迎した。ただ「将来は不透明なままだ」と話し、恒久的な停戦を求めた。
イランでは昨年末から今年1月にかけ、経済難に対する抗議デモが起き、全国的な反政府運動に発展。治安当局の弾圧で多数の市民が犠牲となった。
米イスラエルの攻撃による体制崩壊を望んでいた会社員レイラさん(34)は「結局、自由への道は閉ざされた」と失望感を口にする。「今回の戦争は国民に何ももたらさなかった。このままでは街頭で抗議し殺された人たちが報われない」と語った。【4月8日 共同】
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****イランの現体制には反対だが、侵略は許せない...爆音響くテヘランで、市民は何を思う****
<テヘラン市民のイランの現体制への思いや、戦争に対する感情は、一言で表せるほど単純ではないようだ>
テヘラン時間で午前1時を回ったところだった。私は客でにぎわうカフェにいた。水たばこが回され、人々は携帯の画面をスクロールしながら、低い声で話し、時々笑い声もはじけていた。次の瞬間、爆音がした。深く重い音。耳に届く前に床から骨にじかに伝わるような音だ。 会話は途切れ、人々は窓に目をやった。数秒間店内は静まり返り、その後再びにぎわいを取り戻した。
戦争が始まって1カ月余り。これが今のテヘランの日常だ。不安と打たれ強さが同居し、愛国主義感情が高まる一方で政府批判の声も聞かれる。そして誰もが口にするのは「終わりが見えない」という嘆きである。
今や敵の標的は軍事施設だけではない。住宅地も病院も大学も爆撃を受けている。戦争は日常生活の一部となり、人々は諦め半分で戦火をかいくぐって暮らしている。(中略)
戦争が始まった時点では、短期で終わると誰もが思っていた。アメリカの戦略はおなじみのロジックに沿ったもの。圧倒的かつ限定的な武力行使を行い、徐々にエスカレートさせれば、素早く政治的成果を引き出せる。数日間攻撃を続ければ、イランの譲歩は時間の問題だ──そんな読みである。イスラエルも国内の不満に外圧が加われば、現体制はあっけなく崩れると考えていたようだ。
ホメイニの精神を思い起こす
だが開戦から1カ月たっても、イランの現体制は崩壊の兆しを見せず、イスラエルとアメリカが期待していた市民の蜂起も起きていない。
疑いもなく、多くのイラン人は今も現体制に批判的だ。ただ、ミサイルが飛んでくる状況で、人々が通りに出て反政府デモを繰り広げるとは考えにくい。一方で、イランから失われていた「何か」が戦争でよみがえった兆しは明らかだ。
一部地区では、毎日のように集会が開かれ、住民たちがイランの国旗を振って通りを練り歩く。なかには子供をおぶった若い親たちもいる。ゾレもその1人。夫と1人息子と共に集会に参加している。戦争の勃発で革命の精神を思い起こしたというのだ。
「この国の指導層は長年、現実主義と外交重視に引っ張られすぎていた。それはホメイニ師の精神とは違う」と、彼女は言う。イラン革命を率いた元最高指導者のルホラ・ホメイニが亡くなったのは1989年で、ゾレはまだ生まれていなかった。「でもその教えは受け継がれ、私たちの心に刻まれている」
ゾレと並んで行進していたファテメは、「イランがシリアとイラクの戦争に関わっていたとき、なんで他国の戦争に資源を使うのかと言う人たちがいたけど」、今や答えははっきりしていると言う。「防ぐためよ......戦争がこっちに及ぶのを」
イランが支援していたシリアのアサド政権が倒れ、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラが弱体化したことが今の紛争を招いた──それが彼女の見立てだ。「敵は今がチャンスだと思ったのよ......それでこっちを攻撃してきた」
イデオロギー的な視点よりも不安げなまなざしで事態を見守っている人々もいる。実家近くの爆発の衝撃から冷めやらぬファルハングは多くのイラン人が抱いている疑問を口にする。この戦争はどう終わるのか。
カフェに集まっていたファルハングの友人たちの間ですら、今後イランがどうなるか、もしくはどうなるべきかについては意見が分かれる。
ある晩、テーブルを囲んで、友人の1人が、この状況でイランが生き残るには「不必要な負債」、つまり核開発計画や地域における影響力の一部を放棄するしかないと語った。
身近な人々の安全が最優先
ファルハングは少なくとも一点、異議があると言う。今後イランの政治体制がどうなろうと、弾道ミサイルを手放してはならないというのだ。「それがわが国の防衛の要だ」
政治的な信念と戦争の現実の板挟みになっている人たちもいる。モフセンは体制変革を支持しているが、現状では複雑な気持ちだと打ち明けた。「人々が死んでいるんだ......近所の人たちが殺されているのに、国家に盾突くなんて。そんなことをしたら親に勘当される」
セタレは昨年末に始まった大規模な反政府デモに参加したが、今の状況についてはモフセンと同様の立場だ。現体制には反対だと断って、彼女は言う。「でも今はアメリカとイスラエルが同胞を殺しているのよ」(中略)
攻撃のあった別の晩、ファルハングはカフェのテーブルに着くと、スマホをじっと見つめた。その晩ここに来る前に、母親がまた電話してきたのだ。防空ミサイルが飛ばされるたびに、家の窓がガタガタ揺れて怖くてたまらない、と。
長い沈黙の後、彼はスマホから目を上げ、テヘランの街に影を落とす例の問いを繰り返した。「この戦争はどう終わるんだろう」
今のところ、この街には、そしてはるか海の向こうにも、この問いに答えられる人は誰もいない。【4月8日 Newsweek】
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【イラン側のもう一つの「成果」は、ホルムズ海峡への支配力を見せつけ、既成事実化しつつあること】
イラン側のもう一つの「成果」は、ホルムズ海峡封鎖が「世界一の強国」アメリカをもたじろがせる強力な武器となることを再確認し、今もなお事実上コントロール下に置いており、うまくいけば今後もアメリカのお墨付きを得て海峡を支配できるかもしれない・・・ということでしょう。
****アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海峡はどうなる? 中東と戦争の行く先は?****
<両国の交渉は4月10日にパキスタンのイスラマバードで行われる。>
イランの最高国家安全保障会議は4月7日、2週間の停戦を受け入れたと発表した。ドナルド・トランプ米大統領が橋や発電所など民間インフラへの攻撃拡大の脅しを撤回したことを受け、条件付きの戦闘停止に応じた格好だ。
同会議は、4月10日にイスラマバードでアメリカとの交渉に入るとした一方で、この停戦は「戦争の終結を意味するものではない」と強調した。「我々の手は依然として引き金にかかっている。敵がわずかな誤りでも犯せば、全力でこれに対処する」
この発表は、イランがアメリカの条件に応じなければ壊滅的な事態に発展するとトランプが警告していた期限の瀬戸際で行われた。ロイターによると、複数のホワイトハウス当局者は、イスラエルもトランプが発表した2週間の停戦に加わり、外交交渉が行われる間はイランへの攻撃を停止するとした。
トランプは4月7日、イランが停戦とホルムズ海峡の「完全で即時かつ安全な開放」に同意するならば、2週間攻撃の脅しを停止するとしていた。この一時停戦はパキスタンのシェバズ・シャリフ首相および同国軍参謀長アシム・ムニール将軍との協議を受けたものだという。シャリフは外交を前進させるため2週間の延長を公に求め、同期間の海峡開放をイランに強く働きかけていた。
イランの10項目計画の内容とは?
イランが提示した10項目の計画では、世界のエネルギー供給にとって重要な動脈であるホルムズ海峡について、非常に制限的な長期ビジョンが示されている。イラン当局によれば、この海峡は「イラン軍の調整の下での規制された通行」の対象となる。この枠組みは、イランに「独自の経済的・地政学的地位」を与えるという。 他にも、イラン当局は全面的な制裁解除を求めている。
こうした条件は、地域の安全保障体制における異例の転換を意味することになり、事実上、世界で最も重要なエネルギーの要衝の1つに対するイランの影響力を制度化するものだ。また、1979年のイスラム革命以降、半世紀近く続く敵対関係の中で、アメリカによる大幅な譲歩にもなる。
ホルムズ海峡の通行を長期的にイランの管理下に置くことをアメリカが受け入れる用意があるかは、依然として不明だ。アメリカは長年にわたり、この海峡における自由な航行は交渉材料ではなく、核心的な国益であると主張してきた。
現時点では、イランは恒久的な解決ではなく戦術的な一時停戦を仄めかしている。自らの条件に基づく限定的なアクセスを認めつつ交渉を進め、戦争全体は未解決という状態を考えているようだ。
条件付きでホルムズ海峡の限定的アクセスを示唆
イランはまた、ホルムズ海峡の完全な再開を保証するには至っていない。 イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相は、今後2週間は船舶の通航を認めるが、それはイラン軍との調整の下で、「技術的制約」を伴うものに限られると述べた。
「2週間の間、ホルムズ海峡の安全な通航は、イラン軍との調整および技術的制約への配慮の下で可能となる」
戦争前には、1日100隻以上の船舶が、イランとオマーンが共同で管理する長年の通航分離方式の下でこの海峡を通過していた。公に認められた「技術的制約」は存在せず、航行は概ね途切れることなく行われていた。
イランが水路への統制を完全に緩めるのか、それとも停戦期間中に選別された監視付き通航のみを認めるのかは、依然として不明だ。
他にも、「中東に所在するすべての基地および展開地点からのアメリカ戦闘部隊の撤退」についても言及されている。
アメリカは数十年にわたりペルシャ湾地域に広範な軍事的プレゼンスを維持している。1991年の湾岸戦争後に拡大され、エネルギー資源の豊富な湾岸アラブ諸国にとって主要な安全保障の担い手となってきた。これらの基地には航空、海軍、地上部隊が混在して駐留しており、中東の脅威の抑止や、重要な海上輸送路保護を担っている。
イランは「戦闘部隊」をどのように定義するかを明確にしていない。顧問、後方支援部隊、あるいは海軍部隊などの一部の米軍要員が残留し、他は削減されるという可能性もある。この曖昧さによって、イランは米軍の全面撤退を求めなくても、交渉が前進したと主張できる余地を持つことになる。
それでも、米軍の兵力水準が目に見えて低下すれば、湾岸アラブの君主国を不安にさせる可能性が高い。これらの国々の多くは戦争の間に数週間にわたりミサイルやドローン攻撃にさらされており、安全保障の後ろ盾としてアメリカに依存しているからだ。
果たして、この停戦は中東を、世界をどのように変えるのだろうか。【4月8日 Newsweek】
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アメリカ 「真実」を都合よく捻じ曲げるトランプ大統領の言動で、最大の武器「信頼」を失う
(ASEAN有識者調査の結果【4月7日 共同】)
【「大統領は精神衛生状態の検査を受けるべきだ」】
イラン情勢は、トランプ大統領が設定した交渉期限は日本時間で8日午前9時と迫っており、このブログ記事がアップされて間もなく大きな動きがあることも予想されています。
****トランプ氏「一晩でイラン制圧、7日の夜かも」 ホルムズ開放要求****
トランプ米大統領は6日の記者会見で、イランを巡り「国全体を一晩で制圧できるだろう」と述べた。「明日(7日)の夜かもしれない」とも話し、停戦交渉の期限に定めた米東部時間7日午後8時(日本時間8日午前9時)の日程を改めて強調した。
期限までに交渉がまとまらなければ、その後4時間ですべての発電所や橋梁を破壊すると語った。(後略)【4月7日 日経】
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トランプ大統領は発電所攻撃を公言していますが、「戦争犯罪ではないか」との指摘も。大統領は意に介していないようですが。
****戦争犯罪「心配していない」 トランプ氏、イラン発電所攻撃で懸念一蹴****
ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホルムズ海峡開放をめぐるイランとの交渉で、期限切れ後に実施するとしている発電施設攻撃が戦争犯罪に当たる可能性について問われ、「心配していない」と述べ、懸念を一蹴した。
ホワイトハウスで行われた恒例のイースターエッグロールに出席したトランプ氏は、イランの発電所攻撃が戦争犯罪に当たるとの指摘について記者団から質問され「心配していない」と答えた。その上で「戦争犯罪が何か知っているか?戦争犯罪はイランに核兵器を持たせることだ」と述べた。 【4月7日 AFP】
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トランプ大統領の良識を無視した言動は今に始まったことでもありませんが、今回のイランへの“罵り”についても常軌を逸したところもあり、「大統領は精神衛生状態の検査を受けるべきだ」との批判も。
****トランプ氏の精神衛生状態に疑問の声、口汚すぎるSNS投稿めぐり*****
米国のドナルド・トランプ大統領が口汚い罵(ののし)り言葉を連発してイランを恫喝(どうかつ)したSNSの投稿をめぐり、大統領は精神衛生状態の検査を受けるべきだと批判する声が噴出している。本人は6日の記者会見でそうした批判を一蹴した。
トランプ大統領はイースターの5日、SNSへの投稿で、イランを「crazy bastards(狂った野郎ども)」呼ばわりして発電所やインフラを破壊すると威嚇。下品な放送禁止用語も使ってホルムズ海峡の解放を迫った。
6日の記者会見でトランプ大統領は、この投稿について尋ねた記者の質問の途中で「批判など気にしない」と返答。精神鑑定を求める声もあると指摘されると「それは聞いていない」と一蹴した。
その上で、「だがもしそういうことなら、私のような人間がもっと必要になるだろう。我が国は私が現れるまで長年にわたり、貿易などあらゆる面で搾取されていたのだから」と言い募った。【4月7日 CNN】
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【失われた「米国の大統領が世界に語る内容が真実だという信頼」】
関税政策に見られるような(理屈に合っているかはともかく)自国の都合で世界各国を振り回す対応、カナダ51番目の州発言やグリーンランド発言、欧州軽視の対応に見られるような相手国(同盟国)の立場を無視した露骨・傍若無人な発言、イラン・ベネズエラ問題に見られるような“軍事作戦”を厭わない対応、多くの発言で“ウソ”を平気でつく性格的歪み、怒りがコントロールできないような発言の数々・・・・そうしたものによって、(内情はともかく)かつて自由主義世界のリーダーと目されていたアメリカは、最も重要な“武器”である「信頼」を失いつつあります。
特に「真実」を都合よく捻じ曲げてしまう言動は「信頼」と言う点で目に余るものがあります。
****米国、ミサイルより強力な武器を失う-真実を軽視し続けるトランプ氏****
イランのミサイル在庫が大きく減少したと報じられ、米国とイスラエルは、当初のように大量の迎撃ミサイルを一斉発射するのではなく、飛来する攻撃1件につき地対空誘導弾パトリオットを1、2発発射する運用に切り替えているという。つまり双方とも弾薬不足に直面している。
しかし、長期的に懸念すべきは、米国が持つ別の「武器」の枯渇、いや、枯渇というより消耗だ。それは単なるハードウエアよりも重要だと考えられる。つまり、戦争や平和、その他あらゆる問題について米国の大統領が世界に語る内容が真実だという信頼だ。
事態は重大な局面を迎えている。トランプ米大統領はイランと有望な協議を進めていると主張する一方、イラン側はこれを否定しており、世界はどちらの説明を受け入れるべきか確信を持てずにいる。またトランプ氏が戦争に「ほぼ勝利した」と述べても、それが新たな米軍の爆撃、地上侵攻、あるいは停戦の前触れなのか、誰にも分からない。
歴史を通じて、各国の政府が時に虚偽を述べてきたことは確かで、とりわけ戦時には顕著だ。ナポレオン軍の兵士たちの間では、敗戦が続き始めたころ、「公報のようにうそをつけ」という決まり文句が広がった。彼らはパリからの公式発表を信じなくなっていた。
ロシアを2世紀前に訪れた人々は、現地にまん延していたうそがまかり通る風潮を嘆いていた。そうした傾向は、現代の指導層にも残っている。
第2次世界大戦初期、英政府は自軍の屈辱的敗北を強弁でごまかすことが次第に難しくなっていった。
プロパガンダ
当時も現在も、大国が信頼を失うことの重要性が薄れるわけではない。トランプ政権下の米国がまさにそうだ。戦時に全ての真実を語ることは不可能だが、「味方」が敵よりも信頼できると見なされることには大きな価値がある。
欧州の米同盟国のほとんどは、トランプ氏が戦争開始の正当化の柱として掲げたイランによる核開発がイスラエルや西側に差し迫った脅威だったという主張を信じていない。
第2次大戦中に英国に上陸した全ての米兵に配布された米戦争省刊行の小冊子を改めて読んでみた。その中には次のような教訓がある。「われわれは自らの武器で、ヒトラーのプロパガンダに打ち勝てる。それは率直で常識的な判断力、そして明白な真実の理解だ」。
同様に、当時のチャーチル英首相と閣僚たちは、自分たちの最も強力な道具の一つが、真実を伝えることで知られた英国放送協会(BBC)だと認識していた。
多くの米国人が抱くイメージに反し、BBCは国営組織ではなく、受信料で運営される独立した法人だ。第2次大戦中、占領下の欧州では何百万人もの人々が、自由を危険にさらしてでもBBCのニュースを聞こうとした。ドイツの探知車により聴取が発覚すれば、収容所への強制移送が待っていた。
正確無比な語り口のBBCアナウンサーが番組冒頭で発した言葉「こちらロンドンです」は、世界中に響き渡った。第2次大戦が終わった1945年以降もBBCを聴く習慣は続いた。特にアフリカや中東、アジアの一部では、現在でも数千万人が自国の政府によって厳しく検閲された国内ニュースよりもBBCの外国語放送を好んで聴いている。
ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、BBCほど権威や中立性があるとの評価には至っていないが、それでも有用かつ影響力のある存在だ。
英米両政府はしばしばBBCやVOAの報道内容を厳しく批判してきた。チャーチル氏はBBCの不忠を非難することもあり、1982年のフォークランド紛争時は当時のサッチャー英首相がその過度な中立性を嘆いた。
しかし英国では、どの政権もBBCに対して不満を述べる以上の行動に踏み込んだことはない。チャーチル氏を含む政治家たちは、その信頼性という無形資産の価値を理解していた。
ナチスはこれとは対照的な手法を採り、ウィリアム・ジョイスというアイルランド系米国人のファシストを使って英国民に向けたプロパガンダ放送を行った。彼はベルリンから連日うそを流し続け、その嘲笑的な語り口から英国では「ホーホー卿」と呼ばれた。(中略)
こうした勝ち誇ったトーンは、トランプ政権のヘグセス国防長官が米軍の爆撃下にあるイラン人の運命を語る際の口調とどこか似ている。(中略)
英国人はやがてホーホー卿の荒唐無稽な話を楽しむようになり、気晴らしにもなっていたが、それでも1946年に彼を絞首刑に処した。
「決断の時」
トランプ氏は明白な虚偽を広めながら、真実を伝える機関を攻撃している。例えば、テヘランの学校を誤爆したとされるミサイルがイランのものだったという主張だ。
また同氏はVOAの閉鎖を図り、BBCに対してはフロリダ州の裁判所で数十億ドル規模の訴訟を起こしている。さらに、トランプ氏の側近であるカー米連邦通信委員会(FCC)委員長は戦争に関する政権による虚構の説明を放送しない米国内メディアの免許を取り消すと威嚇している。
トランプ氏による真実への攻撃は、1917年に英誌パンチに掲載された風刺画を思い起こさせる。そこではドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が英国の新聞の一面を見て激怒し、「これほど忌まわしい、意図的な真実の寄せ集めは見たことがない!」と言っている。
ホワイトハウスの擁護者たちは、少なくとも内々には、今や世界は「ポストトゥルース」、つまり真実が終わった時代にあると主張するだろう。つまり、MAGA(米国を再び偉大に)派は、リーダーから真実を告げられることを期待しておらず、虚偽を述べられても気にしないという考え方だ。
フロリダ州のある女性は2月、「トランプの言うことが本当かどうかなんて、誰が気にするの?」と英国の記者に語った。それでも女性はトランプ氏を支持していた。
こうした人々は、米国の地位がどれほど低下したかに気付いていない。だが、これは極めて重大な問題で、現在やトランプ氏の任期中だけでなく、米国の未来に関わる。
米国がライバル関係にある超大国とモラル面で見分けがつかない振る舞いをするのであれば、外国が米国ではなく中国やロシアをパートナーとして選ばない理由はない。
約2世紀前に「全ての人と国家には、決断の時が訪れる」と書いたのはニューイングランドの詩人ジェームズ・ラッセル・ローウェルだ。「真実と虚偽の争いにおいて、善と悪のどちらに立つのか」が問われると続けている。
どれほど豊かで支配的な国であっても、軍事力と経済力の優位が永遠に続くと信じ、それだけで覇権を維持できると考えるのは極めて危険だ。
特に欧州において、米国はもはや信頼に値する存在とは見なされていない。1942年の米兵向け小冊子を再び引用すれば、「同盟国を批判することは軍事的に愚かだ」。
超大国であっても友人は必要だが、ワシントンから繰り返し侮辱を受けた後では、米国の指導者を心から尊敬し、その発言を信じる国はほとんど残っていない。
真実は単なる美徳ではない。武器でもある。にもかかわらず、トランプ政権は銃撃戦のさなかに、自らの手でそれを壊してしまった。この戦争に正当性や理由を見いだす者は、イスラエルを除けばほとんどいない。【4月7日 Bloomberg】
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【アジアでも「同盟を選ぶならアメリカより中国」 「トランプ大統領による米国のリーダーシップ」は自国の地政学的な懸念】
欧州とトランプ大統領の確執・溝については、トランプ大統領のNATO離脱発言など再三報じられていますが、アジアでもアメリカへの信頼は損なわれており、米中のいずれかとの同盟を余儀なくされた場合、中国を選ぶ割合がアメリカを逆転しています。
****トランプ氏、最大の懸念に 米中逆転、東南アジア調査****
東南アジア諸国連合(ASEAN)の政府当局者や学者ら有識者への調査で、自国の地政学的な懸念として「トランプ大統領による米国のリーダーシップ」と答えた割合が51.9%と最大となった。
米中のいずれかとの同盟を余儀なくされた場合、中国を選ぶ割合が米国を上回り、昨年から逆転した。シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が7日発表した。
米国への懸念はトランプ政権の関税政策や中東情勢を巡る対応が影響した。研究所は同政権の「政策の一貫性のなさや長期的な関与への信頼性」に対する地域の不安が露呈したと分析している。
米国への懸念は、昨年の調査で割合がより大きかった南シナ海情勢などの地域が抱える懸案を、今年は上回った。
回答者の国別では貿易依存度の高いシンガポールが76.8%と最も大きかった。
対立が深まる米中二大国のうち、ASEANがいずれかと同盟を結ぶことを余儀なくされた場合、中国を選ぶと答えた割合は52%で昨年比4.3ポイント増。米国は48%で同4.3ポイント減だった。【4月7日 共同】
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米中関係 5月14~15日にトランプ大統領訪中 経済問題・台湾問題・イラン情勢などが議題
(トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=韓国・釜山で2025年10月30日、ロイター【2月19日 毎日】)
【トランプ大統領、5月14~15日に訪中 習近平氏が年内に訪米予定】
米中両国は対立を先鋭化させたくない点では思惑が一致しています。そのためにも首脳会談を早期に実現させたいところ。
イラン情勢を受けて延期されていたトランプ米大統領の訪中は5月14─15日に予定されています。また、アメリカ側発表では今年後半には習国家主席をワシントンに招くことにもなっています。
(5月中旬段階でイラン情勢がどうなっているかは知りませんが・・・)
****トランプ氏、習氏の訪米は「今年の後半」と投稿 友好ムード演出****
米ホワイトハウスのレビット報道官は25日、トランプ大統領が5月14~15日の日程で北京を訪問し、中国の習近平国家主席と会談すると発表した。当初は3月末からの訪中を予定していたが、イラン情勢への対応を理由に中国側に延期を要請していた。
また、レビット氏は習氏が年内に米ワシントンを訪れる予定であることも明らかにした。習氏のワシントン訪問は2016年以来。
一方、トランプ氏の訪中までにイランとの戦闘が終結する認識なのかを記者から問われると、「(対イラン軍事作戦の期間は)約4~6週間だと常に見積もってきた」と応じ、単純に計算すれば終わっているとの見方を示した。
トランプ氏はホワイトハウスの発表後、自身のソーシャルメディアで習氏の訪問が「今年の後半」になると投稿した。「両国の関係者は、これらの歴史的な訪問に向けた準備の最終段階に入っている」とした上で「習氏と共に過ごすことを非常に楽しみにしている」と記し、友好ムードを演出した。
トランプ氏は11月の中間選挙を見据え、中国側による米国産農産物の購入拡大など貿易面での「ディール(取引)」を重視している。5月の首脳会談で一定の成果を上げ、有権者へのアピール材料としたい考え。一方、中国側は台湾問題を取り上げる可能性がある。【3月26日 毎日】
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【“相互依存型の駆け引き局面”の米中関係】
3月21日ブログ“中国 イラン問題で「計算された静観の構え」「危機は歓迎、破局は回避」 今後の米中の力関係は?”でも取り上げたように、中国のレアアース輸出規制にアメリカ側が非常に脆弱であること、一方、中国も国内経済は不調で、対米関係の改善を望んでいる・・・・ということから“相互依存型の駆け引き局面”にあると言えます。
*****“相互依存型の駆け引き局面” やや構造的に有利なのは中国、ただし短期の交渉主導力は米国にも残っている****
結論から言うと、現時点では「どちらか一方が完全に主導権を握っている状況ではなく、分野ごとに主導権が分散している“相互依存型の駆け引き局面”と見るのが妥当です。
そのうえで、やや構造的に有利なのは中国、ただし短期の交渉主導力は米国にも残っている、という構図です。
① 中国が優位に立ちやすい要因(構造的優位)
レアアース問題はかなり重要です。 レアアース=「代替困難な戦略資源」、精製・加工の大半を中国が握る、軍需(ミサイル、レーダー)、EV、半導体に不可欠、短期的な代替が非常に難しい
→ つまり中国は「供給を絞るだけで米国の軍事・産業のボトルネックを突ける」
特に今回のように中東で軍事緊張(イラン戦争)、兵器生産の継続が必要という状況では、このカードの価値が一段と上がる
② 米国の優位(短期の交渉・軍事・金融)
一方で、米国側にも強いカードがあります。
軍事・同盟ネットワーク:中東・インド太平洋に展開力、英国など同盟国を動員可能→ 中国は軍事的にはまだ同水準で対抗できない
金融・制裁能力:ドル決済支配、制裁・関税で相手経済に打撃→ 中国経済が弱っている局面では特に効く
中国の内政リスク:不動産不況、若年失業、輸出依存→ 長期対立は中国にも痛い
③ 今回の局面の特徴(重要)
今回の状況を特徴づけるのはこの「組み合わせ」です
米国:軍事的に忙しい(イラン) 中国:経済的に苦しい→双方:相手に依存している
このため、
■ 米国・・・レアアースで弱点を突かれている しかし強硬姿勢を崩すと覇権の信頼が落ちる
■ 中国・・・圧力をかけるカード(レアアース)はある しかし経済的に長期対立は避けたい
④ 主導権の評価(核心)
この状況を整理すると:
■ 戦術レベル(短期)→ 米国がまだ主導可能(軍事・外交の即応力、同盟国の動員)
■ 戦略レベル(中長期)→ 中国がやや有利(サプライチェーン支配(レアアースなど) 「相手の弱点に刺さるカード」を持つ)
⑤ 実際の力関係(重要な見方)
最も現実に近い見方はこれです
米国:「秩序を動かす力」 中国:「ボトルネックを握る力」→つまり、米国はルールを作れるが、中国はその実行を止められる
⑥ 結論
今回の局面では、中国は「効くカード(レアアース)」を握りつつある 米国は「全体を動かす力」は依然保持
したがって「主導権は拮抗、ただし交渉カードとしては中国が一時的に優位に立ちやすい局面」と評価できます。
【3月21日 ChatGPT】
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【石油価格高騰による価格上昇が経済全体に波及することを警戒する中国 未だ「国際秩序を主導する」「秩序を動かす力」は持っていない】
アメリカへ圧力をかけるカード(レアアース)はある中国ですが、イラン情勢を受けて原油価格が急騰する中、「価格上昇が経済全体に波及すること」を中国は警戒しています。
また、パナマ・ベネズエラからイランにいたる一連の動きによって、中国の対外戦略は大きな制約を受けることになっています。
更に、イラン情勢に関する中国の「計算された静観」は、中国が未だ「国際秩序を主導する」段階には達していないこと、つまり「秩序を動かす力」を持っていないことを示しています。
****習近平が「もっとも恐れている」展開…イランを助けられず、石油も輸出できない「中国の弱み」とは?****
中東情勢の緊迫化で原油価格が急騰する中、中国は備蓄放出や輸出を拒み、逆に輸入を加速させています。世界最大の尿素生産国でありながら、肥料の輸出も厳格に制限。中国指導部が今「もっとも恐れていること」とは?(北海道大学公共政策大学院研究員 王 彦麟)
●石油の備蓄放出や輸出を拒否 中国が「もっとも恐れていること」とは?
(中略)中国はロシアとつながる石油パイプラインを持ち、米国の制裁の影響を比較的受けにくい立場にある。理屈の上では、多くのIEA加盟国よりも余裕をもって危機に対応できるはずだ。それにもかかわらず、中国は石油備蓄の放出に踏み切っていない。(中略)
では、中国は何をしているのか。 実際には、むしろ備蓄を積み増している。(中略)また国内の燃料価格については上限を引き上げつつも、国際価格の上昇分を完全には転嫁していない。さらに、精製石油製品の輸出規制も強化している。
● 安価に輸入した原油を 精製して輸出するだけで利益になるが… この一連の政策は何を意味するのか。
結論は明確だ。中国がもっとも警戒しているのは「価格上昇が経済全体に波及すること」である。
安価に輸入した原油を国内で精製し、それを再輸出して利益を得る――本来であれば合理的なこの行動すら、中国は抑え込んでいる。国内供給を優先し、物価の安定と長期的なリスク管理を重視しているからだ。 同じ発想は、肥料政策にも表れている。(中略)
なぜここまで徹底するのか。 エネルギー価格の上昇は、やがて食品価格や生活コスト全体を押し上げる。そしてそれは、社会不安や政権の安定性に直結する。中国指導部はその連鎖を強く恐れている。
2026年、中国政府はGDP成長率目標を4.5〜5%に引き下げた。これは1990年代以来、初めて5%を割り込む水準である。ここにエネルギー価格のショックが重なれば、成長はさらに下振れする可能性が高い。
イラン戦争において、中国が本当に警戒しているのは、戦争そのものではない。それが引き起こす「価格の連鎖反応」なのである。
● 米国のイラン攻撃で中国の影響力減 ロシアと北朝鮮に頼らざるを得ない では、この戦争は中国の対外戦略にどのような影響を与えているのか。
一言で言えば、中国がこれまで築いてきた「非米圏ネットワーク」は、確実に揺らいでいる。 米国はパナマ運河をめぐる圧力を強め、さらにベネズエラやイランに対して軍事行動を展開した。これらはいずれも、中国が影響力を拡大してきた地域である。結果として、中国の対外戦略は大きな制約を受けることになった。
その中で、中国が頼らざるを得ないのがロシアと北朝鮮だ。 かつてロシアはウクライナ戦争で消耗し、中国優位の関係が続いていた。しかし現在、エネルギー情勢の変化がこの力学を揺り戻している。ホルムズ海峡の不安定化により、中国のロシア産エネルギーへの依存度は上昇し、ロシアの発言力は一定程度回復した。 両国関係は再び「相互依存」に近づきつつある。
一方で中国は、北朝鮮との関係強化にも動いている。北京と平壌を結ぶ国際列車の再開、直行便の復活、さらには貿易拡大――これらの措置は偶然ではない。中国が構築してきた対外ネットワークが崩れつつある中で、北朝鮮との関係は「維持すべき最後の安全保障カード」となりつつある。
ただし、ここで見落としてはならない点がある。
これらの動きは、中国の「敗北」を意味するわけではない。 米国がベネズエラやイランを攻撃したことで中国の影響力を削いだことは事実だが、同じ手法をロシアや北朝鮮に適用することは現実的ではない。コストがあまりにも大きすぎるからだ。
そのため、今後の米中競争は形を変えていく可能性が高い。 軍事的圧力ではなく、パナマ運河のような戦略拠点の支配、あるいは国際ルールの主導権争い――いわば「見えにくい戦場」へと移行していくのである。
● イラン危機でどっちつかずの中国 「国際秩序を主導する」段階には達していない
最後に、この戦争が突きつけたもっとも本質的な問いに触れておきたい。 中国は、本当に国際秩序を主導できるのか。
中国は長年、「多極化した世界」を掲げてきた。米国一極支配に対抗し、より平等で分散的な国際秩序を目指すという構想である。しかしイラン危機は、この構想の限界を浮き彫りにした。
戦況が膠着する中、イランは「人民元決済を認める船舶は通航を許可する」と示唆し、中国の関与を引き出そうとした。一方、米国は日本や欧州諸国を含む同盟国に対し、航行の安全確保への協力を求めた。
では、中国はどう動いたか。 北京はどちらにも積極的には応じなかった。停戦の呼びかけや外交努力にとどまり、軍事的・制度的な関与には踏み込まなかったのである。
この慎重姿勢の背景には現実的な制約がある。 中国はイランだけでなく、サウジアラビアなど湾岸諸国とも深い関係を持つ。特定の陣営に肩入れすれば、他方との関係を損なうリスクがある。したがって中国は「均衡」を優先し、結果として積極的な秩序形成から距離を置くことになる。
だが、ここにこそ問題がある。 国際秩序を主導するとは、単に影響力を持つことではない。紛争時に責任を引き受け、安全保障という「公共財」を提供する能力を持つことを意味する。その点で、中国はまだその段階に達していない。
経済規模の面では米国との差は確実に縮まっている。しかし、その経済力を軍事力や制度設計、国際的責任へと転化する能力において、中国は依然として大きな制約を抱えている。イラン戦争は、その現実を極めて明確に示した。
中国はすでに「大国」である。だが、国際秩序を担う「主導国」には、まだなりきれていない。
● 見えてきた米中競争の 次の局面
イラン戦争は、単なる中東の地域紛争ではない。それは、米中競争の現在地を映し出す「鏡」である。中国は経済的には台頭し続けているが、価格ショックに神経を尖らせ、対外ネットワークの維持に苦慮し、秩序形成には踏み出せない。一方の米国もまた、すべてを力で押し切れるわけではなく、より間接的で制度的な競争へと軸足を移しつつある。
つまり、これからの米中競争は、「誰が世界を支配するか」ではなく、「誰がルールを定義するか」をめぐる争いになる。イラン戦争は、その転換点を静かに告げている。【3月29日 DIAMOND online】
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【米中両国間の火種の「台湾問題」 アメリカの台湾への武器売却計画の実施は?】
米中両国間の火種は依然として「台湾問題」です。
“火種は引き続き台湾だ。中国共産党を総書記として率いる習氏は今週、台湾の最大野党、国民党のトップを10年ぶりに中国へ招待した。国民党の鄭麗文主席は4月7-12日の訪中で江蘇省と上海、北京を訪れる予定だ。
中国当局は、米国による台湾への追加の武器売却に警戒感を強めている。習氏は2月の電話会談でトランプ氏に対し、この問題について「最大限の慎重さ」で対応するよう直接求めた。”【4月1日 Bloomberg】
習近平国家主席は2月のトランプ大統領との電話会談で、台湾への武器売却を「慎重に」扱うよう求めています。
一方、台湾側は武器売却計画は順調に進んでいるとの認識を示しています。
****米の対台湾武器売却、計画通り進展 国防部長が表明****
台湾の顧立雄国防部長(国防相)は26日、米国による次回の対台湾武器売却計画について、米政府から保証文書を受け取り、順調に進んでいるとの認識を示した。5月には米中首脳会談が控えているが、売却計画への影響を否定した形だ。
ロイターが今月、関係筋の話として報じたところによると、高度な迎撃ミサイルを含む、米国による台湾への新たな武器売却は、トランプ米大統領による承認の用意ができており、トランプ氏が訪中後に署名する可能性がある。規模は約140億ドル相当とされている。
トランプ氏は当初4月上旬に予定していた訪中をイラン情勢の影響で延期しており、現在は5月14─15日に北京を訪問する予定となっている。台湾問題は主要議題となる公算が大きい。中国の習近平国家主席は先月のトランプ氏との電話会談で、台湾への武器売却を「慎重に」扱うよう求めている。
米中首脳会談が武器売却に及ぼす影響について質問された顧氏は立法院(国会)で記者団に対し、米国から次回の取引を承認する意向を示す保証文書をすでに受け取っていると発言。
同氏は「米戦争省の国防安全保障協力局と緊密に連絡を取り合っている。品目、数量、取引に関する指針を含め、提供の意思を確認している」とし、計画は米政府内で審査中だが、遅延に関する通知は受けていないと述べた。【3月26日 ロイター】
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台湾側は上記のように「順調に進んでいる」との認識を表明していますが、実際にはトランプ訪中後に先送りされる形で“宙に浮いた”状態にもなっています。
さすがにトランプ大統領も対中国抑止政策の要としての台湾支援を反故にすることはないでしょうし、親台湾の米議会の圧力もあります。
ただ、トランプ・習近平会談後に段階的に実施する形でタイミングの調整、場合によっては、攻撃的兵器 → 防空・ミサイル防衛中心への変更、数量や規模の圧縮といった内容のトーンダウンはあり得るかも。
【中国がイラン情勢に関して「計算された静観」からイラン支援に軸足を動かしつつあるとの見方】
なお“イラン情勢に関する中国の「計算された静観」”については、“中国がイラン支援へと軸足を移しつつあるとの見方が強まってきた”との指摘もあります。
****「イランを見捨てない」中国が動いた5つの理由、王毅外交が包囲網を崩しにいく****
中国が、イランの敗北を防ぐための仲介外交に乗り出した。専門家の間では、米国とイスラエルの攻勢が続く中、中国がイラン支援へと軸足を移しつつあるとの見方が強まってきた。2日には、王毅外相がバーレーン、サウジアラビア、ドイツ、EUの外交トップと相次いで電話会談し、米国とイランの双方を念頭に敵対行為の早期停止を促した。
中国は仲介外交の舞台を中東だけにとどめず、欧州にも広げた。王毅外相は2日、EUのカヤ・カラス外交安全保障上級代表との電話会談後、国連安全保障理事会の役割は、承認されていない軍事行動に正当性を与えることではなく、緊張緩和に焦点を当てることにあると強調した。
さらに、ドイツのヨハン・ヴァーデフール外相に対しては、米国とイスラエルによるイラン攻撃は明白な国際法違反だと述べた上で、ドイツは客観的かつ公正な立場を保つべきだと求めた。
王毅外相はこれに先立つ先月31日、パキスタン外相との会談で、即時の敵対行為停止を柱とする「中東和平5大イニシアチブ」を打ち出しており、足元では支持拡大も進めている。
米国、イスラエル、イランの戦争が6週目に入る中、中国は前面に出過ぎることは避けながらも、イランの敗北だけは容認しない姿勢を固めつつあるとみる向きが多い。
開戦当初は関与に慎重だったが、イランが米国とイスラエルに敗れ、親米政権が発足する事態は阻止しなければならないとの判断に傾いたという。これは、ウクライナでロシアが敗北しないよう暗黙のうちに支える構図とも重なる。中国がイラン支援へ動いた背景には、大きく5つの事情がある。(後略)【4月6日 江南タイムズ】
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“中国がイラン支援へ動いた背景にある5つの事情”については、第一に、米国によるホルムズ海峡掌握を防ぐ狙い、第二に、米国のドル覇権を揺さぶる思惑、第三に、一帯一路の維持、第四に、中国西部国境の緩衝地帯を確保、第五に、イランに投じてきた既存の国益を守ること・・・があげられています。
もっとも、そうした事情は開戦当初からのものであり、もし、ここにきて中国の軸足がイラン支援に変わってきたとしたら、戦況の推移から「イランが負けない構図」を作る可能性に手応えを感じ始めているから・・・ということではないでしょうか。
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イラン情勢に伴う原油不足への対応、日本は充分・適切か? 「非常事態」宣言のフィリピンの取組
(【4月4日 TBA NEWS DIG】)
【原油不足深刻化でアジア各国が対策強化 日本政府は石油需給に影響は出ていないとの認識】
ホルムズ海峡の事実上の閉鎖を受けて、中東への依存度が高いアジアなどで原油不足が深刻化し、各国が対策を強化しています。
****アジアの原油不足深刻化、各国が対策強化…日本は「各国を大幅に上回る備蓄をしている」****
(中略)
韓国・・・・車通行「2部制」
韓国政府は2日、原油に関する「資源安全保障危機警報(4段階)」の上から2番目「警戒」を発令した。公共機関の車を対象に通行を制限する「2部制」を8日から導入する。奇数日はナンバー末尾が奇数の車、偶数日は偶数の車のみの通行を許可する。
韓国は輸入する原油の約70%が中東産で、そのうち90%以上がホルムズ海峡を経由しており、国民には公共交通機関の利用や照明の消灯、シャワー時間の短縮などを呼びかけている。
タイ・・・・燃料節約を要請
インドネシア政府は3月31日、警察や医療などを除く行政機関で勤務する公務員について、毎週金曜日を在宅勤務にすると発表。公用車の使用半減や電気自動車(EV)の利用を促進し、企業にも在宅勤務の導入を求めた。
タイのアヌティン・チャーンウィラクン首相は3月28日、1世帯あたり、1日1リットルの燃料を節約するよう呼びかけた。
比・・・・交通運賃を減免
また、フィリピンでは3月に大規模な抗議活動が行われ、政府は「エネルギー非常事態」を宣言。公共交通機関の運賃減免や燃料費補助といった燃料価格の高騰対策に取り組む姿勢を打ち出し、国民の不満解消に躍起になっている。
欧州連合(EU)では、原油輸入量に占める中東産の割合は約2割に上る。EUの執行機関・欧州委員会は、ロシア産原油を段階的に禁輸する法案の提出延期を決定。加盟国に省エネの推進を呼びかけている。
国際エネルギー機関(IEA)加盟国の昨年12月時点の備蓄量は、フィンランドは292日分、韓国は200日分、英国は124日分、スペインは98日分、豪州は49日分となっている。
日本の昨年12月末時点での備蓄量は国内消費の254日分(4・7億バレル)だった。IEAの基準では214日分となり、加盟国の平均141日分を上回る。赤沢経済産業相は3月31日の記者会見で、「各国を大幅に上回る備蓄をしている」と述べ、石油需給に影響は出ていないとの認識を示した。【4月4日 読売】
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【現実には広がる供給不安・・・節約の呼び掛け、イランとの交渉による石油確保といった踏み込んだ対策を求める声も】
日本政府は「各国を大幅に上回る備蓄をしている」ことから、表向き石油需給に影響は出ていないとの認識ですが、現実には様々ななものの供給が不安定になりつつあります。 そうした状況で、例えばガソリンの価格維持政策は結果的に希少となった資源の需要を維持することになりますが、もっと節約を国民に呼びかけるとか、これまで日本が培ってきたイランとの関係を活用して供給の維持を図る道を模索すべき、トランプ大統領に停戦を求める・・・といった、もっと踏み込んだ対策を求める声もあります。
****激化するイラン攻撃で続くエネルギー危機 石油不足が直撃で問われる日本政府の対応【報道特集】****
イラン攻撃で続く、エネルギー危機について。
原油からできるプラスチック製の医療器具を使う人たちからは、供給不足を心配する声が広がっています。
政府はこの危機にどう対応しているのか。疑問の声も上がり始めています。
ホルムズ海峡の安全確保にトランプ大統領「日本にやらせればいい」
(中略)
供給の鍵を握るホルムズ海峡。その安全確保をめぐって、トランプ大統領は日本などを名指しした。
トランプ大統領 「韓国や日本にやらせればいい。彼らは石油の90%を(ホルムズ)海峡から得ている」
ガソリン補助金に自民党内からも異論 「間違ったメッセージになる」
エネルギー危機の先行きが懸念される中、日本はどう対応しているのか。高市総理は2日、国会でこう答弁した。
「現在、石油については備蓄放出や、ホルムズ海峡を経由しない代替調達を通じて、日本全体として必要となる量は確保されております」
3月に始まった石油備蓄の放出。経済産業省が発表した最新のデータでは、約230日分が確保されているという。
さらに今週、全国の新聞にこんな政府広告が掲載された。
政府広告 「燃料油の価格を引き下げています。」 「ガソリンは小売価格を全国平均170円程度・軽油は158円程度」 「補助金により価格を抑制するよう取り組んでいます。」
この補助金には、1兆円を超える予算が充てられるという。
だが、価格を下げれば、かえってガソリンの消費が増えかねないため、むしろ節約を呼びかけるべきだという声が自民党内からも上がっている。
自民党 河野太郎 衆院議員 「200何十日の備蓄でやりくりをしなければということを考えると、値段を下げて今までと同じように使っていいですよというのは、私は間違ったメッセージになると思います」
「注射を打たないと死を待つだけ」ナフサ不足懸念 命の危険も
今の状況が続くと特に影響が心配されるのが、原油を精製してできる「ナフサ」だ。
国内で精製している分では、全体の4割にしか満たないため、残りを輸入に頼っている。その多くを占めるのが中東だ。
ナフサは様々なプラスチック製品の原料となっているため、医療器具の供給不足は命の危険に繋がりかねない。
(中薬)注射器を見ると、本体も針のフタも、注射液が入っている容器の一部も、さらに、毎日使う血糖値を測定するための装置もナフサ由来の石油化学製品だ。インスリン注射を打たないと最悪の場合、1日も経たずに体調が悪化し、命に関わる状態になる。(中略)
ナフサ不足への不安は広がっている。
がんなどの患者団体は、国に医療器具の供給状況を公表することや、買い占めが起こらないように対策することなどを要望している。(中略)
高市総理のSNSより(3月29日投稿) 「中東からのナフサ輸入を他の国からの調達に切り替えるべく取り組んでいるところです」
この投稿への強い危機感をコメントした人物がいる。資源エネルギー庁の有識者委員を務める、境野春彦氏だ。
境野春彦氏のSNSより(3月29日投稿) 「中東からの輸入しかないのです。」 「どうか目を覚まして頂けませんか。」
経済産業省は、中東以外からの輸入量が通常の2倍になる見通しを示したが、境野氏は需要を賄いきれる量ではないと指摘する。
コネクトエネルギー合同会社 境野春彦氏
「倍になったところで、輸入は半分も満たしていないわけです。どこが安心なんだという話。間違いなく今の状況が続いたら、日本は6月に詰む。もう『ホルムズ海峡を通る』一択しかない」
「生活が変わってしまう」物流・交通インフラにも広がる危機
燃料不足の影響も広がっている。
福岡県柳川市で観光バスなどを運行する「有明交通」。3月、燃料販売店から出荷制限の通知が届いた。(中略)
有明交通 吉泉輝 総務課長 「スタンドに優先です。だから、自分たちのようなところは後回しというか。『余っているなら売るけど、今は余る状況ではないので供給自体ができません』」(中略)
境野氏のもとには、現場からガソリン補助金への疑問の声が届いているという。
コネクトエネルギー合同会社 境野春彦氏
「原油は途絶えてるのに、補助金まで使って需要を促進して供給している行為に『罪を感じている』と。これは政策がおかしいから。ちぐはぐしている感じで、毎日過ごしてるわけです」
日下部正樹キャスター 「本来やるべき政府が発すべきメッセージとは、どういうことでしょうか」
コネクトエネルギー合同会社 境野春彦氏
「需要の抑制。限られた資源で8か月分しかない。それまで政府が手当てに奔走するから『大切に使いましょう』と。これが基本だと思う。一番やらなきゃいけないのが、もう何回も言うけれど、政府が早く交渉して(ホルムズ海峡)通してくれということ」
元外務審議官の失望「イランとの信頼関係を生かすべきなのに…」
エネルギー危機が続く中、日本はイランとどう向き合っていくべきなのか。
イランの核開発問題を巡り、アメリカ、イラン、双方と対話した経験を持つ田中均元外務審議官は「これまでのイランとの信頼関係を今こそ生かすべきだ」とした。
田中均 元外務審議官
「日本はイランと伝統的な関係と言うが、自然にそうなったわけではない。アメリカは日本がイランと関係を持つことを、ものすごく強く反対してきた。我々はやっぱりここでイランと切ってはいけない。少なくともアメリカとの間の緩衝にならなければいけない」
村瀬健介キャスター
「日本とイランとの特別な関係は、ものすごく苦労と知恵を絞って、これまで築いてきた。いわばレガシーみたいなものなのですね」
田中均 元外務審議官
「日本が唯一、イランの政府と理解し合って対話ができる。今の戦争が続いて、いろんなところで損害を被っているのを、やっぱり止めるという役割を日本は果たせるのに果たさない。アメリカの反対を押し切って維持してきたものを、なぜ使わないのか。(日本の)手を縛っているのは、アメリカに対する遠慮だと思う。強烈な遠慮、強烈な忖度」
田中元外務審議官は「日本はアメリカへの忖度を止め、戦争を終結させるよう働きかけるべきだ」と話す。
田中均 元外務審議官
「何よりも戦争を止めることが先決。(日米首脳会談で)アメリカのご機嫌を取ったり、高市さんが信頼関係を作る目的で、ああいう行動を取られたと思うが、それと外交というのは別。常にアメリカに忖度していくということではない。世界はトランプという人を何とか諌めてほしいと。無茶なことをやっている人を、同盟国日本、女性宰相はコミュニケーションできるかもと見たのに、僕は失望しました」(後略)【4月4日 TBA NEWS DIG】
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【原油備蓄が残り45日分のフィリピン 「エネルギー非常事態」を宣言 代替調達先の確保などに乗り出す】
日本と同様に石油に関してほぼ完全な輸入依存でありながら、日本と違って国内の原油備蓄が残り45日分しかないとされ、また補助金余力が小さいフィリピンは「エネルギー非常事態」を宣言し、あの手この手の対策に乗り出しています。
****フィリピンが「エネルギー非常事態」宣言、原油輸入9割超を中東に依存…マルコス大統領「混乱に対し脆弱」****
原油輸入の9割超を中東に依存するフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は24日、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、「エネルギー非常事態」を宣言する大統領令に署名した。燃料補助金や省エネの取り組み促進が柱となる。
即日発効し、期間は1年としている。マルコス氏は大統領令で「フィリピンは燃料供給を外部に大きく依存し、世界の石油生産と輸送の混乱に対して 脆弱ぜいじゃくだ」と説明した。
省庁や関係機関は今後、エネルギー供給や公共サービスを安定させる施策の実施が義務付けられる。具体的には、燃料補助金の交付のほか、公共交通機関の無料乗車サービスの拡大、基金を活用した農業や漁業従事者への支援拡充などが見込まれている。
フィリピンでは、ガソリンを中心とした燃料価格の高騰が続いている。【3月25日 読売】
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原油の新たな代替調達先の開拓、石炭火力発電所の発電量を増やす対策にも乗り出しています。
****フィリピンにロシア産原油到着、「国家エネルギー非常事態」のさなか****
フィリピンが中東情勢をめぐり燃料不足が深刻化する恐れがあるとして「国家エネルギー非常事態」を宣言した数日後、同国にロシア産原油70万バレル以上を積んだタンカーが到着した。消息筋が26日、AFPに明らかにした。
シエラレオネ船籍のタンカー「サラ・スカイ」は、東シベリア・太平洋石油(ESPO)パイプラインでアジア太平洋地域に運ばれた高品質のロシア産原油を積んで23日にフィリピンに到着した。書類によると、荷受人はフィリピン唯一の製油所を運営するペトロン社となっている。
フィリピンは燃料を輸入に大きく依存しており、米イスラエルとイランの戦争によりエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡が事実上封鎖されて以来、燃料価格は過去最高値を記録している。(中略)
ロシア産原油がフィリピンに到着するのは5年ぶりとみられる。 ペトロンのラモン・アン最高経営責任者(CEO)は先週AFPに対し、同社はロシア産原油の購入について「協議中」だと述べていた。 だが26日、同氏は原油の到着について確認を拒否した。
フィリピン国内の原油備蓄が残り45日分となる中、フェルディナンド・マルコス大統領は25日、フィリピンは燃料確保のためあらゆる方面に手を尽くしていると述べた。
マルコス氏は国家エネルギー非常事態に関する記者会見で、「われわれは従来の石油供給国だけでなく、中東で続く戦争の影響を受けていない他の供給源も模索している」「あらゆる可能性を排除しない。われわれはあらゆる手段を検討している」と述べた。
米国は今月、対ロシア制裁を一時緩和し、4月11日までに海上輸送中の海上輸送中のロシア産の原油や石油製品を各国が購入するのを認めた。
データ分析企業ケプラーのアナリスト、ムユ・シュー氏はAFPに対し、当時ロシア産原油約1億2000万バレルが海上輸送中で、その多くは中国やインドの顧客によって事前注文されたものである可能性があると述べた。
フィリピンエネルギー省は26日、200億ペソ(約530億円)の緊急基金を発動。シャロン・ガリン・エネルギー相はこれを燃料供給確保のための「積極的な措置」と呼んだ。
ガリン氏は今週、中東戦争によるガス輸送の混乱を受け、電力コストを抑えるため、フィリピンは石炭火力発電所の発電量を増やす計画だと述べた。 液化天然ガス(LNG)価格の高騰を受け、ガリン氏は、フィリピンは「一時的に」化石燃料への依存度をさらに強めざるを得なくなると述べた。化石燃料は、人為的な温室効果ガス排出の主な原因となっている。
ガリン氏はさらに、最大の石炭供給国であるインドネシアは、フィリピンが輸入量を増やす必要がある場合、購入量に「何の制限も設けていない」と付け加えた。【3月26日 AFP】
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【中国ともエネルギー供給を巡り協議 南シナ海情勢にも影響か】
フィリピンは南シナ海の領有権をめぐって中国と厳しく対峙してきましたが、そのあたりも今回の石油危機で変化する兆しも。
****中東産原油に依存するフィリピン、中国大使館とエネルギー供給巡り協議****
イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、「エネルギー非常事態」を宣言したフィリピンのエネルギー省は28日、在フィリピン中国大使館とエネルギー供給を巡り協議したと同省のSNSで明らかにした。
同省は「中国は世界のエネルギー供給網において重要な役割を果たしている」と強調。中比間の協力を強化し、エネルギー関連の課題に対処すると投稿した。(後略)【3月28日 読売】
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****中国・フィリピンのエネルギー供給に関する協議の主な内容****
① エネルギー供給の安定化
中国側との間で石油・ガス供給の安定確保について協議→ ただし、具体的な供給契約の合意には至っていない(初期協議段階)
② 石油・ガス分野での協力(特に南シナ海)
南シナ海における共同の石油・ガス開発の可能性を「探索的」に議論
ただし 主権問題が絡むため極めて慎重 「長期(5~10年単位)」の話と認識→ 短期供給対策というより「中長期の資源確保」
③ 精製・供給能力の活用
中国が持つ精製能力、石油製品供給能力を活用できる可能性について意見交換 → 原油そのものではなく「製品供給」も視野
④ エネルギー分野の広範協力
協議は石油に限定されず、再生可能エネルギー、エネルギーミックス改善、肥料・農業資材供給(エネルギー連動)
なども議題に含まれた
⑤ 地政学リスクの共有
中東情勢が石油、食料、肥料に与える影響について認識を共有 → エネルギー問題を「経済安全保障問題」として扱う
■ 重要なポイント
1. 「即効性のある供給確保」ではない
中国からの直接供給増加が決まったわけではない あくまで「選択肢の拡大」
2. 南シナ海問題とのリンク
エネルギー協力は領有権問題と不可分 フィリピン側は「探索的」にとどめている【4月5日 ChatGPT】
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また、イランとの協議も行われ、比船籍の船舶の安全な通航をイランが確約したとも。
****フィリピン船籍の船舶のホルムズ海峡通過、イランが確約…フィリピン外務省が発表****
フィリピン外務省は2日、テレサ・ラザロ比外相とイランのアッバス・アラグチ外相が電話会談し、イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡について、比船籍の船舶の安全な通航をイランが確約したと発表した。
発表によると、アラグチ氏は、「安全かつ妨げのない迅速な通行」を約束した。原油輸入の9割超を中東に依存しているフィリピンは、「エネルギー非常事態」を宣言していた。【4月2日 読売】
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