ハッピーマンデーは沢山あるものの週半ばの祭日はここのところ珍しく、得した気分になって10時前に会社を出るといつものようにそこは錦糸町。
行きつけの居酒屋で焼き鳥とくじらのベーコンをつまみに熱燗の徳利を数本。
12時前に店を出てあらゆる邪悪を振り払い、満たされない思いをつのらせながらも紆余曲折を経て錦糸町の駅に辿り着き、ちゃんと最終の快速に乗って地元駅に着いたのは一時前。
でもやっぱりもう少し飲みたくて〝Pique Pique〟という名のバーでアードベックを何杯か飲んで最後にブラッディー・メアリーを頼む。この店はトマトを潰してからシェイクするので多少の時間が掛かるものの、出来上がりは他ではない美味しいブラッディー・メアリー。トマトの甘味が引いた後にウォッカの味が口の中にふわっと浮いてくる。
そんなブラッディー・メアリーで深夜に蓋をしてiPodのボリュームを最大にすればあっという間にそこは自宅。
マイルスを聴きながら湯を沸かしコスタリカの豆を挽き濃いめのコーヒーを入れて、さてこれからどうやって心の隙間を埋めようか。
こんな夜を過ごしたところで足りないものが浮き彫りになるだけのよう。

寝るしかない。
3年ぶりのブルーノートはチック・コリア。
開場してから1時間半。ライトダウンした客席の合間を抜けてファイブピースバンドのメンバーが登場。
通路に近かったのですぐ目の前をチックが通りお客と握手をしながらステージへ。
僕はキーボードの正面後方の位置に座ることができたのでチックを見るには充分な特等席。

水の記憶-BLUE NOTE


ステージは全体的にチックが前面に出るような構成ではなく、チックが後方からバンドをまとめていくような展開だった。
マクラフリンは自分の中では高校生の頃によく聴いた〝スーパーギタートリオ〟のイメージが一番強かったが、初めて見るマクラフリンは持っていたイメージとはちょっと違って程よくラフなプレイはどこか和やか。しかしその音はまさに円熟。
チックとのちょっとした合図を取る仕草が長年の二人の関係を象徴するようで、この二人にどっぷり気持ちを委ねて聴くことができた。
ブライアン・ブレイドのドラムスはすごく気に入った。初めてだったけれど、彼のアルバムを買って聴いてみたいと思う。
そして、チックのキーボードの不思議な魅力にはたまらなく感動。
やっぱりこの「音」が大好きなんだ・・・

水の記憶-FIVE PEACE BAND


アンコールが終わり客席の中を抜けて行くチックに身を乗り出して握手をしてもらった。その時のあの大きな目が忘れられない。彼の手は分厚くて柔らかだった。

水の記憶


CHICK COREA & JOHN McLAUGHLIN FIVE PEACE BAND at BLUE NOTE TOKYO
with CHRISTIAN McBRIDE, KENNY GARRETT & BRIAN BLADE

2009 2/2 mon. - 2/8 sun. (2/4 wed. OFF)

Chick Corea(p,key)
John McLaughlin(g)
Christian McBride(b)
Kenny Garrett(sax)
Brian Blade(ds)








昨夜、J-WAVEで鳥山雄司のBODY & SOULという番組を聴いていたら、来日しているチック・コリアを取り上げていてブルーノートでライヴがあるとのこと。
すっかりくだらない日常に埋没してた。こんなニュースを知らなかったなんて・・・
しかもジョン・マクラフリンが参加するユニット“ファイヴ・ピース・バンド”でまさに夢の響宴。
チックとマクラフリンが公式に共演するのはマイルス・デイヴィスの名盤『ビッチェズ・ブリュー』以来、約40年ぶりだそう。
ネットで調べるとチケットはほぼ完売状態。朝11時になると同時に職場を離れブルーノートに電話を入れるとキャンセルが出ていて7日のチケットが取れた。一生後悔するネタがまたひとつ増えるかと思ったがほっとした。

ピアノでは僕の中ではチックが至上のプレイヤー。10代からの想い出は尽きない。80年代はライブ・アンダー・ザ・スカイに来る度に読売ランドに行き、最近では07年には東京JAZZとブルーノートでチックを聴いた。

今夜は浪人時代の想い出のアルバム〝Children's Songs〟を聴く。
チックのあのピアノの音に虜になっていた。ソロアルバムの中でも一番聴いたアルバムだと思う。
ゲザ・アンダを想わせるような、子供が幻想的な風景の中で飛び跳ねている光景を見ることができる全20曲からなる小曲集。

週末が楽しみ。

水の記憶


〝Children's Songs〟Chick Corea
1984 ECM RECORDS

デヴィッド・フィンチャー監督ということでちょっと期待してDVDを観る。「セブン」は面白かった。
どん底に落ちないと本当の自由は手に入らないっていう自虐的なテーマはちょっと気に入った。
マゾヒストが新たな自分を知るほどに痛みや熱さを受け入れてどんどん増幅する快楽を手に入れる過程を見るよう。
ストーリーはこのように日常から逸脱し逃避した人間が瓦解してもう一人の自分を作り出し、その願望がコントロール出来なくなるまで肥大化し崩壊する。所々、「時計仕掛けのオレンジ」や「アキラ」を思い出すようなストーリー。

エドワード・ノートン扮する「主人公」、若かりし頃のデ・ニーロが演じていれば相当ハマりだったのでは・・と思った。それにしてもブラピよりも秀逸の演技だった。

水の記憶

〝FIHT CLUB〟
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:エドワード・ノートン
     ブラッド・ピット
     ヘレナ・ボナム=カーター
音楽:ザ・ダスト・ブラザーズ
配給:20世紀フォックス 1999年
時々聴きたくなるけど躊躇して聴くのをやめてしまう。
あまりに時の重さを感じてなかなかしらふじゃ聴けないアルバム。
大学生の頃、MOZZというジャズ喫茶に入り浸り、出世払いでウイスキーを飲み倒していた頃、店で何度も何度もこのアルバムを聴いた。
フリージャズばかりか掛けてるかと思えば時々ふとこんなレコードも掛ける店だった。
あの店の想い出が自分の中であまりに感傷的過ぎて気軽に聴けないけれど、今夜は酔っぱらって部屋に辿り着いたのでろうろうと鳴るアーデンで控えめな大音量で深夜の時間に浸る。

水の記憶-Rainbow Seeker

〝JOE SAMPLE・RAINBOW SEEKER〟
1978 MCA Records inc
映像が奇麗な映画だった。
それと、登場する死人の数では過去最大級だったかもしれない、くらいの印象が残る。

ペルシャ帝国からの遣いがスパルタの王を訪れ「水と土を渡せ」と言った後、スパルタ王妃(レナ・ヘディ)に向かって「なぜ女が口を出す?」と聞き王妃が「男は女から生まれるからよ」と答えるシーン。
妙に感動した。
そうなんだ。男もみんな女から生まれるんだ。
当たり前のことなのに。
女と母を演じる彼女がすっかり主眼になってしまった。

水の記憶

監督:ザック・スナイダー
キャスト:ジェラルド・バトラー 、レナ・ヘディ 、デヴィッド・ウェンハム 、ドミニク・ウェスト 、ミヒャエル・ファスベンダー 、ヴィンセント・リーガン
原作:フランク・ミラー、リン・バーレイ
音楽:タイラー・ベイツ
配給:ワーナー・ブラザース映画 2007年
夕方になって新宿は思い出横丁で焼き鳥を食ってビールを飲む。狭い店内にラジオが流れていてそれだけでどこか懐かしい気分。
下北沢に着いて久しぶりの町をぶらっと散歩した。日が暮れた町はやっぱり寒い。

水の記憶


入場時間が近づいてスズナリに行くと小さな受付の窓口から本多劇場の舞台で使われていた音楽が聞こえてくる。この辺りから舞台は始まってるよう。ちょっとどきどきする。

水の記憶

運よく席は上手の最前列。整理番号が110番だったので吉と出るか凶と出るかと思っていたら吉に転んだ。
開演。スモークに巻かれる。これはやっぱり前例の醍醐味。役者の唾や水飛沫も飛んでこいとばかり心持ちケツを前にずらす。

水の記憶-秘密の花園チラシ


「日暮里はキャバレーの多い町です」

始まった。かつての緑魔子は高尾祥子に、柄本明は戸辺俊介に。比べずに観ようと思っていたけれど、いい。二人の役者は恐らく稽古の時には意識せずにいられなかったはずなのに、台詞は忠実に再現されていながら舞台が別の匂いを放ってる。二人の芝居がやがて細い線から太い線に変わり舞台も熱を帯びてきて僕らも引き込まれていく。
第二部はいちよともろはが交錯を続けアキヨシの心を振り回す。坂の上の世界と坂の下の裏寂れたアパートを繋いでいた銀輪が舞台を去り、糸が途切れたように窓を叩いていた水が舞台に流れ出す。
過去を振り返るシーンで舞台は終わるが閉じられた舞台には虚実が彷徨うばかり。
なんてドラマチックな・・・。

ここから続編。
舞台が引けて劇場の出口に柄本明さんの姿があり「ありがとうございました」とお客さんに挨拶をしているところ。握手をしてもらい、劇場の階段を降りる。今年は年明けから「身も心も」や「秘密の花園」のDVDで柄本さんをたくさん観た上に今日の舞台だったのでご本人を前になんだか嬉しくなってしまった。
そして下北沢の駅に向かって歩いてるとどうも聞き覚えのある特徴のある声が。
振り返るとそこに唐さんが。びっくり。舞台を観に来てたんだ。連れの方と居酒屋に消えてしまった。
そんな訳でお腹いっぱいの夜。

水の記憶-秘密の花園パンフ


「秘密の花園」2009年1月6日~18日 下北沢ザ・スズナリ
作:唐十郎
演出:角替和枝
出演:戸辺俊介(アキヨシ)高尾祥子(いちよ・もろは)ベンガル(大貫)綾田俊樹(殿)田中洋之助(かじか)上原奈美(千賀)柄本明(中年男)
今はなき下北沢のシネマアートンで唐十郎の「ガラスの使徒」を観た時に劇場で買ったDVD「秘密の花園」を観る。
1982年11月に本多劇場の杮落し興行第一弾として上演された作品。

劇中の舞台は日暮里。
日暮里はキャバレーの多い町です・・というアキヨシの台詞で始まるともうそこは唐十郎の世界。
ちょっとくだらない駄洒落がはさまるところも彼の世界。
第2部では嵐のシーンで舞台とは思えない量の水が押し寄せる津波のようにバシャバシャと。
この辺の演出には多分唐さんが口を挟んだに違いない。

やはり緑魔子の独特の声と台詞回しには惹き込まれてしまう。
緑魔子を観たのは過去2回。劇団第七病棟の1992年「オルゴールの墓」と1995年「人さらい」。
やはりあの声には堪らない懐かしさと悲しさと可愛さがあって大好き。

明日は、現在同じ下北沢はスズナリで東京乾電池が再演中の本作品を観に行く。
柄本明もかつて小林勝也が演じた中年男役で登場する。
明日が楽しみ。

水の記憶-秘密の花園DVD
「秘密の花園」1982年本多劇場
作:唐十郎
美術:朝倉摂
演出:小林勝也
出演:緑魔子(いちよ/もろは)柄本明(アキヨシ)山崎哲(殿)藤井びん(かじか)田所陽子(千賀)小林勝也(中年男)清水綋治(大貫)
今夜は仕事の後友人と神田で待ち合わせ、高田馬場へ。
夜が自由になるのは今週ばかりと寸暇を惜しみつつ、まずは昔よく通った栄通りの焼き鳥「双葉」へ。
適当に焼き鳥を注文し熱燗。
味が落ちたかな・・二十年も経てば店も変わるか・・・
春先に結婚を控えた友人相手にわが身の上話を散らしながら。
せっかく馬場に出たのだからと「あづま寿司」へ。
寿司屋には長居はしないと粋がりながらまた熱燗と握り。
〆は「intro」かれこれ10代からの思い出のジャズ喫茶。
〝Smokin' Drinkin' Never Thinkin'〟
毎日をいつ死んでもいいように生きる。
明日は何が起きるか誰も知らないんだからね。
仕事初めの今夜・・・
錦糸町の行き付けの赤ちょうちん居酒屋「ひょうたん」で鮪の山かけとカンパチ刺を肴に瓶ビールと熱燗。
「今年もよろしく」と店を出て電車に乗るつもりがほろ酔いの体は駅を背に丸井前の横断歩道を渡り、翔子ちゃんのスナックへ。
僕と同い年の同じ獅子座の彼女。絶対に手の届かない人。
酔いに任せて身勝手な恋愛論をぶちまけて。

店を出るといつものとおり、最初の角を曲がるまで手を振る彼女。
そんなこと、わかっちゃいるけどいつの間にかほろ酔いが深酔いに。
帰りの鈍行で立ちながら眠る夜。