2024年切り花の生産目標は「収量増」 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

新年明けましておめでとうございます。
暖かく、穏やかなお正月でしたと言いたいところですが、
2024年は、能登半島地震、日航機炎上など不安な幕開け。



こんなときに、ひとの心を穏やかにするのが花産業の役割。
花は・・・
のどの渇きをいやすことも、
空腹を満たすことも、
身体を温めることも、できません。
しかし・・・
花は、心の栄養、心を温めることができます。



画像 お正月、いつものように千両と万両が赤い実をつけています

 

そんな情緒的な話は、もう少し先、
いまは人命救助、安否確認、
被災された人々への、水、食料、暖房器具・用品など生活必需品を届けることが優先。
心の栄養より、寒さに耐え、生きぬくための栄養。

当ブログは、2016年に再開してから8年目、毎週1回の更新。
昨年末で409回、

なにわ花いちば在職中の7年262回を加えると671回。
毎週、長文駄文におつき合いいただきましたみなさまに感謝申し上げます。

2024年もこれまでと同じ、地方の目、普通の人の視点で花産業を考えていきます。
もう少しだけ愚考におつき合いください。

20世紀末をピークに四半世紀にわたり右肩下がりの花産業、
コロナの災い転じてようやく変化の兆し。

2023年の花産業、今年の漢字には、いつものように独断で「薄(すくない)」を選びました。
2023年12月24日「花産業 今年の漢字は『薄(すくない)』」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12833703553.html

2022年からつづく「品薄単価高」。
コロナ前までは、
品薄でも単価安、
あるいは、なんとか単価維持。
すなわち、減りつづける需要にあわせるため、供給(生産)を減らし、なんとか市場単価を維持。
需要に供給をあわせても、さらに需要は減るので、供給を減らしつづけなければならない。
日々の市況が供給量の指標。
単価安は、もういらない、送ってくるなというサイン。
それに輸入は耐え、国産は耐えられず、国産だけが減りつづけている。



図 東京都中央卸売市場花き部6社の国産切り花入荷量と単価の推移

  コロナ禍後の2021年から単価が上昇

  2023年は1月~11月

  東京都中央卸売市場花き部年報のデータを宇田作図

 

コロナ禍後、
需要が下げ止まっている(ようにみえる)のに、供給(生産)が減りすぎての品薄単価高。
行きすぎた単価高の常態化は、

一見生産者には望ましいように見えるが、小売には打撃。

花屋の廃業が多い。


小売の繁栄なしに生産の繁栄なし。
花屋が疲弊すると、量販の力がますます強くなる。
その先にあるのは、これまでとおなじ「品薄単価安」、
坂道を転がり落ちるような国内生産のさらなる減少。

2024年の目標は、国産切り花の出荷量を増やす。
そのためには、既存花農家の経営の継続。
その手段の一つが、面積当たり収量アップ。
収量増による売り上げアップ、所得アップ。

 

農家の所得=単価×出荷量-経費

経営の安定を、

「高品質・高単価」だけに求めるのではなく、

「単価×出荷量/面積当たり」で実現する。

ただし、「高品質・高単価」と「高収量」は二者択一ではない。
両者はイコール。
「高品質・高単価」の生産者は、「高収量」でもある。
野球の二刀流は、

ベーブルースか大谷か、

きわめてまれであるが、花づくりでは高品質生産者は高収量生産者。

長く品評会の審査員をさせていただいて感じたこと、
上位10%と下位10%の顔ぶれは、毎年固定。
あいだの80%は、その年により変動する。
すこしの技術向上と手入れ次第で、

努力賞が銅賞に、

銅賞が銀賞に、

あるいはその逆に変わる。
伸びしろがある生産者。


その80%生産者が、高品質・高収量を達成するためには、
金賞生産者の温室、ほ場を見て、話を聞くこと、
研修会に参加して新しい技術、新品種を学ぶこと、
基本技術を再確認すること、
そして勤勉に手入れをすること。
技術向上に近道なし。

 

面積当たりの収量増の方法には、「短茎規格・多収」もあります。

実は、「短茎・多収」で成功しているのは、「高品質・高収量・高単価」の生産者です。

あるいは、集落営農などで、県や農協などのサポート体制が整っている場合です。

 

まずは、需要の実態にあった通常規格での収量増が基本です。

 

生産者個人が、景気をよくすることはできません。

花の消費を拡大することもできません。

しかし、収量増は個人で達成できます。

というより、個々の努力、スキルアップでしかできません。

産地には、

花屋さんが想像できないくらい多くの研修会があります。
都道府県主催、市町村主催、農協主催、花き組合主催・・
別に、

共撰共販、系統出荷などであれば、

ほ場見まわり、選別・荷姿の目ならしなども頻繁にある。

栽培技術を学ぶ、再確認する場はいくらでもあります。

経営改善、生活改善の指導もあります。

すべて、原則無料。

それでも出席者は少なく、固定。
出席するのは、

いまさら勉強することはないような上位10%=高品質=高収量=高単価=金賞の生産者。
下位10%=それなりの品質=低収量=低単価の生産者は顔をみせない。
中間80%は来たり来なかったり。
義理があるひとが役員だったら、仕方なく参加する。

何をいまさらと思われるでしょうが、
2024年の目標「収量増」を達成するには、研修会の参加者を増やす。
研修会の事務局、役員さんは参加者を集めることが仕事。
花き振興を担う都道府県、市町村の担当者は、研修会参加者の数値目標を定め、達成度を検証。
その前提、

生産者に役に立ったと感じてもらえる研修内容であること

いうまでもありませんが。
いかにも役所的ですが、

なにもしないで、お天気任せ、なりゆき任せでは、収量増も高品質も得られません。

 

2024年の切り花生産者は、収量増で、経営を向上させましょう。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.410. 2024.1.7)

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