妖怪 おとろし をご存知ですか? | 伊豆高原「怪しい少年少女博物館」のブログ

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レトロで可愛くて気持ち悪い。伊豆高原「怪しい少年少女博物館」の展示品などを紹介します。





怪しい少年少女博物館1階入口付近の食玩のコーナーに展示をしているカバヤ製 ゲゲゲの鬼太郎 妖怪危機一髪の「 鬼太郎 VS おとろし 」の食玩フィギュア。高さ約5cm、幅7.5cm、奥行12cmと、食玩としては結構大きなサイズの情景フィギュアです。2002年頃の物





顔が見えにくいので、鬼太郎と前髪のパーツを外してみました。大きな口と牙がインパクト大です。ちょっとメタルの帝王オジー・オズボーンっぽいような? 

 

 

 

 

オジー様  ( お爺様じゃないよ! ) やっぱり、似ている?

 

先日、音楽番組ではない番組でオジーを見かけたと思ったら、「 ネイルをしたら、そこからばい菌が入って、危うく死にそうになった! 」と騒いでおられました。緊急の手術が必要と言う事で、公演もキャンセルになる等したようですが、コウモリの首を食いちぎった時も、そうだったけど、相変わらず かまってちゃん なんだね~





正面向かって右側から見た所。髪の毛がどっさり





正面向かって左側から見た所。髪の毛の塊になっていて、横顔も見えません





上方のやや後ろ側から見た所。何だかモップ犬っぽい?





底面には©水木プロ パイロットエースの刻印が入っています





上記フィギュアを展示している辺りの様子

 

 

 

 

江戸時代中期の画家 佐脇嵩之( さわき すうし )によって、1737年に出された百怪図巻( ひゃっかいずかん )に描かれた「 おとろし 」 の絵。どんな妖怪なのかについては、特に説明は添えられていません

 


 

 

江戸時代の1776年に刊行された鳥山石燕の「 画図百鬼夜行 」に描かれた「 おとろし 」。 鳥居にかぶりついて? 鳥居にとまった鳩と鳥居を大きな爪の生えた三本指で鷲づかみしています。髪の毛が上方になびいていますが、空からやって来たのでしょうか?

 

佐脇嵩之の絵を踏まえた物と思われますが、石燕もこの妖怪について、なんの説明も付けていません

 

 

 

 

こちらは江戸時代後期の1820年頃の作とされる作者不詳の「 化物づくし 」に描かれた「 おどろおどろ 」。こちらも佐脇嵩之の絵を踏まえた物と思われますが、三作共長い前髪が一本垂れているのは共通しています

 





「 わたしの妖怪体験記 」 河本真紀著 データハウス刊の「 おとろし 」のイラスト。鳥居の上にいる構図は石燕の絵と同様です。獅子舞の獅子を思い出してしまう、ちょっと可愛い おとろしさんです

 





以下の5枚は水木しげる氏が描いた「 おとろし 」の絵です。昭和40年代の少年マガジン誌よりお借りしました。上の絵は、佐脇嵩之の絵を基にした物と思われます

 





こちらは「 おどろおどろ 」と表記されており、「 神を信じていないのに、信じているふりをして神社のとりいをくぐると、この妖怪があらわれ、かみつくという。 」と言う解説が添えられています。構図的に見て、鳥山石燕の絵を基にした物と思われます





妖怪トランプには、上の絵と同じ絵ですが、こちらは「 おとろし 」と表記されています。良く見ると片肘をついて不信心者が通るのを待っている図となっています

 





こちらは鬼太郎の漫画に描かれた「 おどろおどろ 」。この回では、毛生え薬の研究をしていた科学者が試薬を飲んで変化し、人間の血を吸わないと生きていけない妖怪となってしまったと言うストーリーでした

 

身体中に生えた髪を手のように使い、その先端は管になっていて、そこから血を吸うと言う設定。毛が生えるのはいいけど、こうはなりたくないよね? 鬼太郎の血を吸おうとして、逆に鬼太郎に血を吸われて退治されてしまいます。鬼太郎恐るべし!

 


 

 

こちらは上の回とは別の回に出て来た「 おどろおどろ 」で、人を食べる妖怪と言う設定。鬼太郎から魂を抜いて召使にする等していました。上の絵も下の絵も劇画調で怖いですよね~。 私は水木しげる氏というより、むしろ楳図かずお氏を思い出してしまいました

 

 

「 おとろし 」 ってどんな妖怪?

 

「 おとろし 」は「 おどろおどろ 」とも呼ばれ、上の図にある百怪図巻や画図百鬼夜行、化物づくしの他にも、化物絵巻( 作者・制作年不詳 )や百鬼夜行絵巻( ここでは毛一杯 けいっぱいの名で 1832年 尾田淑太郎作 )や、十界双六等に描かれている妖怪です

 

身体全体が長い髪に覆われ、そこから顔と前足が覗いているような姿で描かれているのですが、名前以外に解説が添えられておらず、確かな民間伝承も伝わっていないようなので、実際はどのような妖怪なのか?よく分からないと言うのが本当の所のようです

 

現在出回っている妖怪図鑑の説明には、神社で鳥居の上 等にいて、不信心な者が通るとドサッと落ちて来て脅かすとか、神社を汚したり、いたずらをする者がいると一気に落ちてきて殺してしまう事もある等と書かれている物があるようです。不信心な者を懲らしめて、神様を護る存在と言う訳です

 

ただ、この説明は鳥山石燕の、鳥居の上に降りて来たと思われる「 おとろし 」の絵からイメージを広げて創作しただけで、確かな根拠がある訳ではないと指摘する人もいます

 

鎌倉の鶴岡八幡宮の本殿の額は、八幡宮の八の字を、向かい合った鳩で表しており、鳩サブレ―も、そこから発想を得て作られたお菓子です。石燕の絵では、神の使いとされる鳩を鷲づかみにして、その羽根も飛び散っていることから、強力なパワーを持った恐るべき妖怪であることは確かな気が私にはするのですが・・・

 

 

 

 

「 おとろし 」 と対になる妖怪なのでは? と指摘される事もある妖怪「 わいら 」。これは鳥山石燕の画図百鬼夜行に描かれたものです

 

 

ネーミングからの推測

 

「 おとろし 」は恐ろしいの上方訛りで、「 おどろおどろ 」は、おどろおどろしい、つまり気味が悪くて恐ろしいと言う意味なので、名前から考えると恐ろしい妖怪と言う事になると思われます

 

また百怪図巻や画図百鬼夜行には「 わいら 」と言う別の、これまた説明が添えられていない妖怪と並べて描かれています。畏(わい)は恐れる、つつしむ、怖い等の意味がある事から、「 おとろし 」と同じ様な意味を持つので、狛犬の阿吽( あうん )のように、「 おとろし 」と「 わいら 」は対として描かれた妖怪なのでは? と妖怪研究家の多田克己氏は推測しています

 

また、おどろ髪は、ぼうぼうとした長髪のことなので、多田克己氏や同じく妖怪研究家の村上健司氏は、その意味もネーミングに込められているのではないか? と指摘しています

 

 

秋田県に伝わる「 おとろし 」の話

 

妖怪画に描かれた「 おとろし 」との関係性は不明ですが、江戸時代後期の旅行家 菅江真澄( すがえますみ )が1814年に書いた「 雪の出羽路 雄勝郡 」には、さへの神坂と言う所で、ぬらりひょん、おとろし、野槌などが百鬼夜行する事があり、化物坂と言う人もいると言う記述があるようです。さへの神坂は現在の秋田県湯沢市稲場町にあったようです

 

 

 

「 おとろし 」がどのような妖怪なのか、定かではないものの、絵姿だけは結構残っているのは、佐脇崇史が描いた「 おとろし 」の絵がストレートなネーミングと共にインパクト大だったからかもしれませんね

 

 

 

次回もお化けや妖怪の話が続く予定です