花産業のみなさま、彼岸商戦お疲れ様でした。
コロナ渦の緊急事態宣言やステイホームで花産業に大きな変化があったことはすでに報告しました。
結婚式、イベントなど業務需要が減ったことは、マイナスの変化。
うれしいプラスの変化があります。
①室内で観葉植物、ベランダや庭、貸し農園で花や野菜栽培を楽しむ人が増えた
②花に関心が低かった若い世代の切り花、鉢もの、苗もの、園芸用品の購入が急増
つまり、ステイホームで業務需要は減ったが、ホームユースが増えた。
2021年2月21日「ステイホームで花産業は若い顧客を獲得した」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12657740299.html
ホームユースが増えたことは、花産業にはうれしい話題。
同時に、
「消費者はホームユース用の切り花や鉢もの・苗もの、園芸用品をどこで買っているのか?」を考えておかないと、手放しではよろこべません、というのが今回のお題。
消費者の購買行動を調べているのが総務省全国家計構造調査(旧「全国消費実態調査」)。
5年ごとの調査。
直近は2019年。
2021年2月末にやっと公表されました。
なぜ、調査から公表までこんなに時間がかかったのか?
それは、総務省のHPからデータをダウンロードしてみればわかる。
とにかく膨大なデータ。
ひとつの表をダウンロードしただけで、パソコンが一気に重くなる。
最初にダウンロードした表はエクセルで24万行ありました。
その「全国家計構造調査」から、「消費者はどこで花を買っているか」を調べます。
全国家計構造調査が調べている膨大な品目は、別の統計「家計調査」と連動。
花に関係する支出品目は、「切り花」、「園芸用植物」、「園芸用品」。
以前は、「園芸用植物」と「園芸用品」をまとめて調査していたが、最近は分離。
家計調査では、支出項目の内容を次のように例示しています。
園芸用植物:ガーデニング、家庭菜園に係わる植物
・草花の種、球根
・鉢植えの植木、草花、苗木盆栽
園芸用品:ガーデニング、家庭菜園に係わる用品
・鎌、くわ、シャベル
・せん定用はさみ、移植ごて
・じょうろ、植木鉢
・園芸用肥料(腐葉土、鹿沼土、油かすなど)
・園芸・菜園用のさっちゅうざい、・消毒剤・除草剤
・家庭菜園の借地料
なお、全国家計構造調査は2019年秋の調査で、コロナ渦は反映されていません。
まず切り花。
2019年には、消費者(2人以上の世帯)は、一般小売店(花専門店と読みかえることができます)で買ったのが34%、スーパーで買ったのが31%でした(いずれも金額%)(図1)。
(総務省 全国家計構造調査)
2014年までのデータからエクセルに計算させた2019年推測値は一般小売店が36%、スーパーが35%で、両者がほぼ同じになる、でした。
2019年5月12日「平成の花産業③-量販の台頭、もうパッカー屋とはよばせない-」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12460696873.html
実際は、
一般小売店は予想以上に減り、スーパーが予想以下にしか増えませんでした。
一般小売店とスーパーの購入額が逆転することもありませんでした。
ただし、ここでいうスーパーは狭い意味でのスーパー。
全国家計構造調査では購入先を9つに分類しています。
通信販売として、「インターネット」と「その他、カタログなど」の2つ。
店頭販売として、「一般小売店」、「スーパー」、「コンビニ」、「百貨店」、「生協・購買」、「ディスカウントストア・量販専門店」の6つ。
そして、上記以外の「その他」。
切り花での9つの購入先の比率を示したのが図2の円グラフ。
(総務省 全国家計構造調査)
「スーパー」と同じような切り花の販売方法(無人販売)は、「コンビニ(まだ量は少ないが)」、ホームセンター、ガーデンセンターなどの「ディスカウントストア・量販専門店」、農協Aコープや生協などの「生協・購買」があります(図2の青)。
そこで、「スーパー」、「コンビニ」、「ディスカウントストア・量販専門店」、「生協・購買」をグループ化し、「スーパー・量販等」として合計しました。
そうすると「スーパー・量販等」は39.1%になり、「一般小売店」の34.1%を上まわります。
この分類で、1994年からの購買先の比率を見なおすと、図3のようになります。
(総務省 全国家計構造調査)
スーパー・量販等:「スーパー」、「コンビニ」、「ディスカウントストア・量販専門店」、「生協・購買」の合計
「一般小売店」での購入が減りつづけ、「スーパー・量販等」が増えつづけることがさらに明らかになりました。
このように、
2019年は「スーパー・量販等」での切り花購入額が、「一般小売店(花専門店)」を上まわった歴史的な年になりました。
つまり、
消費者はホームユース、カジュアルフラワーを、「一般小売店(花専門店)」より、「スーパー・量販等」で多く買うようになりました。
では、園芸用植物・園芸用品は?
もともと
園芸用植物・園芸用品は切り花のように「一般小売店(花専門店)」での購入比率が高くありませんでした。
1994年の「一般小売店」での購入は、切り花は71%でしたが、園芸用植物・園芸用品は46%でした(図4)。
図4 園芸用植物・園芸用品の購入先の推移(金額%、2人以上世帯)
そして1999年にはすでに「スーパー・量販等」が「一般小売店」を上まわっていました。
その後は「スーパー・量販等」は50%前半で推移していますが、「一般小売店」は微減が続いています。
2019年の園芸用植物と園芸用品の購入先を別々に見てみましょう。
鉢もの・苗ものなどの園芸用植物ではまだ「一般小売店」が存在感を示しています(図5)。
図5 園芸用植物の購入先(金額%、2人以上世帯、2019年)
(総務省 全国家計構造調査)
購入先は
「一般小売店」がもっとも多く32%で、「スーパー」の17%、「ディスカウントストア・量販専門店」の27%を上まわっていますが、「スーパー・量販等」は49%になります。
園芸用品は
品揃えが豊富な「ディスカウントストア・量販専門店」だけで40%で、「スーパー・量販等」では66%もあります。
「一般小売店」は17.5%にすぎません。
図6 園芸用品の購入先(金額%、2人以上世帯、2019年)
(総務省 全国家計構造調査)
このように、
園芸用植物・園芸用品の購入先は、20世紀末から「スーパー・量販等」が主役でした。
前々回に報告したように、コロナ渦のステイホームで観葉植物や苗ものの消費が増えました。
とくに、
これまで花に関心が低かった若い世代が切り花を含め、室内の観葉植物、ベランダや庭でのガーデニング、家庭菜園を楽しむようになりました。
この新たに顧客となった若い世代を、いかに定着させるかがアフターコロナの課題であることも述べました。
それとともに、
若い世代を含めた消費者が、切り花、鉢もの、苗ものおよび園芸用品をどこで買っているかをも考えなければなりません。
ホームユース用の切り花、鉢ものやガーデニングや家庭菜園の苗や、その用品は「スーパー・量販等」で買うことが定着しつつあります。
このままでは
ブライダル、高級ギフトなどの高級専門店と、ホームユース、カジュアルフラワー、ガーデニング、家庭菜園などの「スーパー・量販等」に二極化します。
街の花屋さんが両者の間に埋没します。
ホームユースを増やすことは花産業の大目標ですが、そのことで街の花屋さんが衰退しては本末転倒です。
「スーパー・量販等」は「まず価格ありき」です。
「スーパー・量販等」の販売力がさらに高まると、
市場価格の低下、
切り花では輸入の増加、
その先には完成仏花、完成花束の輸入があり、
生産者、いちばの経営が圧迫されます。
さらには、
「(街の)花屋さんが1軒減ると花農家が3戸減る」の法則?があり、ますます国内生産が衰退します。
生産者、いちばにとっては「スーパー・量販等」と、どう付きあっていくかが大きな課題です。
宇田明の『まだまだ言います』」(No.271 2021.3.21)
2015年以前のブログは
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