1週間ほど前にUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)を訪れた時に難民キャンプへの訪問許可を得ることができた。
その時の記事はこちら⇩
担当のAYAさん(栄養士/Clinic Evaluater)が段取りをしてくれて本日はUNRWAの運営する25か所の保健センターのうちの一つであるザルカキャンプへ。
ザルカキャンプは当初1948年の第1次中東戦争の難民流入に対応するために1949年に作られヨルダンで最も古いキャンプであり、1967年の第3次中東戦争でも多くの難民が流入した。、
UNRWAの車で向かったのだが、「着いたよ、ここがキャンプ」と言われ印象と異なりびっくりしたのは普通の街並みだったこと。
失礼だけど難民キャンプ=白いテントで沢山の人が暮らしているイメージだった。
でも、ヨルダンのスーク(市場)の街並みと変わらない景色。敷地面積0.18平方キロメートル(サッカーコート25面分で歩いて一周するのに 15〜20分くらい)の面積に当初8,000人の難民を収容していたが、現在は2万人の難民(主にパレスチナ)が暮らす。
本日の目的地である保健センターは囲いで覆われており、車が通るためにゲートが開き、歩道の移動式商店の服屋さんが移動してくれた。こちらは難民登録されている人と、その配偶者が利用できる。(すべて無料)
中に入るとこんな入口が。
保健センターと言われているが
産前産後のケア、小児健診、一般受診があり、病院と保健センターの間のような場所である。
本日は以下の様子を見させていただいたのだが、妊婦さんやママがひっきりなしにケアを受けに来ていた。
◎ANC(Anti Netal Care:妊婦健診)妊娠初期の妊婦さん(初産婦、1経産婦)、妊娠20週の妊婦さん(初産婦)
◎PNC(Post Netal Care:産後健診)産後1か月のママと赤ちゃん
◎FP(Family Planning:家族計画)指導室
◎統計確認
妊娠週数の表記が日本と若干異なる
first trimester: 1 to 12 weeks(日本の妊娠初期)
second trimester: 13 to 28 weeks(妊娠中期)
third trimester: 29 to 40 weeks(妊娠後期)
ANC(Anti Netal Care:妊婦健診)
毎月150人の新規妊婦さんが受診する(年間約1500人)こちらの保健センター
・妊娠したらまず医師を受診
妊娠確認・診察、採血、歯科検診(歯科も保健センター内にある)➡過去の妊娠出産歴含めてアセスメント
アセスメント表が母子手帳にあり、こちらの項目で2点以上の場合にはリスクありとして次回以降も医師が健診をする。
32週以降の未受診の場合は直接病院へ紹介(逆にそれまではいいのか?とも思ったり)。
1または0の妊婦は次回以降助産師外来へという流れになる。
・2回目以降は助産師外来
日本と同様に尿検査をやって待ち、助産師が体重と血圧、胎児心拍(ドプラー)を行い、保健指導をする。
初めての妊娠で助産師外来初診の妊婦さんはつわりで体重が減っちゃったと。
助産師さんはじゃがいもや~~~食べなさいよ~(アラビア語でよく分からない(笑)と伝えていた。
こちら体重計。難しい。この定規のようなものを平にしたら体重が分かる。
測ってもらったが、下のメモリが4(=40kg台)上のメモリが7(=7kg)=47kgと読むらしい。だいたい。
それとWHOとUNICEFが共同生産しているこちらのビタミン剤を渡す。
妊婦健診はA,B,Cでアセスメントし、ハイリスク妊婦は医師の健診となる。
【2025年のデータを拝見して】
WHOの方針では妊婦健診推奨回数は4回から8回になったが、現在UNRWAのザルカキャンプ保健センターは平均6回
2.5%が1回のみの受診。GDM(妊娠糖尿病)は4%。PIH(妊娠高血圧症)は5%。死産は4/1000人。流産は9%。中にはハイリスクの人でも受診しない人もいるそうで、ヘッドナース(ボス)は何回も電話すると言っていた。
分娩は100%病院で、31%が帝王切開。分娩に関しては自宅でお産する人もいるのかと思っていたが、全く。帝王切開がやはり多い。ヨルダンは法律で自宅出産を禁止している訳ではないが、自宅出産は「危険であり不衛生である」という認識が広まっており、基本的にはほぼ100%が病院または個人クリニックで出産するそうだ。
しかし、自分も自宅でお産をし、自宅出産の助産院をやっていた私は堂々とそのことを伝える。
日本の自宅出産とこちらの自宅出産は前提が異なる。
今回の視察を通していいなあと感じたことは基本的に【健診をするのは助産師】であるということ。
医師は初回とハイリスクのみ。それ以外の妊婦さん、産後のママたちは助産師の外来を受ける。
そして、緊急時や分娩時は病院へ。
医師と助産師、病院のすみ分けがしっかりされている。
日本も助産師には正常な妊娠経過を診る権利がある。本来の助産師の役割をもっと活用してほしい。
PNC(Post Netal Care:産後健診)
めちゃくちゃかわいい赤ちゃんたちがおくるみで包まれて登場♡
今日受診したママの中で血圧が高い方がいて、医師へ紹介していた。
面白いなあと思ったのは受診が終わった全てのママたちが最後にメディカルオフィサー(保健センターのボス)のところへ行き、挨拶する。文化?ボスも患者さんたちと触れ合いたいからなのか分からないけど、ママたちとボスがたわいもない会話をしている様子をみて素敵、と思った。日本でそんな光景見たことない。忙しそうな中でも、みんな喋り倒したり(患者さんの待ち時間は長くなるけど・・・笑)余裕を感じられた。
FP(Family Planning:家族計画)
こちらは基本的に産後健診に来た母親が受診する。
妊娠3期の時に産後(産後40日後)は産後健診とFPがあるよ、と妊婦健診で伝えておくそうだ。
こちらにも専門の外来部屋があり、助産師が担当。
ピル(2種類/授乳中に使えるものと産後6か月以降使えるもの)、コンドーム、IUD、ホルモン注射の4種類があった。
そして、こちらではFP指導と共にこちらの模型で乳がんのセルフチェックの必要性と方法を伝えているという。
触るとしこりがある部分が触れてリアルだった。
PCC:プレコンセプションケア(Preconception Care:既婚女性が健康面で良好な状態で妊娠に至るように準備するためのケア)
今日は見学できなかったが、話の中でも印象に残ったのは
妊娠前の検診であるPCC:プレコンセプションケアが、提供されていること。ヨルダン(アラブ圏?)の文化らしい。
結婚して妊娠したいなと思った3カ月前からPCCを受ける。こちらのキャンプでは10%の女性がPCCを受けていた。
PCCは日本で最近話題になってきた考え方である。
(日本ではおそらく不妊治療患者が多く、妊娠に向けての栄養や身体づくりを小さい頃からやっておこうというもの)
感染症チェックや鉄分・葉酸の処方、食事指導等を行う。
帰宅後旦那さんと話していて
アラブ圏は婚前交渉禁止(場合によっては家を出される)
という背景があるから
結婚したら性教育の意味でPCCを受けるという流れができているのかもしれない。
〈ヨルダンの産前産後の保険システム〉
妊娠が発覚したら50JD(約12,000円)でPregnany Insurance:妊婦保険(日本の国民健康保険のようなもの)なるものに入ることができる。プライベート病院以外は妊婦健診や産後健診はもちろん、分娩や入院費用、手術、ICU、NICUも含めて約1年間無料でサービスが受けられる。ちなみにヨルダンは保険の有無に関わらず、PCC(妊婦前健診)、ANC(妊婦健診)、PNC(産後健診)は全て無料で受けられる。
〈お給料〉
保健センターの助産師のお給料は日本の病院の看護師・助産師の基本給と同じくらいであった。
意外と(と言ったら失礼だと思うが)しっかりしている。
〈AYAとの雑談の中で印象に残っている話〉
ヨルダンでは「助産師になりたい」と思っても大学に入れないことがあるという。
他の専門職も同様で、職業登録の空きが出ないと新たな育成をするのにストップがかかるということだ。
大学のその分野はその期間クローズされるらしい。びっくり。
そのため、その場合には進学できないヨルダン人は近隣諸国に進学するとのこと。
ヨルダンのそのシステム初めましてでした。
明日は
アンマン・ニュー・キャンプへ!
(Anman New Camp、1955年設立、人口57,000人)







