良心的で誰しも悪口を言わなかった小学校の教諭が十字路で殺害される。
刺し殺されたのだが、それは奇妙な傷口だった。
目的者はなく、遺留品もない。
刑事である淀屋は、犯人を追い続けるが、彼は胃がんを患っており、退院したばかりだった。
一方、とある高校の生徒で、殺害された教諭の娘である詩音は、絵で才能を開花させてゆく。
そんな彼女は、在校生だった流夏の絵を見て、衝撃を受ける。
それは詩音にしか分からない感覚だった。
殺害された教諭の現場では聞き込みが行われていた。
夜中で住宅街での殺害だったが、乏しい目撃証言。
現場で聞かれた音は「ガシャン」と何かが倒れる音だった。
被害者である澱川の送る会が行われたが、そこにはなぜか勤務していた小学校の生徒は一人も来なかった。
そんな最中、1人のバーの社長である椎野がトリカブトの毒で殺害される。
その息子は、あの絵を描いた流夏だった。
彼に話を聞いていくうちに、ある違和感を抱いたのは淀屋の捜査の跡を受け継いだ星野だった。
やがて一つの結論に行き着く星野。
詩音と流夏が受けていたおぞましい過去というのは、一体、何なのか?
星野は流夏が織野が殺害されていた現場にいたという事実を突き止める。
一転、また一転と違ってくる証言。
一体、流夏は何を見て、何をみなかったのか?
彼が捨てていた絵の画材。
絵を断念させたのは何だったのか。
星野は一つの結論に辿り着こうとしていた最中、悲しい結末を迎えようとしていたー。
もう、読後が悪いったらありゃしないという本でした。
とにかく、流夏が救われない。
何をどうしても、救われない。
突発偶然的に交換殺人が行われます。
それは悲しい必然でした。
大人たちの犠牲となった詩音と流夏。
彼女、彼が受けてきたのはそれはそれは大人たちの都合で、そして、精神を侵されるまでのことでした。
その真実を知った時の悲しさ、苦しさ。
タイトルの「十字路」は作者が選んだ表題ですが、私は逆に「ギフテッド」というタイトルでもいいのかなぁとも読んでみて感じました。
点数はあえてつけません。
本当に読後が悪く、なんとも言えないのですが、ラスト、詩音に希望を持たせる表現もあったのですが、私は彼女もまた、救われきれていない「一人」なのかと思うととても切なくなる独語でした。