極上の逢瀬
仕事の出来る男は、セックスも上手い。
そんな本の広告を見たような覚えがあるが
彼は、まさにその通りだった。
夫とはセックスレスで、その上淡白だったので
極上のセックスを体験したのは
夫ではなく、不倫相手だった。
最初に付き合った相手は、女好きで気の変わりやすい
最悪の男だったけれど、
私に女としての悦びを与えてくれた。
それ以来、甘い誘惑に勝てなくなった私は
次から次へと相手を探したが
その人と、同じようなセックスをする人に出会わなかった。
もう、多分無理なんだろう、諦めかけた頃
彼に出会った。
私に出会ったのが奇跡と言うけれど
私こそ、まさかのまさか、なのだ。
偶然、奇跡・・・。
そして以前の人以上に、彼は凄かった。
持久力なのか、それとも女性に対してサービス心が
旺盛なのか。
体験したことのない快感が私を包む。
そして、彼にとっても私は性の相性が
合うらしかった。
「僕も強い方だけど、美香も強いんだね
たいていの女性は、イクとばててしまうのに
美香は、何回もイケるんだね・・・」
そう言う彼。
「そうかなぁ、普通だと思うんだけど・・」
性の話など、同性でもしないし
まして、他人のセックスなんて興味もなかった。
ただ、彼の逢瀬のときだけが
自分の全てをさらけ出せる瞬間だった。
ただのセフレから
最初は、ただのセフレ。
私が望んだのはそんな関係。
どっぷり出会い系という麻薬に
約10年浸かっていた私は
とうてい抜け出せないでいた。
ニコチン中毒なら、いつか辞められる。
一日2箱を吸っていた私が
タバコを止めてから、もう5年になる。
だけど、もう一度始めようとは思わない。
まだ中毒性が低いのだろう。
それに比べ、恋愛は、麻薬のように
止めることができないものだ。
だから、飽きたらまた新しい恋愛を探す
はずだった。
ただ、私は若くはなかった
結婚詐欺師が、年齢を偽るけれど
実際、5歳が限度だった。
もう40歳では通用しない、そう思う頃から
服装は若づくりになっていく。
彼に出会ったのも実際の年齢など伝えていなかった。
名前も偽名。
私は胸が大きいので、叶姉妹を真似て
「美香」と名乗っていた。
そう、私は美香なのだ。
そして、彼の名前も聞かないでいた。
「どうせ、別れるんだから」
そんな風に最初は思っていた。
出会いと言う奇跡
君と出会ったのは、本当に奇跡だね。
そう彼が言った。
11月の秋晴れのの日、私はいつものように
彼の運転するベンツの助手席にいた。
もとレーサー、今は会社社長。地位も名誉もあり
尊敬できる人。
こんな人と巡り合うことなんて、私の人生では
絶対あり得ないことなのに、
私はついこの前まで彼と別れたがっていた。
私たちは、世間でいう不倫関係。
いつのまにか、私は彼の奥様や家族にに嫉妬して
苦しい恋だと思うようになっていたからだ。
女はとにかく、男の一番になりたいもの。
愛人だなんて、私のプライドが許さない。
きっと私は、どこの誰よりもわがままで独占欲が強いのだと
思う。
自分だって、W不倫。お互い立場は同じだ。
不倫に未来などない。
きっと、私は未来が欲しいのかもしれない。
私はもう40代後半、もう数年で半世紀を生きることになる。
誰がみても「おばさん」だ。
そんな私にもうどんな未来も夢もないだろう。
目の前の再就職だってない、そんなことをつぶやいた。
彼は
無理に仕事を探さなくても、何か商売をしたら?
やりたいことがあるなら、援助するよ。
そう言った。
援助・・・?
本物の愛人みたい。
でも、援助してもらうのも良いかもしれない。
そう考え始めた。