ステイホームで花産業は若い顧客を獲得した | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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コロナで世の中が大きく変わりました。
花産業では、
結婚式やイベントなど業務需要が激減。
さらに、ステイホームで花の消費構造にも大きな変化。

今回は、ステイホームとホームユース消費との関係を総務省家計調査のデータから検証します。
あいかわらずグラフばかり、数字ばかりで、くどい説明です。
数字でしかものが言えないのが研究者・技術者の習性、

適当に読みとばしてください。

図1は、

家計調査での二人以上世帯の切り花と園芸用植物・園芸用品の年間支出金額の推移。

園芸用植物:鉢もの・苗もの・盆栽、たね、球根など

園芸用品:ポット、プランター、用土、肥料など

2014年までは園芸植物に園芸用品も含まれていました。

2015年からは別々に調査されているので、過去のデータと揃えるために両者を合計して、園芸植物・用品としました。


図1 切り花および園芸用植物・園芸用品支出金額の推移

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

2020年は花産業の歴史的な年と記録されるでしょう。
ひとつ目は、

はじめて園芸用植物・用品の支出金額が切り花を上まわったこと。
家計調査で切り花、園芸用植物の支出金額が公表されてから、ずっと切り花が園芸用植物より多かったのが、2020年は逆転。


ふたつ目は、

2019年まで減りつづけていた園芸用植物・用品の支出金額が、2020年にV字回復したこと。
これらは、コロナ渦でのステイホーム効果でしょう。
切り花は園芸用植物・用品ほどのアップはなかったが、大崩れではなく、なんとか持ちこたえました。
それぞれの2019年支出と比べると、切り花は3%減、
園芸植物・用品は12%アップ(図2)。
内訳は園芸用植物が11%、園芸用品が13%アップ。


図2 2020年の切り花および園芸用植物・用品の支出金額前年比

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

ステイホームで家にいる時間が増えた人々は、切り花よりも鉢ものを楽しむことを選んだようです。
さらには、園芸用品の伸びが大きいことから、活動はベランダや庭での花づくり、野菜づくりに向かったようです。
そのことは年代別支出金額で証明できます。
これまでから、切り花、園芸用植物・用品の支出金額は、世帯主の年齢に比例していました(図3)。


図3 切り花および園芸植物・用品の年代別支出金額

   (総務省家計調査、二人以上世帯、世帯主の年齢別)

 

支出金額は、

若い世代、現役世代は少なく、リタイア後のシニア世代が多くなります。
つまり、

切り花、鉢もの、苗ものなどの消費はシニア世代に支えられています。
それはコロナ渦のステイホームでもかわりません。
しかし、

コロナ渦の2020年の消費は明らかにこれまでとちがいます。


図4は年2020年の代別支出金額の前年対比です。


図4 切り花および園芸植物・用品の世代別支出金額前年対比(2020年)

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

園芸用植物・用品の消費は驚異的。
年代別支出金額と年代別前年対比は真逆。
前年比伸び率は若年層では大きく、シニア層では小さい。
29歳以下では122%増ですが、70歳以上では3%増。
伸び率はみごとに年齢に反比例。


切り花はすこしちがいます。
29歳以下だけが劇的にアップし、30歳代以上はほぼ例年通りの動き。


29歳以下はもともとの支出金額が少ない(分母が小さい)ので、わずかの増加で伸び率が大きくアップします。
とはいえ、増えた金額は劇的です。

両極端の29歳以下と70歳以上の2019年と2020年の支出金額の増減を比てみましょう。

図5は切り花、

図6は園芸用植物・用品。


図5 29歳以下と70歳以上の2019年と2020年の切り花支出金額

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

切り花では、

29歳以下は716円から1,801円に1,085円増えました。
逆に、

70歳以上は11,941円から11,372円へ569円減りました。


園芸用植物・用品では、

29歳以下は、1,292円から2,867円に1,575円増えました。
70歳以上は、11,813円から12,181円へ368円増えました。


図6 29歳以下と70歳以上の2019年と2020年の園芸用植物・用品支出金額

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

このように、29歳以下ではもともとのベースは低いものの2020年には劇的に増えました。
70歳以上ではベースは高いものの2020年には微減または微増です。

 

図7は、2020年の切り花、園芸用植物・用品の購入頻度の前年対比。

購入頻度:100世帯あたりの年間購入回数

 

図7 年代別切り花、園芸用植物・用品購入頻度前年対比(2020年)

   (総務省家計調査、二人以上世帯)

 

29歳以下では、

他の世代より、切り花、園芸用植物・用品ともに、購入頻度が圧倒的に増えています。

つまり、

これまで花に無縁であった若い世代が花を買うようになった証です。

 

コロナは花産業に、業務需要の喪失など大きな打撃を与えました。

一方で、

新たに若い顧客を獲得できたことで、花産業の未来が明るくなりました。

しかし、若い世代は移り気。
コロナが収束したあとは、ステイホームの反動でGoToトラベルなど一気に外出がふえるでしょう。
ステイホームで買った観葉植物、ベランダの花、家庭菜園の管理が負担になることが考えられます。
しかも、子育て、共稼ぎなどで多忙。
せっかくの新しい顧客も何もしなければ一時的なブームで終わります。


では、切り花、鉢もの、ベランダ園芸、花壇づくり、家庭菜園などに興味をもち、行動しはじめた若い顧客を定着させるにはどうすればよいのか?
次回考えます。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.267 2021.2.21)


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