碧空
2007年12月1日までの記事は「孤帆の遠影碧空に尽き」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze )にアップしています。
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アメリカ  深刻化する生活苦の実態と原因・背景

(GDP4.3%成長でも、売り場の主役は「高級」ではなく「値頃感」。富裕層まで集まるウォルマートの売り場が、数字と体感が乖離するアメリカ経済の現実を映し出している。【15日 FASHION SNAP】)

 

【ミドルクラスに広がる「プラズマ献血」】

アメリカ社会おける中間層の没落、物価・家賃高騰による生活苦、富裕層とその例外の二極分化など経済的苦境は言われて久しいところですが、そうした経済的苦境の一端を示すのがいわゆる低所得層とは言えない正規雇用の人が、「売血」を生活費を補う手段としているという現象。

 

****血を売る副業米国のミドルクラスに広がる「プラズマ献血」が映す現実****

アメリカでは厳しい経済状況の中で、自らの血を売る、「プラズマ(血漿)献血」が増えています。それも正規雇用の人が、生活費を補う手段としているというニュースが、論争を呼んでいます。

 

プラズマ献血は成分献血の1つで、血漿成分のみを採血し、赤血球や白血球を体内に戻す方法です。成分は1週間程度で回復するため、アメリカでは週2回までの献血が認められています。長期的な健康への影響に関する研究はほとんどないものの、この手法は安全と見なされています。

 

プラズマは感染症治療薬などに不可欠で、世界的に需要が拡大していますが、世界保健機関(WHO)は献血に対する報酬を推奨していません。その中で、報酬の支払いを認めているアメリカには、こうした献血センターが1200カ所もあり、世界の血漿供給量の約70%を占める、大ビジネスとなっています。

 

かつてこうした献血でお金を稼ぐのは、低所得者の生活手段という認識がありました。しかしニューヨークタイムズが紹介しているのは、正規雇用の59歳の男性と、ソーシャル・セキュリティ(年金)で生活する66歳の男性。いずれも足りない生活費を補うためというのが理由です。170ドル(約11000円)の献血は、11時間半程度で終わるため、フレキシブルで効率のいい副業だと言います。

 

一方同記事は、2021年以降1004所以上オープンしたプラズマ献血センターの4割が、ショッピングモールや郊外の住宅地にあると伝え、ミドルクラスへの広がりを示しています。

 

アメリカでは、すでに高止まりしている物価と上がらない賃金に加え、イラン戦争による原油高騰で、ガソリンをはじめ全てが再びインフレ傾向にあります。こうした中で、何とかして生活を支えようとする市民と、安定したプラズマ供給を求める業界の需要がマッチした、「影のセーフティネット」と呼ぶ人もいます。

 

しかし論争を呼ぶ理由は、この現象が単なる副業ではなく、身体そのものを市場に差し出す行為でもあるからです。本来あるべきセーフティネットが十分に機能していない中で、生活の苦しさにつけ込む搾取につながりかねないとの批判も絶えません。(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)【420日 日刊ゲンダイDIGITAL

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【大統領選ではトランプを支持した中間層が、生活苦で追い詰められトランプ離れも】

トランプ大統領は物価高の現状を改善すると公約して支持を集めて当選したわけですが、事態は一向に改善せず、トランプ関税の影響で物価高に拍車がかかり、更にトランプ大統領が始めたイラン戦争で原油価格上昇に伴うガソリン価格高騰も起きています。 当然ながら国民のトランプ大統領への視線は厳しいものになります。

 

下記は昨年11月段階の記事ですが、イラン戦争でガソリン価格が高騰している現在は更に厳しい状況になっているでしょう。「手の届く価格で暮らせますか」が政治の争点になっています。

 

****物価と借金に圧迫される家計、トランプ離れ進む中間層****

<「手の届く価格で暮らせますか」が政治の争点に。2024年の大統領選ではトランプを支持した中間層が、生活苦で追い詰められている:マーサ・マクハーディー>

 

米国の中間層――かつてドナルド・トランプの政治基盤を支えた中核支持層――が、生活費の高騰に対する不満を背景に、離反の兆しを見せている。世論調査と経済データが明らかにした。

 

調査会社ユーガブと経済誌エコノミストによるこの3カ月間の共同調査では、米中間層におけるトランプ支持率の明確な低下傾向が示されている。9月時点では支持率44%に対し不支持率が54%(差し引き10ポイントのマイナス)だったが、10月には支持率が42%に下がり、不支持率は53%に上昇(マイナス11ポイント)。11月の最新データではさらに悪化し、支持率は40%、不支持率は58%と、18ポイントの大幅な差がついた。

 

こうした支持率の低下と不支持率の増加は、連邦政府の閉鎖という混乱への不満と、食料品価格、住宅費、冬のエネルギー代などの高騰に対する不安からきていると見られる。

 

中間所得層は時に民主党につくこともあるが、共和党にとっても重要な支持層だ。2024年の大統領選では、年収5万〜10万ドルの有権者の間で、トランプは民主党の大統領候補カマラ・ハリスに対し52%対46%で勝利した。

この層は2020年の選挙では民主党寄りで、当時はバイデン支持が54%、トランプ支持が46%だった。つまり2度目のトランプ大統領誕生の時には、支持の逆転が起きていたのだ。

 

だが、最新の世論調査によれば、こうした中間所得層の共和党支持が揺らいでいる可能性がある。

今、世論を動かしている最大の争点は、「手の届く価格で暮らせるかどうか」だ。ところが新車の平均価格は5万ドルを超え、多くの中間層家庭にとって、標準的な車の購入がすでに高級品レベルになっている。

 

食料品価格は高値が続き、家賃は主要都市で軒並み上昇。エネルギー業界の専門家たちは、今冬の暖房費が再び上がる可能性を警告している。米国農務省経済調査局によれば、家庭用の食材の価格は20259月までの12カ月で約2.7%上昇した。

 

こうした物価上昇は、トランプおよび経済に対する中間層の見方にも影響を及ぼしている。最新のユーガブ/エコノミスト調査では、中間層有権者のうち、経済を「良好」または「非常に良好」と評価したのは24%で、「悪い」と答えたのが38%、「悪化している」と答えたのは52%だった。

 

また、中間層は将来にも悲観的だ。1年後に「今より良くなっている」と考えているのは、全体のわずか30%にとどまっている。

 

ニューヨーク連邦準備銀行のリポートによると、米国の家計債務は18.6兆ドルに膨らんだ。これは同機関がデータ収集を始めて以来、過去最大の水準だ。住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、クレジットカード残高のいずれもが記録的な高水準に達しており、リボ払いだけでも過去1年の急増で1.2兆ドルに達した。

 

生活苦と利払いの増加で、期日通りにローンを返済できないアメリカ人も増えている。延滞90日以上の「深刻な延滞」はローン残高の3%を超え、これは2008年のリーマン・ショック時以来の水準だ。学生ローンに限れば、直近の四半期だけで残高の14%超が深刻な延滞となり、同連銀の統計上最悪の結果となった。

 

(中略)「今、多くの人が『うまくいっていない』『これからも良くならない』と思い始めている。そして責任者はトランプ大統領だと見なされている」(後略)【20251117日 Newsweek

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【トランプ大統領が民主主義や経済を壊したと言うより、トランプ現象はすでに壊れていた社会が生んだ「結果」にすぎないとの指摘も】

“責任者はトランプ大統領だと見なされている”・・・・トランプ大統領を擁護する気持ちはさらさらありませんが、アメリカ社会・経済の変質は今に始まった話ではなく、トランプ政権の誕生は、進行する「株価高騰の裏で中間・下層の人々は没落し、富裕層が権力を駆使する」状況の“結果”であるとの指摘も。

 

****「暴政株式会社」が破壊するアメリカの自由と民主主義 資産なき人びとの「絶望死」と「それでも」トランプが支持される深層****

トランプ現象はアメリカの民主主義を壊す「原因」とみなされがちだが、実はすでに壊れていた社会が生んだ「結果」にすぎないのではないか。株価高騰の裏で中間・下層の人々は没落し、富裕層が権力を駆使して労働者を支配する私的暴政=「暴政株式会社」が、アメリカに「絶望死」を蔓延させているのでははないか。

 

気鋭の保守派論客ソーラブ・アマーリによる話題作『暴政株式会社:私的権力はいかにして自由を破壊したのか』に寄せられた会田弘継氏の日本版解説を転載。トランプ支持の深層とアメリカ社会の残酷な現実をひもとく。

 

トランプ現象は「原因」ではなく「結果」

10年前の2016年アメリカ大統領選でのドナルド・トランプの勝利は必然だったのだろう。前年の出馬表明以来の女性や移民らに対する暴言にもかかわらず支持は一向に衰えなかった。

 

共和党の大統領候補選びの段階から、トランプやその支持者を指してヒトラーやムソリーニにたとえ、「暴政(tyranny)」の到来を警戒する声があった。トランプがアメリカの自由な民主主義(リベラル・デモクラシー)を破壊する、という恐れからだ。だが、果たしてそうだったのか。

 

トランプが自由な民主主義を破壊するのでなく、自由な民主主義がすでに壊れていたから、トランプが出現したのではないか。トランプは「原因」ではない、「結果」だ。(中略)

 

【経済回復の陰にある「中下層」の困窮】

そう主張する理由はあった。

大統領候補選びのための予備選挙が始まる前から、特に高卒以下の学歴層で異様な盛り上がりを見せるトランプ支持の背景を探ろうと、さまざまな資料を引っ張り出しているうちに、異様な事態に気付いた。

 

リーマン危機後に一時7000ドル以下までに落ち込んだダウ平均株価は2.5倍の17000ドルにまで達し(本稿執筆時点ではさらにその3倍に近い)、一時10%に及んだ失業率も5%以下まで下がっていた。オバマ政権下で経済は順調に回復しているという印象だった。

 

だが、一皮めくれば、それどころではなかったのだ。どういうことか。

株価は急伸しているのに普通の人びと(中下層)の所得は減る一方だった。アメリカの実質所得の中央値はリーマン危機前の2007年に比べて伸びるどころか、逆に6.5%も減っていた。その結果、貧困率も2.3%アップし15%近くになり、4700万人にも及んでいた(米国勢調査局年次報告『合衆国の所得と貧困』2015年版)。

 

失業率が下がったといっても、つぶさに統計を見てみるとおかしい。高学歴者はいい。修士号以上を持つ者の間では失業率は3%以下だった。

だが、高校中退では9%、リーマン危機当時の失業率が続いていた。しかも就業しているといっても、働いている時間は週30時間に満たない人が多い。ギグワークやパートタイムばかりの様子がうかがえた。

 

富裕層の「焼け太り」と人びとの「絶望死」

のちに連邦準備制度理事会(FRB)資料に基づく分析で分かったことだが、上位10%の富裕層を除き、あとの90%はリーマン危機前から16年大統領選挙までの期間に、資産を大きく減らしていた。

 

所得水準で見て中位にあたる20%の人びとに至っては、平均して7割も資産を失っていた。リーマン危機で住宅ローン破産した後、オバマ政権が救済措置をとらずに放置したためだ。

 

ところが、危機を引き起こした金融機関の幹部らは、日本円にして何億〜何十億もの「退職金」を手にして「責任をとって」辞めている。退職金の原資は政府から注ぎこまれた救済資金、つまり人びとから剥ぎ取った税金だったわけだ。上位10%富裕層の「焼け太り」である。

 

【他の先進国では見られない異様な現象】

極めつきは、「絶望死」だ。

アメリカでは中年白人男性の死亡率が上がっていることが分かった。原因は自殺や麻薬中毒だ。他の先進国では見られない異様な現象だった。のちに中年白人に限らず、低学歴層全般に見られる現象だと分かってきた。トランプ支持者が多い地域で絶望死が多いことも見えてきた。

 

「暴政株式会社」による私的支配の正体

これを「暴政」と言わずして、何と呼んだらいいのか。

本書がつぶさに描きだすのは、筆者が10年前に気付かされ、訴えてきたことを多方面で裏付けるさまざまな事実と、その奥底の意味である。

 

著者は言う。今は資産所有者(金持ち)が財力と国家権力を駆使し、「資産なき人びとを支配」する状態になっている。そうした支配が、オバマ政権という民主党の「進歩的」といわれた政治の下で暴走していた。

ただ、この暴走は1970年代末以来続いてきた「民営化」、つまりネオリベラリズムによる経済運営の帰結なのである。

 

冷戦期、共産主義と対峙していた時代には、自由とは威圧的な政府の力から逃れることだと思わされていた。国家の統治機構が傍若無人にわれわれの私的領域の自由と権利を圧迫し、害するのを防がなければならない、と。

 

だが、共産圏が自壊して冷戦が終わり、世界中で自由が政府の強制を逃れて花開き、強制のない民主的世界で暮らせるようになったはずだと思ったら、それどころか自由は別の支配と強制にさらされているのだ。

 

それは、「傍若無人な市場の力がわれわれの権利と自由を害するおそれがあること、さらには私的暴政や私的暴君が実在するということ」(本書20ページ)なのである。政府権力による人びとの支配ではない。

 

あけすけに言えば、金持ちによる資産なき普通の人たちに対する支配なのだ。著者は、それを統治機構(政府権力)による「暴政」と区別して、私企業によるから「暴政株式会社(Tyranny, Inc.)」と呼んでいる。私的暴政なのだ。金持ちたちは政府をも動かし、人びとの支配のために用いる。(後略)【325日 会田弘継氏 東洋経済オンライン】

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・・・・とは言え、トランプ大統領が行っているアメリカ社会・政治・経済に対する破壊行為は決して看過してよいものではないとは思いますが。

 

【アメリカ社会で深刻化する生活苦の実態と原因・背景】

アメリカ社会で深刻化する生活苦の実態と原因・背景についてまとめると以下のようにも。

 

****アメリカ社会で深刻化する生活苦の実態と原因・背景****

アメリカで広く指摘されている「生活が苦しい」という実感は、単なる景気の一時的な悪化ではなく、構造的な問題が重なって表面化している現象です。実態と、その背景を整理すると全体像が見えてきます。

 

① 生活苦の実態(何が起きているか)

● 可処分所得の圧迫

家賃・食費・保険料などの上昇で「収入はあるのに余裕がない」状態 中間層でも「給料日前に資金不足」が珍しくない

 

● “二つの経済の進行

富裕層:消費拡大・資産増加 中間層以下:支出抑制・貯蓄減少→ 同じ国で生活実感が大きく分断

 

● 債務依存の拡大

クレジットカード残高は過去最高水準 金利上昇で返済負担が急増→ 生活費を借金で補う構造

 

● 若年層・子育て世帯の苦境

住宅取得が困難 教育費・保育費が重い→ 「中流的生活モデル」が成立しにくい

 

② 生活コスト上昇(直接的な原因)

特に負担が大きい分野はほぼ共通しています:

● 住宅費

家賃・住宅価格ともに高騰 金利上昇で住宅ローン負担増→ 最大の圧迫要因

 

● 医療費

保険があっても自己負担が高い 突発的な医療費で家計が崩壊するケースも

 

● 教育費

大学学費+学生ローン問題 若年層の負債スタートが常態化

 

● 日常生活費

食料・エネルギー価格の上昇→ インフレの影響が直接的に家計を圧迫

 

③ 根本原因(構造的な問題)

1. 賃金の長期停滞

中間層の実質賃金は長期的に伸び悩み 生産性上昇の恩恵が労働者に十分分配されていない

 

2. 格差拡大(富の集中)

株式・不動産など資産価格が上昇 資産を持つ層(上位10%)に富が集中→ 労働所得中心の中間層は不利

 

3. 「資産経済化」

経済成長の源泉が賃金 → 資産(株・不動産)へシフト 給料だけでは豊かになりにくい構造

 

4. 社会保障の弱さ

医療・教育・住宅支援が限定的 自己責任の比重が大きい→ リスクが家計に直撃

 

5. インフレ+金利上昇のダブルパンチ

インフレによる生活費増 金利上昇による借金負担増→ 中間層に最も打撃

 

④ なぜ「景気が良いのに苦しい」のか・・・ここが重要なポイントです。

● 指標と実感のズレ

GDP:成長 株価:上昇 失業率:低い

にもかかわらず、生活の実感は悪化

 

● 理由

成長の果実が偏在 必需コストの上昇が大きい→資産を持たない層は恩恵を受けにくい

 

⑤ 社会・政治への影響

● 不満の蓄積

「働いても報われない」という感覚 将来不安の増大

 

● 政治の不安定化

反エリート・ポピュリズムの台頭 分断の深化(都市 vs 地方、学歴など)

 

⑥ まとめ

アメリカの生活苦は一言で言うと「所得が伸びない中で、生活コストと格差だけが上昇している」

結果として中間層の余裕が消失 「普通に働けば安定」という前提が崩壊 社会の分断が拡大  【420日 ChatGPT

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ブルガリア  ウクライナと防衛協定締結 国内政治は親欧米 vs 親ロシア 中東欧の親ロシア感情

(【419日 共同】)

 

【ウクライナ・ブルガリア防衛協定締結・・・黒海の「西側化」とロシアの支配力低下を促進する重要な地政学的転換】

先日政権交代が確実になったハンガリーのような政治的に特殊な立場で注目される国を除いて、一般に中東欧というのは日本からするとやや縁遠い地域で、内情がよくわかりません。

 

その中東欧諸国の一つ、ブルガリアがウクライナと3月末に10年間の安全保障・防衛協力協定を締結したとのこと

“黒海の「西側化」とロシアの支配力低下を促進する重要な地政学的転換となる”【下記Newsweek】との指摘も。

 

・・・と言われても、冷戦時代はソ連の衛星国、今はEUNATOにも属するブルガリアの政治的スタンスがよくわからない。

 

なお、締結された防衛協定の主なポイントは以下のようにも。

・10年間の安全保障協力:ウクライナの長期的な安全保障を支援し、軍事技術協力や軍事産業の連携を強化する。

・ソ連式武器の提供:ブルガリアが保有するソ連式の武器・弾薬をウクライナに供給することで、ウクライナ軍の継戦能力を支える。

・黒海の安全保障:NATOEU加盟国であるブルガリアとウクライナが連携し、黒海におけるロシアの支配力を低下させ、「西側の海」として管理する。

 

****黒海、東欧で弱まりゆくロシアの支配力──ウクライナ・ブルガリア防衛協定締結の舞台裏****

<黒海周辺の勢力図が大きく変わろうとしている。ウクライナとブルガリアの防衛協定締結は、バルト海に続き黒海も「西側の海」となる歴史的転換点かもしれない>

 

ウクライナとブルガリアが防衛協定を締結

ウクライナは、黒海を共有するブルガリアと10年の防衛協定を締結した。このことは黒海の勢力図の変化につながり、ロシアの黒海支配をますます弱めるものになるだろう。背後にはアメリカの対露制裁があった。

 

このニュースに驚いたのは、ブルガリアの人々は他の東欧諸国と比べ、ロシアにあまり批判的ではないと言われてきたからだ。

 

ブルガリアは文化的にはロシアに近い。ロシアと同じキリル文字を使い、言語はスラブ語系で、宗教はブルガリア正教(東方正教会)である。冷戦時代は東側に属し、ソ連の衛星国だった。

 

今は北大西洋条約機構(NATO)にも欧州連合(EU)にも属していて、政治の第一勢力は親西側である。ただ全体としては親西側、親露派、グレーゾーンの3つに分かれており、かつ改革派と現状維持派、新しい勢力に分かれて揺れてきた国である。過去5年に8回もの総選挙を数える。

 

それがウクライナと防衛協定を結ぶとは。ブルガリアにとってこれは軍備を旧ソ連式から西側に変えていく転換点であり、苦境に立たされているウクライナにとっては確固たる味方が増えた朗報である。なぜこのような変化が起きたのだろうか。

 

アメリカの政策でロシアの石油利権から解放

同国がウクライナとの防衛協定を決断できた背景には、アメリカの対露制裁があるだろう。

ドナルド・トランプ大統領は、米議会の意向を受けて、昨年の秋ごろから厳しい対露制裁を一部導入してきた。

 

ロシア最大の民間石油会社「ルクオイル」は、昨年の売上高450億ドルというオリガルヒの巨大な一角をなす企業だ。海外資産を管理する子会社「ルクオイル・インターナショナル」は、推定220億ドルといわれる大資産を持つ。特にブルガリアには「バルカンの産業の心臓」と呼ばれることがあるほどの地域の重要施設がある。

 

しかしアメリカの金融圧力の結果、今年1月下旬、同社はアメリカの投資会社カーライル・グループに売却することに合意した。このことが東欧を「脱ロシアエネルギー」させ、勢力図を根本から変え始めている。

 

売却には欧州だけではなく中東、アフリカ、中央アジア、メキシコでの事業が含まれている。筆者はこの売却を、地政的にも歴史的にも大転換と見ている。

 

ブルガリアには、同社のブルガス製油所というロシア産原油を精製してきた大施設が存在する。同国の国家財政の最大の貢献者で、同社の数百のガソリンスタンドも含めて数万人の雇用を支えてきた。しかしもう、ロシアの石油エネルギーの影響下にいる必要がなくなったのだ。

 

トランプ大統領自身は親露的な姿勢を見せることが珍しくない。しかしトランプ政権は、ロシアの首を締めるエネルギー政策を次々と打ち出している。

 

イラン戦争でも、米政権はホルムズ海峡の閉鎖を予測しており、アメリカのエネルギー・軍事支配を広げるための長期戦略を描いていたのではと思う。

 

加えて、ブルガリアとウクライナの両首脳は、ギリシャと南東ヨーロッパの数カ国を結ぶ「垂直ガス回廊」の構築に向けて協力するとも述べた。これもアメリカ産液化天然ガス(LNG)の大きな受け皿となるだろう。

 

ウクライナにソ連式武器を援助

ブルガリアは地理的にはロシアから大変遠いという訳ではないが、人々はロシアにあまり脅威を感じていないと言われてきた。この点、北の隣国ルーマニアとは対照的だ。

 

しかし、ウクライナ戦争はやはり同国にも衝撃的だった。政府はロシアを、黒海の安全保障に直接的な脅威をもたらす攻撃的で修正主義的な勢力と見なしてきた。

 

そしてキーウに大量の武器を供給してきた。旧ソ連式の軍需工場が今でも多く存在しているため、ウクライナ軍が使用するソ連規格の弾薬や武器を生産できるからだ。同国は、ソ連時代からの大規模な軍産複合体を継承したために、GDPの約4%が防衛産業である。兵器工場では、損傷したウクライナの戦車の修理も行われてきた。

 

2月中旬に暫定的に就任したばかりの50歳のアンドレイ・ギュロフ首相は、数人の閣僚と共に330日キーウを訪問した。この防衛協定を「長きにわたる準備の成果」であると称賛し、「これは単なる形式的なものではなく、我々の欧州・大西洋の安全保障に向けた共通の取り組みである」と述べた。

 

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、10年という期間は、特にドローン分野における急速な技術的進歩に対応するため、安全保障面での協力を「体系化」するのに十分な長さであると歓迎した。

 

これからブルガリアは、ソ連規格の旧式システム(S-300ミサイルや旧式の装甲車)をウクライナに渡し、代わりに西側の最新装備を導入していくことになるだろう。ポーランドなど他の旧東側の国々が行ってきたように。

 

黒海に対する影響は

防衛費の増額は、常にブルガリア国内で大きく議論の分かれる課題だった。これはブルガリアに限った話ではない。

ロシアはメディアやサイバー技術などを使った干渉を強め、反西欧・親ロシア層を援助し、増やそうとしてきた。ハンガリーなど他の東欧諸国やアフリカなどでも同じで、影響力の持てそうな国では特に強い。

 

それでもブルガリアが危機感を持ち続けたのは、脅威に対抗する軍事能力が欠けているからだった。同国の海軍力は脆弱かつ旧式であるという。人々は陸ではさほどロシアの脅威を感じていなくても、海、つまり黒海は別だった。

今までソフィアの政府は、浮遊機雷、排他的経済水域(EEZ)の侵犯、ロシアの「影の艦隊」の活動、そして黒海全体への環境影響など、戦争に伴う二次的なリスクを特に懸念し続けてきた。

 

ウクライナ戦争が始まって4年が経ち、本格的に軍備が「西側化」することになったわけだ。バルト海でロシアの支配力が衰えたのに続き、黒海も西側の海となっていくだろう。

 

こうして、かつてソ連の支配下にあった「東欧」は、名実共に完全に西側へと組み込まれていくのだ。もっとも、だからこそ余計にロシアは、黒海沿岸の占領地を国際的に領土と認めさせることに固執するかもしれないが。

ウラジーミル・プーチン大統領は長きに渡る就任中、アンゲラ・メルケル首相の時代から、ヨーロッパとアメリカを分離することに力を注いできた。それが自国の没落によって実現することになると彼は想像していただろうか。【417日 Newsweek

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【国内政治は親欧米 vs 親ロシア(慎重派)で対立 総選挙・揺れを繰り返す 19日総選挙ではロシアに融和的な野党連合が優勢】

ただ、ブルガリアは“親西側、親露派、グレーゾーンの3つに分かれており、・・・・過去5年に8回もの総選挙を数える”というように、政治的に揺れている国です。今日(419日)に投票が始まった総選挙も、ロシアに融和的な野党連合が第1党を獲得すると予測されており、今後の“黒海の「西側化」”はやや不透明な感も。

 

****ブルガリア議会選、投票開始 親ロシア派前大統領の野党に勢い****

東欧ブルガリア議会(一院制、240議席)選挙の投票が19日、始まった。世論調査ではロシアに融和的なラデフ前大統領が率いる中道左派の野党連合「前進するブルガリア」(PB)が第1党を獲得する勢いだが、いずれの政党も過半数に達しない見通し。選挙後の連立協議が焦点となりそうだ。

 

同国では2021年以降、政権が安定せずに議会選が繰り返されており、今回で8回目。世論調査によると得票率はPBが約30%、ボリソフ元首相率いる中道右派「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)を中心とする連合が約20%と予想されている。

 

ラデフ氏はウクライナへの軍事支援に消極的で、ロシアとの対話や外交の必要性を主張している。【419日 共同

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ロシアはラデフ氏を水面下で支援しているとされ、EUと激しい綱引きを繰り広げられています。

 

ブルガリアの政治スタンスを改めて整理すると・・・

 

****ブルガリアの政治スタンス****

結論から言うと、現在(2026年春)のブルガリアは「明確な単一政権のスタンス」を語りにくい状況にあります。理由は、政権崩壊と総選挙が繰り返されており、暫定政権+選挙戦の過渡期にあるためです。そのうえで、現状の政治スタンスは以下のように整理できます。

 

① 現在の「政権」の位置づけ

2025年末に政府が辞任し、暫定(選挙管理)政権が運営中・・・つまり「長期的な政策を持つ安定政権」は存在していない。このため、対外政策(ウクライナ支援など)は従来路線を維持しつつも、国内政治で揺れている状態です。

 

② 暫定政権・主流路線の基本スタンス

暫定政権や従来の主流勢力(中道右派GERBや改革派など)は概ね西側陣営との協調を基本とする・・・EUNATO重視(親欧米) ウクライナとの協力(軍事・防衛含む)を支持

実際、ウクライナとの安全保障協定もこの流れの中で締結された。

 

③ ただし国内政治は大きく分裂・・・現在のブルガリア政治の特徴はむしろこちらです

A. 親欧米・改革派・・・例:PP-DB(「変革を続ける」+民主ブルガリア)

スタンス: 反腐敗、EU統合強化、ウクライナ支援

 

B. 保守・現実主義(GERBなど)

スタンス: 親EUだが実務重視 安定・経済優先

 

C. 親ロシア・懐疑派(影響拡大中)・・・代表的存在:ルメン・ラデフ系勢力

スタンス: 対ロシア制裁や対ウクライナ軍事支援に慎重/反対 エネルギーでロシアとの関係維持志向 EUには所属するが欧州懐疑主義的 

 

④ 最新動向(2026年春)

現在の選挙情勢では親ロシア寄り・欧州懐疑派のラデフ系が最大勢力候補 ただし単独過半数は難しく、連立次第で政策が大きく変わる状況 

 

⑤ 全体評価(重要ポイント)

ブルガリアの「現政権のスタンス」を一言で言うと、制度的には親欧米だが、国内政治はロシア対応を巡って大きく分裂

外交制度:EUNATOの一員 → 西側路線

国内政治: 親欧米 vs 親ロシア(慎重派)で対立

結果: ウクライナ支援も国内政治の争点化

 

⑥ ウクライナとの協定の意味

この状況での安全保障協定はブルガリア国家としての「西側コミットメント」を示すもの

ただし今後の政権次第で実質的な支援の強度は変動する可能性あり【419日 ChatGPT

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【ブルガリアは親ロシア勢力が一定の影響力を持つ背景・・・歴史・文化と経済が重なった構造的な理由】

では、ブルガリアはなぜ親ロシア勢力が一定の影響力を持つのか?

 

****ブルガリアで親ロシア(あるいは対ロシア強硬路線に慎重)な勢力が一定の影響力を持つ背景****

単なる「最近の政治」ではなく、歴史・宗教・経済・情報環境が重なった構造的な理由によるものです。

 

① 歴史的な「解放者」イメージ

露土戦争 (1877–1878)・・・約500年続いたオスマン帝国支配からの解放にロシアが決定的役割を果たした

このためロシアは歴史的に「解放者」「恩人」というイメージが強い。現在でも学校教育や記念碑などでこの記憶は強く残っている

 

② 宗教・文化的な近さ(スラブ・正教)

ブルガリアもロシアもスラブ系+東方正教会文化圏 文字(キリル文字)や宗教儀礼なども共通性が高い

→「西欧よりもロシアに文化的親近感」を持つ層が一定数存在

 

③ 冷戦期の長いソ連依存

社会主義時代、ブルガリアはソ連圏の中でも最も親ソ的な国の一つだった。経済・軍事・教育までモスクワ中心に統合されていた。→高齢層を中心に「ソ連時代=安定していた」という記憶が残る

 

④ エネルギー依存(現実的利害)

ブルガリアは長年天然ガス・石油をロシアに大きく依存 ロシアとの関係悪化はエネルギー価格上昇・経済打撃に直結→経済的理由から「対ロシア強硬は危険」という現実主義が存在

 

⑤ EU・西側への不信や疲労感

EU加盟後も汚職問題、経済格差、地方の停滞が解消されていない

一部の有権者は「西欧は約束を守っていない」「主権が制約されている」と感じる

→ その反動でロシア寄り・欧州懐疑派が支持を得る

 

⑥ 情報戦・政治的利用

ロシア系メディアやSNSの影響・・・国内政治勢力が「親ロシア感情」を利用 特にウクライナ戦争、対ロ制裁をめぐり、世論は分断されやすい

 

⑦ 現在の構図(重要)

現在のブルガリアは国家としてはEUNATO加盟の西側国家

しかし国内では親欧米 vs 親ロシア(慎重派)で拮抗

その結果、政権が頻繁に不安定化→対ウクライナ政策も揺れる 【419日 ChatGPT

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【中東欧諸国の「親ロシア感情」・・・国ごとに性格がかなり違うのが実態】

他の中東欧諸国の「親ロシア感情」は?

 

****中東欧諸国における“親ロシア感情”****

「親ロシア感情が比較的強い」といっても、中東欧では国ごとに性格がかなり違うのが実態です。ブルガリアのように歴史・文化要因が強い国もあれば、政治的・経済的理由で「実務的にロシアに近い」だけの国もあります。

 

① 政権レベルでロシアに比較的融和的

ハンガリー・・・・EUNATO加盟国でありながら対ロ制裁やウクライナ軍事支援に慎重 ロシアとの関係を維持(エネルギー・原発など) 指導者(オルバン首相)の政治姿勢が大きい

特徴:国民感情というより、政権主導の「現実主義的親ロシア」

 

スロバキアのフィツォ政権・・・・対ウクライナ軍事支援に否定的 対ロ制裁に批判的 世論も比較的ロシアに同情的な層が存在

特徴:国内世論と政権の両方でロシアに一定の理解

 

② 伝統的・文化的に親ロシア感情が一定ある

セルビア(EU未加盟)・・・強い親ロシア感情で知られる代表例

理由:スラブ民族・正教会の共通性 コソボ問題でロシアが支持

特徴:中東欧で最も親ロシア感情が強い国の一つ

 

ブルガリア(再掲)・・・歴史(ロシアが「解放者」) 宗教(正教会) エネルギー依存

特徴:歴史・文化と経済が重なった典型例

 

③ 世論の一部に親ロシア傾向が残る国

ルーマニア・・・基本は強い親欧米・反ロシア ただし一部に親ロシア・陰謀論的世論あり

特徴:国家方針は反ロだが、社会に分断がある

 

チェコ・・・政府は明確に反ロシア しかし、高齢層・一部ポピュリズム層に親ロシア傾向

特徴:政治よりも社会内部の分断問題

 

④ 逆に「ほぼ親ロシア感情が弱い」国(比較参考)

ポーランド、バルト三国・・・これらは歴史的対立(ロシア支配の記憶)、安全保障上の脅威認識から強い反ロシア

 

■ 結論

ブルガリアに近いタイプは特にセルビア(文化・歴史型)、スロバキア(世論と政治の混合型)

一方でハンガリーは似ているようで指導者主導の戦略的バランス外交色が強いという違いがあります。【419日 ChatGPT

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スウェーデン  「まっとうな生活」送れない移民追放計画 北欧全体が「寛容モデルから管理モデルへ」

(スウェーデン首都ストックホルム郊外のフレンにある受け入れ施設【20211124 Newsweek】)

 

【スウェーデン:「まっとうな生活」送れない移民追放計画と「真面目に働いて暮らしている」ことを国籍取得要件にする計画】

一般的に生活水準が高く、国民の幸福度も高いとされている北欧社会ですが、そうした社会を守るために“よそ者(移民)”には厳しい社会にもなりつつあるようです。

 

スウェーデンの場合、中道右派3党による少数連立政権で、極右政党の閣外協力を受けて過半数を確保しているという政治事情もあって、移民に対する厳しい措置の導入が検討されています。

 

****スウェーデンの「まっとうな生活」送れない移民追放計画、人権団体から批判の声****

移民(1年以上滞在する外国人)に対し「まっとうな生活(犯罪など犯さず、社会に適合して生きること)」を義務付け、違反した場合は国外追放とするスウェーデン政府の計画に対し、一部の人権団体や法曹から差別的だとの批判の声が上がっている。

 

スウェーデンのウルフ・クリステション政権は中道右派3党による少数連立政権で、極右政党「スウェーデン民主党」の閣外協力を受けて過半数を確保している。移民と犯罪の取り締まり強化を公約に掲げ、2022年に発足した。9月の総選挙を前に公約を果たそうと、さまざまな分野での改革を急ピッチで進めている。

 

議会で可決されれば、「まっとうな生活」に関する法律は713日に施行される予定だ。

 

この変更により、移民庁は非EU(欧州連合)市民に対する在留資格を付与・更新する際、申請者が過去に公共の秩序や安全を脅かしたことがあるか、過激思想に共感していたか、暴力を扇動する団体と関係があったか、罰金刑に相当する軽犯罪を犯したことがあるかなどを考慮することになる。

 

その他の考慮事項としては、「返済する意思がないのにお金を借りた場合」や「借金を返済そぶりが全く見られない場合」、組織的な物乞い、社会保障給付の不正受給、不法就労などが挙げられる。

 

基準を満たさず「まっとうな生活」をしていないと判断されると、国外追放される可能性がある。

 

人権団体「市民権擁護者」の法律顧問、ジョン・スタウファー氏はAFPに対し、「この改革の影響を受ける移民にとって、その影響は非常に深刻だ」と述べた。

 

スウェーデン民主党のルドビグ・アスプリング報道官(移民政策担当)は計画発表時の記者会見で、「発言、つまり人が言ったり表現したりすることは、それ自体がまっとうな生活を送っていない証拠とみなされるべきではないが、例えば、人格に問題があることを示す証拠となり得る暴力的な過激主義とのつながりを示すこともある」と述べた。

 

スタウファー氏は、「これは、人が持つ権利が、法的地位や国籍の有無、在留資格の有無によって異なる制度を生み出すことになる」「国民であれば、広範かつ強力に保護された表現の自由が保障される。国民ではない場合も表現の自由はあるが、国民ほど強力ではない」と主張した。

 

「他人の家に滞在する客」

この法案は、移民の在留資格の取り消しを容易にするものだ。

ヨハン・フォシェル移民相はAFPに対し、「スウェーデンに滞在することは人権ではない。そのことを忘れてはならない」と述べた。

「スウェーデンに来て国籍を持たない場合、他人の家に滞在する客のようなものだ。だから、この国の一員になりたいという意思を示す必要がある。努力し、周囲に協力して自分の役割を果たし、働かなければならない」と述べた。

 

政府は、「まっとうな生活」の要件に違反する行為や行動の具体的なリストをまだ公表していない。

難民認定希望者への法的支援を提供するスウェーデン難民法律センターは、新たな考慮事項によって在留資格認定申請手続きが予測不可能になると述べている。

 

同センターの弁護士、エリアス・ニーグレン氏はAFPに対し、「さまざまな状況下での自分の行動がどのように評価されるか分からないため、不安感も生じさせる」と語った。

 

一部の人権団体は、特定の種類の活動が「まっとうな生活」の要件に反するとみなされる可能性を懸念している。

環境保護団体グリーンピース・スウェーデンのフリーダ・ベングトソン代表はAFPに対し、「私たちは市民的不服従、つまり非暴力とわれわれの行動の指針となる原則に関する研修を実施している。この問題がますます頻繁に提起されるようになっている」と述べた。「多くの人が現在の不確実性のために行動を起こすのをためらい、活動から離脱している。あえてリスクを冒そうとはしないからだ」と付け加えた。

 

日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルに掲載された風刺的な論説の中で、作家のゲッレールト・タマス氏は、フォシェル移民相を含む一部の閣僚も国外追放の対象とするべきだと主張。

 

法案草案の文言を引用し、「ヨハン・フォシェル氏は『暴力を助長する組織との明確なつながり』を持っている」「彼の息子はかつて、公然のネオナチ団体『アクティブクラブ・スウェーデン』に所属していたからだ」と述べた。

20257月、当時16歳だったフォシェル氏の息子がアクティブクラブ・スウェーデンに所属していたことがメディアで報じられたが、フォシェル氏はそのことを知らなかったと述べた。

 

タマス氏は、「フォシェル氏の釈明──『これは深く後悔している15歳の少年が起こした事件で、彼はつい最近16歳になったばかりだった』──は、まっとうな生き方を評価する上で、ほとんど考慮されないだろう」と述べた。 【418日 AFP

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「まっとうな生活」送れない移民は追放する・・・・昨今の日本の風潮からすれば「当然のことだ」と評価する向きも多いかとは思いますが、何をもって「まっとうな生活」とするのか・・・運用次第ではかなり恣意的な運用の危険性もあります。

 

また、自国民と“よそ者”の間の権利に差を設けて、“自国民ファースト”的に自国民の利益を守ろうとするやり方が、本当に正しいことなのか・・・という根源的な疑問も。ある程度は仕方がないけど、バランスの問題なのかもしれませんが。

 

同じスウェーデンでの動きとして国籍取得の厳格化に関する報道が2か月前にありました。

 

****スウェーデン、国籍取得を厳格化へ 要件は「真面目に働いて暮らしている人」 語学力や一般常識も必要****

北欧スウェーデンは9日、国籍取得に関する規則を厳格化する計画を発表した。「真面目に働いて暮らしている」ことを要件とし、言語能力および一般常識に関する試験を導入し、居住期間の要件を現行の5年以上から8年以上に引き上げる。

 

議会で承認されれば、新規則はスウェーデンの建国記念日である66日に発効し、既に処理中の申請にも適用される。(中略)

 

ヨハン・フォシェル移民相は、記者団に対し、現在、スウェーデン国籍の取得は簡単すぎると指摘。

「国籍は、もっと大きな意味を持つべきだ」「誇りとは、何かに一生懸命取り組んだ時に感じるものだ。しかし、そうしたことが国籍取得で求められていない」と述べた。

「スウェーデン語を一言も話せず、スウェーデン社会について何一つ知らず、無収入でも、5年で国籍を取得することができる」

 

さらに、最近話題になった事件に言及し、「殺人罪で服役している間にも国籍を取得することができる」と述べた。

「これは明らかに、真面目に働いて暮らしている人々と、既にスウェーデン国籍を得ている人々の両方に、全く間違ったメッセージを送っている」と述べた。

 

2015年の欧州移民危機でスウェーデンに大量の移民が流入した後、歴代の政権は右派・左派を問わず、難民と移民に関する規則を厳格化している。

 

スウェーデンは長年にわたり移民の社会統合に苦労しており、多くの移民がスウェーデン語さえ覚えず、犯罪率や失業率の高いスラムで暮らしている。

 

新たな規則では、出身国またはスウェーデンで犯罪歴がある者は、刑期を終えてから最長で17年待たなければ国籍取得を申請できなくなる。

 

さらに、「真面目に働いて暮らしていない」と判断された者に国籍は与えられない。多額の借金を抱えている、接近禁止命令を受けた、薬物依存症であるであるといったものがこれに該当する。

 

また、年金生活者と学生を除き、税引き前の月収が2万クローナ(約35万円)以上でなければ国籍取得を申請できない。

 

政府によると、国籍取得試験は隣国デンマークや米国で実施されているものと同様で、最初の試験は8月に実施される予定だ。 【211日 AFP

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この国籍取得に関する規則厳格化はまだ「計画」段階で、法制化はされていないようです。「まっとうな生活」送れない移民追放計画と「真面目に働いて暮らしている」ことを国籍取得要件にする計画は、対象と制度が異なりますが両者は目的は共通しています。

 

① 国籍取得厳格化(2月報道)

対象:帰化(スウェーデン国籍の取得)

内容: 居住期間延長(5→8年) 言語・社会知識テスト 生計要件の強化
「スウェーデン人になる条件」を厳しくする政策

 

② 「まっとうな生活」義務(4月報道)

対象:外国人の在留そのもの(移民全体)

内容: 犯罪だけでなく「社会不適合」も問題視 違反すれば国外退去の可能性
「スウェーデンに住み続ける条件」を厳しくする政策

 

従来、多文化共生を掲げ、移民の統合に取り組んできたイメージがあるスウェーデンですが・・・

 

****なぜスウェーデンが移民に対して厳格化しているのか****

背景は単一ではなく、複数の要因が重なっています。

1. 治安悪化(特にギャング犯罪)

近年のスウェーデンでは、銃撃事件、爆発事件(住宅爆破など)が欧州でも突出して増加しているが、移民系若者が関与するケースが多く、「統合政策の失敗」という認識が広がりました。

 

2. 統合(インテグレーション)の限界

従来のスウェーデンは手厚い福祉、多文化共生を掲げてきましたが、現実には高失業率(移民層)、教育格差、居住地域の分断(移民集中地区)が固定化

その結果、「受け入れれば自然に統合される」という前提が崩れました。

 

3. 政治構造の変化

現在の政権(ウルフ・クリステション)は中道右派政権だが、さらに移民規制を強く主張する極右「スウェーデン民主党」の支持に依存している。

そのため政策は従来より明確に「制限・排除寄り」にシフト

 

4. 欧州全体の潮流

スウェーデン特有ではなく、ドイツ、フランス、デンマークなどでも移民規制強化が進行

特に2015年の難民危機以降、「受け入れ重視 → 統制重視」へと転換しています。

 

5. 世論の変化

かつては寛容だったスウェーデンでも、犯罪への不安、福祉負担への不満から、世論が「条件付き受け入れ」へと大きく変化。これが政策転換を後押ししています。

 

■ まとめ

2月の国籍法強化と4月の在留ルール強化は別制度だが同じ方向性

背景には治安悪化、統合の失敗、政治の右傾化、欧州全体の流れ、世論の変化が重なっている。【418日 ChatGPT

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【デンマーク:スウェーデンよりも一歩先に超党派で移民規制の厳格化を進める】

同じ北欧のデンマークはスウェーデンよりも一歩先に厳格化を進めてきた国で、現在のスウェーデンの動きは、ある意味で「デンマーク型に近づいている」と見ることができます。

 

****デンマークの移民規制****

■ 基本的な位置づけ

デンマークは北欧の中でも最も早く、最も体系的に移民規制を強化してきた国です。 特に2010年代以降は「受け入れよりも統制・同化(アシミレーション)」を重視しています。

 

■ 主な政策(すでに実施済み)

① 国籍取得の厳格化・・・スウェーデンより早く導入済み

高度なデンマーク語試験 歴史・社会試験 長期居住要件 犯罪歴への厳格な制限「簡単には国民にしない」という方針が徹底

 

② 永住権・在留の厳格化

就労・自立要件が非常に厳しい 福祉依存があると不利 犯罪で即国外退去の対象

さらに特徴的なのは「社会への適合」そのものが評価対象になっている点で、これは今回のスウェーデン案とほぼ同じ方向です。

 

③ 「ゲットー政策」(移民集中地区対策)・・・デンマークの象徴的政策です。

政府は移民が多い地区を「問題地区(旧称:ゲットー)」として指定し、強制的な住民の移転、公営住宅の取り壊し、保育・教育への介入義務、犯罪の刑罰をその地域では加重など、かなり踏み込んだ措置を実施

 

④ 難民抑制政策(国外処理構想)・・・近年最も注目されたのがこれです。

難民申請者を国内で審査せず第三国(例:アフリカ)で審査する構想

これはメッテ・フレデリクセン政権が主導→ 「そもそも来させない」という発想

 

■ なぜここまで厳しいのか

背景はスウェーデンと似ていますが、違いは「対応の早さ」です。

1. 1990年代から問題を認識

失業、社会分断を早期に問題視→ 対応が早かった

 

2. 政治の超党派合意

デンマークでは特徴的に右派だけでなく中道左派も含め、ほぼ全政党が移民規制強化で一致

特に社会民主党(中道左派)が福祉維持のために移民制限を支持

この点がスウェーデンとの大きな違いです。

 

3. 福祉国家との両立意識

デンマークは高福祉・高負担国家

そのため、「福祉を維持するには、統合できない移民は制限する必要がある」という考えが強い

 

■ まとめ

デンマークは北欧で最も厳しい移民政策をすでに実行している国

スウェーデンは今、そのモデルに近づきつつある段階

違いは「対応の早さ」と「政治の合意形成」(移民規制強化に関してスウェーデンでは党派によって賛否が分かれているのに対し、デンマークでは超党派で一致)【418日 ChatGPT

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なお、厳しい移民政策をとるデンマークでは324日、総選挙が投開票され、フレデリクセン首相率いる社会民主党(中道左派)は38議席で第一党に踏みとどまったものの、過去120年で最低の得票率となりました。一方、「デンマーク人第一」を掲げる右翼のデンマーク国民党(16議席)が前回2022年の選挙から11議席伸ばして躍進しました。フレデリクセン内閣は総辞職を表明しています。

 

【北欧全体として「寛容モデルから管理モデルへ」転換中】

****他の北欧諸国、ノルウェーやフィンランドの状況****

ノルウェーとフィンランドも、方向としてはスウェーデンと同じく移民政策の引き締め側にシフトしていますが、デンマークほど徹底的ではなく、中間的・段階的な強化という位置づけです。ノルウェーは比較的穏健だが確実に引き締め、フィンランドは安全保障も背景にかなり厳格化

 

■ ノルウェーの状況

基本スタンス:ノルウェーは伝統的に「人道重視(難民受け入れ) 同時に管理も重視」というバランス型でした。

しかし近年は明確に引き締め方向です。

 

主な政策

① 国籍・永住権の要件強化:ノルウェー語能力要件、社会理解テスト、長期居住要件→ スウェーデンの今回案と近い内容

 

② 犯罪外国人への対応:犯罪で国外退去は既に一般的 特に暴力・薬物犯罪は厳格

 

③ 難民受け入れの抑制:受け入れ人数の抑制 EU域外からの流入制限強化

 

政治背景・・・現在の政権(ヨーナス・ガール・ストーレ)は中道左派ですが、移民問題では比較的慎重・規制寄り

→ デンマークほどではないが、理想主義からは後退

 

特徴:治安悪化はスウェーデンほど深刻ではない そのため「予防的な引き締め」の性格が強い

 

■ フィンランドの状況

基本スタンス:フィンランドはもともと移民受け入れが少ない国で社会的同質性が高い。そのため現在は北欧の中でもかなり厳格な側に位置しています。

 

主な政策

① 大幅な規制強化(近年の特徴)

現在の政権(ペッテリ・オルポ)は明確に移民制限を掲げる右派連立

内容はかなり踏み込んでいます:難民申請の制限、家族呼び寄せの厳格化、就労要件の強化、社会保障アクセスの制限

 

② 国境管理の強化(ロシア要因)

フィンランド特有の事情としてロシアとの長い国境

2023年以降、ロシア側からの移民流入(いわゆる「圧力」)を受け国境閉鎖措置などを実施→ 安全保障と移民政策が直結

 

③ 統合重視(ただし厳格):言語習得(フィンランド語)、就労が強く求められる

 

特徴・・・デンマークほど制度化は進んでいないが政治的にはかなり強い規制志向

 

■ 共通する大きな流れ:4カ国すべてに共通するのは、多文化共生モデルの見直し、統合できない場合の制限強化、「権利」より「義務」を重視、福祉国家維持のための選別

■ まとめ

北欧全体としては「寛容モデルから管理モデルへ」転換中 【418日 ChatGPT

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中国  “停戦の保証人”の役割は回避し、イランとアメリカ・トランプ大統領の両にらみのスタンス

(【416日 日経】)

 

【中国は開戦当初から実質的イラン支援には抑制的で「計算された静観」を維持】

中国のイラン情勢への対応は、アメリカの攻撃開始当初から、36日ブログ“中国  イラン支持の言葉とは裏腹に、軍事・外交面での直接的な支援には動かない抑制的対応の背景”でも取り上げたように、イランへの支援は口にしつつも、実際には“抑制”された対応に終始しています。

 

背景には、軍事大国アメリカとのトラブルを起こしたくない、米中首脳会談を控えて、国内経済に問題を抱える中国としてはアメリカとの間で無用の軋轢を大きくしたくない・・・といったこともありますが、基本的に日本ほどではないにしても中東の原油に大きく影響される中国としては、中東からの原油の安定供給が最大の関心事であり、安定供給を危うくするような混乱の拡大は望んでいないということがあります。

 

更に言えば、政治的・安全保障面での中国の関心は「台湾」であり、「イラン」ではないという面も。

 

****中国はなぜイランの支援に消極的なのか?****

(中略)中東では緊張が高まり、ペルシャ湾岸のエネルギー生産施設が打撃を受け、同湾に位置するホルムズ海峡が封鎖された。

 

同海峡の封鎖は国際石油市場、特に中国に深刻な打撃を与える。ホルムズ海峡を通過する石油の37%が同国に向けられているからだ。これにより、当然のことながら中国の動向に注目が集まり、同国が自国の経済的利益を守るために中東の対立に積極的に介入するのではないかとの憶測を呼んでいる。

 

(中略)中国政府はイランとの戦略的協力協定があるにもかかわらず、同盟や政治的合意より物価の安定を優先し、緊張緩和を呼びかけている。中国の慎重かつ限定的な発言は、中東の緊張が高まる中で、同国が何を優先するのかを示している。中国の態度は意図的であり、同国にはイランのために首を突っ込む経済的動機も軍事的余裕もないことを示唆している。

 

中国にとって重要なのはアラブかイランか

中国の習近平国家主席が2023年にサウジアラビアとイランの外交正常化を仲介したことで、中国は中東で中立的な立場を確立することに成功した。この仲介を通じて中国が目指したのはイランを支援することではなく、自国のエネルギー安全保障を大きく左右するペルシャ湾岸地域の安定化を図ることだった。これにより、中国では楽観論が広がった。中国式外交によって、一見解決不能なアラブとイランの相互排他的な関係を橋渡しできるかもしれないという期待からだ。

 

だが、そう簡単にはいかなかった。中国はイランだけでなく、イスラエルや他の中東諸国ともつながりがあるため、イランのみを支援するわけにはいかない。中国はサウジアラビアを含む多くのアラブ諸国にとって最大の石油輸入国であり、イラン産よりアラブ産の石油に大きく依存している。中国の石油輸入の約50%はアラブ諸国産で、イランからの輸入は約17%に過ぎない。アラブ諸国から中国へは日量400万バレル以上の石油が輸送されているのに対し、イランからの輸入量は同138万バレル程度だ。(中略)

 

中国の優先事項は台湾問題

(中略)イラン情勢は中国にとって台湾問題を上回るものではなく、中国はより差し迫った問題から注意をそらすことを望んでいない。中東に権力や資源、関心を注いだとしても、中国が得られる利益は限定的で、台湾への注意をそらす要因にもなりかねない。こうしたことも、中国のイランへの関与が限られている原因になっている。

 

中国の軍事戦略には選択の余地もある。イランと戦う米国、イスラエル、アラブ諸国が中東での紛争に足を取られるか、不安定な状態に陥ることで、中国は大きな利益を得るだろう。そうなれば、中国は米国の関与を避けつつ、台湾に圧力をかける余裕が生まれることになる。他方で、たとえイランと戦う連合軍が勝利したとしても、中国のエネルギー輸入が断たれることはないとみられる。

 

現在の中東での紛争は既に中国がどこまで介入し、何をしないのかを示している。同国はイランやアラブ諸国との関係を見据えつつも、地理的に自国に近い問題を優先しながら、慎重かつ控えめな姿勢を取っている。

 

自ら積極的に動いて米国の失敗を招こうとするよりも、米国の失敗に賭けているのだ。中国は緊張緩和を呼びかけ、米国とイスラエルによるイランへの攻撃をある程度非難しているものの、行動は伴っていない。

 

中国の意思決定は、自国の利益の優先順位に基づいて行われる。同国にとっては、イラン支援よりペルシャ湾岸地域の安定とエネルギー資源の確保の方が重要なのだ。中国製の軍事装備の不具合が露呈する可能性や台湾問題、軍内部の再編も大きな懸念材料となっている。中東の対立が激化し長期化するにつれ、中国は名ばかりのイランの同盟国であり続けるだろう。【35日 Forbes

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46日ブログ“米中関係  51415日にトランプ大統領訪中 経済問題・台湾問題・イラン情勢などが議題”では、イラン情勢に関する上記のような中国の「計算された静観」について、“中国がイラン支援へと軸足を移しつつあるとの見方が強まってきた”との指摘もありことを紹介しました。

 

****「イランを見捨てない」中国が動いた5つの理由、王毅外交が包囲網を崩しにいく****

中国が、イランの敗北を防ぐための仲介外交に乗り出した。専門家の間では、米国とイスラエルの攻勢が続く中、中国がイラン支援へと軸足を移しつつあるとの見方が強まってきた。2日には、王毅外相がバーレーン、サウジアラビア、ドイツ、EUの外交トップと相次いで電話会談し、米国とイランの双方を念頭に敵対行為の早期停止を促した。(後略)【46日 江南タイムズ】

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ただ中国の姿勢は、イラン問題に“深入り”しない抑制的対応の基本は変わっていません。

 

【イランへの武器供与阻止、ホルムズ海峡逆封鎖で中国への圧力を強めるトランプ政権 中国は公にイランに海峡正常化を要請】

そうした中国の抑制的姿勢からすると意外な感があったのが“中国はイランに対空ミサイルを供給しようとしている”との報道でした。やはり、中国の対応が“イラン支援へと軸足を移しつつある”ということなのか・・・・

 

これに対し、アメリカは中国がイランに軍事支援を行わないように圧力を強化。

 

****中国主席、イランに武器供与していないと回答 トランプ氏言明****

トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席にイランに武器を供与しないよう書簡で要請したところ、供給していないとの回答を得たことを明らかにした。15日に放送されたフォックス・ビジネス・ネットワークのインタビューで明らかにした。

 

前日に収録されたインタビューでトランプ氏は、書簡の時期については言及しなかった。同氏は先週、イランに武器を供給した国に対し直ちに50%の関税を課すとしていた。

 

トランプ氏は「そうしないよう求める書簡を送ったところ、基本的にはそのようなことはしていないと返してきた」と述べた。

 

イランとの紛争やベネズエラ情勢の変化による世界的な石油市場の変動について、来月予定されている習氏との会談の構図に影響を与えるとは考えていないと指摘。「彼は石油を必要としているが、われわれは必要としていない」と語った。

 

トランプ氏はその後、自身のSNS(交流サイト)に、ホルムズ海峡を「恒久的に開放する」とし、中国はこれを非常に喜んでいると投稿した。【415日 ロイター

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更に、トランプ政権がイランの資金源を断つべく実施した、米軍による「ホルムズ海峡逆封鎖」は、イラン産原油の9割の買い手である中国にも圧力をかけることになります。

 

トランプ大統領としては中国に圧力をかけることで、中国がイランを停戦に向けて動かすことを期待した措置とも推測されます。

 

ただし、実際に中国タンカーあるいは警備する中国軍艦船と米軍が衝突する事態になれば、事態は一気に混乱にむかうリスクも伴う措置です。

 

****米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる****

米軍による中国タンカーへの臨検や回航指示は、米中間の深刻な外交問題に発展する恐れがある

 

中国は、4月13日に米国がイランの港湾に対する海上封鎖の実施に動いた後、ホルムズ海峡のエネルギー輸送に対する「外部からの干渉」に警告を発した。

 

中国の行動は、米国とイスラエルの攻撃開始から7週間におよぶイラン戦争で既に高まっている地政学的緊張の中、米国の海上封鎖によって世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺での圧力をさらに一段引き上げた形だ。

 

米国の措置は、国際海運、原油市場、そして同地域に直接的な経済・安全保障上の利害を持つ主要国すべてに影響を及ぼす。この封鎖はイランの原油輸出を標的としながらも、世界の石油供給の相当部分が通過し、既にイランが事実上封鎖しているホルムズ海峡に新たな負荷をかけるものだ。

 

この「二重の封鎖」は、タンカーの航行をさらに妨げ、原油価格を押し上げ、世界のエネルギー市場を一層不安定化させる可能性がある。

 

中国の対応はまた、ホルムズ海峡をめぐる対立の火種がイランと親密な関係にある諸国にも波及し始めていることを示している。中国はエネルギー供給の多くをペルシャ湾からの原油輸入に依存しており、自国向けの供給を妨げる措置には反対する姿勢を明確にしてきた。

 

背景には、より広範なパワーゲームも並行して進んでいる。米国のドナルド・トランプ大統領は、イランに武器を供給する国に対し、最大50%の大幅な二次関税を課すと警告している。中国は否定しているが、CNNの報道によれば、中国はイランに対空ミサイルを供給しようとしていた。

 

「我々の船舶はホルムズ海峡を出入りしている」と、中国の董軍国防相は413日の声明で述べた。「我々はイランと貿易およびエネルギーに関する合意を結んでいる。それを尊重し、履行する。他国が我々の問題に干渉しないことを期待する。ホルムズ海峡はイランが管理しており、我々にとっては開かれている」

 

米軍がイランの港湾封鎖の実施を開始してから数時間後に出された声明だ。米国当局者は、作戦はイランの港湾および沿岸地域に出入りする船舶を対象としており、ホルムズ海峡全体を封鎖するものではないと説明した。また、イラン以外の目的地に向かう、あるいはそこから来る船舶の通航は妨げないとしている。

 

トランプ大統領はこの措置について、12日にパキスタンで行われた協議が失敗した後の圧力手段と位置づけ、イランがホルムズ海峡近くの地理的優位性を利用して世界の原油輸送を妨げてきたと主張している。【414日 Newsweek

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アメリカは制裁強化で中国のイラン産原油を停止に追い込む姿勢です。

 

****米、イラン産原油購入者に制裁警告 海上封鎖で中国が購入停止と予想****

ベセント米財務長官は15日、イラン産原油を購入する国に制裁を科すと警告した。また、イランに対する米国の海上封鎖により、中国がこうした購入を一時停止するとの見方を示した。

 

ホワイトハウスで記者団に対し「われわれは各国に対し、イラン産原油を購入している場合、あるいはイランの資金が自国の銀行にある場合、二次制裁を適用する用意があると伝えた」と述べた。

 

米国によるイランへの海上封鎖は13日に始まった。中国はこれまで、イランが輸出する原油の8割以上を購入していた。ベセント氏は「この封鎖により、中国の購入が一時停止されると考えている」と述べた。

 

また、財務省が中国の銀行2行に書簡を送り、両行の口座を通じてイランの資金が流れていることを証明できれば、二次制裁を発動する用意があると伝えたと明らかにした。財務省は同日、イランの石油輸送インフラを標的に20以上の個人、企業、船舶を対象とした制裁を発動したことも発表した。【416日 ロイター

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そうしたアメリカの中国への圧力が奏功したのか、中国がイランに海峡正常化を要請。

 

****中国、ホルムズ海峡開放へ動く 原油調達に焦りで異例の対イラン圧力****

中国政府は15日、イランにホルムズ海峡の通航を正常化するよう要請した。海峡の事実上の封鎖で原油の安定調達が揺らいだため。中国が友好国のイランに対して公に圧力をかけるのは米国とイスラエルによるイラン攻撃後、初めてだ。【416日 日経

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中国にとってホルムズ海峡の安定は自国経済にとっても死活問題であるうえ、グローバルサウス(新興・途上国)に求心力をアピールする好機ともとらえているようです。

 

また、中国はイラン支援に向けてロシアとの二国間協調をアピールしています。

 

****中ロが結束アピール、二国間協調進めると習氏-イラン戦争7週目*****

中国の習近平国家主席は15日、イラン戦争が7週目に入る中で、訪中したロシアのラブロフ外相と北京で会談し、両国関係の安定性を強調するとともに、二国間の協調を一段と深める方針を示した。

 

国営中央テレビ(CCTV)によると、習氏は人民大会堂での会談で「国際情勢の混乱に直面する中で、中国・ロシア関係の安定性と確実性は特に貴重だ」と述べ、「より緊密な戦略的協調を追求し、両国の正当な利益を断固として守り、グローバルサウス(新興・途上国)の団結を維持すべきだ」と語った。

 

ラブロフ氏は会談後、ロシアと中国はイラン戦争の解決に向けた交渉の取り組みを支持していると述べたとインタファクス通信が報じた。

 

イランにとって重要な支援国である中国とロシアは、米国とイランが数日内に戦争終結に向けた協議の再開を調整しようとする中、結束を世界にアピールしている。  

 

ロシアと中国は先週の国連安全保障理事会で、ホルムズ海峡の再開に向けた防衛的取り組みの調整を各国に促す決議案を拒否権で阻止した。中国はこの「不均衡」提案が問題の根本原因に対処しておらず、イランへの非難に終始していると主張した。【415日 Bloomberg

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【“停戦の保証人”の役割は回避し、イランとアメリカ・トランプ大統領の両にらみのスタンス】

一方、トランプ大統領はパキスタンで先週末行われた和平協議にイランを参加させるのに中国が貢献したと評価していますが、中国はそういう形で表舞台に立つことは避けたいようです。

 

“中国国営メディアはこれに反論し、この主張は交渉停滞の責任をイランに押し付け、中国に停戦交渉の負担を負わせるものだとしている。中国外務省は停戦に向けて独自の努力を行っていると説明しているが、詳細は明らかにしていない。”【417日 Bloomberg

 

“停戦の保証人”のような役割を担うことは避け、イランを支持しながらも海峡の安定性を回復するような停戦合意を促し、一方でアメリカとも良好な関係を保ちたい・・・・というのが中国の姿勢です。

 

****焦点:中国、トランプ氏とイラン両にらみ 「停戦保証人」には後ろ向き****

中国はイラン戦争終結に向けた取り組みを加速させ、来月予定されているトランプ米大統領との首脳会談に備えつつ、イランを疎外しないよう両にらみしている。

 

燃料の半分を中東に依存する世界最大の原油輸入国である中国はエネルギー供給の確保を図りながら戦争に対して抑制的な姿勢を維持。舞台裏における影響力を十分に発揮しており、トランプ氏はパキスタンで先週末行われた和平協議にイランを参加させるのに中国が貢献したと評価した。

 

中国の発展途上国への関与を分析する独立系組織「チャイナ・グローバルサウス・プロジェクト」の編集長、エリック・オランダー氏は「たとえ席に着いていなくとも、中国は交渉担当者と同じ場に居合わせることになった」と表現した。

 

<中東外交活発化>

トランプ氏を「取引重視型」かつ「お世辞に弱い」と見なす中国は今回の首脳会談において、貿易面や台湾を巡る目標に向けて前進しようとしている──。中国の考えに詳しい複数の関係筋はロイターにこのように明かす。

 

ある関係筋は、中国側の主だった方針は「彼を機嫌よくさせ、赤じゅうたんを敷いて歓迎し、戦略的安定を維持することだ」と語る。

 

8年ぶりとなる米大統領の訪中を控えた中国外務省は、外交方針に関する質問には回答しなかった。トランプ氏は首脳会談が5月14日と15日に行われると述べている。

 

アナリストらは、中国は一連の外交活動を活発化させ、紛争により一度延期された今回の首脳会談が円滑に進むよう、トランプ氏の戦争遂行に対する強い批判を控えていると指摘する。

 

トランプ氏がイランに対し「一晩で国全体を壊滅させることができる」と警告した後も、中国外務省報道官は非難を避け、「深く懸念している」などと述べるにとどめた。

 

ロイターの集計によると、王毅外相は停戦を求めて各国の外相らと30回近くに及ぶ電話会談や会合を行っており、中国政府のテキ雋・中東問題担当特 使も湾岸アラブ諸国の5つの首都を歴訪した。

 

<首脳会談の焦点>

一部のアナリストは、中国がイランを必要とする以上にイランが中国を必要としているため、中国はトランプ氏との首脳会談を維持しつつ、停戦を迫ることができると指摘する。

 

シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院上級研究員ドリュー・トンプソン氏は「中国にとっての理想的な結果は、イランのような反西側諸国としがらみのない関係を保持するだけでなく、米国と何らかの形の暫定合意を得る機会も確保することだ」と述べた。

 

中国はイランと米国の対話を促す役割を果たしたが、中東での軍事プレゼンスに欠けているため、決定に影響を与える能力は限定的。一部では、中国の精力的な中東外交はパフォーマンスに過ぎないとの声もある。

 

ブルッキングス研究所のパトリシア・キム氏は「イラン側は中国との関係を強調することに熱心で、停戦の保証人になるよう中国に要請しているが、中国はそのような役割を担うことに全く関心を示していない」と指摘。「中国は傍観者の立場にとどまることに満足しているようだ」と話す。(後略)【417日 ロイター

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「見捨てられる」ウクライナ 兵士不足を無人兵器でカバー ロシアは「肉挽き戦術」で夥しい犠牲者数

(無人車両の試験に臨むウクライナ兵ら(10日、ウクライナ南部ザポリージャ地方)=ロイター【414日 共同】)

 

【互いに多数の「停戦違反」を繰り返した「イースター停戦」終了後にロシア側の大規模攻撃】

ウクライナに侵攻するロシアが12日の正教の復活祭(イースター)に合わせて停戦を表明、ウクライナも停戦すると表明していた一時停戦の期間が11日午後4時(日本時間午後10時)に始まり、13日午前0時(日本時間同日午前6時)に終了しました。

 

停戦期間中も戦闘が続き、双方とも相手側が攻撃していると非難。昨年4月の復活祭でロシアが一方的に発表した停戦と同様に“完全な停戦実現”という点では不調に終わりました。ただ、同期間に大規模な攻撃がなかったという点では“無意味”だった訳でもありません。

 

****ロシアとウクライナ、32時間の「イースター停戦」終了互いに「停戦違反」繰り返したと主張****

(中略)露国防省は12日午前までに、露軍陣地に対する攻撃などウクライナ軍の停戦違反が計1971件確認されたとSNSで発表した。これに対し、ウクライナ軍参謀本部も12日深夜、砲撃や無人機攻撃など露軍の停戦違反が計7696件あったとSNSで明らかにした。

 

ただ、同参謀本部は「ロシアは自ら宣言した停戦を総じて順守している」とも言及した。ミサイル攻撃がなかったことなどを評価した可能性がある。

 

ウクライナ側は復活祭が終わっても攻撃を再開しないよう露側に提案していた。しかし、露大統領報道官は12日、ウクライナがロシアの要求する条件をのまない限り、攻撃を再開する考えを示した。【413日 読売

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停戦期間終了と同時にロシア側の大規模攻撃も再開されています。

 

****ウクライナ全土で子ども含む16人死亡、今年最悪の攻撃 多数負傷****

ウクライナの首都キーウやその他の都市がドローン(無人機)やミサイルによるロシアの夜間攻撃を受け、12歳の子どもを含む16人が死亡、多数が負傷した。当局が16日に発表した。今年に入ってから最悪の攻撃となった。

キーウのクリチコ市長によると、市内では子どもを含む4人が死亡。地方当局によると、南部オデーサでは9人が犠牲に。南東部ドニプロでは2人、その周辺地域でも1人が死亡したという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、死者以外にも100人が負傷したとし、「ロシアへの圧力を機能させなければならない。そして、ウクライナへのあらゆる支援を約束通りに履行することが重要だ」と述べた。

空軍によると、31発のミサイルと636機のドローンを撃墜または無力化したものの、16日午前7時(日本時間午後2時)までの24時間で12発のミサイルと20機のドローンが着弾・命中した。 クレバ副首相は、救助活動が続いており、犠牲者数はさらに増える可能性があると述べた。(中略)

ロシア国防省は16日、ウクライナに対する大規模な夜間攻撃について、巡航ミサイルとドローンの生産施設、およびウクライナ軍に供給しているとされるエネルギー関連施設を標的としたと発表した。

ロシアは、攻撃はロシア国内の民間施設に対するウクライナの攻撃への報復だと主張した。ロシア当局やメディアによると、ウクライナがロシアの黒海沿岸の港湾都市トゥアプセに対して夜間に実施した大規模なドローン攻撃により、14歳の少女を含む2人が死亡、7人が負傷し、大規模な火災が発生したという。【416日 ロイター

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【イラン情勢で「見捨てられる?ウクライナ 深刻な迎撃ミサイル不足】

イラン情勢はウクライナでの戦争にも大きな影響を与えています。

 

原油価格高騰は、これまで制裁によって資金源を制約されていたロシアにとっては思わぬ恵みとなっており、戦争遂行に必要な資金を得る形にもなっています。また、中東地域における兵器・弾薬の激しい消耗に伴って、ウクライナに向かう可能性があったアメリカの兵器・弾薬が中東地域に回される事態になっていることもロシアにとっては好都合です。

 

国際社会、特にアメリカ・トランプ大統領の関心がイラン情勢に集中する現状は、ウクライナにとってはこれまで以上に厳しいものがあります。

 

ロシアとウクライナの交渉担当者は2月にスイス・ジュネーブで会談して以来、会合を開いていません。

 

イラン情勢に伴う石油不足の問題から、ウクライナのロシア石油施設への攻撃にも石油供給を悪化させる懸念があるとの厳しい視線がむけられるようにもなっています。

 

*****「見捨てられたのか?」中東優先で後回しにされるウクライナの危機*****

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日(現地時間)、米国の関心がイラン戦争に大きく傾く中、米国の対ウクライナ武器支援に支障が生じていると公の場で明らかにした。

 

AFP通信によると、ゼレンスキー大統領は同日、ドイツ公共放送ZDFとのインタビューで、ロシアとの和平交渉を仲介する米交渉団がイラン問題に集中しているため「ウクライナに時間を割けない状況だ」と主張したという。

 

また、米交渉団を主導するスティーブ・ウィトコフ特使とドナルド・トランプ米大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が現在「イランと絶えず協議している」とし、ウクライナ戦争終結に向けた外交的な推進力が弱まっているとの認識を示した。

 

ウィトコフ特使とクシュナー氏が現実的な対応を取っていることは認めつつも「米国がプーチン(ロシア大統領)に圧力をかけず、ロシア側と穏健な対話だけを続けるのであれば、ロシアはもはや恐れなくなるだろう」と述べた。

 

ゼレンスキー大統領は米国の対ウクライナ武器支援が「大きな問題」として浮上しているとも語った。

その上で「イラン戦争が続けば、ウクライナに供給される武器は減るだろう」とし「特に防空装備に必要な資材を巡る状況は非常に深刻だ」と述べた。

 

ゼレンスキー大統領は同日、ノルウェーで開いた記者会見でも防空網に不可欠なパトリオット迎撃ミサイル(PAC-3PAC-2)の確保が難しくなっていると明らかにした。

 

これらの兵器は欧州各国が資金を拠出して米国製兵器を購入する「ウクライナ優先要求リスト(PURL)」の枠組みを通じて供給されていた。

 

ゼレンスキー大統領は「中東戦争が始まった時点で、我々は困難に直面する可能性があることを認識していた」とし「現在は物資の配送が遅れており、非常に厳しい状況だ」と述べた。

 

これに先立ち、ゼレンスキー大統領は今月10日に大統領府が公表したメッセージで「9月までは我々にとって非常に厳しい時間になるだろう」とし「春から夏にかけて、ウクライナは戦場だけでなく外交面でも圧力に直面するだろう」と語っていた。

 

ウクライナは現在、ロシアの戦争資金を遮断するため、ロシアの石油施設を集中的に攻撃している。しかし、世界的なエネルギー危機を一段と深刻化させかねないとの懸念が重荷となっている。

 

ゼレンスキー大統領は「各方面のパートナーがロシアの石油施設への攻撃を縮小するよう求めたが、ロシア産原油は世界市場に大きな影響を及ぼすことはない」と述べた。

 

ロシアと東欧を結ぶドルジバ・パイプラインの復旧作業については「作業はかなり進んでおり、春までに終わるだろう」と語った。【415日 江南タイムズ

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そうした中で、パトリオット迎撃ミサイル不足に悩むウクライナにとって前向きな話題も。

 

****ドイツ、防空ミサイル資金供与 ウクライナに数百発分****

ドイツとウクライナの両政府は14日、ベルリンで首脳や主要閣僚が参加した政府間協議を開き、ドイツがロシアの侵攻を受けるウクライナに対し米国製防空システム「パトリオット」用ミサイル数百発分の資金援助を行うことで合意した。両国政府が明らかにした。

 

ドイツ製防空システム「IRIS―T」の発射装置を36基追加供与することや、両国が合弁会社を設立し、中長距離の無人機を生産することでも一致した。ウクライナ軍の防衛力を強化するため、5千機の無人機の供給を目標とする。

 

ウクライナのフェドロフ国防相は、合意した支援は総額40億ユーロ(約7490億円)に上るとXに投稿した。【414日 共同

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先日取り上げた、これまでEUのウクライナ支援を阻止していたハンガリー総選挙でのオルバン首相退陣・政権交代が実現する運びとなったのも、ウクライナにとっては朗報です。

 

【ウクライナ 不足する兵士を無人兵器でカバー】

いずれにしても、兵士も足りない、ミサイルも足りないウクライナですが、そうした“不足”、とくに兵士不足を補う可能性があるとして注目されているのが“無人兵器”の活用。

 

****無人兵器だけで陣地奪還 歩兵投入せず、侵攻後初****

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、無人機と無人戦闘車両だけを使った作戦で、ロシア軍から陣地を奪還したと表明した。歩兵を投入せずにロシア軍部隊を降伏に追い込んだといい、20222月のロシアによる侵攻後初めてとしている。作戦を実施した日時や場所は不明。

 

ウクライナは多種多様な無人機に加え、地上でも無人戦闘車両の運用を拡大している。武器や物資の補給や偵察、負傷兵の搬送だけでなく、機関銃を搭載した攻撃型も投入。前線での死傷者を減らす狙いがある。

 

ゼレンスキー氏は「無人戦闘車両を最も危険な地域に派遣することで、多くのウクライナ兵の命が救われている」と強調した。

 

ウクライナ国防省によると、無人戦闘車両は24年ごろから運用が増え、昨年11月には2900件以上の任務を遂行した。今年1月には約7500件、3月には9千件を超え、増加傾向にある。

 

ウクライナ軍の部隊司令官は、英紙ガーディアンに対し「無人戦闘車両は戦場を根本的に変えた。兵たんと戦闘の両面で相当数の兵士の役割を代行している」と述べた。【414日 共同

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****ウクライナ軍、地上ロボット用いた攻撃を100回以上実施「人員へのリスクを最小限に」****

ウクライナ軍の部隊は15日、AFPに対し、地上ロボットを用いた攻撃を前線で100回以上実施したと述べた。これに先立ちウォロディミル・ゼレンスキー大統領は最近、同国軍がこの新たな戦術によってロシア軍陣地を制圧したことを称賛していた。

 

ウクライナ軍第3突撃旅団に所属する地上ロボットの運用専門部隊「NC-13」の隊員は、こうしたロボットを用いた作戦を「これまでに100回以上実施してきた」と述べた。

 

「これらの作戦には、敵兵の排除、掩蔽壕(えんぺいごう)、指揮所、その他の敵インフラ施設の破壊が含まれる。これらはもはや単発的な出来事ではなく、組織的な戦闘作戦となっている」と語った。

 

地上ロボットは、歩兵の代わりに危険な突撃任務を行うだけでなく、目標の探知・交戦や敵の侵入阻止にも役立つという。

 

隊員は、「本格的なロボット突撃作戦に向けて、われわれは既に56基の地上カミカゼロボットシステム(自爆型ロボット)と、戦闘モジュールを搭載した地上ロボットシステム(攻撃型ロボット)を同時に配備している」「この手法は突撃歩兵部隊を効果的に代替し、人員へのリスクを最小限に抑える」と説明。

 

「敵がこうした行動を突撃部隊の進撃と認識し、陣地を放棄する事例が繰り返し確認されている」と付け加えた。

ゼレンスキー氏は今週、地上と空中のロボットによって戦場でロシア軍陣地の制圧が可能になったと述べた。

 

ウクライナ第3突撃旅団は15日の声明で、地上ロボットを用いた最初の作戦は2025年夏に実施されたと述べた。

同旅団によると、歩兵部隊が2度にわたってロシア軍陣地を襲撃したが失敗して戦死者を出した後、4機の地上型ロボットシステム(1機につき30キロの爆発物を搭載した遠隔操作車両)が前線のロシア軍陣地を破壊するために投入された。

 

同旅団は声明で、「1機目の地上ロボットシステム(GRS)が入り口を爆破すると、敵は陣地内に身を隠した。2機目は掩蔽壕まで走行し、その入り口で停止した」 「残る敵兵は自分たちの置かれた状況が絶望的だと悟り、段ボールに降伏のメッセージを記した」と述べた。

 

「これは歩兵が関与することなく捕虜を捕らえた世界初のロボットによる敵陣地攻撃だった」と付け加えた。【416日 AFP

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【ロシア 「肉挽き戦術」多用で夥しい犠牲者 軍内部では“恐怖”による統制】

無人兵器で極力兵士のロスを減らそうとするウクライナに対し、一方のロシアは、大量の兵力を投入して突破を図る、いわゆる「肉挽き戦術」を多用、結果的におびただしい犠牲者を出しているとされています。

 

****「これだけ死んでも止まらない」プーチンの肉挽き戦術が生む異常な損失****

ロシア軍、4日間で6000人の損失、前線の緊張が一段と高まる

最近、ロシア軍がウクライナ前線の複数地域で同時に攻勢を強化し、短期間で大きな損害を被ったと伝えられている。ウクライナ軍総司令官によると、わずか4日間で6,000人以上の死傷者が出た。攻撃回数は600回を超え、前線全体で緊張が一段と高まっている。

 

ロシア軍は大規模な兵力を投入して防御線の突破を図ったが、大半の攻撃は撃退されたとされる。戦術的には攻撃の強度は高かったものの、成果は限定的にとどまった。こうした状況は、前線での消耗戦が一層深刻化していることを示している。

 

大規模な兵力投入続く、攻撃回数600回超

ロシア軍は複数の戦略軸から同時に攻勢を仕掛け、前線の動揺を狙っている。短期間に数百回の攻撃が集中し、ウクライナ軍の防御に大きな負担を与えたのは事実だが、この戦法は兵力損失を急増させる側面もある。

 

複数方面で同時に攻撃を行えば戦力の分散は避けられず、効率の低下につながる。実際、今回の攻勢でも前線突破には至らず、損害だけが拡大したとの見方が出ている。軍事的には、速度を優先した攻撃が戦略的効率を欠いた例といえる。

 

「肉挽き戦術」依然維持

ロシア軍の特徴は、大量の兵力を投入して突破を図る点にある。いわゆる「肉挽き戦術」と呼ばれるこの戦法は、損失を覚悟の上で攻撃を繰り返すのが特徴だ。一部の前線では一定の効果を上げたものの、全体としては損害に見合う成果は乏しいとの指摘が多い。

 

同様の攻撃が繰り返されることで予測が容易になり、防御側に対応の余地を与えている。それでもロシア軍はこの戦術を維持しており、これは兵力規模に依存した量的優位の戦い方が依然として軸となっていることを意味する。

 

ドローンと防御線で対抗、ウクライナ側の持久戦の構え

ウクライナはドローンと強固な防御線を組み合わせ、攻撃を効果的に阻止している。ドローンは偵察と攻撃を同時に担い、ロシア軍の接近を抑える役割を果たしている。繰り返される攻撃パターンへの対応が進み、防御効率は徐々に向上しているとの分析だ。

 

ロシア軍が兵力を投入し続けるほど損失が膨らむ構図となっており、典型的な消耗戦の様相を強めている。結果として、前線は急速に崩れることなく、膠着状態が続いている。

 

平和交渉の遅延、戦争はさらに長期化

現在、戦況は軍事面だけでなく外交面でも行き詰まっている。領土問題を巡る溝は埋まらず、交渉は停滞したままだ。国際社会の関心が中東へ移る中、ウクライナへの支援や注目が相対的に低下している点も影響している。米国の軍事資源が他地域に分散することで支援の遅れも懸念される。こうした状況は戦争の早期終結を困難にしている。戦局は、勝敗よりも持久と消耗を軸とする長期戦の様相を強めている。【327日 江南タイムズ

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兵士の犠牲を厭わず大量投入して突破を図る人命を軽視した戦術に加え、ロシア軍内部での“恐怖”で統制をはかるような在り様も指摘されています。

 

****《ロシア軍内部の拷問疑惑映像が拡散》「極寒の中で木に縛りつけ雪を食べさせて」黙認される暴力支配「デドフシチナ」のエグい実態【死傷者125万人超】****

長引くロシアのウクライナ侵攻。ネット上には、ロシア軍が自軍兵士に制裁を加えているとされる動画が出回り、欧米メディアで相次いで取り上げられている。 

 

今年に入りXで拡散された動画には、逆さにされたパンツ姿の男性と、上半身裸にされた男性の2人が、ガムテープで何重にも木に巻きつけられた状態で、雪の積もる極寒の中に拘束されている様子が映っている。  

 

撮影している男は「逃げようとしただろう!」と怒鳴りつけ、懇願する男性の口元に雪を押し込む場面も確認できる。  その腕には迷彩服が確認できることから、撮影者は軍関係者である可能性が指摘されている。

 

映像には「ロシア軍が自軍兵士を極寒の中で木に縛りつけ、雪を食べさせる拷問を行っている」とする説明文が添えられている。  

 

ポーランド国営メディア「TVP World」は、この動画を取り上げ「逃亡や命令違反を疑われた兵士への懲罰の一例」だと報道。こうした行為については、兵士を服従させるための"見せしめ"として行われ、死に至るケースもあると伝えている。(中略)

 

ロシア軍による、敵ではなく自軍兵士への残虐行為は、今に始まったことではない。旧ソ連時代から長く根付いてきた悪しき慣習「デドフシチナ」の延長線上にある現実だ。  

 

デドフシチナとは、古参兵が新兵を支配するロシア軍特有の「いじめ」「しごき」の慣習を指す。人権を無視した非人道的な暴力行為は国際的に問題視されており、人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」はこれを「grandfathers'rule(古参兵の掟)」と説明。2年目の兵士が新兵を長期間にわたって隷属状態に置き、暴力的な制裁を加える構造があると報告している。 (後略)【44日 NEWSポストセブン

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パキスタン  イラン戦争仲介の背景 サウジアラビアとの相互防衛協定、サウジ有事の際の核供与の“噂

(20259月17日、サウジアラビアとパキスタンは、正式な相互防衛協定に署名した。写真は、サウジアラビア・リヤドで防衛協定に署名した日に抱き合うサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(写真右)とパキスタンのシャバズ・シャリフ首相(写真左)【2025918 ロイター】)

 

【アメリカ、イラン、中国、湾岸諸国といった主要な当事者全てと関係を維持 仲介は戦略的自衛の意味合いも】

世界が注目するイラン情勢をめぐって、アメリカとイランの仲介で大きな役割を果たしているのがパキスタン。

イランとは隣国であり、イランに次ぎ世界で2番目に多いイスラム教シーア派人口を抱えています。アメリカともアフガニスタンのタリバン対策で複雑な関係があり、状況推移のカギとなった国。

更に、中国とも関係が深く「一帯一路」の中核国、湾岸諸国のサウジアラビアとも相互防衛協定を結ぶ関係にある・・・といった多方面と関係を有する国際的地位が背景にあります。

 

****パキスタン、米イラン停戦仲介に奔走=協議開催意欲、中国の「お墨付き」も****

パキスタンが米国とイランの停戦実現に向け奔走している。双方との良好な関係や、間に入ることが多い湾岸諸国がイランから攻撃を受け当事国となったこともあり仲介役に浮上。パキスタンでは和平に寄与できれば国際的地位の向上につながると期待する声も上がる。

 

「この戦争は誰の利益にもならず、死や破壊をもたらすだけとの認識で一致した」。ダール副首相兼外相は3月29日、サウジアラビアやトルコ、エジプトの各外相を首都イスラマバードに招き協議を主催。合意点を説明した上で、米イランの当局者による停戦協議の自国開催に重ねて意欲を示した。

 

ダール氏は同31日には中国を訪問し、王毅共産党政治局員兼外相と会談。イラン情勢に関し敵対行為の即時停止やホルムズ海峡の航行の安全を求める5項目の提案を発表した。パキスタン外務省によれば、王氏はパキスタンの「建設的かつ一貫性のある外交努力」を評価。経済や安全保障の後ろ盾となっている中国のお墨付きも得た形だ。

 

パキスタンはイランと約900キロに渡る国境を接し、テロ対策や貿易面の協力拡大を進めてきた。パキスタンはイランに次ぎ世界で2番目に多いイスラム教シーア派人口を抱える。

 

また、第2次トランプ政権下の米国と急接近。シャリフ首相や軍トップのムニール参謀長が昨年訪米し、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦するなどして首脳間の信頼を築いた。

 

パキスタンは1972年のニクソン米大統領の電撃訪中や、2021年の米軍のアフガニスタン撤収につながる局面で仲介役を演じてきた歴史もある。

 

パキスタンのハリド元駐中国大使は、これらは紛争で中立的立場を貫いてきたからこそ果たせた役割だと強調し、現在の働きは「全ての当事者から『信頼に足る仲介者』としての存在感を高めるだろう」と話す。

 

一方、パキスタンと敵対するインドは自らの得意とする全方位外交のお株を奪うような動きにいら立ちや懐疑的反応を示している。(後略)【41日 時事

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“パキスタンが仲介に注力した背景には、シャリフ氏の米国重視路線がある。対米関係は冷え込んでいたが、シャリフ氏は昨年5月のインドとの軍事衝突後、トランプ氏の仲介に謝意を示し、ノーベル平和賞への推薦を公言するなど持ち上げた。財政難のパキスタンにとって米国は最大の支援国にあたる。”【49日 読売】 

 

シャリフ首相としては外交上の成果、国際的評価をアピールすることで、イラン攻撃で米大使館などへの抗議デモが相次ぎ死者も出ているような状況で、内政の安定につなげる狙いもあるとの見方も。

 

また、単に国際的評価を高めたいという野心だけでなく、「必要性」にも迫られています。

 

****仲介国家パキスタンの実像 地政学を動かす「接続力」*****

(中略)同国は長年、地理的な特異性を生かして地政学上で有利な立場に立つが、今回のような重要局面では、支配力ではなく「接続力」で存在感を発揮してきた。パキスタン政府はアメリカ、イラン、中国、湾岸諸国といった主要な当事者全てと関係を維持している。

 

この役割は野心というより必要性に迫られてのもの。戦争が拡大すれば経済でも安全保障上でもパキスタンが影響を受けるのは必至で、仲介は戦略的自衛の意味合いが強い。

 

さらに重要なのは、パキスタンが単独で動いているわけではない点だ。紛争激化を望まないサウジアラビアや中国が背後で影響力を発揮しているのは間違いない。

 

その中で、対立する複数の当事者と同時に対話できる数少ない国家としてパキスタンが存在意義を発揮。継続的に関与した陰の「橋渡し役」が、危機の流れを変え得ることを証明した。【413日 Newsweek

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【サウジアラビアとの相互防衛協定 中東情勢の屈曲点】

“戦争が拡大すれば経済でも安全保障上でもパキスタンが影響を受けるのは必至"・・・例えば、戦争が激化してサウジアラビアがイランに参戦すれば、サウジアラビアと相互防衛協定を結んでいるパキスタンは否応なく戦争に巻き込まれる形にもなります。

 

****サウジとパキスタン、相互防衛協定を締結****

サウジアラビアとパキスタンは17日、正式な相互防衛協定に署名した。地域の緊張が高まる中、長年の安全保障協定を大幅に強化する。

 

イスラエルは先週、カタールでイスラム組織ハマスの指導者を標的とした空爆を実施。湾岸諸国の間では、地域の安全を保証する役割を長年担ってきた米国への不信感が募っている。

 

サウジのある高官はロイターに「この協定は何年にもわたる議論の集大成だ。特定の国や特定の出来事への対応ではなく、両国間の長きにわたる深い協力を制度化するものだ」と語った。

 

パキスタンは5月、インドと軍事衝突している。

インド外務省報道官は18日、この動きを認識しており、安全保障と地域の安定に対する影響を精査するとXに投稿した。

 

サウジ高官は匿名を条件に、インドとの関係のバランスを取る必要があるとし「インドとの関係は、これまでになく強固だ。われわれは、この関係を今後も拡大し、可能な限り地域の平和に貢献していく」と述べた。【2025918 ロイター】

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サウジ・パキスタンの相互防衛協定は、アメリカへの信頼の低下を背景にした中東情勢における一つの大きな屈曲点であるとの指摘も。

 

****落ちる湾岸諸国の米国への信頼****

サウジアラビアとパキスタンは(2025年)917日、戦略的相互防衛協定を締結し、両国のいずれかの国に対する攻撃は両国に対する攻撃であるとみなすと規定し、かつそのためには必要なあらゆる防衛・軍事手段が使用されると説明している。

 

9月9日、イスラエルはカタールに滞在中のハマスの要員をミサイル攻撃で殺害したが、これを含む湾岸地域での安全保障環境の変化に対するサウジ側の対応策であるとみられる。イスラエルは核兵器保有国であるが、サウジは同じく核兵器保有国であるパキスタンによる核の傘も期待しているものと思われる。

 

サウジとパキスタンの関係は、経済的にはサウジが援助国であり、パキスタンは援助の受け取り側であるという関係にあり、パキスタンはサウジの意向を尊重する立場にある。

 

湾岸諸国は安全保障を基本的に米国に依存してきたが、イスラエルが米軍基地が存在するカタールを直接ミサイルで攻撃したことに湾岸諸国は驚き、かつ米国のその後のイスラエル寄りの姿勢にショックを受けていると考えて間違いではない。サウジや湾岸諸国は今後、米国の信頼度に一定の疑念を持ち、防衛関係を多様化していく方向に向かうだろう。

 

中東情勢の屈曲点

米国のトランプ政権は武力を振り回しているイスラエルに自制を求めず、イスラエルのやりたい放題に目を閉じているが、こういう政策は湾岸地域での米国の影響力を漸減させていくことにつながるように思われる。

 

2020年のアブラハム合意では、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルとバーレーンとの間の国交が正常化され、イスラエルとアラブ諸国(とりわけサウジ)との国交正常化や関係改善が広がっていくことが展望された。しかし、アブラハム合意により開かれた展望は、サウジとイスラエルの国交正常化を含め、今や全く見通しが立たない状況にあるように思われる。

 

今回のサウジ・パキスタンの相互防衛協定は、中東情勢における一つの大きな屈曲点であると評価すべきであろう。【2025930 WEDG】

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【サウジ有事の際はパキスタンが核をサウジに提供する密約が存在する・・・という“噂”】

サウジ高官が“両国間の長きにわたる深い協力”に言及しているように、パキスタンとサウジアラビアはこの相互防衛協定以前から極めて深い関係にあります。その最たるものは、パキスタンの核開発はサウジが資金を提供しており、見返りとして、サウジが必要とするときはパキスタンが核をサウジに提供する密約が存在する・・・という“噂”。

 

****パキスタンとサウジアラビアの関係*****

パキスタンとサウジアラビアの関係は、単なる外交関係を超えて、安全保障・宗教・経済が重層的に絡む「準同盟的関係」といえます。その中でも「核兵器」をめぐる話は長年にわたり議論されてきました。

 

1. 基本関係(前提)

宗教・政治的結びつき・・・両国ともイスラム国家(特にスンニ派中心)

サウジは「イスラムの盟主」、パキスタンは「核を持つイスラム国家」 パキスタン軍がサウジの防衛に協力(部隊駐留の歴史あり)

 

経済関係

サウジはパキスタンに対し 石油の供給(優遇・後払い)、財政支援(外貨危機時の支援)を行っており、パキスタン人労働者がサウジで多数就労(送金が重要な外貨源)している。

 

2. 安全保障協力

パキスタン軍はサウジの軍事顧問・訓練役を担ってきた。サウジは自国防衛を米国、パキスタンに依存してきた側面がある

特に重要なのは「サウジは自前の核を持たないが、安全保障上の不安を抱えている」という点

 

3. 核兵器をめぐる噂・見方

1)「資金提供説」

最も有名な説は以下:

サウジがパキスタンの核開発に資金提供した。 見返りとして有事には核を提供・共有する密約がある

 

この説の根拠としてよく挙げられるもの:パキスタンの核開発期(197090年代)にサウジが資金支援 サウジ高官がパキスタンの核施設を訪問した過去 サウジが核抑止を切実に必要としている(特に対イラン)

 

ただし公式には一切確認されていない

 

2)「核の傘」説

現実的な見方として有力なのは、サウジは独自核を持たない代わりにパキスタンの核抑止力に依存する

いわば米国の「核の傘」に近い概念をパキスタンとの関係で非公式に構築している可能性

 

3)「即時配備可能」説

さらに踏み込んだ噂:サウジ国内にパキスタン製核弾頭または運搬手段が事前に準備されており、危機時に即使用可能。

しかしこれも具体的証拠はなく、推測の域を出ない

 

4. なぜこのような噂が出るのか

対イラン要因:サウジ最大の安全保障上の懸念はイラン イランの核開発が進めばサウジも対抗手段が必要

そのため「自前で開発」か「外部から調達」か・・・という議論になり、パキスタンが最有力候補として浮上する

 

サウジの選択肢

サウジの核オプションは3つ:

自国開発(時間がかかる)

米国の核の傘に依存(政治的制約あり)

パキスタンからの調達(現実的との見方)→ これが噂の根拠

 

5. 現実的評価

多くの専門家の見方は次の通り:

資金支援の可能性は否定できない。しかし核弾頭の実際の移転・事前配備については確認された事実はない

一方でパキスタンはサウジを戦略的に重視、サウジはパキスタンを「最後の安全保障の担保」と見ているという関係は明確

 

6. まとめ

パキスタンとサウジの関係は宗教的結びつき、経済支援、軍事協力を基盤にした強固なもの

その上で核をめぐってはサウジがパキスタンの核開発を支援した可能性や有事の際の核提供・核の傘の存在という「噂」が存在する。ただし公式確認は一切なし

・・・・という構図になっている

 

結論としては「明文化されていないが、潜在的な核協力関係があると広く疑われている」というのが最もバランスの取れた理解です。【415日 ChatGPT

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【防衛面でも、資金面でも、今も深化するパキスタン・サウジ関係】

ここ数日の動きを見ても、パキスタンとサウジアラビアの関係強化が進行していることがうかがわれます。

 

****パキスタン、サウジアラビアに戦闘機派遣 防衛強化を支援か****

サウジアラビア国防省は11日、パキスタンが両国の防衛協定に基づき、戦闘機や部隊をサウジに派遣したと発表した。ロイター通信が報じた。米イスラエルとイランの戦闘を巡り、サウジがイランの報復攻撃の標的となる中、パキスタン軍が防衛支援に乗り出すとみられる。

 

両国は20259月、相互防衛協定を締結。協定には「いずれかの国への攻撃は両国への攻撃とみなす」と規定されている。ただ、ロイター通信によると、パキスタン政府関係者は戦闘機の派遣について「誰かを攻撃するためのものではない」と語ったという。

 

サウジでは8日、同国内の石油パイプラインがイランによる攻撃を受け、サウジ国籍の1人が死亡、7人が負傷していた。これを受け、パキスタン軍による支援が決まったという。(後略)【412日 毎日

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パキスタンとしてはサウジの参戦という事態を避けるため、サウジに自制を促すという意味合いがあるとも。

 

“サウジはこれまで対イラン軍事作戦への参加をほのめかしたことがある。サウジがイランへの報復攻撃に踏み切れば、米イランの協議に影響する恐れがあった。このため、パキスタンはサウジに防衛協力の姿勢を示すことで自制を促す狙いがあったもようだ。”【412日 時事

 

資金面でのサウジアラビアからパキスタンへの支援も。

 

****サウジ、パキスタンに30億ドル追加供与へ 対外債務返済を支援*****

サウジアラビアは、パキスタンに対し30億ドルの追加支援を行う。パキスタンのアラブ首長国連邦(UAE)への債務返済を支援することになる。

パキスタンは今月、UAEに対し35億ドルの返済を予定する。返済額は、外貨準備高の約18%に相当する。

パキスタンのアウラングゼーブ財務相は、サウジが、50億ドルの預金のロールオーバー期間延長に加えて、30億ドルの追加支援をすると記者団に述べた。

サウジのジャドアーン財務相は10日、パキスタンを訪問していた。サウジ財務省の報道官はロイターに対し、「サウジアラビアがパキスタンの国際収支を支援するため、30億ドルの預金供与に合意したことを確認できる」と述べた。

パキスタン財務省は声明で「アウラングゼーブ氏は、この支援はパキスタンの対外資金調達ニーズにとって極めて重要な時期に提供されるものであり、外貨準備高の増強と対外収支の強化に寄与するだろうと述べた」とした。また、パキスタンが「市場に対する義務および国際通貨基金(IMF)支援プログラムの下で」外貨準備高を維持することにコミットしていると説明した。

サウジはこれまで、パキスタンが経済的困難に直面した際に繰り返し支援に乗り出してきた。2018年には、パキスタン中央銀行への30億ドルの預金を含む総額60億ドルの支援パッケージを発表した。

パキスタンは、70億ドルのIMFプログラムに基づき、6月までに外貨準備高を180億ドル以上に引き上げることを目標としている。3月27日時点の外貨準備高は約164億ドルだった。【415日 ロイター

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こうしたサウジアラビアの資金援助を背景にしたパキスタンのサウジアラビアへの「核」提供の“噂”ですが、事実がどうあれ、サウジアラビアとしてはそうした“噂”が流布されること自体、自国の安全保障にとって極めて大きなことでしょう。

 

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ローマ法王レオ14世とトランプ大統領の対立 物議を醸すキリストになぞらえたトランプ大統領投稿画像

(トランプ大統領が12日にSNSに投稿した画像【414日 NHK】)

 

【レオ14世誕生当時、トランプ支持者からは「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も】

現代日本は一般的に宗教が希薄な社会ですが、世界的には例外的で、多くの国では宗教は社会、ひいては政治に大きな影響力を有しています。 その代表的な存在が世界のカトリック信者を束ねるローマ法王です。また、宗教が政治と密接に結びついている国のひとつがアメリカです。(アメリカ政治への影響力を強めているキリスト教福音派については、43日ブログ“変質するアメリカ政治 民主主義の劣化 強まる専制主義的傾向 増大する宗教保守派の政治への影響”でも取り上げました)

 

最近、バチカン、特にローマ法王レオ14世とトランプ大統領の確執が話題になっていますが、アメリカ出身者として初めて教皇に選ばれたレオ14に関しては選任当時から“言葉の端々で非常にアンチトランプ的なものをアピールされている”“「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も見受けられた”というように、価値観の点で新教皇とトランプ大統領及びその支持者との間には溝もありました。

 

****初の米出身教皇誕生 Z世代男女の宗教離れと保守化の狭間で揺れる米国 在米ジャーナリスト「トランプさんが相当嫉妬してるだろう」*****

「皆さんに平和を」「平和が皆さんとともにあるように」アメリカ出身者として初めて教皇に選ばれたレオ14世のこの挨拶は、瞬く間に大きな反響を呼び、特にアメリカ国内では祝賀ムード一色となった。(中略)

 

初の米出身教皇誕生!トランプ氏が「相当嫉妬しているのでは」

お祝いムードに包まれる一方、アメリカの政治的立場にどのような影響を及ぼすのかという点も議論になっている。フリージャーナリストの津山恵子氏は以下のように説明した。

 

「レオ14世が誕生したとき最初に思ったのは、これはトランプさんが相当嫉妬してるだろうなと思った。それから(レオ14世は)清貧の人ということで、 労働者を大切にするとか、移民を大切にするとか、 分断をなくすということもおっしゃっていた。だから、言葉の端々で非常にアンチトランプ的なものをアピールされている」

 

SNSでは、トランプ支持者たちがレオ14世を「ウォーク教皇」(左翼的な思想を持つ教皇)と揶揄する声も見受けられたという。(中略)

 

レオ14世は就任後初の説法で、「第三次世界大戦が断片的に起こる状況では、世界の指導者たちに対して『二度と戦争を起こさないでください』と訴えたい」と述べた。このメッセージは、分断しかねない世界情勢の中で、平和の重要性を改めて世界に問いかけるものであった。

 

果たしてアメリカ出身のトップによる、駆け引きは今後どのようになっていくのか。津山氏は以下のように述べた。

「今の中国に対する関税の問題のように、バチバチになることはないと思う。心の底では面白くない教皇だと思っていても、ニコニコしあって、カトリック信者、ひいては人口の半分以上いるキリスト教信者を支持者として取り込んでいこうと考えていると思う」

 

トランプ教皇の自画像が示す米の教皇への憧れ

政治と宗教が選挙などにも強い影響力を持つアメリカで(中略)トランプ大統領は中間選挙に向けて、教皇とどう向き合っていくのか。(中略)

 

トランプ大統領は、少し前に自分が教皇に扮したAI画像をSNSに投稿している。これについてトランプ大統領自身は「自分がやったわけではない」と述べているが、アメリカ全体が持つ教皇への憧れを反映しているとも考えられる。

 

ただ、トランプ政権とレオ14世のスタンスには距離があるとみられている。新しい教皇レオ14世は同性愛者には距離を置いている可能性があると指摘されているものの、移民や貧しい人に寄り添う姿勢を持つ。また、ニューヨークタイムズによると、レオ14世にはクレオールという黒人の血が4分の1ほど混じっていると報じられている。こうした事からSNS上ではコアなトランプ支持者から反発の声も上がっているという。

 

また、レオ14世は枢機卿時代にXのアカウントを持っていたとみられ、その際、「JD・バンスは間違っている。イエスは他者への愛を順位付けすることを求めていない」と題したカトリック専門メディアの記事を紹介していた事からトランプ政権とは距離を持つのではないかという見方が強い。

 

 報道ベンチャーJX通信社、代表取締役の米重克洋氏は以下のように分析する。

「(中略)宗教と政治は、アメリカで切り離されてはいるものの、必ずリンクする」

 

宗教×政治 Z世代の女性が離れる一方男性は真逆の行動

ピューリサーチセンターの20232024年の調べによると、アメリカのカトリック教徒の人口は、アメリカの人口のうちキリスト教信者は62%(24460万人)いる中で、プロテスタントの人口が40%(13200万人)、カトリックが19%(6600万人)となっている。

 

さらに詳しく見ていくと、カトリック信者の53%が共和党を支持し、43%が民主党を支持しているという結果となり、必ずしもカトリック信者=共和党ではないことがわかる。

 

アメリカの歴史の中でカトリック信者だった大統領は、JF・ケネディ大統領とバイデン大統領の2名でともに民主党だ。一方、トランプ大統領はプロテスタント信者で、バンス副大統領はカトリックと、政治家も宗教と密接に繋がっている。

 

宗教が支持する政党に影響することについて、米重氏は以下のように述べた。

「宗教というものが、自分たちの集団をある意味代表すると定義するような存在として、政治や選挙に大きく影響するケースがある。日本に住んでいると、例えば、仏教だからこの政党を指示するという発想は、あまりないと思うが、アメリカやヨーロッパでは、宗教が投票先の選定に結構影響する」

 

Z世代のキリスト教徒の間では、この力学がはっきりと表れている。アメリカ生活調査センターの調査では、無宗教であると回答した世代別の男女比が、Z世代、特に女性で驚くべき早さで教会を離れている一方で男性は教会に留まっているという点が指摘されている。

 

このようにアメリカ国民の宗教観が変化している中、トランプ政権と新教皇の距離も変化していくのか、トランプ大統領は、どのように新教皇と向き合っていくのか。さじ加減が非常に難しい局面を迎えている。

 

このような現状について、津山氏は次のような見解を示した。

2024年、トランプ氏の選挙集会に何回か行ったが、そこで出会ったZ世代(大学生の男性たち)は、経済のことを心配していた。(バイデンの経済の中では)自分たちが自分の親のように車を2台持ったり、あるいは家を買ったりできない。だから、トランプ氏を支持して投票すると言っていて、そういうZ世代の男性を中心とした保守化の傾向をトランプ氏と選挙陣営は先読みしていたと思う。

 

ただ、ここに来て、反対の立場の政治的思想を持った教皇が誕生したため、仲良くして、さらにカトリック教信者だけではなく、キリスト教の信者の票田を広げていこうという考えは絶対にあると思う」

 

また、最近になって改宗してカトリックとなったバンス副大統領について、津山氏は「うがった考え方かもしれない」と前置きし、次のように述べた。

「彼がカトリック信者になったのは2019年で、2023年に上院議員に当選している。そのときに人工妊娠・中絶に反対であるカトリック教の立場などを利用して、自分の政治的キャリアに役立てていこうと考えていたと思う」

 

トランプ大統領と考え方異なる教皇選出は「歴史の皮肉」

世界的に見ても、アメリカに振り回されている現状の中、アメリカ出身者が新教皇となったことについて、米重氏と津山氏はそれぞれ次のように述べ、締めくくった。

 

「アメリカを中心にした世界の秩序がちょっとずつ変わる中で、トランプ大統領とは考え方が異なる方が教皇に選ばれたことは、歴史の皮肉というか、いたずらっぽいところは感じる。また、世界的に見ても、信仰を持つ人の割合が減っており、教会や宗教のあり方と社会との関係性が変わっていく中で、教会も変化をしていかないといけない。そういう変化をしていかないといけない中で選ばれた新しい教皇でもある」(米重氏)

 

「大きな視点から言うと、2016年に誕生したトランプ型の世界以降、ブレグジットなど含み保守が進むなか、寡占あるいは独裁型の政治が広がっていくという流れは、現状止められないと思う。それに抗っているのが、戦後80年続いてきた西欧型の自由民主主義の世界だが、レオ14世という多少リベラルなリーダーが現れたというのは、その80年続いた体制を守ってきた人たちにとってはグッドニュースだったと思う」(津山氏)(『ABEMAヒルズ』より)

【2025515日 ABEMA Times

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【中世欧州歴史の教皇権と王権の対立を見るような激しい批判の応酬】

“多少リベラルな”レオ14世とトランプ大統領の関係について“バチバチになることはないと思う”という見たても上記記事ではありましたが、就任後初の説法で『二度と戦争を起こさないでください』と訴えたレオ14世にとってイラン戦争で揺らぐ世界の現状、その元凶となっているアメリカの政治については看過できないものを感じているのでしょう。政治の在り様に関して辛辣な言葉も。

 

それに対し、もともと価値観が異なるトランプ大統領・政権も強烈に応戦・・・ということで“バチバチ”状態に。

 

****「神は戦争起こす指導者の祈りを拒絶」、ローマ教皇が異例の発言****

ローマ教皇レオ14世は29日、戦争を始め「血にまみれた手」を持つ指導者たちの祈りは神に拒絶されると述べた。イラン戦争が2カ月目に突入する中、異例の強い発言となった。

 

教皇は復活祭前の聖週間の始まりとなる「枝の主日」にサンピエトロ広場で行った講話で、イラン戦争を「残虐極まりない」と非難し、イエス・キリストはいかなる戦争の正当化にも利用することはできないと言明。「これがわれわれの神、平和の王イエスだ。イエスは戦争を拒絶される。誰も戦争の正当化にイエスを利用することはできない」と訴えた。

 

さらに「(イエスは)戦争を起こす者たちの祈りを聞き入れず、拒絶し、『たとえあなた方が多くの祈りを捧げても、私は聞かない。あなた方の手は血にまみれているからだ』と言われる」と、聖書の一節に言及した。

一部の米当局者は、拡大する戦争の発端となった米・イスラエルのイラン攻撃を正当化するため、キリスト教用語を用いている。【330日 ロイター

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****米政府、教皇の「反戦説教」に反論 米軍兵士への祈りを正当化****

米ホワイトハウスは30日、ローマ教皇レオ14世が、戦争を仕掛ける者の祈りを神は拒絶すると発言したことを受け、イランとの戦闘に従事する米兵士のために祈る行為を正当化した。

 

ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、教皇の発言に関する記者からの質問に対し、「軍の指導者や大統領が、国外で国のために尽力する軍人やその関係者のために祈るよう国民に呼びかけることに、何ら誤りはないと考えている」と答えた。(中略)

 

一方、ドナルド・トランプ政権の閣僚たちは、自らのキリスト教信仰を前面に押し出している。

ピート・ヘグセス国防長官は先週、国防総省で行った祈りの中で「正義の敵、そしてわれわれの偉大な国家の敵に対し、すべての砲弾がその標的を射抜かんことを」と述べていた。

 

レオ14世の発言に対し、カトリック教徒のレビット氏は、米国はユダヤ・キリスト教的価値観に基づいて建国されたと述べた。

 

また「指導者や軍隊は、国家の歴史の中で最も激動した時期にも祈りを捧げてきた。多くの軍人に話を聞けば、彼らが祈りに感謝していることがわかる。実際、それは非常に気高い行為だと私は考えている」と付け加えた。

 

レオ14世は先週、中東地域の100万人以上の人々が避難を余儀なくされていると言及し、交戦中の当事者に対し、対話を行うよう促していた。【331日 AFP

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トランプ大統領がイランに関して「今夜、一つの文明が完全に消え去り、二度と元に戻ることはないだろう」とし、「私はそのようなことが起きるのを望まないが、おそらくそうなるだろう」と投稿した件にかんしても・・・

 

****レオ14世教皇、トランプ氏の「イラン文明破壊」発言に「容認できない」****

(中略)ワシントン・ポスト(WP)などによると、レオ14世教皇はこの日、(中略)記者団に対し、「今日、われわれが皆知っている通り、イランのすべての国民を対象にした脅威があった」とし、「これは本当に容認できないこと」と述べた。(中略)

 

続いて「善意を持つすべての人々に、常に平和を追求し暴力を拒否することを要請する」とし、「特に多くの人が不当だと言う戦争が拡大し続けており、何も解決できていない戦争を拒否することを求める」とした。

 

イランに向けては「交渉のテーブルに戻ってほしい。対話し、平和的な方法で解決策を見いだそう」とし、「特に子どもたち、高齢者、病人、この続く戦争で犠牲になり、そして犠牲になるかもしれない多くの人々、罪のない人々を記憶しよう」と訴えた。

 

また「民間インフラに対する攻撃は国際法に抵触するだけでなく、人間が犯し得る憎悪・分裂・破壊の兆しであるという点をすべての人々に想起させる」とした。(後略)【48日 中央日報

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トランプ大統領は「謝罪することは何もない」としてさらに批判の声を強めています。

 

教皇と世俗国王の対立、力関係の推移は欧州歴史のメインテーマの一つであり、「カノッサの屈辱」(1077年)とか「アヴィニョン捕囚」(1309年)といった歴史の転換点も世界史の教科書で目にしたところです。

 

そんな歴史が蘇るような出来事。米国防次官がバチカン大使を「アヴィニョン捕囚」を示唆して恫喝したとか、しないとか。(国防総省は否定。バチカンも、恫喝じみたやりとりがあったかについては公式には明らかにしていません)

 

****米国防次官がバチカン大使を恫喝か、「アヴィニョン捕囚」示唆と報道 国防総省は否定****

米国防総省の高官がバチカン(ローマ教皇庁)の駐米大使に対し、ローマ・カトリック教会が米国の取り組みを支持しなければ軍事的対応も辞さない、と受け取れる漠然とした脅迫を行ったと米メディアが報じた。米国防総省の報道官は9日、問題の発言があったとされる1月の会談は「敬意あるもの」だったと表明し、報道内容を否定した。

 

(中略)これに先立ち、ザ・フリー・プレスは1月の会談が緊張した雰囲気の中で行われたと報道。エルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)がピエール枢機卿に対し、米国には「世界で望んだことを何でもできる」軍事力があると警告し、ローマ・カトリック教会は「米国側に付いたほうがいい」と述べた上で、14世紀の「アヴィニョン捕囚」の脅威をほのめかしたと伝えた。 

 

「アヴィニョン捕囚」とは、フランス国王フィリップ4世が軍事力を用いてバチカンを掌握し、教皇ボニファティウス8世に退位を迫った末、教皇聖座をローマから南仏の片田舎アヴィニョンに移して複数の教皇にフランス滞在を余儀なくさせた時期をさす。 

 

ザ・フリー・プレスによると、国防総省の当局者らは教皇レオ14世が1月に行った演説で「対話を促進し、すべての当事者間の合意形成を目指す外交が、力に基づく外交に取って代わられようとしている」と述べたことに憤慨していたとされる。(後略)【411日 Forbes

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トランプ大統領、更にバンス副大統領からはレオ14世に対する異例の批判が続いています。

 

****トランプ氏が教皇非難「核兵器への弱腰な姿勢は到底受け入れがたい」「私がホワイトハウスにいなければバチカンにいなかっただろう」****

米国のトランプ大統領は12日、自身のSNSで、ローマ教皇レオ14世がイランの核兵器保有を容認していると一方的に主張し、「核兵器への弱腰な姿勢は到底受け入れがたい」と非難した。米大統領がローマ教皇を非難するのは異例だ。 

 

トランプ氏は、米大統領を批判する教皇は望まないと投稿し、「過激な左派に迎合することをやめ、政治家ではなく偉大な教皇になることに専念すべきだ」と主張した。教皇が米国出身であることを理由に「米国人というだけで選ばれた。私がホワイトハウスにいなければ、(教皇は)バチカンにいなかっただろう」との持論を展開した。(後略)【414日 読売

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****バチカンは「道徳問題に専念すべき」 バンス米副大統領****

ローマ・カトリック教会の教皇レオ14世が中東での紛争を厳しく批判したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領が不快感をあらわにする中、JD・バンス米副大統領は13日、バチカンに対し「道徳問題に専念する」よう求めた。

 

バンス氏はFOXニュースのインタビューで「バチカンは道徳問題に専念し、米国の公共政策の指針は米国大統領に任せるのが最善だと思う。一概には言えないが確実にそう思う」と語った。(後略)【414日 AFP

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【トランプ大統領 自身をイエス・キリストに似せた画像を投稿 民主主義国リーダーとしての致命的な資質欠損】

こうしたトランプ大統領・政権とバチカン・レオ14世が“バチバチの状態”にあるなかで、トランプ大統領から出されたのがキリストになぞらえたトランプ大統領の姿。

 

****トランプ大統領 キリスト教保守派からも批判 投稿の画像めぐり****

アメリカのトランプ大統領が12日にSNSに投稿した画像をめぐり、自身をイエス・キリストに似せたものだとして、支持基盤のキリスト教保守派の一部からも批判の声があがりました。その後、投稿は削除され、トランプ大統領は「私を医師に見立てた画像だと思った」などと釈明しましたが、波紋を呼んでいます。

 

トランプ大統領は12日、生成AIで作成されたとみられる画像をSNSに投稿しました。

画像は、医療従事者や両手を合わせた女性らに囲まれたトランプ大統領が、横たわった男性の額に光る手をあてているというものでした。

 

これについてはトランプ大統領の支持基盤のキリスト教保守派の一部からもトランプ大統領をイエス・キリストに似せた画像だとして、「どうしてこのような投稿をするのか理解できない」とか「これはひどい冒とくだ」などと批判の声があがりました。

 

投稿はその後削除され、トランプ大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に対し「確かに私が投稿した」と述べた上で「私を医師に見立てた画像だと思った。人々を癒やす私を医師になぞらえたもののはずだ」などと釈明しましたが、FOXニュースが投稿について「与野党双方のアメリカ人を不快にさせた」と伝えるなど、波紋を呼んでいます。【414日 NHK

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自身を「王」になぞらえたり、「神」になぞらえたりして楽しむ・・・病的に肥大した承認欲求・自己顕示欲のあらわれであり、全ての政策決定に影響する民主主義国リーダーとしての致命的な資質欠損だと考えます。

 

敬虔な信者は問題視するでしょう。票にも影響。

 

“元牧師でワシントン大のライアン・バージ教授(政治学)は「トランプ氏は2024年大統領選でキリスト教徒の圧倒的多数の票を獲得したが、その支持を急落させる言動だ」と指摘。「『MAGA』(米国第一主義運動)を好むカトリック信者は大勢いるが、教皇よりもMAGAを優先することはない」と説明した。”【414日 東京

 

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ハンガリー・オルバン首相、総選挙敗北で退陣へ 親EU路線野党圧勝でEUのウクライナ支援に道筋

(総選挙の直前、米国のバンス副大統領とステージ上から手を振るオルバン首相【413日 CNN】)

 

【「非自由主義的民主主義」】

EU加盟国でもあるハンガリー・カルバン首相の「非自由主義的民主主義」と呼ばれる西欧的価値観とは相容れない独特な政治姿勢、親ロシアの外交姿勢、それゆえにEU指導部と移民政策やウクライナ支援などで対立し、結果的にハンガリーがEUの分断・不協和音の震源地ともなっていたことは再三取り上げてきましたが、そのオルバン首相が総選挙で劣勢にあって政権交代が視野に入ってきたことは、44日ブログ「ハンガリー  EU“トラブルメーカー”オルバン首相 総選挙敗退・退陣の可能性」でも取り上げました。

 

*****ハンガリー・オルバン首相の独自の政治姿勢・・・非自由主義的民主主義*****

オルバン・ヴィクトル首相の政治姿勢は、しばしば「非自由主義的民主主義(illiberal democracy)」と呼ばれ、西欧のリベラル民主主義モデルとはいくつかの重要な点で異なります。

 

1. 「非自由主義的民主主義」の明確化

オルバン首相は2014年以降、自ら「リベラルではない民主主義」を掲げています。

選挙は実施するが、司法・メディア・市民社会への統制を強めるという形で、「多数派の意思」を強調する統治スタイルです。

 

西欧民主主義は権力分立、少数派の権利保護、独立した司法を重視するのに対し、ハンガリーでは行政権の集中傾向が強いと批判されています。

 

2. メディア・司法への影響力拡大

公共放送や主要メディアが与党寄りに再編、憲法裁判所や司法制度の改編・・・これにより、EUは「法の支配の後退」を問題視し、制裁措置や資金凍結を行ったことがあります。

 

3. 強いナショナリズムと主権重視

移民受け入れへの強硬な反対・・・「キリスト教的ヨーロッパの防衛」という価値観

EUの介入への反発・・・2015年の難民危機以降、移民排斥政策はオルバン政権の中心政策となりました。

 

4. 対ロシア・対中国姿勢

EUNATO加盟国でありながら、ロシアとのエネルギー関係を維持 また、中国の投資を積極的に受け入れるなど、西欧主要国よりも現実主義的・多極的外交を展開しています。

 

5. 家族政策の強化

多子世帯への減税、出産奨励政策、伝統的家族観の強調・・・これは人口減少対策であると同時に、保守的価値観の制度化とも言われます。

 

総合評価

オルバン政権は「選挙による正統性は維持するが、リベラルな制度的制約を弱める体制」と評価されることが多いです。

支持者は「国家主権と伝統的価値の防衛」と評価し、批判者は「民主主義の質の後退」と見ています。【4月4日 ChatGPT

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【トランプ政権、オルバン首相を支援 バンス副大統領が現地入りして“選挙干渉”ととれる応援】

移民に厳しく、EU指導部と対立するオルバン首相はトランプ大統領と親和性が強く、イラン情勢で超多忙なはずのアメリカのバンス副大統領が7日、ハンガリーを訪れオルバン首相と会談。12日に行われるハンガリー総選挙で、同国を16年間率いてきたオルバン氏が政権の座を失うかもしれないとの見方が出る中、バンス副大統領はオルバン氏への強力な支持を表明するなど、選挙に干渉するような発言を展開しました。同時に、EUを痛烈に批判しました。

 

****米政権、選挙干渉強める ハンガリー首相支持表明****

ハンガリーを訪問したバンス米副大統領は7日、オルバン首相との会談後の記者会見で、12日のハンガリー議会総選挙での与党勝利に向け「できる限り首相を支援したい」として支持を表明した。

 

トランプ米政権は2月にもルビオ国務長官がハンガリーを訪れてオルバン政権の継続を訴えており、選挙への干渉を強めた。  

 

首都ブダペストでバンス氏と共に記者会見したオルバン氏は、両国関係はトランプ大統領の就任により「黄金時代を迎えている」と述べ、謝意を示した。トランプ氏もオルバン氏支持を明言している。  トランプ氏は昨年1月の2期目就任後、良好な関係を築く外国首脳らを選挙戦で公然と支持。【47日 共同

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オルバン首相とEU指導部嫌いという共通項があるバンス副大統領は昨年2月にドイツ・ミュンヘンで行った演説で、欧州指導者たちが言論の自由を制限していると非難し、欧州(EU)と米の対立が抜き差しならないところにきていることを明らかにした経緯もあります。

 

****ヴァンス米副大統領がハンガリー訪問、オルバン首相の再選支持 EUを痛烈批判****

(中略)

ヴァンス氏はオルバン氏との会談後、EUとウクライナを激しく非難した。

EUについては、「私がこれまで目にした、あるいは耳にした中で最悪の、外国による選挙干渉の一例だ。(中略)なぜなら向こう(EU)はこの男(オルバン氏)を嫌っているからだ」と述べた。

 

さらに、今回の訪問の「理由の一つは」「(ベルギー)ブリュッセル(にあるEU本部)の官僚による干渉が、実に恥ずべきものだった」からだとも述べた。

 

その後、オルバン氏の選挙集会で演説したヴァンス氏は、「(中略)私は誰に投票すべきか具体的に言っているわけではないが、ブリュッセルの官僚たち、あの人たちの言うことに耳を貸すべきではないと申し上げたい」と述べた。

 

演説の最後には、「週末に投票へ行き、オルバン・ヴィクトルを支持してほしい。彼は皆さんのために立ち上っているのだから」と呼びかけた。

 

EU加盟国の指導者たちはこの数週間、ロシアによる侵攻が続くウクライナに数十億ユーロ規模を拠出する支援策にオルバン氏が拒否権を行使したことに、不満を募らせてきた。オルバン氏は昨年12月の時点ではこの支援策に同意していた。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「甚だしい背信行為」だと述べた。

 

それでも、EUの指導者たちはハンガリー総選挙に巻き込まれることは慎重に避けてきた。

今回のヴァンス氏の発言は、昨年2月にドイツ・ミュンヘンで同氏が行った演説で、欧州指導者たちが言論の自由を制限していると非難した内容を思い起こさせるものだった。

 

ウクライナについて

ヴァンス氏はこの日、ウクライナ政府が外国の選挙に干渉したという、根拠のない主張も繰り返した。「ウクライナの情報機関の内部勢力が、アメリカやハンガリーの選挙を、自分たちに有利になるようにしようとした。彼らはそういうことをするんだ」。

 

オルバン氏は、ウクライナとウォロディミル・ゼレンスキー大統領への敵対姿勢を、自身の選挙戦の柱としている。(後略)【48日 BBC

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【オルバン首相の反ウクライナ・親ロシア姿勢】

ハンガリーとウクライナの対立は、ウクライナに数十億ユーロ規模を拠出する支援策にオルバン首相が拒否権を行使する一方、ウクライナがロシア産原油をハンガリーに運ぶパイプラインの修復を故意に遅らせて、ハンガリーへの石油供給を阻害しているとオルバン首相が主張して、ゼレンスキー大統領が武力行使も示唆するほどに激しさを増しています。

 

オルバン政権の親ロシア姿勢は、最近のスキャンダルにあらわれています。

 

****オルバン政権、外相がロシアにEU機密情報を定期的に提供*****

ハンガリー政権をめぐり最近浮上したスキャンダルも、オルバン氏の人気に影響を与えたとみられる。

流出したのは、シーヤールトー外相と複数のロシア高官との間で交わされた、数年間分の私的な通話内容だ。

 

通話記録によると、シーヤールトー氏はEU首脳会議での機密の協議の内容を、ロシア政府に定期的に提供していたとされる。また、ロシア政府の要請に応じて、ロシア当局者を制裁リストから外すよう働きかけたとされる

 

シーヤールトー氏はロシア側との通話について、「通常の外交活動」だと主張している。【48日 BBC

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EU指導部はオルバン首相を激しく非難】

EU指導部は、特にウクライナ支援阻止の点でオルバン首相を激しく批判しています。

 

****欧州諸国から非難を浴びるオルバン首相****

オルバン首相の姿勢は、欧州諸国から非難を浴びている。

 

フィンランドのペッテリ・オルポ首相は、「(オルバン首相は)選挙戦でウクライナを武器として利用している」と批判。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、オルバン首相の言動はEUとウクライナに対する「重大な背信行為」に当たると指摘したほか、EUのアントニオ・コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)は同首相が欧州を「脅迫」していると非難した。

 

EUの執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長とフランスのエマニュエル・マクロン大統領はハンガリーに対し、ウクライナに対するEUの支援を直ちに承認するよう求めた。(後略)【49日 Forbes】)

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12日総選挙結果・・・・野党圧勝、オルバン与党の敗北、16年ぶりの政権交代】

・・・・・ということで、ハンガリー国内だけでなく、EU指導部、ウクライナ、アメリカ、ロシアがそれぞれの思惑で注視していたハンガリー総選挙の結果は・・・・選挙前の予想通り、あるいはそれ以上の野党の勝利、オルバン与党の敗北、16年ぶりの政権交代でした。

 

*****ハンガリー総選挙、野党が3分の2超獲得へ EUと関係回復図る****

ハンガリー総選挙(1院制、定数199)が12日に投開票され、新興保守系野党「ティサ(尊重と自由)」の圧勝が確実となった。欧州連合(EU)に懐疑的なオルバン・ビクトル首相(62)が2010年から長期政権を率いてきたが、16年ぶりの政権交代となる。

 

ハンガリーはEU加盟国だが、親露的なオルバン政権はロシアの侵攻にあえぐウクライナとたびたび対立。EUのウクライナ支援案を阻止するなどして、EU内で批判されてきた。

 

一方、ティサはEUとの関係回復を掲げており、EUやウクライナに対するハンガリーの政策は転換するとみられる。

 

ハンガリーの中央選挙管理委員会によると、開票率95%の時点でティサは総議席数の3分の2を超える137議席を獲得する見込み。オルバン氏率いる中道右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」を中心とした与党連合は55議席にとどまっている。

 

ティサのマジャル・ペテル党首(45)は12日夜、「ハンガリー人は欧州に票を投じた。ハンガリーはEUと北大西洋条約機構(NATO)の強い同盟国となる」と勝利宣言した。

 

EUや欧州各国の首脳からは、ティサの大勝を歓迎するコメントが相次いだ。EUの行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長はX(ツイッター)に、「ハンガリーは欧州を選んだ。一つの国が欧州への道を取り戻した。(欧州)連合はさらに強くなる」とのコメントを出し、ハンガリーとの関係正常化に期待を示した。

 

一方、オルバン氏は「これからは野党として国に仕える」と敗北を認めた。厳しい移民政策や「ばらまき」とも言える減税政策などで支持されてきたオルバン政権だが、汚職問題がつきまとってきた。

 

ティサのマジャル氏は、こうした政権の汚職体質を糾弾して支持を拡大。24年にティサで政治活動を始めたばかりだが、長期政権への不満を強める民意を背景に勢いに乗った。

 

オルバン氏はウクライナ支援の争点化をはかり、ティサを「EUとウクライナの手先」と批判。「ティサが勝てば戦争に巻き込まれる」と主張していた。

 

オルバン氏と価値観や政策が近いトランプ米政権も応援に乗り出し、7日にはバンス副大統領がブダペスト入りしてオルバン氏支持を表明していた。【413日 毎日

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【親EU路線の野党勝利で、EU首脳やゼレンスキー大統領が祝福

このところトランプ大統領との確執、域内極右勢力の台頭などネガティブな話題が多かったEU指導部にとっては久々の明るいニュースでしょう。ウクライナにとってもEUのウクライナ支援融資が可能になるということで国の命運にかかわる出来事です。

 

*****ハンガリー総選挙 親EU路線の野党勝利受けEU首脳やゼレンスキー大統領が祝福のコメント****

12日に投開票されたハンガリー総選挙で親EU路線の野党が勝利したことを受けて、ヨーロッパの首脳らが祝福するコメントを発表しています。

ハンガリーの総選挙では、16年間政権を担いEU加盟国でありながらウクライナ支援に度々反対してきたオルバン首相の与党に対して、EUとの関係回復などを訴えてきたマジャル氏率いる野党が勝利しました。

選挙結果を受け、EUのフォンデアライエン委員長は「ハンガリーはヨーロッパを選んだ。EUはより強固になる」と祝福しました。

また、フランスのマクロン大統領はマジャル氏に電話したと明らかにし、「フランスは、この勝利を民主主義への参加、ハンガリー国民のEUの価値観へのコミットメント、そして、ヨーロッパにおけるハンガリーの地位にとって歓迎すべきものだと考えている」とコメントしています。

そして、ウクライナのゼレンスキー大統領は「両国の利益、そしてヨーロッパの平和・安全・安定のために、会談や共同での建設的な取り組みを行う用意がある」と歓迎するコメントを出しています。【413日 TBS NEWS DIG

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EU指導部にとっては反ウクライナ・親ロシア・反移民という“トラブルメーカー”が消えるというだけでなく、オルバン首相は欧州極右勢力とも近い関係にあって、“欧州極右のイデオロギー的な先駆者、各国右派をつなぐネットワークの中心人物”という存在でしたので、オルバン首相の退陣は欧州極右勢力の勢いをそぐことにもなるという点でEU指導部に好都合な話になります。

 

****オルバン首相と欧州極右勢力の思想的な共通基盤****

オルバン政権(与党フィデス)は、欧州の極右・右派勢力と以下の点で一致しています。

 

反移民・国境管理強化

伝統的価値観(家族・キリスト教文化)の重視

EUの権限拡大への反発(主権重視)

リベラル民主主義への批判(オルバンは「非自由主義的民主主義」を提唱)

 

このため、フランスのマリーヌ・ルペンや、イタリアのジョルジャ・メローニなどと価値観が近いとされます。【413日 ChatGPT

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米軍が基地使用する英領チャゴス諸島 モーリシャスへの主権移譲にチャゴス諸島出身者が反対する現実

(【2025523  BBC】)

 

【米英共同軍事基地のために島の住民を追放し帰還できないようにした歴史】

日本人には聞きなれない名前ですが、インド洋のど真ん中にイギリス領の「チャゴス諸島」という島々があって、その中の最大の島、ディエゴガルシア島は米軍も使用する米英共同軍事基地として使用されています。

 

*****チャゴス諸島*****

チャゴス諸島は、インド洋にある諸島。オイル諸島という旧名もある。モルディブの南1,600kmのところにあり、7つの環礁を中心とした60以上の島で構成されている。最大の島はディエゴガルシア島。(中略)

 

19世紀よりイギリス領インド洋地域の一部としてイギリスが支配し続けたが、旧英領でかつて同じ植民地であったモーリシャスも領有権を主張し、返還を要求してきた。国際連合をはじめとする国際機構もこれに同調し、モーリシャスへの返還が働きかけられてきた結果、イギリス政府は2024103にモーリシャスへの返還を発表し、両国は2025522日に合意文書に署名した。

 

歴史

(中略)6世紀にポルトガルによって発見された後、18世紀から住民が定住し、1814よりイギリス領となった。イギリス領モーリシャスの管轄として統治されていたが、1965にモーリシャスから分離された。1968にモーリシャスが独立した後も、イギリス領として残された。

 

20世紀半ばには住民は2,000人ほどとなっていたが、1967から1971にかけてモーリシャスへ移住させられている。

 

1965年、チャゴス諸島は英領モーリシャスの一部であり、モーリシャスが自治権を持っていた。この年、イギリスの当時の外務大臣であったマイケル・ステュワートと、後にモーリシャスの首相となるシウサガル・ラングーラムの間の秘密合意(密約)でチャゴス諸島を分離することを条件にモーリシャスが念願の独立を果たし、またチャゴス諸島と引き換えに、イギリスがモーリシャスに400万ポンドを支払うことが決定した。

 

1966年の英米間の合意により、チャゴス諸島の中で最大面積を持つディエゴガルシア島が、50年間アメリカの軍施設として使われることになった。その後20年の延長も認められており、実際に2016年から20年間の延長がなされている。アメリカが島の全住人を追放することを求め、1968年から1974年にかけて英米によって追放政策が実施された。

 

2010年にはチャゴス諸島の周辺海域を海洋保護区に指定したが、その真の目的は海洋保護区にして漁業活動などを禁止して、島での生活基盤が成り立たないようにすることで、チャゴス諸島民の帰還を阻止することであったことが、ウィキリークスにより判明している。【ウィキペディア】

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モーリシャス独立時の密約、基地使用のために全住人の追放を求めるアメリカ、住民の帰還を阻止するための海洋保護区指定・・・・いささかドロドロした話ですが、ほんの数十年前は政治的には常識的な行動だったのでしょう。そのあたりは今も変わらないかも・・・・。

 

【英政府はモーリシャスへの主権移譲で合意したものの、トランプ大統領の反対で棚上げ】

上記説明にもあるように、イギリスと(かつては同じように英領であった)モーリシャスは、チャゴス諸島をモーリシャスへ返還することで合意していますが・・・・合意では、基地についてはイギリスが賃料を支払う形で99年間管理権を維持する内容になっているようです。

 

モーリシャス現政権の対外スタンスは、一言で言えば「非同盟・バランス外交(マルチベクトル)」です。その中でアメリカとの関係は「良好だが最優先ではない」という位置づけになります。

 

****モーリシャスのアメリカとの関係*****

基本路線:非同盟・実利重視

モーリシャスは伝統的にどの大国にも過度に依存しない外交を展開し、インド洋の小国として安全保障よりも経済・投資・貿易を優先する姿勢を見せています。

 

アメリカとの関係

アメリカとは対立関係ではなく、協力的関係

主なポイント 

  貿易・投資(特に繊維・金融・ICT分野)

  アフリカ向け経済枠組み(AGOAなど)の恩恵

  海洋安全保障・違法漁業対策で一定の協力

 

ただし、安全保障で米国に全面依存する関係ではない

 

チャゴス諸島問題との関係

モーリシャスは一貫してチャゴス諸島の主権返還を要求

ただし現実的にはディエゴ・ガルシア島の米軍基地については存続を容認する柔軟姿勢

つまり 、「主権は返せ」 「ただし米軍は残ってよい」

→ これは明確にアメリカとの関係を悪化させないための配慮【412日 ChatGPT

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“ディエゴ・ガルシア島の米軍基地については存続を容認する柔軟姿勢”とのことですが、上記のような姿勢はその時の国内外の政治環境によって変わることも十分にあります。

 

インド洋のど真ん中、中東にもインドにもアフリカにも睨みをきかせられる場所を考えると、アメリカの基地使用継続を不安定にするようなことにはトランプ政権は賛同しないのでは・・・・と素人でも考えますが、実際、(いったんはアメリカとして認めたものの)トランプ大統領から横やりが。

 

トランプ大統領の反対を受けて、スターマー英首相はモーリシャスへの主権移譲合意を棚上げすると発表しています。

 

なお、320日、イランがディエゴガルシア島にある米英共同軍事基地に向けて、中距離弾道ミサイル2発を発射したと報じられました。このミサイルは同基地の手前に落下して実質的な被害は出なかったものの、イランのミサイル技術が約4,000キロ離れた遠距離の標的まで到達可能であることを示したと評価されています。

 

逆に言えば、少なくともそれまではイランが攻撃可能な範囲の外側に位置していると考えられていたことも、この基地の重要性のひとつでしょう。

 

****英政府、チャゴス諸島の主権移譲を棚上げ、トランプ氏の反発受け*****

キア・スターマー英首相は、イギリスがインド洋のチャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲する合意を棚上げすると発表した。スターマー氏とドナルド・トランプ米大統領との関係が悪化するなか、同諸島のディエゴ・ガルシア島にイギリスと共同軍事基地を置くアメリカが、正式にこの合意を認めなかったため。

 

トランプ氏は当初、この計画を支持していたが、最近ではスターマー氏に合意の撤回を求めていた。今年1月にはこの計画を「大いなる愚行」「完全な弱さからくる行動」と非難していた。

 

イギリス政府関係者は、この合意を完全に放棄しているわけではないとしているが、議会が解散するまでの数週間に、関連法案を成立させる時間がなくなったと述べている。一方で、5月中旬に行われる「国王の演説」(政府の施政方針演説)に、新しいチャゴス法案が盛り込まれる見通しは立っていない。

 

関係者によると、この条約を発効させるために法的に必要とされる、アメリカとの正式な交換書簡を、イギリスは依然として受け取っていないという。

 

イギリスは昨年5月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲することで合意した。この合意では、チャゴス諸島最大のディエゴ・ガルシア島にある英米共同軍事基地の管理権をイギリスが維持し、年間1100万ポンド(約216億円)で99年間、借り直すことになっていた。

 

トランプ氏は今年2月、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「ディエゴ・ガルシアを渡すな」と書き込み、批判的な姿勢を表明。「われわれの偉大な同盟国にとって汚点となる」と主張した。

この発言の前日、アメリカ政府はこの計画を正式に支持すると表明したばかりだった。

 

政府は2月、合意が一時停止されたことを否定したが、その数時間前には、閣僚の一人が議会で、法案成立の手続きを「一時停止している」と述べていた。

 

英政府の報道官は、「ディエゴ・ガルシアは、英米双方にとって極めて重要な戦略的軍事資産だ」と述べた。

「その長期的な運用上の安全を確保することは、これまでも、そして今後も、我々の最優先事項だ。これこそが、この合意の全理由だ」、「我々は今も、この合意が基地の長期的な将来を守る最善の方法だと考えているが、合意を進めるのは、アメリカの支持がある場合に限られると、常に述べてきた。我々はアメリカおよびモーリシャスと話し合いを続けている」と、英報道官は話した。

 

2月末に始まった米・イスラエルとイランの紛争では、イランが自国から約3800キロ離れたディエゴ・ガルシア島の米英共同軍事基地を攻撃目標にしていたことが明らかになっている。(中略)

 

イギリスは1960年代後半に、アメリカにディエゴ・ガルシア島での軍事基地建設を提案し、数千人の住民を島から強制的に移住させた。以降、住民の帰還は認められていない。

 

チャゴス諸島の出身者の一部はモーリシャスやセーシェルに移住したが、一部はイギリスに移住し、主にウェストサセックス州クロウリーなどに住んでいる。

 

多くのチャゴス諸島出身者は、この合意を裏切りだと受け止めており、将来、故郷に戻ることができるよう、イギリスが諸島の主権を維持することを望んでいる。

 

合意を強く批判してきた最大野党・保守党と野党・リフォームUKは、棚上げの発表を歓迎した。

保守党のケミ・ベイドノック党首は、「もしキア・スターマーのチャゴス降伏が、今その正当な居場所、つまり歴史のゴミ捨て場に収まったのなら、それは保守党が初日からこれに反対する闘いを主導してきたからだ」と述べた。

 

「(合意棚上げに)これほど時間がかかったこと自体、すでに我々のものだった重要な軍事基地を使用するために350億ポンドを支払い、イギリスの主権領土を引き渡そうとした首相に対する、いっそう痛烈な告発だ」

 

リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、「これは素晴らしい知らせ、待ち望まれていた知らせだ。いま政府は、重大な過ちを正し、チャゴス諸島出身者が故郷に完全に再定住できるよう支援しなければならない」と述べた。

 

野党・自由民主党の外務担当報道官を務めるキャラム・ミラー議員は、「チャゴス合意の扱いは、保守党政権下での開始から、現在の労働党政権下に至るまで、完全に混乱している」と述べた。

また、「だが、トランプ氏の気まぐれな対応は、彼がいかに信頼できない人物かを示している」と指摘した。【411 BBC】

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【イギリスからモーリシャスに主権を移譲する合意に関して、多くのチャゴス諸島出身者が裏切りだと受け止めている現実的背景】

興味深い点は、イギリスからモーリシャスに主権を移譲する合意に関して、“多くのチャゴス諸島出身者は、この合意を裏切りだと受け止めており、将来、故郷に戻ることができるよう、イギリスが諸島の主権を維持することを望んでいる。”ということ。

 

一見する逆のようにも思えますが、そこには現実的な理由があります。

 

****チャゴス諸島の主権移譲に対する住民の反発****

チャゴス諸島をめぐる「主権移譲に対する一部住民の反発」は、単なる領土問題ではなく、強制移住の歴史・帰還権・安全保障・生活再建への不信が複雑に絡んでいます。ポイントを整理すると以下の通りです。

 

1. 強制移住の歴史(最大の背景)

196070年代、イギリスはディエゴ・ガルシア島に米軍基地を建設するため、約1,5002,000人の島民(チャゴシアン)を強制的に追放 移住先は主にモーリシャスやセーシェル

多くは貧困や差別に直面し、「故郷を奪われた」という強い被害意識が形成された

→ このため、彼らにとって問題の核心は「領土」ではなく“帰還の権利”と“歴史的正義”

 

2. なぜ「英国主権維持」を望む声があるのか

一見すると不思議ですが、理由は現実的です。

 

(1) モーリシャスへの不信感

モーリシャス政府は主権を主張しているが、具体的な帰還支援策が不透明

チャゴス諸島出身者の政治的影響力は小さい→「主権が移っても、自分たちの生活は改善しないのでは」という懸念

 

(2) 英国の方が補償・権利保障の期待がある

英国は過去に一定の補償金を支払ってきた 英国司法に訴える手段がある 一部は英国国籍を取得済み

→ そのため「加害者ではあるが、まだ交渉相手として頼れるのは英国」という複雑な心理がある

 

3. 帰還問題と米軍基地の存在

ディエゴ・ガルシア島は現在も米英にとって極めて重要な軍事拠点であり、中東・アフリカ・アジアへの展開拠点

安全保障上の理由から大規模な民間帰還は制限される可能性が高い

→ つまり、主権がどちらにあっても「実際に自由に帰れるか」は別問題

 

4. 「裏切り」と感じる理由

今回の主権移譲合意に対し、一部チャゴス諸島出身者が反発するのは:

自分たち抜きで交渉が進んだ 帰還の具体策が不明確 モーリシャスに主権が移ることで英国への法的訴えが難しくなる可能性 「補償や権利が弱まるのでは」という恐れ

→ その結果、「主権移譲=自分たちの立場がさらに弱くなる」と受け止められている

 

まとめ

チャゴス諸島問題で「英国主権維持を望む声」があるのは、強制移住という歴史的被害、モーリシャスへの不信、英国の方が権利保障の交渉相手として現実的、米軍基地の存在により帰還が不透明・・・といった要因が重なった結果です。

 

つまりこれは「脱植民地化」 vs 「当事者の生活と権利」が必ずしも一致しない典型的なケースと言えます。

【412日 ChatGPT

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台湾・国民党の中国との関係を重視する戦略に重なる中国に取り込まれた香港のイメージ

(10日、鄭麗文主席(左)と握手を交わす習近平総書記。【410日 新華網日本語】)

 

【アメリカの台湾支援を牽制すべく、国民党主席訪中を厚遇する中国】

中国の台湾統一問題が東アジア・世界の大きな関心事となっている中、連日報道されているように、台湾最大野党・国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席が訪中し、習近平国家主席との会談を行っています。

 

****習近平氏、台湾の国民党トップと9年半ぶりに会談 「対話」演出***

中国共産党の習近平総書記(国家主席)は10日、北京で台湾最大野党、国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席(党首)と会談した。両党トップによる会談は201611月に習氏と国民党の洪秀柱主席(当時)が北京で行って以来で9年半ぶり。

 

鄭氏は中台の和解と対話を促進すると訴えて、2511月に主席に就任。習氏の招待に応じて7日から中国を訪れている。【410日 毎日

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鄭氏は中国との対話再開や連携を重視しており、主席を選ぶ選挙戦でも「台湾人が自信を持って『私は中国人だ』と言えるようにしたい」と中国ナショナリズムを強調していました。そのため、鄭氏のもとで最大野党国民党の対中傾斜が強まることが予想されていました。

 

****習氏と会談の台湾野党主席・鄭氏とは 巧みな弁舌、異例の経歴****

中国共産党の習近平総書記(国家主席)と10日に会談し、「台湾独立への反対」で意見が一致した台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(ていれいぶん)主席(党首)とは、どのような人物なのか。

 

1回と言わず、100回でも会う用意がある」 56歳で党を率いる鄭氏は、かねて習氏との会談に強い意気込みを示していた。

 

中国・雲南省出身の国民党軍人だった父と台湾生まれの母を持ち、大学時代に民主化を求める学生運動「野百合運動」に参加。台湾独立を主張して民進党に入った後、2005年に国民党に移るという異例の経歴を持つ。国民党では巧みな弁舌が評価されて、立法委員(国会議員に相当)などを歴任した。

 

「全ての台湾人が誇りを持って『私は中国人』だと言えるようにしたい」

2510月の主席選挙では当初ダークホースとみられていたが、中国のアイデンティティーを強く重視する姿勢を打ち出して当選。頼清徳総統や与党・民進党に対する歯に衣(きぬ)着せぬ批判でも知られ、国民党支持層の中の与党に対する不満を、うまくすくい取った。

 

「台湾と中国は本来対立する概念ではなく、民進党政権の脱中国化政策で作り出された」というのが持論だ。

 

ただ、各種世論調査によると台湾全体では台湾人意識を持つ住民が多数派だ。今年3月に行われた世論調査では、鄭氏に対して不信感を持つ住民の割合は5割を超え、信頼しているとの回答は3割を切っている。

 

また党内でも、勢いのある演説に評価の声がある一方、その支持基盤は強固とはいえない。昨年10月には、独メディアのインタビューでウクライナ侵攻について問われ「プーチン露大統領は独裁者ではなく、民主的に選ばれたリーダーだ」と答え、内外からの批判を呼んだ。【410日 毎日

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訪中した鄭麗文氏は8には、江蘇省南京にある党の創設者である孫文の墓所「中山陵」を訪ね、中台の現状を「日本帝国主義の刃に切り裂かれた傷が癒えていない」と表現し、日清戦争後の台湾割譲とその後の日本統治を批判しました。高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁をきっかけに対日批判を強める中国政府や共産党と歩調を合わせた・・・とも指摘されています。

 

また、「両岸(中台)の中国人」などの表現を使い中台の一体性も強調。「私たちはともに両岸の和解と団結を促進すべきだ」などと語っています。

 

10日は訪中の目的である習近平国家主席との会談に臨みましたが、中国側は友好ムードを演出。アメリカの台湾支援を牽制する狙いがあると見られています。

 

****台湾野党主席と会談した習総書記、友好ムード演出米国の台湾支援に歯止めかける狙いか****

中国の習近平(シージンピン)・共産党総書記(国家主席)は、10日の台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(ジョンリーウェン)主席との会談で「両岸(中台)は家族」と強調し、友好ムードを演出した。5月のトランプ米大統領の訪中を前に、米国からの大規模な武器購入に慎重な国民党との連携を利用し、米国の台湾支援に歯止めをかける狙いがあるとみられる。

 

握手14秒

北京の人民大会堂で行われた会談の冒頭、両氏は14秒間にわたって握手した。習氏は国民党側の出席者に向かって「両党指導者の会談は、(前回の2016年11月から)まもなく10年になる。前回はどなたが参加しましたか?」と笑顔で語りかけるなど和やかな雰囲気で始まった。今回の会談の意義を「共通する家庭の平和と安寧を守るものだ」とも述べ、国民党との連携を進める意向を示した。

 

一方、中国が敵視する台湾の与党・民進党の頼清徳(ライチンドォー)政権については、「『台湾独立』は台湾海峡の平和を破壊する元凶だ」と述べて敵意をあらわにした。

 

国民党との対話再開は、トランプ氏の訪中への布石でもある。習政権は、米中首脳会談を通じて、昨年12月にトランプ政権が承認した台湾への大規模武器売却に歯止めをかける狙いがあるとみられている。今回の国共トップ会談を通して「頼政権こそがトラブルメーカー」と主張することで、対米工作の材料にする意図もありそうだ。

 

対日でも共同歩調

会談で習氏は、日本の台湾統治を念頭に「台湾占領という困難な時代にあっても、台湾同胞は中華民族意識を持ち続けた」と述べ、中台の一体性を強調した。鄭氏も「台湾海峡を外の力が介入する」舞台としないようにすべきだと語り、日米などの「干渉」に反発する習氏に歩調を合わせた。

 

国民党によると、鄭氏は8日に江蘇省南京にある国民党創設者の孫文の墓(中山陵)を参拝した際、台湾が日本に統治された歴史に触れ、中台の間で「日本帝国主義のやいばによって切り裂かれた傷口がいまだに癒えていない」と批判していた。【411日 読売

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****中国の習氏、台湾・国民党主席と異例の会談 世界の紛争に言及して平和訴え****

中国共産党の習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)は10日、台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(チョンリーウェン)主席と会談した。世界で続く紛争に言及して平和の必要性を訴えるとともに、台湾独立に反対する中国政府の姿勢を改めて示した。

 

国民党主席と習氏の会談は約10年ぶり。数週間後にはトランプ米大統領が習氏との会談のため訪中する予定で、台湾問題が主要議題に上るとみられている。

習氏は北京の人民大会堂で、「今日の世界は平和とは程遠く、それだけに平和が一段と貴重になっている」と発言した。

 

中国政府は過去10年間台湾の政権を担ってきた独立志向の民進党との対話を拒否している。中国は台湾を自国の一部と主張し、将来的な武力行使も排除していない。近年は台湾周辺での圧力や軍事演習を強化しており、緊張がエスカレートして地政学的衝突に発展する可能性に懸念が高まっている。

 

習氏は「海峡両岸の同胞は中国人であり、一つの家族だ」と発言。中国政府は「台湾独立に反対するという共通の政治的基盤の上で」、台湾の政党と協力する用意があると言い添えた。

 

鄭氏は「両党のたゆまぬ努力を通じ、台湾海峡が潜在的紛争の焦点ではなくなり、外部勢力の介入の舞台にもならないこと」を望むと表明した。

 

鄭氏による訪中は、台湾の与党が米中両政府からプレッシャーにさらされる中で行われた。中国政府が台湾周辺での軍事的圧力を強化する一方、米政府は停滞している400億ドル規模の防衛予算案の可決を促している。

 

鄭氏率いる国民党は中国政府との関係改善を重視しており、台湾議会で防衛予算案の成立を阻んできた。

 

台湾ではトランプ氏は台湾を米中対立の駒程度にしか見ておらず、台湾の未来への関心はないのではないかとの懸念が一部にある。専門家は中国政府がこうした懸念に乗じていると指摘する。

 

5月に予定される習氏とトランプ氏の首脳会談では、貿易や技術を巡る対立と並び、台湾問題が主な議題になりそうだ。

中国政府は長年、台湾問題を米中関係の最も敏感な側面とみなしており、昨年12月に発表された米国と台湾の110億ドル規模の武器取引を強く非難している。これは記録に残る中で最大規模となる。【410日 CNN

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「国民党と共産党は政治的な信頼を強固にして手を携えて祖国統一という未来を作り出さなければならない」と語る習近平国家主席に対し、台湾の民進党政権は、「民主主義を守り続ける」などと警戒感を示しています。

 

****中国 習主席 台湾国民党トップと会談“祖国統一という未来を”*****

中国の習近平国家主席は台湾の最大野党 国民党の鄭麗文主席と会談し、「台湾独立」に反対する立場を強調し、「国民党と共産党は、祖国統一という未来を作り出さなければならない」と呼びかけました。台湾の民進党政権は、「民主主義を守り続ける」などと警戒感を示しています。(中略)

 

国営の新華社通信によりますと、習主席は「中国大陸と台湾は1つの中国に属する」とした上で、「『台湾独立』と外部からの干渉に反対しなければならない」と強調しました。

そして、国民党との対話の強化に意欲を示し、「国民党と共産党は政治的な信頼を強固にして手を携えて祖国統一という未来を作り出さなければならない」と呼びかけたということです。

 

一方、鄭主席も「台湾独立」に反対する立場を示し、「制度的で持続可能な対話と協力のメカニズムをさらに計画・構築すべきだ」と述べました。

 

中国は「独立派」とみなす台湾の民進党政権とは対話を行わず、台湾周辺で軍事演習を繰り返すなど圧力を強めています。(後略)【411日 NHK

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【中国との関係を重視するという国民党の戦略の危うさ】

中国との関係を重視するという国民党の戦略については、もちろんそれによって経済的な利益はあるものの、どうしても強力な引力を持つ中国に引きずり込まれてしまうと懸念を拭えません。

 

中国に呑みこまれてもかまわないと腹をくくっているなら理解できますが、台湾の国際的立場を維持したまま、中国との経済関係を強化して利益を得るということが可能とは思えません。 台湾の現状を維持したまま、中国との関係強化が可能だという国民党の自信はどこから生まれるのか?

 

*****国民党の中国との関係を重視する政策****

ご指摘の通り、「中国との関係強化=最終的に取り込まれるのではないか」という懸念は、台湾内部でも強く共有されています。そのうえで、中国国民党(国民党)が「現状維持+対中関係強化は両立可能」と考える背景には、いくつかのロジックがあります。

 

① 「完全な統一」ではなく“曖昧な現状維持”を前提としている

国民党の基本立場は、いわゆる「独立でも統一でもない」状態です。これは過去に形成された「一つの中国だが解釈はそれぞれ異なる」という枠組み(九二共識)に依拠しています。

中国側:最終的な統一を前提

台湾側(国民党):中華民国としての実質的独立を維持

つまり国民党は、「あえて曖昧さを残すことで衝突を避ける」という戦略です。この“戦略的曖昧さ”こそが、現状維持の装置だと考えています。

 

② 経済的相互依存が「安全装置になる」という発想・・・国民党の中核的な信念はここです。

台湾企業はすでに中国経済に深く依存 中国も台湾の半導体などに依存

この「相互依存」がある限り、中国は軍事的に台湾を壊す選択を取りにくい、という考え方です。

つまり「深く結びつけば、むしろ戦争は起きにくい」というロジックです。

これは冷戦後の欧州(EU統合)などでも見られた発想で、決して独自のものではありません。

 

③ 中国側の「段階的統一」戦略への読み

国民党は、中国(特に習近平政権)がすぐに武力統一するよりも経済・社会・人的交流で自然統合を進めるという戦略も併用していると見ています。

ここで国民党は逆にこう考えます:「交流を増やしても、政治統一は別問題としてコントロールできる」

つまり「経済は開くが、主権は守る」という切り分けが可能だという前提です。

 

④ 「米国依存だけでは危険」という現実認識

国民党は、対中接近の裏側に別の不安も持っています。

台湾の安全保障は事実上アメリカ合衆国に依存 しかし米国の関与は将来も確実とは限らない このため「対中関係を安定させてリスク分散するべき」という発想になります。

 

⑤ 過去の成功体験(馬英九政権)

馬英九政権(20082016)では直行便拡大、観光客増加、貿易拡大を実現しつつ、政治統一には進まなかったという実績があります。

国民党にとっては「うまくやればバランスは取れる」という成功体験が強い自信の源です。

 

ただし、中国に取り込まれる懸念は非常に現実的・・・実際には、国民党の戦略には明確なリスクがあります。

■ 非対称依存の問題

台湾の対中依存 > 中国の対台湾依存→ 力関係は圧倒的に中国有利

■ 経済政治への波及

投資・ビジネス・人的交流→ 世論や政治に影響が及ぶ可能性

■ 香港の前例

「一国二制度」が実質的に形骸化→ 台湾社会の強い警戒感

結論(核心)

国民党の自信の源は一言で言うと:「コントロール可能な範囲で中国と付き合える」という前提

しかしこれは経済依存が政治従属に転化しない、中国が現状維持を許容し続けるというかなり楽観的な前提に立っています。

 

現実の対立構図

台湾内部ではこの問題は明確に分かれています:

国民党:リスクを取りつつ安定と利益を取る 民主進歩党:距離を取り主権を優先【411日 ChatGPT

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【経済依存から中国に取り込まれた香港との比較】

香港の「一国二制度」が決定的に形骸化したのは2010年代後半の政治的動きでした。

主な転換点:2014年:雨傘運動 2019年:逃亡犯条例反対運動 2020年:香港国家安全維持法施行

この2020年の国家安全法が、制度的に一国二制度を大きく変質させた決定打となりました。

 

ただ、香港の中国化の背景として、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で香港経済は深刻なダメージを受け、そこからの回復を中国経済に頼ったことが香港の中国依存体質を強めたことがあります。

 

****2003年に流行したSARSが香港にもたらした影響****

① SARS後に起きた構造変化

香港経済の打撃と中国依存への転換:香港は2003年のSARSで観光・小売・不動産が急落、失業率上昇、経済の信頼低下という深刻な打撃を受けました。 その回復策として中国本土との経済統合が急速に進みます。

 

CEPAと中国人観光客の流入

CEPA(経済連携強化協定)締結 中国本土からの個人旅行(自由行)解禁 中国資本・企業の流入拡大

結果:香港経済は本土依存型にシフトしました。

 

② 「経済依存」が「政治的影響力」に変わったメカニズム・・・ここが核心です。

段階1:経済的結びつきの深化:観光・不動産・金融で中国の影響力拡大、香港企業も中国市場依存を強める

段階2:利害関係の変化:香港の財界・不動産業界→ 中国との関係維持が最優先に 親中エリート層が強化されました。

段階3:政治への波及:行政長官選出や政策に影響 民主化圧力より安定・対中関係重視【411日 ChatGPT

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台湾・国民党の中国経済への接近路線を見ていると、中国に取り込まれていった香港のイメージが重なります。

 

*****中国依存に関する台湾と香港の比較*****

結論から言うと、台湾が香港と「同じ道」をそのままたどる可能性は低いですが、別の形で中国の影響力が強まるシナリオは現実的に存在する、というのが多くの専門家の見方です。

 

① 香港と台湾の決定的な違い・・・まず、この点を押さえることが重要です。

■ 主権の有無

香港:中国の一部(高度な自治)

台湾:事実上の独立国家(独自の政府・軍・選挙)

この違いは本質的です。香港は制度上、中国に組み込まれていたため、最終的な統制強化が可能でした。

一方、台湾は軍隊、選挙による政権交代、独自の外交関係(限定的ながら)を持つため、同じプロセスはそのまま適用できません。

 

■ 国際環境

台湾にはアメリカ、日本などの関与があります。これは香港にはなかった要素であり、中国が一方的に制度を変えるハードルを大きく引き上げています。

 

② それでも「似た構造リスク」は存在する・・・ここが重要なポイントです。
同じ道ではないが、似た圧力は確実に存在します。

 

■ 経済依存 → 政治影響

台湾も対中貿易依存、台湾企業の中国進出という構造を持っています。

このため、企業・地方経済・一部政治勢力が対中関係の安定を優先する圧力になります。これは香港で起きたプロセスと共通しています。

 

■ 世論・情報空間への影響

中国は近年、メディア・SNS・経済インセンティブを通じて影響力を拡大する手法を強めています。

これは軍事ではなく、内部からの変化を促すアプローチであり、香港でも一部見られた手法です。

 

結論:台湾が香港と同じ道をたどる可能性は低いが、経済依存・情報戦・内部政治を通じて、より緩やかで見えにくい形の影響力拡大は十分に起こり得ます。

 

最終的に台湾の帰結を決めるのは、中国の圧力の強さ、国際環境、台湾内部の世論・・・この3つのバランスです。

【411日 ChatGPT

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