ドイツ “危うい”言動のAfD 他党は連立拒否の「防火壁」 東部州で「防火壁」突破の可能性
(ドイツ東部ザクセン・アンハルト州で、州議会選に向けたAfDの選挙集会に集まる人々(23日)=ロイター 【8月29日 読売】)
【ナチス想起させる公約掲げるAfD その“危うい”言動】
ドイツでは移民排斥などを掲げる強硬右派、あるいは極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)への支持が拡大しており、地盤の東ドイツだけでなく、全国レベルでもかつての二大政党や緑の党をおさえて支持率はトップ。
9月6日に投開票される東部ザクセン・アンハルト州議会選挙でもその強さを見せつけていますが、同時にナチスを連想させるような“危うさ”も。
****ドイツで強硬右派政党がナチス想起させる公約掲げる…世論調査で首位、主導する初の州政府誕生の可能性****
ドイツ東部ザクセン・アンハルト州で9月6日に投開票される州議会選挙で、強硬右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が掲げる公約が波紋を広げている。障害児教育の見直しや「非ドイツ的」な活動への支援停止など、ナチスを想起させる内容のためだ。
AfDは世論調査で首位となっており、主導する初の州政府が誕生する可能性がある。
AfDは、ドイツ国内の景気悪化や移民の急増などに対する不満を背景に支持を拡大している。ただ、掲げる公約は過激だ。
「障害児と健常児が同じ教室で学ぶという実験は失敗した。障害児は授業の進行を妨げる」と主張。州議会選の選挙公約に全ての子供が共に学ぶ仕組みを廃止し、特別支援学校を強化することなどを盛り込んだ。
公約の内容に、教育現場では動揺が広がる。同州中部の町にあるギムナジウム(日本の中学・高校に相当)のマルコ・ラーデビヒ校長(44)は、公約を読んで強い衝撃を受けた。「社会から特定の集団を排除する。まるでナチスの政策じゃないか――」
同校の生徒約750人のうち、身体障害や学習障害がある生徒は約1割に上るという。障害を持ちながら勉強する生徒と、その境遇を理解し、支える同級生の姿は当たり前の光景だ。
ラーデビヒ氏は「AfDが主張するような不利益などない。むしろ生徒は、障害を抱える仲間への配慮を通じて、社会は多様だと学べている」と訴える。障害を持つ生徒の親からは、AfDが勝利した場合でも通い続けられるのか、不安の声が上がっている。【8月29日 読売】
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今回公約に限らず、“極右”と評されるAfDには、これまでも“危うい”言動が多数あります。
****AfDの“危うさ”を感じさせる言動事例*****
今回の読売記事が問題視しているのは、単に「移民に厳しい」「保守的」というレベルではなく、AfDの一部、とりわけ東部ドイツの強硬派に、ドイツ戦後政治が意図的に封印してきた「民族・人種」「ナチ時代の歴史認識」「排外主義」に接近する言動が繰り返し見られることです。特に分かりやすい事例を挙げると、次のようになります。
1.「ホロコースト記念碑は『恥の記念碑』」――ビョルン・ヘッケ
AfDの最も急進的な政治家の一人、テューリンゲン州支部のビョルン・ヘッケの発言です。
2017年、ベルリンの「ヨーロッパで殺害されたユダヤ人のための記念碑」(ホロコースト記念碑)について、
「ドイツ人は世界で唯一、自国の首都に恥の記念碑を建てている民族だ」という趣旨の発言をしました。
さらにドイツの歴史教育について、ナチ犯罪を反省する現在の「記憶の文化」を180度転換すべきだと主張。これは単なる「歴史教育への批判」ではなく、ドイツ戦後民主主義の重要な柱である「ナチ犯罪への反省」を相対化する発言として大きな問題になりました。
2.ナチス突撃隊(SA)の標語を使用
さらに深刻なのが、ヘッケが演説で「Alles für Deutschland(すべてをドイツのために)」という言葉を使用した問題です。
これはナチスの突撃隊(SA)が使用した標語で、ドイツではナチスの禁止組織の標語を公然と使用することが犯罪になる場合があります。ヘッケは「その歴史的意味を知らなかった」という趣旨の弁明をしましたが、問題となった後にも同じ言葉を使用したことから、単なる失言なのかという疑念が強まりました。
つまり、「ナチスを明確に支持する」とは言わないが、ナチスを連想させる言葉や歴史認識を繰り返し政治的に利用するというところが、AfD強硬派の特徴の一つです。
3.「移民の排除」から「ドイツ人の民族的定義」へ
もう一つ重要なのが「Remigration(レミグレーション=再移住)」です。
AfDは公式には、これを「国外退去義務のある外国人の合法的な送還」という意味だと説明しています。実際、党自身も「ドイツ国籍を持つ移民系住民の集団的追放には反対する」と明記しています。
しかし問題は、党内の一部勢力が「誰が本当のドイツ人なのか」という民族的基準を持ち込んでいることです。例えばAfD幹部からは、移民系ドイツ人を「パスポート・ドイツ人」と呼んだり、「人口置換(Bevölkerungsaustausch)」という極右運動で使われる言葉が使われてきました。
ドイツ連邦憲法擁護庁(BfV)がAfDを「極右過激派」と評価する際にも、この点が重要な根拠の一つになっています。
4.「ドイツ人」と「ドイツ語を話すアメリカ人」を区別するヘッケ
これはかなり最近の例です。2026年6月、ヘッケは西ドイツ人について、「西にはドイツ語を話すアメリカ人が住み、東にはドイツ人が住んでいる」という趣旨の発言をしました。
彼によれば、西ドイツ人は戦後のアメリカ文化によって「代替アイデンティティー」を持つようになったのに対し、東ドイツ人は本来のドイツ人としてのアイデンティティーを保持している、というわけです。
これは興味深いところで、AfDのナショナリズムは必ずしも単純な「外国人排斥」だけではありません。「本当のドイツ人とは誰なのか」という民族的・文化的な線引きを作ろうとする傾向があります。
5.障害児教育の分離――今回のザクセン・アンハルト州選挙
そして、まさに今回の読売記事につながるのがこれです。AfDはザクセン・アンハルト州選挙で、障害のある子どもとない子どもを同じ学校で学ばせる「インクルーシブ教育」の廃止を公約にしています。
もちろん、「インクルーシブ教育には問題があるので制度を見直す」という議論自体は、民主国家で許容される政策論争です。批判されているのは、AfDの政策が「障害者を社会から分離する」という思想につながるのではないか、という点です。
ナチス時代には、障害者を「遺伝的に劣った存在」として扱い、強制断種や「安楽死」政策によって大量殺害した歴史があります。そのため、障害者を社会から隔離する政策を掲げる場合には、ドイツでは非常に強い歴史的警戒感が生じます。今回「ナチスを想起させる公約」と報じられた理由の一つです。
6.「ドイツ的でない文化」への公的支援を停止
今回もう一つ非常に象徴的なのが文化政策です。AfDはザクセン・アンハルト州で、「非ドイツ的」とされる文化への公的助成を打ち切るという政策を掲げています。その対象として、あのバウハウスも問題になっています。
バウハウスはドイツを代表する近代建築・デザイン運動ですが、ナチスから「退廃的」「非ドイツ的」と敵視され、1933年に閉鎖に追い込まれました。ところが現在のAfDが「愛国的文化政策」の名の下にバウハウスなどへの公的支援を削減しようとしている。
そのため、「ナチスが『ドイツ的ではない』として排除した文化を、AfDも『非ドイツ的』として排除しようとしているのではないか」という強烈な歴史的連想が生まれています。
7.ロシア・プーチンへの親和性
もう一つ、ナチス問題とは別ですが、AfD強硬派の特徴としてロシアへの非常に融和的な姿勢があります。
例えばザクセン・アンハルト州のAfD幹部ハンス=トーマス・ティルシュナイダーは、プーチンを「健全な価値観を持つ本物の男」と評価し、ロシアによるウクライナ侵攻についてもロシアは「自衛している」と主張してきました。
もちろん「ロシアとの関係改善」を主張すること自体は違法でも極右でもありません。ただ、民族主義+反移民+反リベラル+反米+親ロシアという政治思想が一部のAfD強硬派で組み合わさっていることは、ドイツ国内で警戒されています。
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では、AfDは「ナチ党の再来」なのか?
ここはかなり慎重に区別する必要があります。「AfD=ナチ党」ではありません。
AfDには、移民を減らしてほしい、EU統合に反対、エネルギー政策を転換してほしい、ウクライナへの軍事支援をやめてほしい、既成政党の政治を変えてほしいといった、通常の民主政治の範囲内で議論できる主張を支持する人も大量にいます。
実際、AfDが2025年連邦議会選挙で約21%を獲得し、現在では全国的な大政党になった背景には、物価高、移民問題、既成政党への不満、東部ドイツの疎外感など、必ずしも極右思想だけでは説明できない要因があります。
ただし問題なのは、一般的な右派・保守政党として説明できない発言や思想を持つ政治家が、党内でかなり大きな影響力を持っていることです。
そしてドイツでは、この問題が単なる「政治的に極端な政党」という話にとどまらない。
2025年、ドイツ連邦憲法擁護庁が約1,100ページの調査結果を踏まえてAfDを「確実に極右過激派」と分類したことが、その重大さを示しています。そこでは、移民・移民系ドイツ人に対する差別的言動、「人口置換」論、反ユダヤ主義・人種主義的表現などが問題視されました。
したがって現在のAfDを見る場合、「普通の右派政党が右に寄った」のか、それとも「民主的な右派政党の内部に、民族主義的・極右的な思想がかなり浸透している」のかという点が重要になります。
そして今回のザクセン・アンハルト州で42%という数字が特に衝撃的なのは、後者の懸念を抱えた政党が、いよいよ「野党として批判する段階」から「実際に州政府を運営する可能性」に入ってきたからです。州政府が誕生すれば、文化、教育、移民政策などで、その思想が現実の行政政策になる可能性があります。【8月30日 ChatGPT】
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【“危うさ”を抱える政党が支持率でトップにある背景】
ナチスを連想させるような“危うさ”を抱える政党が支持率でトップにある背景は・・・詳述すれば長くなるので簡潔に整理すると以下のようにも。
****AhDへの支持がここまで拡大している背景****
簡潔に言えば、「移民問題を中心とする文化的反発」+「既成政党への不信」+「東部ドイツの疎外感」+「経済・将来への不安」が重なった結果、と見るのが適切です。
移民・難民問題
最大の要因です。2026年の大規模調査では、AfD支持の説明可能な差の約75%が「移民への懸念」で説明されるという結果が出ています。 難民受け入れ、治安、イスラム、国境管理などをAfDが一貫して強く訴えてきたことが大きいです。
「既成政党は問題を解決できない」という不信
CDU、SPD、緑の党などへの失望が、「既存政治を壊してくれる党」としてAfDを選ぶ動きにつながっています。研究でも、特に東部では政治的疎外感や既成政治への不信が経済的困窮以上に重要とされています。
東部ドイツ特有の「取り残された感覚」
統一から36年たっても、西部との所得・資産・人口動態の格差が残っています。産業の衰退、若者の流出、人口減少などから、「ベルリンや西ドイツのエリートは自分たちを理解していない」という感覚が根強い。AfDはそこを「東ドイツの声」として巧みに取り込んでいます。
生活コスト・経済への不安
物価、エネルギー価格、雇用、将来への不安も支持の背景です。ただし、「貧しい人ほどAfD」という単純な構図ではないことが最近の研究で明らかになっています。経済的な困窮そのものより、「社会が自分の望まない方向に変わっている」という感覚の方が重要です。
AfDの「分かりやすさ」とSNS戦略
「移民を減らす」「国境を守る」「ベルリンのエリートにNO」「ドイツを取り戻す」といった単純で感情に訴えるメッセージが強い。特に若者へのTikTokなどSNSでの浸透が目立ち、東部では若年層のAfD支持が急上昇しています。
要するに、「AfDの過激な思想に40%の人が共鳴した」というより、「移民問題や既成政治への不満をAfDが最も強く代弁している」と感じる人が非常に増えたと考えた方が実態に近いでしょう。
そして興味深いのは、AfD支持の拡大は東部ドイツだけの現象ではなく、西部でも進んでいることです。したがって「東ドイツ特有の問題」だけでは、現在の全国的なAfD躍進は説明できなくなっています。【8月30日 ChatGPT】
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【ザクセン・アンハルト州では「防火壁」突破して政権獲得の可能性】
上記のような背景で選挙では第1党になりながらも、“危うさ”がつきまとうAfDは連立工作から排除され、州レベルでも政権をとることはなかった・・・というのがこれまででしたが、冒頭ザクセン・アンハルト州の選挙結果次第では、ついにAfDが政権を獲得するかも・・・という段階にきています。
****AfDの国政レベル、州レベルの現状 ザクセン・アンハルト州では「防火壁」突破の可能性****
2026年8月末の状況を見ると、AfDは「国政では最大野党級、州政では東部ドイツを中心に第一党化、しかしまだどこでも政権には入っていない」という、かなり特殊な段階に来ています。
1.国政:いまや「第2党」ではなく、首位をうかがう勢力
2025年の連邦議会選挙でAfDは20.8%前後を獲得し、国政では第2党になりました。
その後さらに支持を伸ばしています。8月のARD DeutschlandTRENDでは、AfD 28% CDU/CSU 21% 緑の党 15% SPD 12% 左翼党 11%となり、AfDが単独首位です。AfDの28%はこの調査で過去最高です。
つまり現在のドイツでは、「AfDが政権を取るかどうか」以前に、「次の連邦議会選挙でAfDが第一党になる可能性」
が現実的な政治問題になっています。ただし、AfD単独で過半数を取るような状況ではありません。
2.最大の問題は「政権に入れない」こと
現在のAfDを理解するうえで非常に重要なのが、いわゆる「防火壁(Brandmauer)」です。
CDU/CSU、SPD、緑の党、左翼党など主要政党は基本的に、AfDとの連立政権は組まないという方針を維持しています。
したがってAfDが30%近くまで伸びても、「第一党になれば、そのまま政権を作れる」わけではありません。実際、AfDは連邦政府だけでなく、州政府にもまだ一度も参加していません。
ただし、ここに現在大きな変化が起きています。
3.州レベル:東部ドイツでは「第一党」が珍しくなくなった
特に旧東ドイツ地域でAfDは急速に強くなっています。2024年の州議会選挙では、
テューリンゲン州:AfD 32.8% → 第1党 ザクセン州:AfD 30.6% → 第1党 ブランデンブルク州:AfD 29.2% → 第2党となりました。
しかし、ここでも「防火壁」のためAfDは政権を作れません。つまり、「選挙では勝つ → しかし他党が連立を拒否 → 政権を作れない」という構図です。
4.ザクセン・アンハルトは、その壁を突破する可能性がある
ここが今回の選挙の最大の意味です。9月6日のザクセン・アンハルト州議会選挙では、最新の調査でAfD 40~42% CDU 22~23%程度。 Infratest dimapの8月26日調査では**AfD 42%、CDU 22%**でした。
これは単なる「AfDが強い」というレベルではありません。現在の議席配分方式なら、AfDが単独過半数にかなり近づく可能性があります。 ただし、最新のZDF調査では40%で、単独過半数には届かないとされています。
5.「AfD政権」が現実の選択肢になってきた
「圧勝=即、AfD政権」ではないものの、特に重要なのは世論の変化です。
ZDF調査では、「CDU主導の州政府を望む:50% AfD主導の州政府を望む:35%」でした。
一方、Infratest dimapでは、「AfD主導:42% CDU主導:41%」とほぼ拮抗しています。
つまり、AfDを「絶対に政権に入れてはいけない」という世論が、少なくとも東部ドイツではかなり弱くなっていることが重要です。
さらに全国調査でも、AfDとの全面的な協力拒否を支持する人は37%まで低下し、「案件ごとの協力」を支持する人が32%になっています。東部では協力容認がさらに高く、38%です。
6.現在のAfDの支持基盤を見ると、東部ドイツ > 西部ドイツという地域差が非常に大きい。
「旧東ドイツの政治・経済・社会への不満」+「移民問題」+「既成政党への不信」+「ベルリンの政治エリートへの反発」がAfDの強さにつながっています。
7.しかも州議会選挙がこれから続く
2026年9月には、9月6日 ザクセン・アンハルト 9月20日 ベルリン 9月20日 メクレンブルク=フォアポンメルンと州議会選挙が続きます。
特にメクレンブルク=フォアポンメルンでもAfDは36%前後、ブランデンブルクで37%、テューリンゲンで40%程度という非常に高い水準にあります。 したがって、9月6日のザクセン・アンハルトだけの問題ではありません。 9月に「AfD第一党」が複数州で定着する可能性があるわけです。
8.そしてAfDにとって最大の転機になるのが「州政府」
仮にザクセン・アンハルトでAfDが単独過半数を取れば、これはドイツ戦後政治にとって極めて大きな出来事になります。 なぜなら、第二次大戦後初めて、極右政党が州政府を単独で運営することになるからです。
州政府を持つと、実際に州行政を動かせますが、そしてもう一つ重要なのが連邦参議院(Bundesrat)です。
ドイツの州政府は連邦参議院に代表を送り、連邦法案に対して一定の拒否・異議申し立て権限を持ちます。したがって、AfDが複数州で政権を取れば、「国政では野党なのに、連邦政治を一定程度ブロックできる」という状況が生まれます。
したがって、現在のAfDは「極右政党が徐々に伸びている」という段階をすでに超えています。
より正確には、「選挙では政権を担える規模になったのに、他党によって政権参加だけを阻止されている巨大野党」
という状態です。
そしてザクセン・アンハルト選挙の本当の意味は、AfDが何%取るかだけではなく、「40%前後を取ったAfDを、他党が今後も永久に政権から排除できるのか」という、ドイツ政治の「防火壁」そのものが試される点にあります。【8月30日 ChatGPT】
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ナイジェリア 頻発する武装勢力による事件 政府・軍の対応を上回る治安悪化の速度
(ナイジェリア兵(2026年3月18日撮影)【8月12日 AFP】)
【GDPは成長しているのに、国民が豊かにならない 治安問題が成鳥の足かせに】
アフリカ最大の人口(2億4千万人)・経済規模を有する地域大国ナイジェリア(直近の統計数字では、GDPは為替変動によって南ア・エジプトなどが大きくなっている)では、2023年のティヌブ政権発足後かなり大胆な経済改革を行い、経済そのものは「危機からの立て直し」に成功しつつある一方、物価高と貧困が非常に深刻、という二面性があります。
経済成長の面では、2024年以降は4%前後の成長軌道に乗っています。一応「順調」とも言えます。
ただし、ナイジェリア政府が目指しているのはもっと高い成長率で、IMFによれば政府は中期的に7~12%の成長を目標にしています。したがって、「順調」といっても、政府が期待するほどの急成長ではありません。
ティヌブ政権が2023年に始めた改革はかなり荒療治でした。
その内容は、① ガソリン補助金の廃止 ② 通貨ナイラの大幅な為替改革・切り下げ ③ 金融引き締め ④ 税制改革 ⑤ 石油産業改革です。
これによって短期的には、ガソリン価格急騰 → 物価高 → 国民の生活苦という強烈な副作用が出ました。
一方で、経済は安定化し、インフレも収まってきています。
そして「石油依存」体質も少しずつ変わっています。2025年の成長を支えたのは石油だけではなく、コンピューターやインターネット関連のICT、金融、不動産、農業、建設などの非石油部門です。これはかなり重要な変化です。また石油生産も回復しています。
しかし、問題は「GDPは成長しているのに、国民が豊かにならない」ことで、ここがナイジェリア経済の最大の問題でしょう。
****GDPは成長しているのに、国民が豊かにならない****
IMFによれば、2025年には国民の63%が国内の貧困線以下と推定されています。しかも2025年秋には約2,700万人が食料不安に直面していたとされています。世界銀行も、2025年に約700万人が新たに貧困状態に入ったと推計しています。
つまり、GDP成長率4%だけを見れば悪くないのに、人口増加+高インフレ+食料価格上昇によって、一人当たりの実質的な豊かさがなかなか改善しない。
ただし「治安」が経済成長の大きな足かせ
IMFもナイジェリアについて、治安悪化は農業、石油生産、投資を阻害する重要な経済リスクと明記しています。
例えば、農村部では「農民が武装集団を恐れて耕作できない→農業生産低下→食料価格上昇→貧困増加」という悪循環があります。
石油についても、「パイプライン盗難・破壊→生産停止→政府の石油収入減少」という問題が長年続いてきました。
したがって、ナイジェリアが抱える貧困と並ぶ最大の問題である治安問題は、ナイジェリア経済の経済成長を決める問題でもあるわけです。
今のナイジェリアを一言で表すなら「経済崩壊からの脱出には成功しつつあるが、人口大国としての本格的な成長にはまだ届いていない」と表現するのが一番近いと思います。
特に興味深いのは、2023~25年の改革で「マクロ経済の安定化」はかなり進んだことです。その一方、貧困、食料不足、治安、電力不足、インフラ不足、雇用不足が残っている。
つまり今のナイジェリアは、「国家財政・為替・外貨準備などは改善、しかし一般国民の生活はまだ苦しい」という、かなり典型的な「改革の初期段階」にあります。
2025年の世界銀行データではナイジェリアの名目GDPは約2,908億ドル、一人当たりGDPは約1,224ドルです。
人口2億人超+豊富な石油・天然ガス+巨大な国内市場+急成長するICT・金融という潜在力は非常に大きいのに、それを治安・電力・行政能力・人的資本の不足が食い潰している――これが、現在のナイジェリア経済の最大の特徴だと思います。【8月29日 ChatGPT】
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【改善しない治安問題 頻発する「事件」 “女性、子どもら600人を拉致”“イスラム過激派、人口8万9000人の町を包囲”】
「非常に大きい潜在力」を食いつぶし、「貧困」の改善を妨げているのが「治安問題」
ナイジェリアではボコ・ハラムなどのイスラム過激派、思想性が薄い武装勢力が活動し、住民殺害・大規模拉致が日常茶飯事・・・という件はしばしば取り上げてきました。
直近では、2026年5月22日ブログ“ナイジェリア 過激派掃討への米軍の介入 “テロのフランチャイズ化”で地元政府に効用と弊害も”
トランプ大統領の思惑(石油利権?)・主張(イスラム教徒によるキリスト教徒虐殺)はともかく、アメリカも過激派掃討に乗り出していますが、住民殺害・大規模拉致は相変わらず・・・というより、最近は激しさを増しています。
****ナイジェリア軍、「盗賊団」1000人と交戦 300人殺害****
ナイジェリア軍は北西部ザムファラ州グミ地区で、明確な政治的思想は有さず、身代金目的の拉致や家畜泥棒を繰り返す武装犯罪集団「バンディット(盗賊団)」と交戦し、メンバー300人以上を殺害した。同州の高官が10日、明らかにした。(中略)
ナイジェリアの北部および中部では、イスラム過激派やバンディットが地域社会を恐怖に陥れており、村を襲撃したり、農民からみかじめ料を徴収したりしている。安全保障専門家らは、金銭目的のバンディットと、北東部で17年間にわたり反乱を続けているイスラム過激派の協力関係が強化されていると指摘する。(中略)
軍は2週間前にもバンディットの野営地を攻略しようとしたものの、「重武装したバンディットの圧倒的な数」を前に撤退を余儀なくされた。軍は万全の準備を整え、バンディットに打撃を与えるべく再び攻撃を仕掛けたのだという。 【7月11日 AFP】
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「盗賊団」とは言っても、軍と1000人規模で交戦となると、殆ど軍事武装勢力です。
****盗賊団が村々襲撃、20人以上殺害 ナイジェリア****
明確な政治的思想は有さず、身代金目的の拉致や家畜泥棒を繰り返す武装犯罪集団「バンディット(盗賊団)」が22日、ナイジェリア北西部ザムファラ州の村々を襲撃し、20人以上を殺害した。当局が明らかにした。
この攻撃は、ナイジェリア北西部および中部の治安悪化を浮き彫りにしている。(中略)
ナイジェリア北西部および中部におけるバンティッツの暴力は、北東部で続くイスラム過激派の反乱や、その他の地域での分離独立派の騒乱と並び、ナイジェリア当局が直面する治安課題の一つであり続けている。
バンディットは主に金銭目的で活動し、明確な政治的思想は有していないが、当局や治安アナリストらはバンティッツの一部とイスラム過激派が協力を深めていると懸念を表明している。 【7月23日 AFP】
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****女性、子どもら600人を拉致か…ナイジェリア大統領、武装集団の襲撃受け軍に人質救出命令****
ナイジェリアのティヌブ大統領は25日、中北部ニジェール州で先週、武装集団によって多数の人が拉致されたことを受け、軍やその他の治安機関に対し、直ちに救出作戦を開始するよう命じた。
住民によると、武装集団がフェイスブックなどに投稿した動画には、同州のモスク襲撃の際に拉致された約600人の女性、子ども、高齢者が映っていた。 この数字が事実であれば、近年の同国では最大かつ最も大胆な集団拉致事件の一つとなる。
事件は数多くの武装集団が活動する同国の広範な地域で治安を守れない政府の無力さを浮き彫りにしている。武装集団は辺境地域を熟知しているため、人質救出は困難を極めそうだ。(後略)【8月26日 Newsweek】
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現時点(8月29日)では、「救出作戦は開始されたが、600人規模の人質全体については救出・所在確認の具体的成果はまだ発表されていない」という状況です。“600人”という数字については確認はとれていません。
ナイジェリアの武装犯罪集団が2025年7月から2026年6月までの1年間に獲得した身代金の総額が77億8000万ナイラ(約9億2000万円)に上っており、前年同期から3倍以上に急増しているとの報告が。
イスラム過激派「ボコ・ハラム」による2件の大規模拉致事件が約9割を占めているとのこと。
拉致被害者は少なくとも7825人に上り、前年同期比で66%増加。そのうち少なくとも1142人(895人は民間人)が死亡しています。
なお、ナイジェリアでは身代金の支払いは法律で禁止されており、被害者の多くが支払いの事実を口にしないため、実際の数字はさらに膨らむ可能性があります。【8月27日 AFPより】
****イスラム過激派、人口8万9000人の町を包囲 ナイジェリア****
ナイジェリア北東部ヨベ州で、イスラム過激派組織「イスラム国西アフリカ州」とみられるイスラム過激派の武装集団が人口8万9000人の町ゲイダムを3日間にわたって包囲しており、治安部隊は終日の外出禁止令を発令して住民を屋内にとどめている。軍関係者や住民の話で明らかになった。
武装集団は26日早朝、ゲイダム付近にある軍の基地を襲撃し、数時間にわたって激しい銃撃戦を展開した後、ゲイダムの町を包囲した。この銃撃戦による死傷者数は明らかになっていない。
AFPの電話取材に応じたゲイダム住民のアブバカル・ムサさんは、「兵士たちに外に出ないよう警告され、26日から屋内にとどまることを余儀なくされている」と語った。(中略)
日銭を稼いで生活する多くの住民は食料や日用品を調達できず、深刻な窮状に追い込まれている。
ゲイダムと近くの基地は、ボコ・ハラムやその分派組織であるISWAPによる襲撃を度々受けている。2021年にはISWAPによって数日間にわたって町が占領され、多数の住民が殺害され、店舗は略奪・放火された。 【8月29日 AFP】
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【政府・軍も危機感を持って対応はしている・・・が、治安悪化の速度がそれを上回っている】
ナイジェリアでの住民殺害・大規模拉致が日常茶飯事なのは昔からのことではあるものの、こうした状況を見ると改めて「軍・警察は何をしているのか?」「治安改善のやる気がないのか?」という印象も。
****政府・軍は対応しているが、治安悪化の速度がそれを上回っている****
ご指摘の通りです。今回の一連の事件を並べて見ると、単発的な「テロ事件」というより、ナイジェリア北部で国家の治安統治能力そのものがかなり深刻に揺らいでいると見るべきだと思います。
そして重要なのは、ナイジェリア政府が何もしていないわけではありません。むしろ軍事的にはかなり動いています。それでも犯罪・武装勢力の増殖速度に追いついていない、というのが実態に近いです。
1.政府は「放置」しているわけではない
ティヌブ大統領は2026年に入って治安対策をかなり前面に出しています。2026年度予算では、国防・治安に5.41兆ナイラを計上し、軍の近代化、情報主導型の警察活動、国境監視、地域レベルの紛争予防などを掲げています。
さらに政府は「テロ対策の国家的枠組みを全面的に組み直す」として、軍・警察・情報機関の統合、情報収集の強化、国境監視、武装勢力への軍事作戦、身代金目的の誘拐への対処、武装集団への資金供給源の遮断などを進めています。
8月19日にも、ティヌブ大統領は5年間の国家脅威評価と戦略防衛作戦計画を新たに作成するよう指示しています。90日以内に脅威評価と作戦計画をまとめるという、かなり大掛かりな再編です。
2.軍が「何もしていない」というわけでもない
例えば8月初めには、軍・警察・情報機関による合同作戦で、誘拐されていた308人を一挙に救出しました。政府は「一日としては過去最大規模の人質救出作戦」としています。
つまり、「軍は何をしているのか?」という疑問に対しては、「実際に大規模な掃討・救出作戦は行っている。しかし、それでも新たな誘拐・襲撃の発生を抑え込めていない」というのが実態です。
3.問題は「軍の強さ」より、相手が多すぎる
ここがナイジェリアの特殊なところです。北部では、ボコ・ハラム/ISWAPだけと戦っているわけではありません。北西部・中部には、Bandits(盗賊団・武装犯罪集団)と呼ばれる多数の武装集団が存在しています。
しかも彼らは必ずしもイスラム過激派ではありません。農民と牧畜民の対立、土地・水資源をめぐる争い、民族的対立、貧困、失業、犯罪組織などが複雑に絡み、そこへイスラム過激派が浸透する。その結果、「テロ組織」なのか「犯罪組織」なのか判然としない武装集団が大量に存在することになっています。
そして政府が一つの組織を壊滅させても、別の集団が出てくる。
4.そして今や「誘拐」が巨大なビジネスになっている
ここが今回の一連のニュースで最も深刻な点だと思います。
最新のSBM Intelligenceの調査では、2025年7月~2026年6月の1年間に、誘拐された人:7,825人 殺害された人:少なくとも1,142人 確認された身代金:77.8億ナイラ(約579万ドル)となっています。
しかもこれは公表された事件を集計した数字なので、実際はもっと多い可能性があります。前年と比べて誘拐被害者は66%増加しています。
つまり、村を襲撃→住民を大量に拉致→身代金を取る→その金で武器・兵員を確保→さらに村を襲撃という犯罪経済の循環ができてしまっています。 だから単純な軍事掃討だけでは根絶しにくい。
5.政府自身も「軍だけでは無理」と認識している
そのためティヌブ政権が進めようとしている重要な政策が、州警察(State Police)です。
現在のナイジェリアは連邦警察が中心で、広大な農村部を中央政府の警察だけでカバーするには限界があります。そこで政府は、州政府が独自の警察組織を持つ方向へ憲法改正を含めて動いています。
州警察によって地元住民からの情報収集、早期警戒、地域の巡回、迅速な対応を強化する狙いを明確にしています。
これは今回の600人規模の拉致のような事件にはかなり重要です。軍が遠くの基地から森林地帯へ出動するのでは遅すぎるからです。
6.では、なぜ「軍・警察がいるのに」こんなことになるのか
最大の問題は、ナイジェリアが広すぎることです。人口約2億人超、国土約92万km²。しかも北部には広大な森林・サバンナ地帯があり、さらにニジェール、ベナン、チャド、カメルーンなどとの国境が複雑に入り組んでいます。
襲撃犯が森林地帯に逃げれば追跡が極めて難しい。
さらに武装集団は、バイク、ピックアップトラック、小火器、携帯電話、地元住民からの情報を利用して機動的に移動します。対する政府軍は、「巨大な国土を守備する側」なので、どうしても不利です。
7.では「やる気がない」のか?
私は、「政府にやる気がない」とまでは言えないと思います。むしろティヌブ政権はかなり危機感を持っています。
8月には軍人約25万人の給与を30~80%引き上げることも決めました。兵士の士気・待遇改善を狙ったものです。軍の年間給与総額は6,600億ナイラから9,240億ナイラへ増加します。
また、7月にはティヌブ大統領が、「身代金を払わない、武装集団とは交渉しない」という方針も明言しています。政府として「誘拐ビジネスを儲からなくする」方向を目指しているわけです。
それでも「政府は失敗している」と言われる理由
ここが一番重要だと思います。政府は、「投入する資金」「軍事作戦」「人質救出」「軍改革」についてはかなり動いています。
ところが結果を見ると、2025~26年に誘拐被害者7,825人という数字が出ている。
そして7,8月だけでも、上記のような事件が頻発しています。
したがって、政府が「何もしていない」というより、「軍事力を投入しているのに、治安悪化の速度がそれを上回っている」という表現が一番適切でしょう。
そして、今回の一連の事件を見ていると、私はナイジェリアの問題を単純に「イスラム過激派問題」として見るより、「国家の治安能力が、犯罪・武装勢力が生み出す巨大な経済圏に追いつかなくなっている問題」と見る方が実態に近いと思います。特に「600人拉致」という事件は、その構造が極端な形で表面化したものと言えます。【8月29日 ChatGPT】
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【米軍は「直接戦闘」から「情報・訓練・助言・能力構築」へ軸足を移し、ナイジェリア軍・警察の能力を高める方向に】
5月22日ブログで取り上げた米軍の介入については、現在も米軍はナイジェリアで活動しています。ただし、5月のような「米軍が直接空爆を続ける」という形からは縮小され、「直接戦闘」から「情報・訓練・助言・能力構築」へ軸足を移しています。
米国の基本的な考え方は、「ナイジェリア軍の代わりに米軍が戦う」のではなく、「ナイジェリア軍が自力でISなどを撃破できるよう能力を高める」というものです。
米軍が空爆でIS幹部を殺害しても、ナイジェリア全土の誘拐・武装犯罪は解決しません。だから米国としては、「ISのような米国自身への脅威になり得る組織は直接攻撃する。一方、その他の治安問題はナイジェリア政府に軍・警察能力を強化させる」という役割分担が合理的です。
5月に米軍がISを攻撃してから3か月しか経っていない8月にも、ナイジェリアでは大規模拉致や町の包囲が起きています。これはまさに、「ISを軍事的に叩くこと」と「ナイジェリア全体の治安を回復すること」は別問題だ、ということを示しています。
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ロシア 懸念されるNATO加盟国への攻撃 結束・反応を試す“曖昧な小規模攻撃”か
(ロシア 国境沿いに航続距離の長い自爆ドローンの発射台を備えた基地を10カ所設置【8月20日 テレ朝NEWS】)
【米CIA長官の訪ロはロシアのNATO加盟国攻撃への警告か】
ロシアが占領するウクライナ南部の燃料補給網や軍事物流網を標的とするウクライナの攻撃、更にロシア領内の石油関連施設や国民の生活に密着した商業施設への攻撃に苦しむロシアですが、プーチン大統領は強気姿勢を崩しておらず。最近はウクライナから戦線を拡大してNATO加盟国への攻撃が行われるのでは・・・との憶測を呼んでいます。
****ロシア、NATO限定侵攻も 米情報機関分析と報道****
米紙ウォールストリート・ジャーナルは6日、ロシアのプーチン大統領が北大西洋条約機構(NATO)の結束を試すため、数年以内に加盟国を限定的に攻撃する可能性があると米情報機関が分析したと報じた。サイバー攻撃や小規模の地上侵攻などを想定しているという。
米情報機関はこれまで、ロシアがウクライナ侵攻を継続している間はNATO加盟国を挑発することはないと予測してきたが、今年に入り評価を変更した。ウクライナの抵抗でロシアの進軍ペースが鈍化する中、プーチン氏がNATOにくさびを打ち込もうとしていると警戒を強めている。
限定的な地上侵攻の可能性は現時点では低いとしながらも、今後高まると予測した。【8月7日 共同】
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現実にルーマニアやポーランドにはロシアのものと思われるドローンが侵入しています。NATOはこうしたロシアの攻勢に結束を強めることを表明しています。
“ルーマニアがロシア軍ドローンを連続迎撃──ロシア「黙ってはいない」”【7月29日 Newsweek】
“正体不明の飛翔体、ポーランド領の奥深くに着弾し爆発 ロシアのウクライナ攻撃始まる中【7月30日 CNN】
****NATO、加盟国への領空侵犯巡り協議 「ロシアが全責任負う」****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国の大使らは12日会合を開き、ポーランドとルーマニアで最近発生した領空侵犯のほか、無人機(ドローン)を巡る事案について協議した。NATOが声明で明らかにした。
NATO加盟国は声明で、「影響を受けた同盟国への全面的な連帯と支持」を表明。「危険かつ受け入れ難い領空侵犯について、ロシアが全面的に責任を負う」とし、「ロシアのリスクへの許容度が高まっていることを示している」と改め指摘した。
さらに「NATOは同盟全体で統合防空・ミサイル防衛の強化を継続しており、加盟国はバルト海から黒海に至る東方国境の防衛強化に向けて講じた措置を強調した。NATOはあらゆる侵略を抑止し、防衛する用意がある」と述べた。【8月12日 ロイター】
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トランプ大統領は否定していますが、米CIAのラトクリフ長官のロシア訪問もそうしたロシアのエスカレーションへのアメリカからの警告が伝えられたのでは・・・とも推測されています。
****トランプ氏、ロシアのNATO攻撃可能性を否定 CIA長官訪ロは通常の接触****
トランプ米大統領は27日、ロシアのプーチン大統領が北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃することはないとの見方を示した。また、今週初めにロシアを訪問した米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官がロシア当局者に対し、NATO加盟国への攻撃を控えるよう警告したとの報道を重要視しない姿勢を示した。
トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し「プーチン氏はNATO加盟国の領土を攻撃しないだろう」と述べた。トランプ氏はこれに先立ち、ニュースサイト「アクシオス」の電話インタビューで、そのような攻撃は起きないとの認識を示したほか、ラトクリフ氏が特定のメッセージを伝えるためにモスクワへ派遣されたわけではないと述べていた。
トランプ氏はアクシオスに対し「ラトクリフ氏は半年に1回、あるいは1年に1回、ロシアの情報機関トップと会っている。両者の関係は極めて良好だ。特定のメッセージはなく、異例なことも何もなかった」と語った。
ラトクリフ長官のモスクワ訪問を巡っては、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が26日、ロシアに対しNATO加盟国への攻撃を行わないよう警告したと報じていた。
これについて複数の関係筋はロイターに対し、ラトクリフ氏はモスクワで行った会談でロシアによるNATO加盟国への軍事行動の可能性を実際に取り上げたと明らかにした。ただ、それがロシア訪問の唯一の目的だったかは不明としており、会談ではロシアの対イラン支援など、米国にとって懸案になっている複数の問題について協議されたとしている。
ロシアの関与が疑われる欧州での破壊工作は、一般的にNATOの結束や加盟国によるウクライナ支援の意思を弱めることを目的としているとみられており、欧米の情報当局はこうした活動を監視。
西側の情報当局はここ数カ月にわたり、ロシアがウクライナのドローン(無人機)を利用して東欧または北東欧の国を攻撃し、実行主体がロシアであることを隠す「偽旗作戦」を実施する可能性を警戒している。【8月23日 ロイター】
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【侵攻直前にも似たような状況 無視された警告 ありうるのは““脆弱な地域で小規模な作戦”でNATOの結束を試す】
ロシアのウクライナ侵攻直前にも同様の米CIA長官の訪ロ・警告が行われましたが、その警告は無視されました。
ロシアがNATOに対して正面から大規模攻撃をかけるとは思われていませんが、「偽旗作戦」やサイバー攻撃、さらなるハイブリッド戦、さらにはNATO領内への小規模な軍事侵入などの可能性が危惧されています。
****プーチンが狙う「NATOの弱点」...全面戦争より危険な小規模攻撃のシナリオ****
ロシアがNATOとの全面戦争を望んでいないとしても、安心はできない。小規模な軍事行動によってNATOの集団防衛条項が本当に機能するのかを試し、加盟国の分裂を誘う――専門家はそんな危険なシナリオを指摘する
2021年秋、数万人規模のロシア軍部隊がウクライナ国境付近に集結し始めたころ、ジョー・バイデン米大統領は懸念を抱いていた。通常の軍事演習には見えない。何か手を打つべきではないか──そう考えた。
バイデンは当時のCIA(中央情報局)長官ウィリアム・バーンズをモスクワに派遣した。駐ロシア米大使を務めた経験もあるバーンズが携えていたのは、メッセージと警告だった。
われわれはあなた方の軍備増強を監視している。あなた方がやろうとしているとわれわれが考えていることを実行するな、というものだ。・・・・その結果がどうなったかは、誰もが知っている。
そして今、歴史は繰り返されようとしているのか、と問わなければならない。CIAのジョン・ラトクリフ長官は今週、事前発表なしでロシアの首都モスクワを訪問した。ウクライナでの戦争やNATO(北大西洋条約機構)加盟国に対するさらなるエスカレーションを避けるよう、ロシア政府に警告することが目的だったと報じられている。(中略)
ウクライナへの全面侵攻につながった根本的な対立は、今なおまったく解消されていない。NATOは依然としてロシアを侵略者とみなし、欧州諸国には自らの安全保障体制を選択する権利があると主張している。一方、ロシアはこれをNATOの拡大と捉え、西側諸国がロシアの近隣国を軍事的に取り込むことは、ロシアそのものへの脅威だと考えている。
それなのに、別のCIA長官による新たな警告が、今度こそ問題を解決すると考える理由がどこにあるのだろうか。
バルト諸国は強気の構え
『ウォール・ストリート・ジャーナル』が会談内容の説明を受けた匿名の関係者の話として伝えたところによれば、ラトクリフとロシア側との協議で主要な焦点の一つとなったのは、ウクライナではなくNATO加盟国に対するエスカレーションを避けるようモスクワに警告することだった。
複数の報道によれば、懸念の中心にあるのはエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国だ。当局者らは、サイバー攻撃やさらなるハイブリッド戦、さらにはNATO領内への小規模な軍事侵入の可能性を懸念しているという。
しかし、当のエストニアはそれほど警戒感を強めてはいない。
マルグス・ツァフクナ外相はラトクリフのモスクワ訪問後の8月27日、ロシアがもたらす危険やNATOに対する挑発の可能性を深刻に受け止める必要はあるものの、「エストニアの脅威評価に変化はない」と強調した。
クリステン・ミハル首相も8月23日にキーウで開かれた首脳会議で、「ロシアはNATOの力と強さを評価した上で、攻撃する価値はないと理解している。したがって、NATOや欧州諸国は自信を持っていい。直接的な脅威は存在しない」と述べた。
これは油断しているということではない。エストニアの今年の国防費はGDP比5.4%に設定されている。最終的に最大600カ所の掩蔽壕を設置する「バルト防衛線」の建設を進めているほか、イギリス主導のNATO戦闘群も駐留している。必要に応じてエストニアを増援できるよう、イギリス軍の1個旅団も高度な即応態勢を維持している。
だが近年の歴史は、軍事的に何が合理的かについて、モスクワも西側と同じ判断をすると思い込むことの危険性を、不愉快なほど明確に示している。
2022年初頭、ワシントンや欧州の情報機関が日に日に切迫した警告を発するなか、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は繰り返し冷静さを呼びかけ、全面侵攻が目前に迫っているとの見方に公然と反論していた。
当時CIA長官だったバーンズは1月にキーウへ飛び、米情報機関が懸念している事態についてゼレンスキーに直接説明していた。それでもゼレンスキーは「パニックになる理由はない」と述べ、状況はコントロールされていると国民に訴えた。・・・その1カ月後、ロシア軍の戦車はキーウを目指して一直線に進んでいた。
同じことがエストニアで起きると示唆する材料はない。だが、プーチンがNATOを弱体化させるために、必ずしも大規模な戦争を必要とするわけではない。
ロシアに問うべきこと
「プーチンは、軍事的にNATOを倒すことはできないと分かっている。だが政治的には可能だ」。イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)のエド・アーノルドは本誌にそう語った。
アーノルドによれば、脆弱な地域で小規模な作戦を実施すれば、NATO条約第5条の限界を試すことができる。例えば、ロシアの飛び地カリーニングラードとベラルーシの間に位置する、NATO領土の細長い一帯「スバウキ・ギャップ」などだ。
ロシア側が意図的に事態の規模を小さく抑えた場合に、NATOが集団防衛条項を発動してロシアとの戦争に踏み切ることをためらえば、その後の政治的な内紛によってNATOは徐々に弱体化し、機能不全に陥る可能性がある。
ワシントン、タリン、ブリュッセルの当局者や防衛計画担当者が問うべきなのは、NATOを攻撃することがロシアにとって合理的かどうかではない。
彼らが問うべきなのは、こういうことだ。たとえ限定的であってもNATOを試す行為には、プーチン自身が負担したくないほど大きな代償が伴う──そう彼に確信させるには、どうすればいいのか。【8月28日 Newsweek】
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ロシアの狙いは“脆弱な地域で小規模な作戦を実施すれば、NATO条約第5条の限界を試すことができる”・・・どこまでNATO側が結束してロシアに対抗するのか、あるいは、しないのかを探る。その結果、NATO内で分断が生じれば好都合・・・といったあたりにあると推測されています。
****ウクライナに苦戦するなか、NATO攻撃が取り沙汰されるロシア・プーチン大統領の狙い****
結論から言うと、プーチンにとってNATO加盟国への攻撃は、軍事的には非常に危険なのに、政治的には「うまく限定できれば大きな利益を得られる可能性がある」という、典型的なハイリスク・ハイリターンの選択肢です。
1.最大のメリットは「NATOの結束を試せる」こと
ここが一番大きいと思います。プーチンにとって、本当に魅力的なのはNATOとの全面戦争ではありません。むしろ、「NATO加盟国を攻撃しても、米国や欧州は本当に戦争をするのか?」を試すことです。
例えばバルト3国などで、限定的な軍事行動やドローン攻撃、特殊部隊による破壊工作などを行い、「事故だった」「ロシア軍の仕業ではない」「ロシア系住民を守るためだった」などと曖昧にする。
そうするとNATO側では、第5条を発動するのか?・・・・これは「武力攻撃」なのか? 米軍を出すのか? 核保有国ロシアとの直接戦争を避けるのか?・・・という議論が起こります。
実際、現在米欧の情報機関が警戒しているのも、いきなり大規模なバルト侵攻というより、サイバー攻撃、破壊工作、ドローン、偽旗作戦など「グレーゾーン」からNATOの反応を試すシナリオです。
2.ウクライナで苦戦しているからこそ「別の場所で勝つ」
ここはご質問の核心だと思います。ロシアがウクライナ国内だけで戦っている限り、「ロシア vs ウクライナ」
という構図です。
しかし、例えばNATO加盟国への限定攻撃が成功すれば、「ロシアがNATOを押し返した」という非常に大きな政治的成果になります。これはウクライナ戦争そのものの戦況を変えなくても、ロシア国内でのプーチンの威信、欧州に対する心理的圧力、NATOに対する抑止力、「ロシアはまだ大国だ」というイメージを強化できます。
つまり、ウクライナで勝てないからこそ、別の戦場で政治的勝利を得る誘惑が生まれるわけです。
3.「米国は本当に欧州のために戦うのか」を確認できる
これも非常に重要です。プーチンが最も知りたいのは、NATOの軍事力そのものというより、「米国が本当に欧州のためにロシアと戦う覚悟があるのか」でしょう。
もしロシアが限定的な攻撃を行ったのに、米国「事態をエスカレートさせるべきではない」 欧州「外交的解決を」となれば、プーチンにとっては非常に大きな収穫です。
NATOという軍事同盟の最大の武器は、実際の兵器だけではなく、「加盟国の一国を攻撃すれば、米国を含む全NATOと戦うことになる」という信頼性です。ここを一度でも崩せれば、ロシアはその後さらに圧力をかけやすくなります。
専門家も、ロシアによる小規模なNATO領域への攻撃は、軍事的占領そのものよりも、「米国の安全保障約束が空洞化している」と欧州に思わせ、NATOの抑止力を損なう政治的効果を狙えると分析しています。
4.ウクライナへの西側支援を弱められる
もう一つのメリットがあります。NATO加盟国への攻撃が発生すると、欧州諸国は当然、「ウクライナ支援に使っている武器・弾薬を自国防衛に回さなければ」という問題に直面します。
つまりロシアから見ると、NATOへの圧力はウクライナ戦争の西側支援を間接的に弱める効果も期待できる。
ただし、プーチンにとって最大の問題は「制御不能になること」
ここが決定的です。ロシアがNATO加盟国を攻撃した場合、ロシア vs NATOになる可能性があります。これはウクライナ戦争とは全く違います。
したがってプーチンにとっては、「NATOを分裂させられるかもしれない」というメリットと同時に、「逆にNATOを完全に団結させてしまうかもしれない」という巨大なリスクがあります。
しかもロシア軍はウクライナ戦争で大きな人的・物的消耗を続けています。バルト方面で大規模な戦争を始めることは、軍事的にはかなり危険です。このため、現在専門家が警戒しているのは、むしろ「全面的なNATO侵攻」よりも、その手前の限定的・曖昧な攻撃です。
そして、今回の動きで私が注目するのはここです
現在米国が警戒しているシナリオは、ロシアがNATOと全面戦争を始めたいというより、「NATOはどこまで耐えられるのか」をロシアが試すのではないかというものです。
特に、ロシアがウクライナで戦争を続けながら、欧州に対してサイバー攻撃、破壊工作、偽旗作戦などを組み合わせる可能性が警戒されています。
ですから、プーチンにとっての理想形を極端に単純化すると、「NATO加盟国を攻撃する」→「NATOが一致して反撃できない」→「米国と欧州の間に亀裂」→「欧州がロシアとの直接対決を恐れる」→「ウクライナへの支援も弱まる」→「ロシアの交渉力が上がる」・・・という流れです。
逆に、「NATO加盟国を攻撃する」→「第5条発動」→「米軍を含むNATO軍が参戦」→「ロシアとNATOの全面戦争」となれば、プーチンにとっては最悪のシナリオです。
したがって、今後特に注意すべきなのは、ロシア軍がいきなりバルト3国へ侵攻することよりも、「これはロシアの攻撃なのか、事故なのか、ウクライナの攻撃なのか分からない」という曖昧な小規模攻撃でしょう。実際、米欧側では「ウクライナ製ドローンを使った偽旗攻撃」の可能性まで警戒されています。
つまり、プーチンにとってNATO戦線拡大の最大のメリットは「領土を取ること」ではなく、「NATOの米国による安全保障保証が本当に機能するのかを試し、同盟を分断すること」と考えると、現在の動きがかなり理解しやすくなります。【8/28 ChatGPT】
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【NATO攻撃に対するアメリカの反応は、戦術核兵器使用時のトランプ大統領の反応を探る参考にも】
NATO加盟国への攻撃と並んで、ウクライナ戦争に苦戦するロシア・プーチン大統領のもう一つの、極めてハイリスクな選択肢は「核兵器使用」です。
****ロシア、攻撃拡大準備か 和平交渉見切り、戦術核も****
米ブルームバーグ通信は26日、ロシアのプーチン大統領が、トランプ米政権が仲介するウクライナとの和平交渉に見切りを付け、ウクライナへの攻撃拡大の準備を進めていると伝えた。最終手段として戦術核兵器を使用する可能性も取り沙汰されているという。
米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官は25日、急きょモスクワを訪問。CIA長官の訪ロは、ウクライナ侵攻前の2021年11月以来で、大規模攻撃計画に関してロシア側に懸念や警告を伝えた可能性がある。
ブルームバーグによると、ロシアはウクライナの首都キーウに対する弾道ミサイル攻撃の激化や、他都市のインフラ施設への攻撃を検討している。
またロシア当局者の間では、プーチン氏がウクライナで戦術核兵器を使用する可能性があるとの見方が広がっている。ただ現時点で戦術核兵器使用の準備を進めている兆候はないという。
プーチン氏は、国際的な制裁による経済的圧力やウクライナによるロシア製油所などへの攻撃を受けても、戦争を終わらせる考えはないとみられている。【8月27日 共同】
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ロシア・プーチン大統領にとって“伝家の宝刀”戦術核兵器使用は抜かずに脅すのが正しい使い道で、抜いてしまうと戻すことが難しい“宝刀”です。 使用に関する一番の障害は、トランプ大統領がどう反応するかわからないという“不確実性”でしょう。
NATOへの“曖昧な小規模攻撃”へのアメリカの反応は、戦術核兵器を使用したときの反応を探る参考にもなるでしょう。
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シンガポール 日本の2倍以上の所得 強制貯蓄制度 家計消費は日本と同程度 高額な少子化対策
【シンガポールの一人当たりGNIは日本の2倍以上】
GNI(国民総所得)は、GDP(国内総生産)に国内居住者や日本企業が海外への投資等によって得られる利子や配当などの所得の純受取額を加えたもの。従って、GDPが国内の経済活動で得られた付加価値であるのに対して、GNIは国内居住者が国内外の活動で得られた総所得を示します。
2024年の世界の1人当たり名目GNI(国民総所得)を国連統計で見ると、シンガポールが11位、78595ドル 香港が18位、60069ドル 韓国が41位、36785ドル 台湾が44位、35531ドル 日本は46位、34470ドルとなっています。【GLOBAL NOTE】
日本は韓国・台湾にも抜かれて、かつての“アジアのリーダー”の面影は薄れていますが、シンガポールの高所得が際立っています。シンガポールは東京23区ほどの面積の都市に金融、貿易、物流、石油精製、半導体、製薬などの国際企業が非常に集中した経済で、国情は日本とは大きく異なります。
****「資源がない、土地がない、でもめちゃくちゃ豊か」→シンガポールのすごい秘密****
シンガポールの「すごい秘密」とは?
シンガポールは1人当たりGDPが7万8115ドル、1人当たりGNIは6万5541ドルで、これはともに日本よりも高い数値です。(中略)では、シンガポールのどこに強みがあるのでしょうか?
日本と同じ資源小国
シンガポールの国土面積は東京特別区(23区)と同じくらいで、非常に狭い都市国家です。そのため鉱産資源には恵まれず、農耕地も広くとることはできません。さらに山がないので、流れ出る河川がほとんど見られず水資源に乏しい国です。水資源はマレーシアからの輸入に依存しています。(中略)
シンガポールは、第二次世界大戦中は日本の占領地でした。戦後はイギリスの植民地支配に戻り、その後1963年にはマレーシア連邦を形成します。 しかし、マレー人優遇政策を進めるマレーシア中央政府と、平等政策を進めたい人民行動党との間で対立が生じます。
1965年、マレーシア連邦から追放される形で、シンガポールは独立します。それから6年後、マレーシアでは正式に「ブミプトラ政策」としてマレー人優遇政策が進められていきます。
キーワードは「みんな仲良く」
土地がない、資源がない。そんなシンガポールは、独自の成長戦略を描いていきます。シンガポールは国民の4分の3が中国系です。しかし中国系を優遇するような政策はありません。 中国系以外のマレー系、タミル人(インド系)を平等に扱います。具体的には、中国系が話す中国語、マレー系が話すマレー語、タミル人が話すタミル語のすべてを公用語に制定しました。依怙贔屓はしないということです。
主要民族の言語をすべて公用語にしたため、民族対立はほとんどなく、非常に政情が安定した国です。また英語も公用語として制定されています。これは、それぞれ母国語が違う国民同士の共通の言語として広く話されているからです。「みんな仲良く」が国是なのです。
英語が公用語、そして政情が安定している。これは、海外からの投資を呼び込むのに十分すぎる条件です。
そのためシンガポールでは、民族問題にすごく敏感で、民族対立を煽るような言論は法律で厳しく取り締まられます。
政情は安定したが、資源がない
政情を安定させたシンガポールでしたが、とにかく狭いのです。何せ東京特別区とほぼ同等ですから。(中略)農業はほとんど行われていません。主要輸出品目の中に農産物はありません。(中略)国土が狭いがゆえに、鉱産資源の埋蔵はほとんど見込めない。
しかしまわりを見渡せば、インドネシアやマレーシア、ブルネイといった産油国があります。シンガポールは原油を輸入し、石油製品に加工して輸出する。こうした加工貿易に特化したのです。
またシンガポールは税率が低い国としても有名です。税制上の優遇措置もあり、外国企業の誘致に大いに効果がありました。
シンガポールの資源は「人間」
シンガポールの資源は「人間」ということです。スウェーデンもそうでしたが、人口が少ない国の経済成長において、人材育成は最優先課題なのです。(後略)【2025年6月22日 宮路秀作氏 代々木ゼミナール・地理講師】
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【選挙、野党は存在するが、政府批判にはリスクが伴う】
抜きんでた高所得、上記記事にあるような「みんな仲良く」がシンガポールの「光」の部分なら、「影」の部分は政治的自由度の低さでしょう。
*****制限が強い政治的自由****
シンガポールの政治的自由度は、「民主主義ではあるが、自由民主主義としてはかなり制限が強い」という位置づけが最も分かりやすいです。現在の評価では、米国のFreedom Houseはシンガポールを 「Partly Free(部分的に自由)」、100点満点中48点としています。政治的権利19/40、民事的自由29/60です。
1.選挙そのものはある。しかも野党も存在する
ここは中国などとは大きく違います。シンガポールでは、複数政党が存在する、国民が投票する、野党が国会議席を獲得できる、政権批判も一定程度可能です。
2025年の総選挙でも野党の労働者党(Workers' Party)が議席を獲得しています。
ただし、1959年以来、人民行動党(PAP)がほぼ一貫して政権を維持しています。2025年総選挙ではPAPが97議席中87議席を獲得しました。
したがって、「選挙がない一党独裁」ではないが、「選挙はあるものの、PAPが圧倒的に有利な条件の下で長期政権を維持している」という体制です。
2.特に制限が強いのが「政府を批判する自由」
ここがシンガポール政治の特徴です。例えばPOFMA(オンライン虚偽情報・情報操作防止法)という法律があり、政府は「虚偽情報」と判断したオンライン記事などについて、訂正表示や削除・アクセス制限を命じることができます。
政府はこれを「偽情報対策」と位置づけていますが、人権団体は政府に都合の悪い批判を抑制するためにも利用されていると批判しています。
また、政府関係者がメディアや政治家を名誉毀損で訴えるケースもあり、批判する側が訴訟リスクを強く意識するため、自己検閲が生じやすいと指摘されています。
つまり、「政府を批判したら即逮捕」という中国・北朝鮮型ではない。しかし、「批判しても何の不利益もない」という欧米型の自由民主主義ともかなり違います。
3.集会・デモの自由もかなり限定されている
公共の場所で政治的な集会を開く場合、原則として警察の許可が必要です。Human Rights Watchによれば、公共の場所での「cause-related assembly(政治・社会的な目的を持つ集会)」には警察の許可が必要で、1人だけの抗議活動でも対象になります。
したがって、「政府に抗議したいので、国会前に100人集まってデモをする」といったことを日本や欧米と同じ感覚で行うことはできません。
4.メディアの自由も弱い
Freedom Houseは、シンガポールについて独立した自由なメディアが十分に存在しないと評価しています。
国内の主要新聞・テレビ・ラジオは政府系企業との関係が強く、政府の政策に批判的な報道には制約があります。オンラインには比較的多様な情報がありますが、政府による規制も存在します。
ここは日本とはかなり違います。日本では政権批判の新聞・テレビ・雑誌・ネットメディアが普通に存在し、
「現政権は間違っている」という主張をメディアが日常的に展開できます。シンガポールにも批判的な報道はありますが、その政治的コストが日本より高いという違いがあります。
5.では、国民は「政治的自由がない」と感じているのか?
ここが非常に面白いところで、必ずしもそうではありません。
シンガポールの政治体制は、「政治的自由を最大化する」よりも、「経済的繁栄・治安・行政能力・社会秩序を優先し、その代わり政治的競争や表現に一定の制約を設ける」という性格が非常に強い。
そして実際、治安が非常に良い、腐敗が少ない、行政が効率的、住宅政策が機能している、経済成長に成功した、国際的な競争力が高いという実績があります。
そのため、「政治家を自由に批判できること」より「政府がちゃんと仕事をしていること」を重視する国民も少なくありません。
6.だからシンガポールは「権威主義国家」とも「普通の民主国家」とも言い切りにくい
私は、「管理された民主主義」あるいは「選挙を伴う強い統治型の民主主義」と表現するのが分かりやすいと思います。【8月27日 ChatGPT】
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【高所得だが強制貯蓄制度CPFによって、家計消費水準は日本と同程度 「自分の資産を自分で積み立てて老後を支える」】
「シンガポールの一人当たりGNIが日本の2倍以上ある」ということは、シンガポールの高い生活水準を示しているのは間違いありませんが、「シンガポールが日本より2倍豊か」という話でもありません。
生活の質は住宅、医療、物価などの消費生活・資産形成などいろんな要素から成り立ちますが、国よって事情が大きく異なりますので、単純な比較はできません。
そこに立ち入ると話が終わらなくなりますで今回はパスしますが、「日本は国際的に見ると比較的安価なものが非常に多い。円安によって日本人の海外購買力は落ちていますが、日本国内で生活する限り、円安の影響はそのまま「生活水準半減」にはなりません。」ということで、シンガポールとの所得の差はそのまま豊かさの差にはなりません。
シンガポールに特徴的なのは、強制貯蓄制度であるCPF(中央積立基金)です。
****強制貯蓄制度であるCPF(中央積立基金)****
シンガポールの「高所得」のかなりの部分は貯蓄・資産形成に回される・・・ここが日本との大きな違いです。
そのため、「所得が高い → その分を全部消費する」という経済ではありません。
高い所得→消費+CPFなどへの積立+住宅取得+金融資産+企業・政府による投資という形になります。
したがって、シンガポール人の「豊かさ」は現在の消費よりも、資産形成・将来の生活保障まで含めて見ると大きくなるわけです。
大雑把に整理すると、先述のように「シンガポールのGDP/GNIは日本の2~3倍ですが、家計が実際に購入している生活はほぼ同じ」という非常に興味深い構造です。
1.CPFとは何か
CPF(Central Provident Fund=中央積立基金)は、働いている人と雇用主が毎月給与の一定割合を強制的に積み立てる制度です。
2026年現在、55歳以下で月給750シンガポールドル超の場合、「本人負担:給与の 20% 会社負担:17% 合計:37%」がCPFに入ります。
日本の厚生年金・健康保険などの社会保険料と似ていますが、決定的に違うのは、かなりの部分が「自分名義の積立資産」として残ることです。
2.しかも「老後」だけではない
CPFには現在、「Ordinary Account(OA):住宅購入、教育、老後など」「Special Account(SA):主に老後」「MediSave Account(MA):医療費」という3つの口座があります。55歳になるとRetirement Account(RA)が作られ、老後用資金がそこへ移されます。
つまりCPFは、年金+住宅資金+医療費+強制貯蓄を一体化した制度なのです。
3.これがどれほど大きな資産になっているか
ざっくりした計算で現在国民1人当たり約1,300万円ものCPF残高が存在することになります。
もちろん、これは乳幼児まで含めて割った数字なので、実際のCPF加入者約427万人で計算すると、ざっくり1,800万円前後です。 かなり大きな金額です。
4.しかも年齢が上がるほど急激に増える
働いている期間を通じて強制的に積み立てることで、中高年になるとかなり大きな金融資産が形成されるわけです。
5.ただし「1,800万円を自由に使える」わけではない
ここは重要です。CPF残高は日本の普通預金とは違います。CPFは、「巨大な預金口座」というより、「強制的に老後資金・住宅資金・医療資金を作らせる巨大な個人資産形成システム」と考えた方が正確です。
6.ここが、先ほどの「シンガポールはなぜGNIほど消費しないのか」という話につながります
先ほど、シンガポールはGNIが日本の2倍なのに、実際の消費生活はそこまで2倍ではないという話をしました。CPFを見ると、その理由の一つがかなり明確になります。
シンガポールでは、「高い所得→強制的に37%程度をCPFへ→住宅・医療・老後資金として蓄積→現在の消費には回さない→国民の資産が増える」という仕組みになっています。
これは日本との比較で非常に重要です。日本では、現役世代の所得が低下しても、年金や医療などを社会全体で支える方式が強い。シンガポールでは逆に、「自分のCPFに貯めて、自分の住宅・医療・老後を自分で賄う」という自己積立型の要素が非常に強い。
だから、シンガポールの高いGNIは、必ずしも「現在の消費の豊かさ」だけに現れず、「国民が保有する資産の大きさ」にも現れている、ということです。
そしてこの点まで考えると、先ほどの「シンガポールと日本の生活水準比較」はさらに面白くなります。「現在の消費」では日本と大差ないのに、「住宅+CPF+金融資産まで含めた家計純資産」では、シンガポールがかなり上になる可能性があります。【8月27日 ChatGPT】
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年金については、日本は現役世代が支払う保険料をもとに現在の高齢者に年金給付する「社会保険・世代間扶養」の性格が強いのに対し、シンガポールは、「自分が働く→自分と雇用主がCPFに積み立てる→その資金を運用→老後に自分の積立資産を原資として年金を受け取る」という積立方式です。
シンガポールのCPF LIFEで、2026年に55歳になってFull Retirement Sumを確保した場合、ざっくりした計算で65歳から約20.5万円/月が支給されます。(詳細は条件によって異なります)
日本との比較で面白いのは、日本は「年金を社会全体で支える」方向、シンガポールは「自分の資産を自分で積み立てて老後を支える」方向にかなり振れていることです。
【急速に進行する少子化 子ども1人に最大875万円支援 外国人受入れで現在は人口減少を回避】
前出記事で“シンガポールの資源は「人間」”という表現がありましたが、シンガポールはその「人間」が世界でも最も早い「少子化」にさらされています。(合計特殊出生率が0.87) そこで政府は・・・
****子ども1人に最大875万円支援 「超少子化」のシンガポールで****
シンガポールのウォン首相は23日、子育て支援を大幅に拡充すると発表した。出生時を中心としていた支援を17歳まで広げる。現金給付や医療・教育向け口座への入金など、政府支援は1人当たり最大約7万シンガポールドル(約875万円)となる。地元メディアが伝えた。
2027年4月以降に生まれるシンガポール国籍の子どもに現金1万シンガポールドル(約125万円)を給付する。1〜16歳には毎年2000シンガポールドルを支給し、17歳になる年には進学用口座に1万シンガポールドルを入金する。新生児だけでなく、17歳までの子どもも年齢に応じた支援を受ける。
働く親が子どもの世話などのため毎年取れる有給休暇も、12歳以下の子どもの人数に応じ、親1人につき8〜12日に増やす。政府の支援を受ける保育施設では、全日保育の月額料金を30年までに150シンガポールドル(約1万9000円)へ段階的に引き下げる。
25年の居住者の合計特殊出生率は過去最低の0・87となり、世界最低水準だった。同年の出生数は2万9864人で、1965年の独立後初めて3万人を割り込んだ。
ウォン氏は「子どもを持つかどうかは極めて個人的な決断で、政策だけで実現できるものではない。ただ、子どもを望む国民が家庭を築き、子どもを育てやすくすることはできる」と述べた。【8月24日 毎日】
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日本の場合、児童手当と出産時の出産育児一時金50万円で、第1子・第2子なら単純計算で234万円、第3子なら648万円ですから、シンガポールの新制度はかなりの大盤振る舞いにはなります。(実際には、上記数字以外に、育児休業給付、幼児教育・保育の無償化、高校授業料支援、子どもの医療費助成、ひとり親への支援、自治体独自の給付なども影響しますので、単純な比較は困難ですが)
問題は、これほど大胆な支援をしてもシンガポールの出生率が0.87まで落ち込んでいることです。
これは、「子育て支援を増やせば少子化が解決する」という単純な問題ではないことを、かなり強く示していると思います。むしろ、住宅費、教育競争、長時間労働、結婚年齢、男女の役割分担など、経済的支援だけでは解決しにくい要因の方が重要なのではないか、という議論につながります。
「少子化」が最速ペースで進むシンガポールですが、人口自体は減っていません。 外国人労働者が増えているためです。
****シンガポールの人口事情****
シンガポールには日本と決定的に違う点があります。それが、外国人を大量に受け入れて人口減少を補っていることです。2025年の非居住者(外国人)は190.7万人。なんと、総人口611万人の約31%が非居住者です。
つまりシンガポールでは、「少子化→国民・住民の自然増加が弱くなる→外国人労働者・外国人居住者を受け入れる→総人口は増える」という構造になっています。
結果、シンガポールの人口はまだ微増しています。2024年の366.0万人から2025年は366.1万人へ、約2.5万人増えました。「増えている」というより、現在は何とか横ばいを維持しているという方が実態に近いでしょう。
シンガポール政府自身、現在の人口政策について、2030年の総人口は690万人を大幅に下回る可能性が高いとしています。【8月27日 ChatGPT】
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イギリス ウクライナ支援を巡りロシアとの対立激化 背景にある根深い「ロシア脅威論」
(英国のバーナム首相と会談するウクライナのゼレンスキー大統領。2026年8月24日、ウクライナのキーウで代表撮影【8月25日 ロイター】)
【イギリスのウクライナ支援を巡り、ロシアとの対立が激化】
イギリスはこれまでも(後述するもともとの英ロ関係の対立を反映して)ウクライナ支援に関して強硬な立場でしたが、そのイギリスのウクライナ支援をめぐり、英ロの対立が激しさを増しています。
英国防省は4月、ウクライナに対し、長距離攻撃用を含むドローン12万機以上を供与すると発表しました。これは過去最大規模の供給計画となります。
そして、英国製ドローンがウクライナのロシア長距離攻撃の実戦で使用され始めています。
****ロシア本土への攻撃に英製ステルスドローン 「ニーアン」など ウクライナが使用****
ウクライナによるロシア本土への攻撃が激化するなか、イギリスメディアはステルス性能があるイギリス製のドローンが攻撃に使われ始めたと報じています。
イギリスのサンデー・タイムズ紙は15日、ウクライナ軍関係者の話としてこの半年間でロシア本土への攻撃にイギリスのドローンが使われ始めたと伝えました。 モスクワ近郊の石油施設などが攻撃対象になったということです。
このうち、ステルス機能を備えたドローン「NYAN」は、ターボジェットエンジンでおよそ250キロの航続距離があり、陸や船の上などあらゆる場所からの発射が可能とされています。 もう1社のドローンはおよそ1000キロの航続距離を有するということです。
ウクライナ軍は15日夜から16日にかけて、モスクワ周辺をおよそ600機のドローンで攻撃するなど、長距離攻撃を激化させています。【8月17日 テレ朝ニュース】
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これに対しロシアは「イギリスがウクライナ危機のエスカレーションを意図的に選択した」と非難。
****ロシア、イギリスに警告 ウクライナへのドローン供給で「テロ攻撃の共犯」****
ロシアは17日、イギリスを、「ウクライナ危機のエスカレーションを意図的に選択した」と非難した。イギリスで製造されたドローンがロシアに対する攻撃で使われたのが明らかになったのを受けたもの。
在英ロシア大使館は、「イギリスはそうすることで、血なまぐさい犯罪とテロ攻撃の共犯者、共同実行者として行動している」とする声明を発表。 「ロンドンの行動は必然的に結果を伴い、その責任を(イギリスは)負わなければならない」とした。そして、紛争への関与を深めるほど、「支払う代償は大きくなる」と付け加えた。
英国防省の報道官は、BBCニュースの取材に対して、イギリスはウクライナと「連帯して」いると声明で回答した。
報道官は、「ロシアの侵略に立ち向かうという、この(イギリス)政府の決意を、ロシアは決して疑うべきではない。それがウクライナでのものだろうと、イギリスや私たちの同盟国に対するものだろうと」と述べた。
そして、「(ロシアのウラジーミル・)プーチン大統領による違法な侵略からウクライナを守るため、ウクライナが必要とする装備を提供することに(イギリスは)尽力している」と付け加えた。
問題となっているドローンは、イギリスの2企業が製造したもの。ロシア国内の軍事施設や産業施設を狙った広範囲におよぶ攻撃で使用され、成果を上げている。攻撃対象には、製油所やオンライン小売大手ワイルドベリーズの倉庫も含まれる。(後略)【8月18日 BBC】
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ロシアの非難に対し、バーナム英首相はウクライナを「100%」支援すると表明、“受けて立つ構え”です。
****英首相、ウクライナ「100%支援」と表明 ロシアの警告に反論****
バーナム英首相は18日、ウクライナ侵攻を続けるロシアが、戦闘への関与を深めているとして英国を非難して警告したことを受け、英国はかねてから表明してきた通り、ロシアのプーチン大統領が主導する違法な戦争に対してウクライナを「100%」支援すると表明した。「順境の時だけの友ではない。ウクライナが助けを必要とする時に共にいる」と述べた。(中略)
英国は今年6月、7億5200万ポンド(9億9600万ドル)の支援策の一環として、年末までにウクライナに15万機の無人機を提供すると発表した。ウクライナは、長距離攻撃ドローンを使って製油所や物流施設を攻撃している。英国防省は、英国製の無人機が使用されたかどうかについては明言しなかった。
国防省報道官はロシア大使館のコメントに関して、バーナム氏の表明に先立ち「英国はウクライナを支援し、プーチン氏による違法な侵攻からの防衛のためにウクライナが必要とす装備を提供することに尽力している」と述べた。【8月19日 ロイター】
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イギリスの対応に反発するロシアは離任した駐英大使の後任を提示していません。
****ロシア、離任した駐英大使の後任提示せず…英国のウクライナ支援に反発か****
英紙サンデー・タイムズは23日、ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使が7月に離任したものの、ロシア側は後任大使の候補を英外務省に提示していないと報じた。英国はロシアの侵略を受けるウクライナ支援を主導しており、英国への反発を示した動きの可能性がある。
在英ロシア大使館は23日、報道に関連し「ロシアと英国の関係は、英国の主導によって、全般的に前例がないほど悪化している」とSNSで指摘した。英国がウクライナに供与した無人機が露領内への長距離攻撃に使われていることが最近、明らかになっている。【8月24日 読売】
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単に外交上の非難合戦にとどまらず、バーナム英首相がウクライナを訪問、ウクライナでの長距離ミサイル生産能力向上に向け、英仏が共同開発した長距離巡航ミサイル「スカルプ」が使用する英国製部品の機密情報をウクライナに開示することを表明しています。
****英国、ウクライナにミサイル部品の機密開示へ-防空能力強化を支援****
英国のバーナム首相は24日、ウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領への支持を示すとともに、冬を前にウクライナの防空能力強化を支援する方針を表明した。同氏は、長距離巡航ミサイル「スカルプ」に使われる英国製部品に関する機密情報について、英防衛企業MBDAによる開示を認めると発表した。
バーナム氏はウクライナによるロシアへの抵抗を、第2次世界大戦での英国のナチス・ドイツとの戦いになぞらえ、結束を強調した。7月の首相就任以来、バーナム氏は国内政策を優先してきたが、国際舞台での指導力も強調したい考えだ。
ウクライナ独立35周年を記念し、キーウの聖ソフィア大聖堂前で行った演説で、バーナム氏は「ウクライナ国民の圧倒的な強さには、心から畏敬の念を抱く」と述べ、「20世紀にはわが国が欧州の自由の炎を守り続けた。21世紀にはあなた方がその炎を守っている。ロシアはわが国に言語道断の脅しをかけているが、われわれはウクライナへの支援を続ける」と呼びかけた。
バーナム氏は同日、ゼレンスキー氏と「有志連合」による会合も共同主催した。ドイツのメルツ首相やフランスのマクロン大統領がオンライン参加したとみられる。
スカルプは、英国の長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」のフランス製造版で、両ミサイルには英仏共通の技術が使われている。情報開示により、フランスとウクライナは早ければ今年末にも、ウクライナ国内でスカルプを組み立てられるようになる。(中略)
民間人の死者が増加し、ウクライナが弾道ミサイル攻撃の迎撃に苦戦する中、ゼレンスキー氏は地対空ミサイルシステム「パトリオット」の迎撃ミサイルを確保し、冬までに在庫を補充できるよう、欧米諸国に繰り返し訴えている。冬には、ロシアがエネルギーインフラへの攻撃を再び激化させると予想されている。
英国はパトリオットを使用していないものの、バーナム氏には、十分な在庫を持つ欧州諸国や米国に対し、一部をウクライナに供与するよう説得する外交努力が期待されている(後略)【8月24日 Bloomberg】
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****英のウクライナ支援「火に油」とロシア、ミサイル部品機密開示で****
ロシア大統領府は24日、英仏が共同開発した長距離巡航ミサイル「スカルプ」が使用する英国製部品の機密情報をウクライナに開示するという英国の決定は「火に油を注ぐ」ものだと非難した。(後略)【8月24日 ロイター】
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イギリスのミサイル部品機密開示の見返りなのか、ウクライナからは「宝庫」(英首相府)とも評される戦場で蓄積している膨大なデータがイギリスへ提供されることに。
****ウクライナ、英国と軍事用AI技術を共同開発へ…対ロシア戦で蓄積されたデータを初めて外国に提供****
英国のバーナム首相は24日、キーウでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と、軍事用の人工知能(AI)技術を両国が共同開発する協定に署名した。英首相府によると、ロシアの侵略を受けるウクライナが戦場で蓄積している膨大なデータを外国向けに提供するのは初めてで、7月の首相就任後、初外遊に臨んだバーナム氏にとって成果となった。
英国は、露軍の無人機など約500万件の戦場データで構成される軍事用AI訓練プラットフォーム「アベンジャーズAIラボ」の利用が可能になる。ウクライナは英国の技術力に期待を寄せる。
AIシステム構築では訓練データの量と質がカギを握る。ウクライナのデータは「宝庫」(英首相府)と言える。バーナム氏は「国防だけでなく、重要施設の保護などに役立てたい」と意義を強調する。
内政に重心を置くバーナム氏にとって、今回が実質的な外交デビューとなった。(後略)【8月25日 読売】
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【もともとイギリスで根深い「ロシア脅威論」】
上記のようにウクライナ支援を強化し、ロシアとの対立を深めるイギリスですが、もともとイギリスは元FSB(ロシア連邦保安庁)職員や元ロシア軍情報部員の英国内での暗殺・暗殺未遂事件へのロシア関与をめぐってロシアとは関係が非常に悪いという背景があります。
そうしたもともとのロシアとの対立に加えてのウクライナ支援強化で、更に英ロ関係が悪化しています。
****これまでの英ロの関係悪化の経緯****
ご指摘の通り、現在の英露対立は「ウクライナ戦争が始まったので急に仲が悪くなった」というより、2000年代から積み重なってきた対立が、2014年のクリミア併合、2018年のスクリパリ事件、そして2022年の全面侵攻で決定的になったと見ると分かりやすいです。
1. 冷戦時代:基本的に敵対
第二次大戦では英国とソ連は対独戦で同盟関係になりましたが、戦後は米英を中心とする西側とソ連が対立。
英国はNATOの主要国としてソ連と対峙しました。つまり、英露関係の「悪いイメージ」の根っこには、まず冷戦期の対立があります。
2. 1991~2000年代初頭:いったん関係改善
ソ連崩壊後、英国はロシアを国際社会に取り込もうとし、経済・外交関係を発展させました。
1990年代には比較的穏健な関係で、2000年代初頭にはブレア首相とプーチン大統領の関係も一時的に良好でした。プーチン氏自身も2003年に英国を公式訪問しています。
ただし、この時期から英国はロシア人富裕層や反プーチン派の亡命先として重要になっていきます。ここが後の問題につながります。
3. 2006年:リトビネンコ暗殺事件
英露関係の大きな転換点です。
元FSB(ロシア連邦保安庁)職員で英国に亡命していたアレクサンドル・リトビネンコが、ロンドンで放射性物質ポロニウム210を使って毒殺されました。
英国の調査では、ロシア政府機関による作戦である可能性が極めて高く、さらにプーチン大統領が承認した可能性が高いと結論づけられました。ロシアは容疑者の英国への引き渡しを拒否しました。
これによって、「ロシアの情報機関が英国国内で反体制派を殺害する」という非常に深刻な問題が英国内で意識されるようになります。
4. 2008~2013年:対立が拡大
その後、ロシア・ジョージア戦争、ロシアの欧州政治への介入疑惑、サイバー攻撃、NATOとの対立、シリア内戦へのロシア介入などが積み重なります。
5. 2014年:クリミア併合で「戦略的対立」に
ここが現在につながる最大の転換点の一つです。
ロシアによるクリミア併合とウクライナ東部への介入を受け、英国はEU・米国などとともにロシアへの制裁を強化。英国はもともとNATOの中でもロシアへの警戒が強く、ウクライナ問題では比較的強硬な立場を取るようになります。
つまり、「英国国内でのロシア人暗殺問題」+「ロシアの対外政策への警戒」が次第に一つの「ロシア脅威論」にまとまっていきます。
6. 2018年:スクリパリ事件
そして非常に象徴的なのがセルゲイ・スクリパリ元ロシア軍情報部員と娘の暗殺未遂事件です。2018年、英国のソールズベリーでロシア製神経剤「ノビチョク」による暗殺未遂が発生。
英国はロシアによる攻撃と断定し、ロシア外交官を追放。ロシアも報復して外交官を追放するという、典型的な「外交戦」になりました。さらに2025年の英国側調査では、プーチン大統領がこの攻撃を命じたとの結論が示されています。
ここまで来ると、英露関係は単なる外交上の意見対立ではなく、「ロシアの情報機関が英国国内で活動している」という安全保障問題になります。
7. 2022年~:ウクライナ戦争で事実上の敵対関係
そしてロシアのウクライナ全面侵攻。
英国は米国と並んでウクライナを強力に支援してきました。武器供与、訓練、情報面での支援、対ロシア制裁などで英国は非常に積極的でした。
そのためロシアから見ると英国は、「単なる西側諸国の一国」ではなく、ウクライナを軍事的に支える主要敵対国という位置づけになっています。
2026年8月現在、その対立はさらに激化しています。英国のバーナム首相は8月24日にキーウを訪問し、ウクライナによる長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」の国内生産を可能にする英国側の技術情報提供などを表明。ロシア側は「戦争を激化させる行為」と強く非難しました。
さらにロシアは7月に英国駐在大使アンドレイ・ケリンを帰国させ、後任を置いていません。英露の外交関係が「史上最低水準」に近づいていることを象徴する動きです。
そして興味深いのは、英国とロシアは地理的には直接対峙していないのに、なぜここまで険悪なのかという点です。
これは英国が、NATOの主要軍事国、米国との「特別な関係」を持つ、核保有国、ロシアの反体制派・亡命者が多く住む国、ウクライナ支援に非常に積極的、ロシアの情報工作・サイバー攻撃に強い警戒感を持つという立場だからです。
その意味では、現在の英露対立は「ウクライナ問題だけの対立」ではなく、2000年代から続く英国とプーチン政権との相互不信が、ウクライナ戦争によって軍事的対立にまで発展したものと考えるのが適切でしょう。【8月26日 ChatGPT】
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北朝鮮「非核化」を棚上げしたトランプ外交・韓国「核凍結」 「核保有容認」との差は?
(北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星20」。KCNA公開(2025年10月10日撮影)【8月20日 AFP】)
【トランプ大統領 11月に中国・深センで開催されるAPEC首脳会議での米朝首脳会談を模索】
トランプ大統領は毎年行われている米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド」を直前になって縮小、更に、9月に予定していた合同上陸訓練「双竜訓練」を中止、北朝鮮・金正恩氏への秋波も。
****トランプ氏、韓国との軍事演習の規模縮小指示…費用負担に不満・金正恩氏と「とても仲が良い」と強調も****
米国のトランプ大統領は16日(日本時間17日朝)、韓国との合同軍事演習の規模を大幅に縮小するようヘグセス国防長官に指示したとSNSで明らかにした。北朝鮮の 金正恩キムジョンウン 朝鮮労働党総書記とは「良好な関係」にあり、トランプ氏自身が演習を「快く思っていない」と説明した。(後略)【8月17日 読売】
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一方で韓国に対しては、イラン問題で協調しないことを重ねて批判、合同演習についての費用負担にも批判を。
****トランプ大統領がまた韓国批判 合同演習で「米国に多額の金を支出させている」****
トランプ米大統領は19日、自身が規模縮小を指示した米韓合同軍事演習について、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領を念頭に「彼は米国に多額の金を支出させている」と述べ、改めて自身の判断の正当性を強調した。ホワイトハウスで記者団の質問に答えた。
トランプ氏は、対イラン軍事作戦への協力を拒否したとする韓国について、「彼らは石油の60%をホルムズ海峡(を通過する船)から得ている」と不満を示した。トランプ氏は16日に演習縮小の指示を発表して以降、連日のように韓国批判を展開している。
トランプ氏は19日の発言で、北朝鮮が米韓合同演習に反対してきたことにも言及。「少なくとも私の任期中は非常に行儀よくしていた相手(北朝鮮)に対して非常に失礼だ」と述べ、4回目の会談実現を模索する金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記に対する配慮で合同演習の規模縮小を決断したとも説明した。【8月20日 産経】
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トランプ大統領の一連の対応は、北朝鮮との首脳会談を模索するものと見られています。
****トランプ氏、金総書記との会談模索 今秋にも****
米当局者らによると、ドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との首脳会談を今秋にも実現させるよう側近らに働きかけている。自身の1期目における劇的な外交的取り組みを再開し、金氏に核兵器開発計画の放棄を迫る狙いだ。
トランプ氏は次回のアジア歴訪時に金氏との直接会談を設定することを非公式に話し合っていると、当局者らは述べた。その機会として、11月に中国・深センで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が候補に挙がっている。
公式な準備は進んでいないものの、リスクの高い金氏との再会談を望むトランプ氏の姿勢から、イランでの勝利が依然として見通せない中、外交政策上の輝かしい成果を切望していることがうかがえる。金氏は、数十発の核弾頭を保有すると推定される独裁者であり、ほとんどの大統領は前提条件なしに金氏と会談することを避けてきた。【8月19日 WSJ】
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イランもウクライナもうまくいかず、国内では物価高への不満が増している状況で、トランプ大統領は中間選挙に向けた“打開策”を米朝首脳会談に求めているようですが・・・
****なぜ今、トランプ大統領は北朝鮮に接近を試みるのか 秋の中間選挙へのアピールも****
2026年8月現在、トランプ政権が北朝鮮との直接対話の再開を模索する動きを見せている。緊張緩和策として米韓合同軍事演習の大幅縮小を指示するなど、北朝鮮指導部に対する急接近の姿勢は顕著である。
かつての対立関係から一転してトップ外交を演出した第1次トランプ政権を彷彿(ほうふつ)とさせる動きであるが、このタイミングにおける対北外交の再始動には、単なる外交方針の一貫性にとどまらない外交・政局上の多角的な背景が存在する。
最大の要因として挙げられるのが、他の国際紛争における手詰まり感と外交的成果の不足である。トランプ政権はウクライナ戦争の終結や中東・イラン情勢の安定化を看板公約に掲げてきたが、現場での交渉は難航を極めている。
ウクライナ戦線での仲裁作業は停滞を続け、イランをめぐる核問題や地域安全保障でも劇的な打開策を見出せない状況が続く。外交上の劇的な解決をアピールしたいトランプ政権にとって、こうした主要な国際紛争での手詰まりは強い不満と焦燥感を生んでいる。
主要課題での手詰まりを補うべく、かつて直接交渉のチャンネルを築き、自らの個性的外交手腕を強調しやすい北朝鮮問題へと再び目を向けさせる動機となっている。
さらに、米国内における深刻な政治的苦境も対外スタンスに直結している。足元の世論調査において、トランプ大統領の支持率は33%まで低迷しており、厳しい政権運営を余儀なくされている。これに拍車をかけるのが、2026年秋に控える米国中間選挙の存在である。
上下両院の主導権を懸けた大型選挙が目前に迫る中、内政面での支持回復が遅れるトランプ政権にとって、外交でのビッグサプライズの創出は大きな起爆剤となり得るかもしれない。
金正恩総書記との対話を再開し、緊張緩和や核問題での名目上の進展を演出できれば、強い指導者像を再びアピールし、落ち込んだ支持率を挽回(ばんかい)して選挙戦の流れを変える一手になると計算していると考えられる。
日米韓の安全保障連携にきしみが生じるリスクも
しかし、この対話模索がトランプ政権の狙い通りに円滑な成果に結びつくかは非常に不透明である。
北朝鮮側はすでに核保有国としての地位を既成事実化しており、単なる軍事演習の縮小程度では対話に応じない姿勢を見せている。ロシアとの関係を深め、経済的・軍事的なバックアップを得て交渉力を高めた平壌に対し、制裁解除や非核化の定義をめぐる溝は過去以上に深まっている。
トランプ政権が抱える政治的焦りと外交的打開への欲求が、対北朝鮮アプローチを駆動していることは確かであるが、それが実際の成果につながるか、あるいは国内の批判をかわすための短期的な打開策にとどまるかは、今後の動向を注視する必要がある。
また、米国の同盟国である日本や韓国の視点からも、この外交的転換は複雑な波紋を呼んでいる。事前調整が不十分なまま北朝鮮への歩み寄りが先行すれば、日米韓の安全保障連携にきしみが生じるリスクも否定できない。
特に東アジアの安全保障環境が緊迫化する中、米国の国内政局に左右された対北外交が地域情勢にどのような影響を与えるか、国際社会は冷静な分析を求めている。トランプ政権の政治的苦境から生じた対話の模索は、単なる二国間交渉の域を超え、グローバルな勢力図に不確実性をもたらす要因となっている。【8月24日 内外タイムス】
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【米が北朝鮮を核保有国として“事実上”認める方向での会談となれば、日韓など東アジア情勢に大きな変化】
首脳会談が行われるとすれば、北朝鮮の現状を考えると、アメリカが北朝鮮を核保有国として“事実上”認める方向での会談になると思われます。そこには「日韓置き去り」といった論調も。
****危うい米朝再接近、揺らぐ「非核化」 トランプ氏焦りで日韓置き去り****
トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との再会を探り始めた。11月の中間選挙をにらんだ外交ショーが狙いなら、交渉は北朝鮮ペースとなる恐れがある。非核化を巡る安易なディール(取引)は、日本の安全保障を危うくしかねない。
米朝交渉の展望については米国内でも懐疑的な見方がある。23日の米保守系メディア、FOXニュースは「トランプ氏が北朝鮮の軍事的な脅威を除去できる見通しはほとんどな...(後略)【8月24日 日経】
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北朝鮮からすれば「完全勝利」との指摘も。
****北朝鮮の「完全勝利」? トランプが核保有を事実上認める最悪シナリオ****
トランプが北朝鮮の核保有を事実上認めれば、韓国は国家の存立を脅かす核の脅威に恒久的にさらされることになる
(中略)トランプは、北朝鮮が保有する核弾頭の数を公に明らかにした初のアメリカ大統領とみられる。トランプによれば、その数は57発。米科学者連盟(FAS)による最新の推計である60発とほぼ一致する。韓国は最大120発に達する可能性があるとしている。
だが、金正恩朝鮮労働党総書記が実際に何発の核兵器を保有しているかは、本質的な問題ではない。トランプ政権の関係者はこれまで何度も、アメリカが北朝鮮を核保有国として事実上認める方向に近づいていることを示唆してきた。公式には非核化という目標を掲げ続けているにもかかわらずだ。
トランプはなぜ、北朝鮮には長年融和的な姿勢を取りながら、イランには素早く攻撃を仕掛けたのか。そこには、新たな冷戦時代の論理がある。すでに核兵器を持っているなら、アメリカはその国との共存を受け入れる、という論理だ。(中略)
核保有国には対等な扱い
2018年と2019年の金正恩との首脳会談は、朝鮮半島の緊張を緩和する手段として韓国政府から歓迎された。だが、トランプが北朝鮮の核兵器保有を事実上認めるようなことになれば、韓国は国家の存立を脅かす核の脅威に恒久的にさらされかねない。
「トランプは習近平、プーチン、金正恩を自分と対等な存在とみなし、そのように扱っている。そして、強権的な指導者同士の個人的な関係や互いへのお世辞、それぞれの勢力圏の暗黙の承認を通じて、彼らの国益を受け入れ、折り合いをつけようとする」と、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員サリ・アルホ・ハブレンはXに投稿した。(中略)
報われた金正恩の賭け
金正恩は、父の金正日が進めた核開発計画を引き継いだ自らの判断は正しかったと感じるだろう。当時は中国とロシアも北朝鮮への国連安全保障理事会の制裁に賛成しており、それによって経済的苦境を強いられたにもかかわらずだ。
この構図で勝者となるのは北朝鮮だが、その同盟国である中国も同様だ。中国は、自国の核戦力がアメリカやロシアの数分の1にとどまることを理由に、核軍備管理をめぐる協議を一貫して拒んできた。
金正恩が思い通りに核保有を既成事実として認めさせることができるのなら、習近平にできないわけがない、という理屈だ。
北朝鮮の勝利はあまりに完全で、かつては国連制裁に賛成していた中国とロシアも、今では制裁を使って金正恩政権に圧力をかける意味を見いだしていない。北朝鮮の核・ミサイル開発を封じ込めたところで、安全保障上の利益を得るのはアメリカとその同盟国だからだ。
いまや北朝鮮は、何のおとがめもなくミサイル実験を行っている。
「北朝鮮は、非核化を交渉の前提とするトランプの姿勢は、せいぜい柔軟に変更できるものだと見ている」と、戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国部長ビクター・チャは述べた。
チャによれば、北朝鮮はアメリカとイランの停戦合意から、トランプ政権との外交についてもう一つの教訓を得た。壮大だが曖昧な声明を外交上の「成果」として発表し、具体的な問題はその後の交渉に先送りできるということだ。
しかも、その先の交渉が実際の合意に結びつく見込みはほとんどない。(中略)つまりトランプは、他の政権なら建前として口にしない現実まで、公然と認めてしまう。いまが「新冷戦」だろうが「ポスト冷戦」の時代だろうが、トランプにとっては同じことなのだ。(後略)【8月24日 Newsweek】
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【韓国も「peace first」で、非核化を交渉の前提としない方向に転換 トランプ路線とその点では同じ】
“トランプが北朝鮮の核保有を事実上認めれば、韓国は国家の存立を脅かす核の脅威に恒久的にさらされることになる”・・・とは言っても、すでに韓国自身が「非核化」先送りという事実上の北朝鮮核保有容認に舵を切っています。
****韓国統一相、対北朝鮮政策「まず非核化」方針を撤回…「先に平和を築く方式」へ転換と発表****
韓国のチョン・ドンヨン(鄭東泳)統一相は(7月)23日、就任1周年を迎え、政府が北朝鮮の核問題を巡る政策を「先に非核化」「先に核廃棄」から「先に平和」へ転換したと明らかにした。
チョン・ドンヨン氏は政府ソウル庁舎で開いた記者懇談会で、「先に非核化、先に核廃棄という考え方を撤回し、先に平和を築く方式へ転換した。これがイ・ジェミョン(李在明)政権の平和戦略改革だ」と述べた。
北朝鮮の核問題を完全に解決するとの意味で使われてきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」も撤回し、北朝鮮による核開発の中断を優先する戦略を具体化していると説明した。
イ・ジェミョン政権は北朝鮮核政策として「中断、縮小、廃棄」の順序を掲げている。イ・ジェミョン大統領は2025年9月の国連総会で、交流、関係正常化、非核化からなる対北朝鮮構想を示していた。 ただ、チョン・ドンヨン氏の発言は交流や関係正常化より非核化を後回しにする趣旨とも受け取れるため、政府が北朝鮮の非核化を事実上断念したとの批判が出る可能性がある。
チョン・ドンヨン氏は「この瞬間も北朝鮮ではウラン濃縮やプルトニウム生産、核弾頭増強の動きが続いている」と指摘。「保有する核兵器が約90発と推定される状況で、これ以上時間を遅らせてよいのかという問題意識がある」と語った。
また、南北間の敵対と対立の悪循環を断ち切り、平和共存体制へ移行するため、組織安定、日常の平和回復、平和共存政策への転換、核・平和戦略の改編、規制緩和、平和統一教育改革、北朝鮮離脱住民への認識改善という「7大改革」を進めてきたと説明した。 (後略)【7月26日 KOREAWAVE】
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7月23日に鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相が示した「peace first」は「北朝鮮が核を持っていることを無視して、まず非核化を要求する」という従来方式では交渉そのものが始まらない、という現実的判断です。
“韓国政府の「peace first」は、「北朝鮮の核保有を認める」という政策ではありません。むしろ、「核問題を解決するには、まず北朝鮮との対話を再開しなければならない。そのためには非核化を交渉開始の絶対条件にしてはいけない」という考え方です。
韓国政府は依然として、朝鮮半島の最終的な非核化を目標として掲げています。したがって、非核化を「目的」から外したのではなく、非核化を「交渉開始の条件」から外したと表現するのが一番正確でしょう。”【8月25日 ChatGPT】
トランプ大統領と韓国の双方で「トランプ:軍事的圧力を下げて金正恩との直接交渉へ」「李在明:緊張を下げて南北対話へ」という、かなり似た方向性が出ています。
ただ、トランプ大統領の場合、北朝鮮問題だけでなく、韓国の防衛負担、対イラン政策、米軍の負担軽減、米国のアジアにおける軍事コスト削減なども絡んでいますので、韓国の思惑と一致している訳でもありません。
****北朝鮮核問題に関する現在の構図****
米国・・・「完全非核化」という最終目標は公式には維持する。しかし、まず金正恩と話をする。そのためには演習縮小などの譲歩もする。
韓国・・・「完全非核化」という最終目標は維持する。しかし、それを対話の前提にはしない。まず平和・緊張緩和・核凍結を目指す。
北朝鮮・・・「核を持ったままの体制」を前提に米韓から譲歩を引き出したい。
「もはやこれまでのような非核化交渉は無理なのではないか」という認識は、かなり米韓双方に広がっていると考えてよいでしょう。
ただし、「だから北朝鮮の核保有を正式に認める」というところまでは、まだ米韓とも踏み込んでいません。
むしろ今始まりつつあるのは、「非核化を最終目標として掲げながら、核保有状態の北朝鮮とまず共存・核凍結について交渉する」という、事実上の段階的アプローチです。
そしてこれは、実現すれば朝鮮半島政策のかなり大きな転換になります。特に日本にとっては、「北朝鮮の非核化」から「北朝鮮の核保有を前提とした抑止・管理」へ米韓の政策が徐々に移行するのかという点が非常に重要になります。現状では、まさにそこが今後の最大の焦点だと思います。【8月25日 ChatGPT】
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【「核凍結」が「核保有の事実上の容認」と異なるための条件は北朝鮮が国際的監視・査察の枠組みを受け入れること・・・現実には困難】
しかし、“「完全非核化」という最終目標は公式には維持するが、まずは核凍結を目指す”と言っても、「核凍結」と「核保有の事実上の容認」の違いは外交用語の問題であり、殆ど「核保有の事実上の容認」と同義でしょう。
もちろん「正式な核保有国として承認する」こととの差はあるでしょうが。
「核保有を認める」のではなく、「核保有を認めないと言い続けながら、核保有している北朝鮮との共存を現実として受け入れる」ということは、外交上はこの二つは非常に違います。しかし安全保障の実態としては、かなり近い。
「核保有を認める」のではなく「あくまでも核凍結だ」ということに実質的意味を持たせるとすれば、「核凍結をどう検証するのか?」という問題になります。現在の北朝鮮がかつてのイラン核合意みたいな国際的監視・査察の枠組みを受け入れるとはなかなか思えないですが・・・
北朝鮮は過去にIAEA査察を受け入れたことがありますが、査察をめぐって対立し、2009年にはIAEA査察官を追放しました。そして現在もIAEAは北朝鮮国内で検証活動を行えていません。
*****「核凍結」の実効性****
査察も認めない、申告も信用できない、秘密施設も存在する可能性がある――という状態なら、「凍結」は単なる政治的約束になってしまいます。
その意味で、私は今後の米朝交渉を見る際には「非核化」という言葉そのものより、①既存核兵器をどう扱うのか
②核物質の生産をどう検証するのか ③IAEAなどの査察を認めさせるのか ④秘密施設へのアクセスを認めるのか ⑤核兵器の数量を申告させるのか を見るべきだと思います。
この5点を曖昧にしたまま「核凍結」が成立するなら、それは実質的には「北朝鮮の核保有を容認した」と評価されても仕方がないでしょう。
そして実は、ここに現在のトランプ外交の最大の問題があります。「金正恩と会談すること」自体は簡単でも、「核問題について検証可能な合意を作ること」は全く別の難題だからです。過去3回の米朝首脳会談が最終的にそこを突破できなかったことを考えると、今回も「首脳会談→演習縮小→平和宣言」までは進んでも、核の数量・査察・検証という核心部分で行き詰まる可能性はかなり高いと私は見ます。【8月25日 ChatGPT】
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北極海航路 中国、韓国が相次いで取組を強化 「季節限定の高速・短距離の補助幹線」
(【北海道大学HP】)
【「氷上のシルクロード」を目指す中国、ロシアに接近 週1便の定期サービスに乗り出す】
温暖化によって北極海の氷が緩む傾向にあることから利用可能性が増している北極海航路が世界の北極圏海岸線の半分を有するロシアや関係国の間で強く意識されるようになっているのは以前からの話ですが、イラン戦戦争によるホルムズ海峡封鎖などもあって、特に最近は北極海航路の重要性が増しています。
****ロシア、北極圏の国益防衛 プーチン氏「北方航路の重要性増大」****
ロシアのプーチン大統領は23日、中東の不安定化を含む世界的な混乱を受け、北極海を通過する「北極海航路(NSR)」の重要性が高まっているとし、北極圏でのロシアの国益を防衛していく考えを示した。【4月23日 ロイター】
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そして北極海航路に並々ならぬ関心を示すのが中国。中国と欧州をより短時間で結び、地政学的リスクも少ない「氷上のシルクロード」を構築することを狙っている中国は、ウクライナ戦争で困窮するロシアに豊富な資金力を武器に接近しています。
****「氷上のシルクロード」を目指す中国、ロシアに金を払い北極海へのアクセスを得ていた****
<ロシアの科学調査船への同乗や北欧との連携──中国の北極圏での動きが取材で明らかに>
中国は、地政学的競争の焦点となっている北極海で勢力拡大を図るため、ロシアに数十万ドルを支払って科学調査遠征に同行していることがわかった。
ロシア船に中国が乗船している事実は、週末にノルウェーで北極圏で開かれた研究会議に集まった中国人研究者や政府関係者が本誌に明かした。ノルウェーで開催された中国主催のこの会議に出席していた西側メディアは、本誌を含めてごく少数だった。
中国の国立海洋研究機関に所属するある研究者は、ウクライナ戦争で資金を必要としているロシアが、中国の調査チームの参加を認めたと本誌に語った。
「ロシアは長大な北極圏の海岸線に対する縄張り意識が強く、中国に研究拠点の建設を認めてこなかった。しかし、ウクライナ戦争の影響で資金が必要になっている」と、匿名を条件にしたこの研究者は述べた。
「われわれはロシア側と同行し、サンプルを持ち帰る」と研究者は語り、水や岩石、堆積物といった自然試料を指した。1回あたりの正確な費用については明らかにしなかったが、100万人民元(約12万ドル)未満だとした。
ロシアは世界の北極圏海岸線の半分を有し、厳重に管理しているが、今回の証言は、中国が「氷上のシルクロード」を構築するという長年の取り組みの一環として、極域へのアクセスを拡大していることを裏付けるものだ。
昨年7月、中国国境に近いロシア極東のウラジオストクに駐在する中国外交官は、国営通信社の新華社に対し、ロシアと中国の共同科学調査隊が北極圏の縁に位置するベーリング海へ出航したと語った。
科学調査船「アカデミク・M・A・ラヴレンチエフ」によるこの航海は、新型コロナウイルスの流行以降、初の共同航海だったと、新華社はロシア当局者の話として伝えている。
ロシアと中国は近年、高官レベルの情報交換を含む複数の科学協定に署名しており、2019年にはロシア北西部のムルマンスクを拠点とする共同北極研究グループを設立するなど、学術協力を重ねてきた。
中国がロシア船を通じて北極圏高緯度地域へのアクセスを得ていることは、これまで知られていなかった。
ワシントンの中国大使館報道官は本誌に対し、「中国は常に国連憲章の目的と原則に基づいて国家間関係を処理することを主張している。北極は国際社会全体の共通利益に関わる」と述べた。
さらに、「中国の北極での活動は、地域の平和、安定、持続可能な発展を促進することを目的としており、国際法に合致している。法に基づき北極で活動を行う各国の権利と自由は、十分に尊重されるべきだ」とした。
ロシア外務省は、本誌のコメント要請に応じなかった。
ただし専門家は、中国がロシア船で調査を行っていること自体に驚きはないと指摘する。
ノルウェーのトロムソにあるノルウェー北極大学の政治学教授、マーク・ランテーニュは、こうした協力関係についての非公式な情報は以前から出回っていたと語る。ただし両国とも詳細を明かしてこなかったという。
「中国がロシアの船に乗って北極調査をしていると聞いても驚かない。北極戦略を進める上で、中国はデータなど多くのものを必要としているからだ」とランテーニュは述べ、一例として地図を挙げた。「新たな北極戦略のため、できる限り多くの地理データを必要としている」
それでも、どの程度の情報が共有されているのか、また中国の科学者がシベリア北極沿岸の海域に立ち入ることが許されているのかなどの不明点は残る。
中国は、自国の科学研究は平和目的であり、持続可能な発展を促進する建設的な存在として北極に関与していると主張している。しかし中国は、2025年の国家安全白書で、北極・南極を国家安全の定義に加えた。これは深海や宇宙、領土・政治安全などと並ぶ20のカテゴリーの1つとされている。
中国政府は「軍民融合」政策を科学研究にも適用しており、すべての研究は軍民両用、いわゆるデュアルユースになり得る。この点は長年、西側諸国の懸念材料となってきた。
本誌は以前、ノルウェー領スバールバル諸島にある中国の研究機関が、レーダーやミサイル追跡などの分野で、軍事産業との関係を隠した名称の下でデュアルユース研究を行っていたことを報じた。
米国はノルウェー政府に対し、こうした活動への規制を強化することを求めてきた。2024年には、米議会の委員会がオスロに書簡を送り、懸念を表明している。
中国はロシアと関係を深める一方で、2013年に上海に「中国・北欧北極研究センター(CNARC)」を設立し、北欧諸国との関係構築にも長年取り組んできた。
本誌は、今年トロムソで開かれたCNARCの第11回目の年次総会で、中国・北欧北極協力シンポジウム「北極における人類の足跡――遠隔と現地」を取材した。
中国は2018年以降、自らを「準北極国」と位置づけ、北極圏から地理的に離れているにもかかわらず、極域大国になることを目指してきた。北極圏に領土を持つロシア、米国、欧州の一部諸国と並ぶつもりだ。
過去15年ほどで、中国の北極研究は急速に拡大した。複数の大学に北極研究の拠点を設け、2013年には日本や韓国など他の非北極国とともに北極評議会のオブザーバー資格を取得した。(後略)【2月10日 Newsweek】
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中国は単なる試験航海ではなく、運航会社が週1便の定期サービスに乗り出そうとしています。
****「氷上のシルクロード」 中国商船が北極海経由で欧州へ 紅海危機回避も環境団体は警鐘****
中国のコンテナ船が15日夜、北極海を経由するルートで欧州へと出航した。これは輸送期間を半分に短縮する新たな週定期便サービスの一環だが、環境団体は極地の氷の融解を加速させる可能性があると警鐘を鳴らしている。
コンテナ船「ドバイ・タワー」は15日夜、東部の港湾都市・寧波を出港。北上し、ベーリング海峡を通過したのち、ロシア北方の極寒の海域を西へと進む。
この船を運航する海運会社「シー・レジェンド」が公開した運航スケジュールによると、同船は9月7日に英フェリクスストウに到着し、その後、ドイツのハンブルク、ポーランドのグディニャに寄港する予定だという。
中国から欧州への「北極海ルート」は、スエズ運河を経由するルートよりも大幅に速く、イエメンのイラン支援勢力フーシ派による襲撃の標的となっている紅海を回避することができる。
しかし、このルートが通航可能となるのは、砕氷船なしで航行できるほど氷が少ない時期に限られている。
2月下旬の米イスラエルによるイラン攻撃をきっかけに始まった中東での紛争により、世界的な海上輸送は深刻な混乱に見舞われている。企業向け保険会社アリアンツ・コマーシャルの海運分析によると、昨年同航路を通航したコンテナ船は23隻で、2024年の15隻から増加している。
移動距離の短い北極海ルートを通航する船舶の増加について環境団体は、世界的な気温上昇によってすでに脆くなっている北極海の海氷減少を加速させるおそれがあると注意を促している。
こうした状況を背景に、フランスのCMA CGM、スイスのMSC、ドイツのハパクロイドなどの大手海運会社は、「北極の寄港・輸送ルートを回避する」と明言している。
しかしアナリストらは、北極海が将来の重要な貿易ルートとして機能する可能性があり、特に「氷上のシルクロード」構想を通じて同地域への関与強化を掲げる中国にとっては重要となるとしている。 【8月16日 AFP】
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【韓国もコンテナ船で北極海試験運行】
上記の中国のニュースに相前後して、韓国の取組も報じられています。
****韓国コンテナ船が北極海航路へ 初の試験運航****
韓国海洋水産部によると、北極海航路の試験運航船「パンスターアクロ」が22日午後9時ごろ、釜山新港を出港した。韓国船舶による北極海航路の試験運航は2016年以来10年ぶりで、コンテナ船による運航は初めて。 パンスターアクロは30日ごろ北東航路に入り、9月7日ごろに北極海域を通過する予定だ。
英国のフェリクストウ(9月9日)、オランダのロッテルダム(9月11日)、ポーランドのグダニスク(9月15日)に順次寄港した後、再び北東航路を経由して釜山に戻る。 全体の運航期間は約45日で、10月5日ごろ釜山に帰港する計画だ。北極海を航行する距離は約6400キロに達する。
北極海航路は、気候変動によって北極の海氷面積が急速に減少したことで開かれつつある。アジアと欧州を結ぶ最短ルートとして注目されている。
パンスターアクロには化学製品、中古車、自動車部品などの貨物737TEU(TEUは20フィートコンテナ換算)と空コンテナを合わせ、計837TEUが積み込まれた。
乗組員は約20人。船長と航海士は極地海域での航行に必要な専門教育を修了しており、極地航行の経験を持つ砕氷研究船「アラオン」の現役航海士が1等航海士として船長を補佐する。 海洋水産部は運航期間中、パンスターアクロと24時間体制の連絡システムを稼働させる計画だ。【8月23日 聯合ニュース】
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【問題は多いものの、「季節限定の高速・短距離の補助幹線」としての現実性高まる】
北極海航路の商業利用の“現実性”が一段階増しているようです。
****北極海航路の現況*****
2026年8月現在の北極海航路は、かなり重要な転換点に入っています。
結論から言うと、「将来有望な構想」から「実際にアジア―欧州間の商業輸送で試される航路」へ移行しつつある一方、まだスエズ運河航路の代替となるような「通常の国際幹線航路」にはなっていません。
1. いま実際にどの程度使われているのか
北極海航路そのものは以前からロシアの資源輸送などに使われてきました。近年増えているのは、ロシア国内の輸送ではなく、アジア―欧州を横断する「トランジット輸送」です。
2025年には北極海航路を通過したトランジット航海は前年比約6%増の水準となり、特にコンテナ船は「2024年:11航海 2025年:15航海」へ増加しました。2025年には中国から英国までコンテナ船が北極海を横断する本格的な国際輸送も実現しています。
ただし、これはまだ「15航海」です。スエズ運河を通るアジア―欧州航路が年間何万隻という規模であることを考えると、現状の北極海航路は桁違いに小さいと考えるべきです。
2. しかし2026年は少し事情が変わった
今回の中国・韓国の動きが注目されるのはここです。
報じられている中国のコンテナ船「Dubai Tower」は単なる試験航海ではなく、運航会社が週1便の定期サービスとして展開しようとしているものです。
従来のスエズ運河経由なら40日以上かかる中国―欧州輸送を、北極海経由なら大幅に短縮できるとされています。
つまり、「北極海を使えるか?」→「北極海を商業航路として定期運航できるか?」という段階に入ってきたわけです。
3. 韓国もかなり本気になっている
韓国船「パンスターアクロ」についても、韓国政府は単なる一度限りの実験ではなく、2030年ごろまでに北極海航路を定期的な商業航路にすることを目標にしています。
つまり中国と韓国がほぼ同時期に、「北極海航路を実際のアジア―欧州物流に組み込めるか」を試し始めたことになります。
4. なぜこれほど魅力があるのか
最大の魅力は当然、距離と時間です。
アジア―欧州間では、北極海航路なら従来の「中国・韓国→南シナ海→インド洋→紅海→スエズ運河→地中海→欧州」というルートに比べかなり短くなります。韓国側の試算では、釜山―欧州間で約7,000km、約10日短縮できる可能性があります。
さらに現在は、紅海・バブエルマンデブ海峡の安全保障リスク、ホルムズ海峡の緊張、スエズ運河の混雑・地政学的リスク、海賊・武装勢力による攻撃などがあります。 したがって北極海航路には、単純な「距離短縮」以上に、既存の海上交通のチョークポイントを回避する価値があります。
5. 中国にとっては「氷上のシルクロード」
中国が以前から掲げているのが「氷上シルクロード(Polar Silk Road)」です。
これは単に船を北極海に走らせるだけではなく、ロシアとの協力、北極圏の資源開発、LNG・石油などの輸送、中国―欧州物流、北極圏の港湾・インフラ、北極での科学・技術活動などを組み合わせた長期的な構想です。
中国にとって特に魅力的なのは、マラッカ海峡、インド洋、スエズ、紅海という従来ルートへの依存を多少減らせることです。
したがって北極海航路は、中国にとって「一つの新しい航路」というより、海上輸送網を多重化する戦略的な選択肢と見る方が適切です。
6. ただし、最大の問題は「ロシア」
ここが非常に重要です。
北極海航路の中心部分はロシア北岸を通ります。つまり中国・韓国の船が北極海を利用する場合、ロシアとの協力・許可・航行管理などが必要になります。
ロシアは北極海航路を自国の重要な戦略的輸送路と位置づけています。ロシア政府は、航路の大部分がロシアの領海・EEZ内にあることを強調し、専管的な航行管理体制を整えています。
したがって、中国にとってはロシアとの関係を利用できる反面、韓国や欧米諸国にとっては「ロシアに物流を依存する」という問題が発生するわけです。
実際、韓国の今回の航海についても、ロシアとの協力が必要になることから、ウクライナ戦争をめぐってロシアを孤立させようとしている西側諸国との間で、微妙な問題を生じさせる可能性が指摘されています。
7. そして「一年中使えるわけではない」
ここが、スエズ運河との決定的な違いです。
北極海航路は海氷の状況に大きく左右されます。現在は温暖化によって海氷が減少しているため、航行可能期間が拡大していますが、それでも基本的には季節性があります。
現在の商業輸送は、「夏~秋の比較的氷が少ない時期を利用する」という性格が強い。2026年についても、ロシア産原油のアジア向け輸送は7~10月が中心となっており、2026年はすでに7月以降、北極海航路経由の原油輸送が増えています。
したがって、「スエズ航路を北極航路に置き換える」というより、「北極海航路という季節限定の第二ルートを持つ」というのが当面の現実的な姿でしょう。
8. もう一つ大きい問題――事故対応
北極海は船が少ないため、逆に事故が起きた場合の対応能力が弱い。
例えば、救難船が少ない、港湾が少ない、医療施設が少ない、気象条件が厳しい、海氷によって救助が妨げられる、油流出事故の処理が困難という問題があります。
また北極海の環境は非常に脆弱なので、タンカー事故などが起きれば環境被害が極めて大きくなる可能性があります。
そのため欧州の大手海運会社には、北極海航路を積極的に使わない方針を示している企業もあります。AFPもCMA CGM、MSC、Hapag-Lloydなどが北極海の寄港・輸送ルートを回避する姿勢を紹介しています。
私が特に注目すべきだと思うのは「中国+韓国」という点です
これまでの北極海航路は、ロシアが「自国の資源を運ぶ航路」として開発するという色彩がかなり強かった。
ところが現在は、中国 → 欧州 韓国 → 欧州 という第三国同士の商業物流が入り始めています。
これはかなり意味があります。2025年の中国―英国コンテナ輸送、2026年の中国の定期便、そして韓国の実証航海が続いたことで、北極海航路が少しずつ「ロシアの北極圏内輸送路」から「ユーラシアを結ぶ国際海上回廊」へ性格を変えつつあるからです。
ただし、現段階ではまだ「新しいスエズ運河」ではありません。今後10年ほどは、「スエズ=主幹線 北極海=季節限定の高速・短距離の補助幹線」という関係になる可能性が高いと思います。
そして、この航路が本当に大規模化するかどうかを決めるのは、海氷の減少そのものよりも、①ロシアとの関係、②砕氷船・港湾などのインフラ、③保険・事故対応、④欧州側がロシア経由物流をどこまで認めるかの4点だと考えた方がよいでしょう。【8月24日 ChatGPT】
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シリア空軍基地空爆で激化するイスラエル・トルコの対立 巻き込まれるのを避けたいシリア
(イスラエルの攻撃を受けたシリアのアブ・アルドゥフール空軍基地 18日撮影【8月20日 ロイター】)
【イスラエル・トルコ、イスラエル軍のシリア基地空爆を巡り対立エスカレート】
イスラエル軍は18日、シリアのトルコ国境に近いアブ・アルドゥフール空軍基地を空爆しました。
同基地は内戦中に損傷し、2012年以降使用されていませんが、イスラエルは「シリアがトルコ軍の同空軍基地への駐留を許可した」としています。
“長年にわたり使用不能となっていた基地を再稼働させるため、トルコの車両や機材が技術・兵站面での修復作業を行い、トルコ軍代表団も最近になって基地を訪れていたという。”とも。【8月19日 青山弘之氏 Yahoo!ニュース】
****イスラエル、シリア空軍基地を空爆 トルコ軍の駐留に言及****
シリア国営メディアによると、イスラエルは18日、シリア北西部にある空軍基地を空爆した。イスラエルによるシリア政府関連施設への攻撃としては3月以来初めてとみられ、トルコが非難声明を出した。
シリア国営のエクバリヤは軍関係筋の話として、攻撃はアブ・アルドゥフール空軍基地の滑走路や貯蔵施設を標的にしたものだったと報じた。別の軍関係者や基地近くの住民によると、死傷者は確認されていない。
トルコはこうした攻撃はシリアの領土的一体性と主権を侵害するものとして強く非難。トルコ外務省は声明で「シリアに対するイスラエルの攻撃拡大を終わらせるため、国際社会がより断固とした対応を取るよう求める」とした。
一方、イスラエル首相府は、シリアがトルコ軍の同空軍基地への駐留を許可したことで「安全保障問題に関してイスラエルと合意した現状維持」に反する「瀬戸際」にあると指摘。「このような駐留がイスラエルの安全保障に対する脅威となることをシリアに繰り返し警告してきた。シリアはこれらの警告を無視することを選んだ」と述べた。
その上で「イスラエルは自国の安全保障に対する脅威を容認しない」としつつ、「現状復帰を歓迎する」とした。
トルコ側の声明では、同国軍がシリアの基地に駐留しているかどうかについては言及されていない。
また、米国のトム・バラック駐トルコ大使兼シリア特使はXへの投稿で「アブ・アルドゥフール空軍基地に対するイスラエルの空爆が確認されたことについて深く懸念している。これは地域の安定化につながらない不必要な緊張激化に当たる」とし、「米国は引き続き、自制と対話こそがより建設的な道筋だと考えている。全ての当事者に対し、さらなる軍事的衝突ではなく、理性的な対話を優先するよう求める」とした。
シリアのシャイバニ外相は、ダマスカスで行った国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長との共同記者会見で、イスラエルに攻撃停止を求めるとともに、シリアに対する姿勢を再考するよう要請。「このような攻撃に安全保障上の正当性はない」とし、外交的努力を継続する方針を示した。
アブ・アルドゥフール空軍基地はトルコとの国境から約70キロの地点に位置している。【8月18日 ロイター】
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当然ながら空爆を受けたシリアはイスラエルを強く批判しています。
****シリアはアブ・アル・ドゥフル空軍基地へのイスラエルの空爆を非難(自動翻訳)****
シリア外務・外国人省は火曜日、イドリブのアブ・アル・ドゥフル軍用空軍基地へのイスラエルの空爆を主権と領土保全の侵害として非難した。 同省はこれらの攻撃を不当な侵略行為であり、地域の安全保障と安定を脅かす危険なエスカレーションと位置づけた。
同委員会は、2024年12月8日以降イスラエルの攻撃が継続している一方で、シリアは自制を行い、安定の強化とエスカレーション回避に努めている。これにより、イスラエル占領がこれらの努力を妨害し、地域をさらなる緊張と不安定化へと押し込もうとする試みが明らかになっている。
声明はイスラエル占領がエスカレーションの責任を負うとし、国際社会と国連安全保障理事会に対し、侵略を明確に非難し、イスラエルによるシリア主権の繰り返される侵害に対して断固たる立場を取るよう求めた。
同省は、シリアが国際法と規範によって正当な手段を用いて自国の権利と利益を引き続き守ることを表明した。【8月18日 SANA】
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主権国家としての当然の反応ですが、その後の展開はシリア暫定政府のイスラエルへの抗議というより、イスラエルとトルコの批判合戦・対立がシリア政府の頭越しにエスカレートする形になっています。
****イスラエル・トルコ、シリア基地空爆で緊張 駐留巡り対立、影響力狙いも****
イスラエル軍がシリア北西部の基地を空爆したことをきっかけに、シリアと緊密な関係を築くトルコとイスラエルの緊張が高まっている。トルコが同基地に駐留する動きを見せたためとイスラエルは主張しているが、トルコ側は否定。シリアへの影響力拡大を巡り、両国の対立が続いている。
イスラエル軍は18日、シリア北西部にあるアブ・ドゥフール空軍基地を空爆。イスラエル首相府は「シリアがトルコ軍部隊の展開を許可し、安全保障に関するイスラエルとの合意を破ろうとした」ためだと指摘し、トルコとシリアの関係強化の動きをけん制した。
これに対し、トルコ大統領府は19日、X(旧ツイッター)で「根拠のない主張だ」と反論。イスラエルの軍事行動を静観することが多い米国のバラック・シリア担当特使も、攻撃は「地域の安定に寄与しない、不必要な事態悪化を招くものだ」と異例のイスラエル批判を展開した。
シリアでは2024年、シャラア暫定大統領が率いる反体制派がアサド政権を打倒。トルコはシャラア氏を後押ししてきた経緯から、暫定政権発足後も復興や経済再建などを通じ、関係強化を図っている。
一方、イスラエルはシリアに地上部隊を送って圧力をかけ、安全保障協定の締結を目指している。同国南部を非武装地帯にして自国への脅威を減らす狙いがあるが、シリアを舞台にイスラエルとトルコが利害を争う構図が続く。
イスラエルは20日もカッツ国防相が「エルドアン(トルコ大統領)は自国をシリアでの危険な冒険に巻き込んでいる」と批判のトーンを強めた。10月に総選挙を控えるイスラエルのネタニヤフ首相には、トルコとの対決姿勢を国内に示すことで支持を伸ばす思惑もあるとみられる。【8月21日 時事】
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対立は、トルコがジェノサイド(集団殺害)などの容疑で、イスラエル・ネタニヤフ首相の国際逮捕状を請求すれば、イスラエル首相府はトルコのエルドアン大統領を「反ユダヤ主義の独裁者」と呼ぶ・・・とエスカレートしています。
****トルコ、ネタニヤフ氏の国際逮捕状を請求へ ジェノサイドなどの容疑で****
トルコは21日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して、支援物資を届けるため海路でパレスチナ自治区ガザ地区に向かっていた「グローバル・スムード船団(GSF)」の拿捕に関連したジェノサイド(集団殺害)などの容疑で、国際逮捕状を請求すると発表した。
トルコは、2023年10月7日のイスラム組織ハマスによる越境攻撃を発端とするイスラエルのガザ攻撃を厳しく批判しており、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領はこれまでもネタニヤフ氏が「ジェノサイド」を行っているとたびたび非難してきた。
イスラエル軍は今年5月、活動家約430人を乗せたGSFを拿捕し、国際的な非難を浴びた。フランス、イタリア、オーストラリアでも司法手続きが開始されている。
トルコのアクン・ギュルレク法相はX(旧ツイッター)への投稿で、公海上でのGSF活動家に対する攻撃に関する司法手続きの一環として、内務省に対し、ネタニヤフおよびアフェク・モスコビッチという名前のもう一人のイスラエル人について、国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)に国際逮捕手配書(レッドノーティス)の発行を要請するよう求めたと明らかにした。
同省によると、ネタニヤフ首相とモスコビッチ氏は「人道に対する罪、ジェノサイド、加重身体自由剥奪、故意の暴行、拷問、財産破壊、加重略奪、輸送車両の乗っ取り」などの罪で訴追されている。(中略)
これに対しイスラエル首相府は声明で、イスラエルは「トルコの偽善行為に全く動じない」と反論。
「エルドアンはクルド人を大虐殺し、テロ組織ハマスの大虐殺を支援し、自国民を抑圧する反ユダヤ主義の独裁者だ」と糾弾した。
■「無礼妄言」
さらに、中東を不安定化させようとするトルコの試みに対して「引き続き断固として対応する」と付け加えた。これは、トルコがシリアで軍事的プレゼンスを確立しようとしているという非難を繰り返したものとみられる。
シリア当局は今週、トルコ国境に近い空軍基地がイスラエルの爆撃を受けたと発表した。
これに対しトルコ大統領府は、イスラエル側の発言を「無礼妄言」と呼び、ネタニヤフ政権が「責任を逃れようとしている」と批判した。
さらに、ネタニヤフ氏の進退がかかる10月のイスラエル総選挙に言及し、「選挙で優位に立つことを目的としたネタニヤフとその側近らによるこの種の安直な政治手法には、何の価値もない」と付け加えた。
今年5月にトルコを出港し、封鎖下にあるガザを目指したGSFには約50隻が参加した。活動家らは地中海上でイスラエル軍に身柄を拘束され、イスラエルの刑務所に連行された後、国外に追放された。
この件をめぐっては、イスラエルの極右イタマル・ベングビール国家治安相が、後ろ手に縛られ、ひざまずかされた活動家たちをさらし者にする動画を投稿し、国際的な非難を浴びた。【8月22日 AFP】
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****イスラエル首相、トルコ大統領を非難「反ユダヤ主義の独裁者」****
イスラエル首相府は21日、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領を「反ユダヤ主義の独裁者」と呼び、イスラエルは中東を不安定化させようとするトルコの試みに対して「引き続き断固として対応する」と表明した。(中略)
シリアは18日、北西部の都市アレッポ近郊にある空軍基地をイスラエルが攻撃したと非難。同基地は内戦中に損傷し、2012年以降使用されていない。
イスラエル側は、トルコの軍事使節団が最近同基地を訪問したと主張し、シリアの紛争監視団体はトルコの軍事使節団の訪問は同基地の運用を再開する取り組みの一環だったと指摘した。
これに対しトルコは20日、同基地に自国の軍事プレゼンスは存在しないと主張し、シリアの主権を「断固として」支持し続けると表明した。
イスラエル首相府は21日に出した英語での声明で、エルドアン氏が「イスラエルに対する侵略をシリアへ拡大しようとしている」と非難。「イスラエルはそれを容認しない」と強調した。 【8月22日 AFP】
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【イスラエル=南部で「占領・軍事支配」+シリア全土への空爆 トルコ=北部で「軍事プレゼンス」+新シリア政府の軍事再建支援】
イスラエルとトルコはともにシリアに軍事関与していますが、その方向性はかなり異なります。
****イスラエル・トルコのシリアへの軍事関与の現状・目的****
イスラエル
イスラエルは1967年以来のゴラン高原の占領に加え、アサド政権崩壊後の2024年12月からシリア南部の分離地域へ進出し、その後クネイトラ県や西部ダラア県にも軍事拠点を設けています。2026年4月時点で国連関係資料では11のイスラエル軍拠点が確認されています。
さらに地上支配だけでなく、ダマスカスを含むシリア各地への空爆を続けています。8月22日にも南部シリアを空爆しました。
つまりイスラエルは、現在のシリアに対しては、「南部を物理的に押さえ、シリア軍の再軍備を阻止しつつ、必要に応じてシリア全土を空爆する」という関与です。
トルコ
トルコは以前からシリア北部に軍を展開しており、現在も軍事プレゼンスを維持しています。最大の目的はYPG/SDFなどクルド勢力の軍事的拡大を阻止することです。
ただしアサド政権崩壊後は性格が変わり、現在のシャラア政権を強く支援し、シリア軍の訓練・装備・軍事再建にも関与しています。2025年にはシリアとの軍事訓練・助言に関する覚書も締結されています。
したがってトルコは、「北部を自国の占領地にする」というより、「シリア新政府を支援し、その軍事・安全保障体制に強い影響力を持つ」という形です。
そして今、両国の関与がぶつかり始めた
今回のアブ・ドゥフール空軍基地空爆が象徴的です。イスラエルは、トルコがシリア北西部で軍事プレゼンスを拡大しようとしていることを安全保障上の脅威とみなし、基地を攻撃しました。一方トルコは、イスラエルの主張を「根拠のないもの」として否定しています。
したがって現在の構図を一言で言えば
イスラエル=南部で「占領・軍事支配」+シリア全土への空爆
トルコ=北部で「軍事プレゼンス」+新シリア政府の軍事再建支援
そしてシャラア政権にとっては、「南からイスラエル、北からトルコという二つの地域大国の軍事的影響力に挟まれている」という、非常に難しい状況になっています
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【「二つの地域大国の軍事的影響力に挟まれている」シリア 対立にシリアが巻き込まれることを避けたい】
「南からイスラエル、北からトルコという二つの地域大国の軍事的影響力に挟まれている」というシリア・シャラア暫定政権は、イスラエルとの関係も重視しており、今回の件でもあまりことを荒立てないという慎重姿勢です。
****シリア暫定政権が「大騒ぎしていない」背景****
シリア政府はイスラエルの攻撃を批判し、国連安保理にも対応を求めていますが、その後のシリア政府の対応が「トルコと一緒にイスラエルと激しく対抗する」という感じになっていないのは、かなり意味があります。
一番大きい理由は、シリア新政権に「イスラエルと戦う余力も意思もない」こと
現在のシリアは、2024年12月にアサド政権が崩壊してからまだ2年も経っていません。アハマド・アル=シャラア政権にとって最大の課題は、国内の武装勢力を統合する、軍・治安機構を再建する、経済を立て直す、国際的な承認を得る、トルコ、米国、湾岸諸国などとの関係を維持する、イスラエルとの全面衝突を避けることです。
つまり、「イスラエルに攻撃されたから軍事的に報復する」という選択肢は、シリアにとって非常に高コストです。
実際、今回もシリア外相アサド・アル=シャイバニはイスラエルを非難しながら、イスラエルとの安全保障交渉を再開することへの意欲を示しています。
8月23日にも、イスラエルに対する「信頼はない」としながら、交渉を再開して安全保障合意を目指す考えを表明しています。
そして今回、シリアは「イスラエル対トルコ」の間に挟まっている
ここが今回の事件の非常に面白いところです。
イスラエルの主張は、シリアがアブ・ドゥフール基地へのトルコ軍展開を許そうとしている→イスラエルの安全保障環境を変える→だから先に基地を破壊したというものです。
「恒久的なトルコ軍基地を設置する計画はなかった」とするシリアからすると、「我々の基地をイスラエルが、トルコ軍の脅威を理由に勝手に攻撃した」という話です。当然、主権侵害なので怒ります。
しかし同時に、「だからトルコと一緒にイスラエルと対決する」とはならない。ここが重要です。
シリアにとってトルコも「完全な味方」ではない
現在のシリアとトルコの関係は非常に近いですが、トルコがシリア国内で軍事的影響力を強めることを、シリアが無条件に歓迎しているわけでもありません。
トルコはシャラア政権の最大の後ろ盾の一つで、軍事・安全保障面でもシリア再建を支援しています。しかしシリア政府からすれば、「イスラエル軍がシリア領内にいる」のと同時に、「トルコ軍もシリア領内にいる」という状況は、本来なら主権国家として望ましいものではありません。
ただし現在のシリアには、トルコを追い出す力がない。したがってシャラア政権は、トルコの支援を利用しながら、最終的にはシリアの国家主権を回復したいという難しい立場にあります。
さらに重要なのが「イスラエルと戦争を始めると、すべてが壊れる」
現在のシャラア政権が最も避けたいのはこれでしょう。イスラエルと軍事衝突を始めれば、イスラエル vs シリアだけでは済みません。そこに、トルコ、米国、イラン、クルド勢力、湾岸諸国などが絡んできます。
シャラア政権としては、「イスラエルの攻撃を非難する」ことと「イスラエルとの戦争を始める」ことを明確に分ける必要があります。
そして、今回の「基地」が実はシリアにとってそれほど重要ではなかった可能性もある
ここも大きいです。アブ・ドゥフール基地は長期間使用されておらず、現在は再建・復旧の途上でした。シリア外相によれば、空爆時点ではまだ本格的に運用できる状態ではなく、「ほぼ空だった」としています。
シリアにとって腹立たしいことではありますが、直ちに軍事報復しなければならないほどの損害ではないわけです。
実はシャラア政権にとって、イスラエルとの「安全保障合意」のほうが重要
これが現在のシリア外交を理解する鍵だと思います。
アサド政権時代なら、イスラエルの空爆→「シオニストの侵略だ」→抵抗勢力を支援→イラン・ヒズボラとの連携という方向でした。
ところがシャラア政権は逆方向に進もうとしています。「イスラエルと安全保障上の取り決めを作り、シリアを戦争から離脱させる」という方向です。
シャイバニ外相は8月23日、今年前半には非武装地帯、国連の関与、イスラエル軍のシリア領からの撤退などを含む合意の方向性があったと説明しています。
つまりシャラア政権からすれば、イスラエルに反撃して戦争になるより、イスラエルを外交交渉に引き戻して、シリア領から撤退させるほうが圧倒的に得です。
だから「大騒ぎしない」のではなく、「大騒ぎしても軍事的には何も得られない」
ここが質問への答えとして一番近いと思います。シリア政府は、「外交的にはかなり強く抗議する。しかし、軍事的には自制する。」という二段構えを取っています。
実際、イスラエルを厳しく批判する8月18日の外務省声明後は、むしろ外相はその後も安全保障交渉を続ける姿勢を示しています。これは弱腰というより、現在のシリアの国力を考えれば極めて現実的な外交だと思います。
「イスラエルとトルコという二つの地域大国の対立に、シリアが巻き込まれること」そのものがシャラア政権にとって最大の悪夢でしょう。シリアにしてみれば、「頼むから我々の国土を使ってイスラエルとトルコが戦わないでくれ」というのが本音に近いのではないでしょうか。【8月23日 ChatGPT】
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ウクライナ 極限状態の兵士・市民 5年目の総力戦をドローンではなく人間の面でどこまで耐えられるか
(ウクライナの首都キーウの地下鉄駅ではロシアの攻撃増で寝泊まりする人が目立つ(2025年7月)【2025年7月28日 日経】)
【兵士に蔓延する薬物 「薬に頼らずに安らぎを得る方法はなかった」 戦争が終わったとき、更に大きな問題に】
ウクライナは「ドローン戦争」というロシアを凌駕するような成果がメディアでは取り上げられやすいが、戦争を実際に支えているのはドローンではなく、極度の疲労・恐怖・喪失・生活苦を抱えながら戦い続ける兵士と市民です。
疲れ切って極限状態に置かれる兵士は薬物に依存したり、自殺や脱走を企てたりも。
****ウクライナ戦場で凄惨な体験・極度の緊張、軍内部に広がる薬物「これがもう一つの終わらない戦いになるとは」****
ロシアによるウクライナ侵略は4年半に及び、前線の兵士たちは心身の疲弊を回復できないまま戦い続けている。戦場での凄惨な体験や極度の緊張状態を乗り越えるため、薬物に手を出す兵士は少なくない。軍内部で広がる薬物乱用の実態を、兵士たちが証言した。
「2年間、一度も休暇がなく、敵と対峙し、仲間が撃ち抜かれ、犬に食われる遺体を見続けていたら、薬を手にしない人はいるのか」
キーウ郊外にある薬物依存からの回復を支援するリハビリ施設。ウクライナ兵のイーホル・ハジバリエフ(41)は静かに語り始めた。ウクライナで通称「ソルト」と呼ばれる違法な合成薬物を、前線後方の基地で約2年間使っていた。
最初に手を染めたのは2024年春、「初めて人を殺した後」だった。東部ドネツク州コスチャンチニウカの前線で初めて臨んだ掃討作戦で、ハジバリエフは部隊内で最多となる4人の露兵を射殺した。侵略前は工場で働く民間人だった。初めての経験に「兵士としての自信と、人間としての罪悪感が混ざり、自分が別人に変わった気がした」。
「これ、どうだ」。前線から廃屋同然の汚い宿舎へ戻ると、同じ部隊の親友(32)が白い結晶状の薬物を勧めてきた。
殺し合いをする戦場で、薬物の違法性など考えなかった。試してみると、それまで抱えていた悩みが消え去った。国外に避難した妻が離婚手続きを始めたこと。息子と一生会えなくなるのではないかと不安でたまらないこと。そして、戦場での葛藤――。空っぽになった頭には、幸福感が広がった。
ハジバリエフはこの頃、まだ知らなかった。「これがもう一つの終わらない戦いになるとは」(敬称略)
トラウマ抱え乱用…民間寄せ集め、長期戦で疲弊
通称「ソルト」と呼ばれる違法薬物を使うようになったウクライナ兵イーホル・ハジバリエフ(41)だが、前線で任務に就く時は絶対に摂取しないと決めていた。薬物の影響でまともな判断力や注意力を失えば、確実に命を落とすからだ。
しかし、任務を終えて前線後方の町にある基地に戻ると、連日使うようになった。町の上空にも無人機(ドローン)が頻繁に飛び、窓のない宿舎で過ごしても気持ちは休まらない。前線で見た光景や離婚のことばかり考え、「薬に頼らずに安らぎを得る方法はなかった」。
売人は地元住民で、郵送で入手しているようだ。兵士の常連客が増え、価格は1グラム3000フリブニャ(約1万500円)と、キーウの相場の4倍に上った。
次第に摂取量が増え、体にも異変が出始めた。効果が切れると、幸福感から一気に深いうつ状態に突き落とされる。体重は約10キロ・グラム減少し、手が震え、指にも力が入らなくなった。銃を扱う兵士にとっては、任務の遂行や生死に関わる深刻な異変だった。
一度、前線からの帰り道に仲間が摂取した時には「最悪だった」。動くものすべてに向けて銃を乱射し始め、自分も撃ち殺されそうになった。部隊のほぼ全員が薬物を手にしていたが、指揮官は減給や武器の清掃などの罰を科すだけで、薬物の蔓延 を防ぐ対策は取らなかったという。
今はリハビリ施設で生活し、薬物を断つことができている。それでも「あの幸せな気持ちになりたい」という思いは頭から離れない。今の願いは、再び戦場に戻ることだ。「皮肉だが、前線で戦っている時の緊張と興奮は、唯一、薬物を忘れさせてくれるものだった」
「軍で上に立つ者は、それぞれ自分の墓場を持っている」。旅団を率いていたブラドレン・アキモフ(36)には、部下の犠牲が重くのしかかり、鎮痛剤を中心に薬物を乱用した。
もともとは花火業者だった。侵略開始時にはキーウ近郊ブチャの領土防衛隊に入り、その後、専門的な勉強をして将校になった。だが、部隊を指揮する者の責任は大きい。疲れが抜けない時に酒を飲み始め、次に大麻を吸った。負傷した際に処方されたオピオイド系鎮痛薬のほか、覚醒作用のあるアンフェタミンなど多様な薬物を使用するようになった。処方箋が必要な薬もあったが、入手できる兵士らが融通し合っていたという。
長く共に歩んできた仲間を失った時。8人の小隊のうち4人しか戻れず、罪悪感にさいなまれた時。何もする気力が起きず、朝目覚めても体が動かなくなった。「会社ならそれで休める。でも戦争は休めない。戦い続けるために、薬物の助けが必要だった」
軍所属の臨床心理士イーホル・アルフォロフ(53)は、薬物依存に陥った多くの兵士をみてきた。最大の要因は、「民間人の寄せ集めで長期間戦い続けていることにある」と指摘する。兵士は交代できないまま疲弊し、戦いがいつまで続くのか見通せない不安が薬物の使用につながっているという。
一方、これほど深刻な薬物問題は、2014年の東部紛争ではみられなかった。当時、戦いに加わった兵士の大半は志願兵で、戦う意志も強固だった。だが、ロシアの侵略が始まった22年以降は、動員された兵士が多い。「戦う意欲が低い者を前線に送り込んでいるのに、軍は何のサポートもしなかった」と問題視する。
ウクライナの大学などの調査によると、麻薬の単純所持で有罪判決を受けた軍関係者は、侵略前、年間約70人だったが、24年には20倍超の約1600人に急増した。ただ、薬物問題の全体像を示す数字とは言いがたい。
アルフォロフは、今後、薬物問題がウクライナ社会にとってさらに深刻になるとみている。「戦争が終わり、トラウマを負った兵士らが大勢帰還し、市民の緊張も解けた時、この問題の真の全体像が見えてくる」【8月22日 読売】
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【強制動員 意志に反して戦わせることは脱走者数を増やし、士気を低下させている】
****ロシアの侵攻が5年目を迎える中、ウクライナは軍の脱走に直面している【自動翻訳】****
ウクライナ軍は脱走の問題が増大しています。戦争が5年目に突入する中で、推定15万人の軍人が部隊から行方不明になっている可能性があります。兵士たちは長期の展開による疲労、自殺行為と見なされる命令への怒り、強制動員を挙げています。(中略)
ウクライナの町や村々では、もはや直面できない義務から逃れている数万人の元兵士たちがいます。アンドリーのように、多くの人にとっては、いつもそうだったわけではありません。彼は2023年に自発的に戦うために申し込みました。
アンドリー 「健康で若く座っているだけで、国を守りに行かないわけにはいきませんでした。戦うべき理由があると思っていた。」
アンドリーがウクライナ東部のバフムト前線に到着したとき、彼はわずか18歳でしたが、祖国を守るという若き熱意はすぐに変わりました。当初、彼は前線の任務から守られていたと、仲間のサーシャは語っている。
サーシャ 「正直なところ、彼は私たちの中で一番年下でした。彼はまるで子供のようだった。自分がどこから来たのか理解できなかった。彼は少し混乱していた。」
優れた戦士となるにつれ、アンドリーの若き熱意と愛国心は大隊の指揮に対する彼の印象によって汚されていった。
アンドリー 「人は評価されると思っていました。そこには何かしらのサポートがあると思っていました。行ってみると、指揮官たちが人々を死に追いやっていることに気づいた。本当に信じられない状況でした。」
この軽率な態度と指揮官のプレッシャーが、2024年初頭に前線で友人のデニス・ボイコ(仮名)が自殺につながったと彼は考えている。
アンドリー 「キッチンに行くと、兵士が頭を失って横たわっているのが見えました。それを見て、私は凍りつきました。私はただ彼をじっと見つめて、それで終わりでした。何も理解できませんでした。私はただ彼を見つめていた。彼の頭は消えていた。本当に狂っていました。」
ボイコは、やりたくなかった危険な突撃任務の前夜に自殺した。彼は自殺の遺書を携帯電話で撮影記録し、その後アサルトライフルで自らの頭部を撃ちました。
アンドリー 「彼は指揮官からの大きなプレッシャーに耐えられなかった。彼は自殺し、当時わずか20歳でした。」
当時、チーフサージェントのヴォロディミル・トカチも同席していました。彼はアンドリーの意見に同意し、ボイコが圧力を受けていたと述べたが、他にも要因があったと述べた。
ヴォロディミル・トカチ、主任軍曹 「彼は彼女のことで喧嘩をし、少しの酒、前日に心理学者による少し不適切な治療、そして指揮官からのプレッシャーもありました。そしてこの若者はどうしても耐えられなかった。」
この事件で深く心に傷を負ったアンドリーの精神状態は2024年に悪化し、彼はますます危険な任務に送られ、十分な弾薬や食料・水さえも持たずに前線に取り残されることが多かった。
アンドリー 「そこでヘビを揚げて食べていました。ストローで水たまりの水を飲み、どうしても飲みたかった。」
アンドリーの脱走のきっかけとなったのは、2024年のクラスノホリフカでの一連の壊滅的な任務であり、これらの任務が彼に指揮官を信頼できなくなったと彼は言います。
アンドリー 「我々には大隊がある。私たちは2024年にクラスノホリフカに入ったばかりです。そして私たちの大隊はすぐに爆撃を受け、すべてが襲撃されました。本当にひどいことが起きていた。生き残ったのはほんの数人だけでした。隣の兵士が息苦しそうだ。もう一方は足がない。
司令官は「避難は数日後だ」「そういうものだ」と言います。彼はこう言います。「お前には何もできない。ただ耐えろ。」
ショックを受けています。私は座って考えていました、何が起こっているのか?」
その爆撃を生き延びた幸運なアンドリーは、最終的にドローン攻撃で負傷することになる。入院数日後、彼は前線に戻り、指揮官から翌日には強襲任務に派遣されると告げられた。これが彼の限界だった。
アンドリー 「彼は言った。「建物を突入するつもりだ」 私は「いや、もう終わりだ。私は2年半耐えた。そして今、あなたはクズだと言う。一緒に来てくれる?」 彼は「いや」と言いました。それだけです。」
「それから軍曹が私の機関銃を取り上げました。私は彼、つまり我々の指揮官を撃ちたかったからです。機関銃を取り上げられた。司令官はただこう言った。「もしお前が殺されても、それは関係ない。新たな兵士を送る。」 彼は指揮官じゃない。彼はただの怪物だ。」
アンドリーが指している指揮官はアレクシ・クチュレンコ少佐(仮名)です。アンドリーの同志サーシャも、クチュレンコの決定が繰り返し命を奪い、自身の命を危うくしたと嘆いた。ある任務から帰還し、兵士を失った後、クチュレンコ少佐は単に嘲笑しただけだと語った。
サーシャ 「彼はこう言った。「みんな、下手に戦ったな。死んだやつはあまりいなかった。もっと上手く戦えなかったのか?違うか? それからお前らの代わりに送り、もっと深い場所へ送る。」」
チーフ・サージェント・トカチは、アンドリーの最終的な脱走の原因としてクチュレンコ少佐を事実として特定したが、彼がより広範な失敗の症状であると述べた。
ヴォロディミル・トカチ 「当時の大隊長クチュレンコ少佐の名前は挙げられますが、これは制度的な問題であることを強調します。私の意見では、クチュレンコ少佐の責任は彼の無能さと、機能しないこのシステムを支持したことにあります。
クチュレンコ少佐に話すと、彼は自分は素晴らしい人で、中隊長は愚か者だと言うでしょう。まあ、中隊長は自分は素晴らしい人で、命令を出したのは軍曹だと言うなど、などと言います。」
そして昨年を通じて、前線の残酷な状況により、ウクライナでは脱走兵が急増しました。何千人もの人々が最前線から歩き去った。兵士や一部の指揮官は、疲弊した歩兵部隊、崩壊するローテーション、強制徴兵、そして指導部の失敗に対する憤りを語っている。
ヴォロディミル・トカチ 「2022年、2023年に部隊内で脱走兵が1人か2人、多くても3人しかいなかったとすれば、2024年以降は全国で数万人にのぼります。これはシステム的な問題であることを意味します。」
なぜ今になって脱走者数がこれほど急速に増加しているのでしょうか?
ヴォロディミル・トカチ 「理由はとてもシンプルで、動員の実施方法にあります。」
トカチが指しているのは、何千人もの男性が文字通り通りからミニバスに引きずり出される強制動員のことであり、これは乾いた呼称で「バス化」と呼ばれ、前線に送られる現象です。
ヴォロディミル・トカチ 「そして人権が侵害されたとき、その人物が超愛国的な英雄になるとは期待してはいけません。」
アンドリーへのインタビューの直後、彼が軍警察に逮捕され、重度のPTSDにもかかわらず前線の任務に強制的に復帰していることが判明しました。彼はドニプロの拘置所でビデオ通話で短く話すことができました。
アンドリー 「ここには私のような人間がいます。彼らは脱走兵であり、捕まってしまった。一部は軍の登録事務所の職員に捕まり、ここに連れて来られました。彼らがここで何をしているのか分からない。私はとても怒っています、とても怒っています。
治療に送られたくないそうです。私は体の靭帯断裂と外傷性脳損傷があると伝えました。鼓膜が破れてる。私の中に破片が入っています。そして彼らはこう言います。「こうして大隊に来て、その時に初めて何をするか決める」と。
ここでは私をひどく扱います。」
インタビューを続ける前に、アンドリーは拘置所の警備員に撮影を止められました。数日後、彼は前線に戻されました。数週間のうちに、彼が再び脱走したことを知りました。
本報告書の告発に対し、ウクライナ国防省は書面声明で、いかなる不正行為も断固として容認できず、自らの部隊にふさわしくないと述べました。さらに、事実は法的評価のために報告され、確認された場合は適切な懲戒処分が取られるべきだと述べました。
第21特殊目的大隊司令部およびクチュレンコ少佐から複数回コメント要請を行いましたが、返答はありませんでした。この報告書で兵士たちが描写した不正義にもかかわらず、全員が自らの奉仕と国家の大義に対する誇りを強調しました。
しかし、意志に反して戦わせることは脱走者数を増やし、士気を低下させています。【4月9日 PBSニュースアワー】
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【攻撃がない夜でも地下鉄で寝る】
街に暮らす市民も怯え、不安にさいなまれています。
****「攻撃がない夜でも地下鉄で寝る」****
この言葉は、ウクライナの都市(特にハリコフやキーウなど)で暮らす人々が置かれた、戦争による深刻なトラウマと心理的影響を象徴するフレーズです。
たとえ空襲警報が鳴っておらず、物理的な攻撃がない平穏な夜であっても、地下鉄の駅(シェルター)から出られずにそこで夜を過ごしてしまう人々の心理状態を表しています。
主な背景と心理的要因
慢性的な恐怖と不安・・・「いつ攻撃が始まるか分からない」という恐怖が消えません。地上が安全だと信じられなくなっています。
条件反射(トラウマ)・・・安全な場所=地下鉄の駅、という認識が深く定着しています。自宅のベッドよりも、硬く冷たい駅の床のほうが精神的に落ち着く状態です。
防衛本能の疲弊・・・・毎日のように空襲警報で地下へ避難するうちに、移動する気力さえ失われます。最初から地下にいれば、夜中に叩き起こされるストレスを避けられます。
コミュニティの存在・・・・同じ境遇の生存者たちが集まる地下空間に、一種の社会的連帯感や安心感を見出しています。
この現象は、目に見える破壊だけでなく、人間の精神を深く傷つける「目に見えない戦争の被害」を明確に示しています。【8月22日 ChatGPT】
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上記のような前線の兵士、街の市民の苦悩を並べると、「ドローン戦争」とはかなり違った「ウクライナ戦争」が見えてきます。
*****ウクライナ社会が5年目の総力戦を人間の面でどこまで耐えられるか*****
ドローン戦を中心に見ると、「ウクライナ=高度なドローン技術でロシアを攻撃する国」という非常に現代的な戦争像になります。
しかし、人間の側から見ると、「兵士→ 長期間の前線勤務→ 睡眠不足・疲労→ PTSD・不安→ 薬物・アルコール→ 負傷・治療→ 再び前線→ 脱走・離脱」という循環が生じています。
一方、「市民→ ミサイル・ドローン攻撃→ 停電・断水・暖房停止→ 睡眠不足・慢性的恐怖→ 仕事・学校・家庭生活への影響→ 避難・移住→ それでも帰国・居住を続ける」という循環になっています。
2026年の報道を追うと、「ウクライナがドローンでロシアに対抗できるか」以上に、「ウクライナ社会が5年目の総力戦を人間の面でどこまで耐えられるか」が重要な問題になってきています。
そして非常に興味深いのは、兵士の薬物依存、脱走、前線交代制度の変更、市民の睡眠障害・慢性的恐怖、エネルギー不足が、実は全部「戦争の長期化」という一つの問題から派生していることです。【8月22日 ChatGPT】
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変質した戦争の性格 ドローン・宇宙、そしてAI 人間はAIの作戦立案を機械的に追認するだけ?
(【8月21日 VIETNAM.VN】)
【「ドローン国家」となったウクライナ ウクライナ、中国にはるかに遅れるアメリカ】
ウクライナ戦争に代表されるように現代の戦争の主たる兵器はドローンになりつつあります。(もちろん、ドローンですべてが決まるという訳ではありませんが)
ウクライナ戦争では、大規模な空爆や飽和攻撃の際、1回の作戦(あるいは1日・夜間を通して)で数十機から数百機、多い時には400〜600機以上の自爆型ドローン(無人機)が投入されています。戦況の激化に伴い、両国とも大量のドローンを使った攻撃が日常化しています。
戦争初期の22~23年は通常兵器が主体で、死傷者の大半は砲撃や爆撃でのものでした。だが現在では、ロシア軍の死傷者の70~80%がドローン攻撃によるもので、半数以上が死亡しています。
“ロシアが都市に対して行う弾道ミサイル攻撃を除けば、ウクライナは自国を効果的に防衛している。数千機の偵察ドローン、探知ドローン、自爆ドローンを連携させ、電子戦も組み合わせた「ドローンの壁」を構築しているからだ。
前線は幅約30キロにわたってドローンが支配する「グレーゾーン」と化し、人間の平均生存時間がわずか数分という過酷な場所になっている。
中距離ドローンはロシア軍の兵站を麻痺させる一方、1600キロ先まで攻撃できる長距離ドローンは、ロシアの石油産業、軍、軍需産業などの戦略資産に着実に打撃を与え、ガソリンやジェット燃料の配給制や輸出禁止を強いている。”【8月20日 Newsweek】
大量のドローンを使用した作戦を可能にしているのは、ドローンの大量生産です。特に、ドローン戦で有利に立っているとされるウクライナは従来の「西側から砲弾やミサイルを供給してもらう国家」から、自前のドローンを大量生産する「ドローン国家」になっています。
****ウクライナのドローン生産能力****
かなり大きいです。
しかも「ドローン生産能力」と一口に言うと実態を過小評価します。2026年現在のウクライナは、小型FPV(機体に搭載したカメラの映像を専用のゴーグルでリアルタイムに見て操縦するドローン)から長距離攻撃ドローン、迎撃ドローン、海上ドローンまでを大量生産する、世界でも突出した戦時ドローン産業を形成しています。
まず数字を見ると、2026年について、ウクライナ側はFPVドローンの年間生産能力を800万機超としています。160社以上がFPV生産に参加しているとのことです。
一方、米国防総省関係者が2026年7月にReutersに説明した数字では、ウクライナは2026年にFPVを600万~700万機、月約50万機生産する見込みとされています。
しかも「FPVだけ」ではない
ウクライナ国防省によれば、2025年には迎撃ドローンだけで10万機が生産され、2026年には生産能力がさらに増強されています。
また、長距離攻撃ドローンについても急速に国産化が進んでいます。例えば現在では2,000km級の攻撃ドローンまで存在します。2026年8月には、ロシア領奥深くへの攻撃能力がさらに注目されました。
その他、1,000km超の航続能力を持つ機種もある海上ドローン、実戦投入・量産化が進むAI搭載ドローン、電子戦対策型として急速に普及している光ファイバーFPVなども。
なぜここまで大量生産できるのか
ここがウクライナのドローン産業の非常に面白いところです。戦車や戦闘機とは違って、FPVドローンは、「軍需工場で巨大なラインを作る」必要がありません。
数十社、数百社が部品を調達→小規模な工場・作業場で組み立て→前線部隊が実戦使用→改良点をメーカーへフィードバック→次の型を生産という、IT産業に近い開発サイクルになっています。そのため、ロシアの大規模兵器工場とはかなり異なる構造です。【8月21日 ChatGPT】
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アメリカはドローン生産の面ではウクライナ、中国にはるかに遅れをとっています。
“イラン戦争が始まるわずか3カ月前の昨年12月、米国防総省は27年までに軍用ドローンの生産を30万機へ増やす方針を打ち出した。これは、ウクライナの生産能力の約20分の1にすぎない。中国と比べれば、その立ち遅れはさらに際立つ。今年、中国メーカーによるドローン生産は800万~1500万機に達する見込みだ。”【8月21日 Newseek】
【戦争の場は「宇宙」に拡大】
現代の戦争は“戦闘の場”が地上だけでなく宇宙に広がったことも特徴です。
****世界初の「宇宙戦争」は既に起きていた…印パの衝突は、「従来の戦闘」と何が違う?****
80年近く武力紛争を繰り返してきたインドとパキスタン。昨年5月の衝突は核保有国同士による初の宇宙戦争だった
1947年にパキスタンとインドが分離独立を果たして以来、両国は4回も戦争・紛争をしてきた。2025年5月にも国境係争地であるカシミール地方で、全面的な戦争とは言わないが、4日間にわたり大きな衝突が起きた。
このときの報道は、銃撃戦やドローン攻撃に集中していたが、最も重要な攻防が繰り広げられたのは宇宙であることを指摘した専門家はほとんどいない。2つの核保有国の衝突が人工衛星によってコントロールされたのは世界史上初めてだ。 それは初日(5月6日)の夜から明白になった。
総合的な軍事力でインドに劣るパキスタンは、地上のレーダーと早期警戒機、ネットワーク、衛星測位システムを融合して、敵を発見し、攻撃を立案し、実行する「キルチェーン」を展開した。パキスタン空軍の上層部が長い年月をかけて構築し、運用訓練を重ねてきたものだ。
パキスタン当局の発表によると、パキスタン軍は中国製の戦闘機「殲10C」から、やはり中国製の長距離空対空ミサイル「PL15」を発射して、200キロ以上離れたインド軍のラファール戦闘機(フランス製)を撃墜した。
戦闘機が視認できない距離にある敵機を撃墜した例は、実戦ではほとんどない。インド側はこれをすぐには認めなかったが、アニル・チョーハン国防参謀長が後日、空軍機を失ったことを認めた。
インドは猛反撃を展開したが、緒戦を決定づけたのは兵員数でも、特定の戦闘機でもなく、キルチェーンの優位と、その運用の訓練レベルだった。そして、その全てを支えていたのが宇宙技術だった。
パキスタンを助けた中国
現代の戦争で衛星技術は不可欠になっている。衛星画像で標的を探し、衛星測位システムで兵器を誘導し、衛星通信がシステム全体をまとめ上げる。インドもパキスタンも、衛星技術を活用して国境の向こう側を攻撃してきた。(中略)
時代遅れの宇宙条約
ただ、現時点で深刻な問題は、宇宙で戦闘が起こることではなく、衛星を活用した兵器システムによって、作戦上の決定が極度に短時間で下されるようになることだ。敵の動きをほぼリアルタイムで監視でき、標的確認から数分で攻撃できるとなれば、状況が変わる前に攻撃したいと指揮官が焦るのは無理もない。
隣接する核保有国が、意図的に事態をエスカレートさせることはまずない。それよりも、時間的なプレッシャーが勇み足を誘発する恐れがある。そして衛星技術は誤算が許される範囲を縮小する。
しかも、そこにはルールがない。1967年の宇宙条約は、大量破壊兵器を宇宙軌道に乗せることを禁じているが、通常兵器や電子兵器についての定めはない。新たな規範作りも進んでいない。(中略)
技術は急速に進歩しているが、その暴走を防ぐ安全装置の進歩は追い付いていない。【8月19日 Newsweek】
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【短時間に作戦をまとめあげるAI 人間はただ承認するだけ】
ドローン以上にこれからの戦争を決定づけるのはAIでしょう。
“イラン戦争とウクライナ戦争から得られる最大の教訓は、ドローンそのものではない。AIこそ戦争と軍事力の中核になりつつあるという、より深い変化だ。ドローンとAIは極めて相性がいい。両者は相互に進化しながら、その能力を急速に拡大させている。
近い将来、自動車、トラック、艦船、航空機、潜水艦、魚雷、人型ロボット、戦車は全てAIが制御するドローンになるだろう。地雷やミサイル、レーダー、小銃、爆弾、砲弾に至るまでAIが組み込まれ、一部では既に実用化されている。【8月21日 Newsweek】
単に兵器レベルだけでなく、作戦の立案という高次のレベルでもAIが不可欠です。
従来型の兵器・部隊に加えて大量のドローン、宇宙からの衛星情報とのリンク・・・それらを束ねて相手より1分でも、1秒でも早く決定することが勝利の条件になりますが、そこを人間の能力を越えてまとめあげるのがAIです。
****ハメネイ師殺害“11分23秒” 米軍AI「メイブン」とは…「まるで魔法だ」24時間で1000か所の攻撃可能に【THEワールドチェンジ】****
「100日」が「90分」に・・・・一体なんの数字かというと「情報解析に要した時間」。今年2月に始まったアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃で使用された軍事AIシステム「メイブン」の恐るべき性能に迫る。
ハメネイ師の捕捉から殺害…わずか“11分23秒”
(中略)今回の攻撃、ハメネイ師を捕捉してから殺害するまでにかかった時間は、わずか11分23秒。
さらに、作戦に必要な情報解析のスピードも衝撃的。人間だと328人で100日かかる膨大な量だが、AIを活用したことで、わずか90分しかかからなかったという。
ハメネイ師殺害を皮切りに、革命防衛隊の司令部や弾道ミサイルの関連施設など24時間で実に1000か所以上を攻撃した。この驚異的な攻撃速度を可能にしたのが、アメリカの軍事AI「メイブン」だ。
「まるで魔法」承認ボタン押すだけ…一瞬で攻撃完了
「メイブン」は敵のデータを分析し、作戦の立案などを行う軍の指揮統制システム。国防総省とAI企業「パランティア」が開発。今回はじめて大規模な戦闘に投入された。
米国防総省 AI部門責任者 「敵より早く優れた判断を下すこと。それが戦争に勝つカギだ」
戦争のスピードを圧倒的に速めたメイブンの能力とはーー
パランティアが公開したドローンのデモ映像には、建物や車だけでなく、歩いている人の動きまではっきり捉えられている。さらに画面にはミサイルの発射基地など標的の一覧が表示され、それらに対する作戦の進捗も「検知」「兵器選定」「実行中」などのステータスで分けられ、状況が一目でわかる状態に。
攻撃するターゲットを画面上で「兵器選定」の列にドラッグし、AIに作戦を立てさせると、最適な攻撃手段として「装甲戦闘車」が提案された。
あとは司令官が承認ボタンを押すだけ。一瞬にして攻撃が完了した。
米国防総省 AI部門責任者 「右クリック、左クリック…まるで魔法だ」【8月15日 TBS NEWS DIG】
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人間の能力を越える大量の情報処理を瞬時に行うことが求められる戦争の現場でAIがその能力を発揮することになりますが、そのことは、人間はAIの判断を「まるで魔法だ」を眺めながら立ち尽くすだけ・・・ということにもなります。
もちろん「最終判断は人間が行う」という“建て前”ですが、これだけの複雑な情報処理を瞬時に行うAIの判断の妥当性を人間がチェックするというのは不可能に近く、“単にAIの判断を追認するだけ”になってしまうのでは・・・といった危惧も。
****中国軍「AI作戦立案」の衝撃──人間はただ承認するだけになるのか****
空軍が導入したAIシステムは、攻撃作戦の策定に必要な決定を数分間でこなす。機械の速度で進む戦争を、人間は本当に制御できるのか
中国人民解放軍空軍は大規模な攻撃作戦の立案に、AIシステムを使用している。華々しく発表されたことではない。人民解放軍の創設99周年を記念して8月初めに放映された中国中央電視台(CCTV)のドキュメンタリー番組で紹介された。 このシステムは数百の候補から攻撃目標の優先順位を決め、数十の編隊を調整し、100を超える戦術部隊に任務を割り当てる。既に複数の任務で使用されているという。
7月末、習近平(シー・チンピン)国家主席は人民解放軍に対し、無人インテリジェント技術の軍事利用を強化し、インテリジェント化された軍事システムを段階的に構築するよう指示した。この声明の発表はドキュメンタリーの放映と時期が重なった。
中国は以前からこの目標を追求してきたから、習の発言は目新しくはないが、その力の入れようは際立っている。中国政府は来年の人民解放軍創設100周年に向けた近代化の目標を、着実に達成したいと考えている。
このAIシステムは、人間には処理し切れないほど膨大な意思決定をこなすとされる。多数の航空機と標的が高速で移動する状況では、従来の計算方法では追い付かないためだという。この評価は妥当であり、中国に限った話ではない。
AIが順位付けした選択肢を承認するだけ
このシステムは、じかに標的を選んで攻撃するわけではない。重要なのは、指揮系統のより上位で作戦立案に関わる点だ。指揮官が作戦実行を承認する前の段階で、航空機や電子戦装備、その他の援護能力をどう組み合わせるかを提案し、航空作戦の立案を手伝う。 指揮官やパイロットを支援するツールであり、最終的な決定の責任は人間が負うとされる。
だが、中国の対外的な立場と実際の運用の間には隔たりがある。中国政府は以前から、AIは人間の判断を支援するものであり、それに取って代わるべきではないと主張してきた。一方で、このシステムには何時間もかかる複雑な作戦立案を数分に短縮できる能力があるとみられる。それによって、人間の権限が形式的な追認にすぎなくなる恐れがある。
兵器や装備の質と量に加え、意思決定で相手を上回ることの重要性はますます高まっている。作戦立案に要する時間を短縮すれば、指揮官は変化する戦況に素早く対応し、一瞬の好機を生かせる。
だが問題は、形式上は人間が統制権を握っていても、AIによって紛争の進行が速まれば、統制の在り方が変わり得ることだ。作戦立案のための時間が短くなれば、人間が攻撃目標を独自に評価する余地は縮小する。
台湾に対する大規模な航空攻撃などテンポの速い作戦では、人間の役割はAIが順位付けした選択肢を素早く承認するだけになりかねない。イスラエルによるガザ攻撃では、そのような事態が起きている可能性がある。
アルゴリズムの失敗の法的責任を負うスケープゴート
こうした状況では、AIなど自動化されたシステムの判断を人間が過度に信用する「自動化バイアス」のリスクが高まり、責任の所在も曖昧になる。AIが作成した計画に基づく攻撃が違法な結果をもたらした場合に、誰が責任を負うのか。
計画を承認した指揮官か、それともそのシステムを設計した者なのか。人間を意思決定プロセスに残しておけば、AIの役割は補助という、中国の対外的な立場は保たれる。だが実際には指揮官たちがアルゴリズムの失敗の法的責任を負うスケープゴートにされてしまう恐れがある。
(中略)このシステムがあれば、中国は南シナ海が有事の場合にも、複雑な攻撃作戦の立案から実行までを高速化できる。軍同士のホットラインや外交シグナルの発信といった危機管理手段は、より時間をかけた人間の判断や対話を前提としているため、危険なほど後れを取る恐れがある。
そのため米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」や日米豪印戦略対話(QUAD)の各国は、もはや従来型の緊張緩和策だけには頼れない。アルゴリズムがもたらし得る突発的な衝撃に耐え、それに対抗できる防衛戦略を構築する必要がある。
人間には止める時間も力も残されなくなる
(中略)新しいAI主導の時代のリスクは、アルゴリズムが誤ることだけではない。もはや人間には、それを止める時間も力も残されなくなることだ。【8月19日 Newsweek】
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【AI・ドローン革命で先頭を走る中国】
AI・ドローン戦争で最も有利な位置にいるのが中国です。
****AI・ドローン革命の勝利は誰の手に? 軍事の常識を覆す「4つの理由」と避けられない未来****
(中略)
米中それぞれの強みと弱み
核兵器を別にすれば、AIとドローンの時代の軍事力は4つの要素で決まる。ドローンの製造能力、AIの能力とインフラ、学習データへのアクセス。そしておそらく最も重要なのが、既得権益を持つ産業界や軍、政府からの抵抗に直面しても、こうした強みを効果的に動員できる政治力と組織力だ。
AI主導の時代に超大国であり続けるには、冷戦期にアメリカとソ連が核兵器インフラに投じたものに匹敵する巨額の投資が必要となる。
このように考えると、AI・ドローン革命での明らかな受益者は中国だろう。中国は膨大な資源を有し、旧来の制度や産業に縛られにくい。世界のドローン製造を支配しており、自立した強固なAIとテクノロジーのエコシステムを築いている。
ただし、中国には軍事用AIの学習データの不足という大きな弱点がある。79年以降、本格的な戦争を経験していないからだ。ロシアやイランとの協力やサイバー活動を通じてデータを収集しているだろうが、その質と量はウクライナやアメリカ、イスラエルには遠く及ばない。
一方、アメリカには競争力の高いドローン産業がなく、旧態依然とした防衛態勢と、自己利益を優先するテクノロジー業界を抱えている。
それでも、アメリカには大きな強みがある。世界をリードするAI開発基盤、活発なスタートアップ文化、豊富な実戦経験、そして世界最高水準の軍事用AIの学習データを持つ同盟国だ(この点でウクライナは潜在的に大きな価値がある)。問題は、アメリカが国内の機能不全を克服できるかどうかだ。
AI・ドローン時代の明確な敗者は
そうなると、AI・ドローン時代の明確な敗者は欧州とロシアである。【8月21日 Newsweek】
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激しさを増すAI開発競争、その結果としての“人間の制御を越えたAI戦争の危険性”が増しており、AIの軍事利用に何らかの規制が必要とは思われますが、現状ではそうした規制に大国が同意する可能性はありません。
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