叡智の海・宇宙 | つれづれに…

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今日はアーヴィン・ラズロ博士の「叡智の海・宇宙」を紹介します。

著者のラズロ博士は、哲学者であり、物理学者、そして若い頃はコンサートピアニストでもあった多才な方。
ミハイル・ゴルバチョフ(元ソビエト大統領)、ダライ・ラマ(法王)、アーサー・C・クラーク(作家)、ピーター・ガブリエル(ミュージシャン)などそうそうたる人物が名を連ねる
ブダペストクラブ(世界賢人会議)」の会長でもあります。
さらに2004年、2005年には、ノーベル平和賞候補にもなった方で、映画「ガイアシンフォニー第五番」(龍村仁監督)にも登場されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

そんなラズロ博士は、哲学者の叔父の影響もあって、かれこれ40年以上にわたって、原子(量子)・人間・宇宙に存在する一貫性のある原理・構造を探究してきました。 本書は、そんなラズロ博士の研究の集大成とも言える内容になっています。

博士は最初に、宇宙論、量子物理学、生物学(進化論)、そして意識研究における驚くべき相互一貫性について語ります。

   ・宇宙は一つの総体として、精巧に調整された相互関係を示す
      宇宙を維持する定数は驚くほど微妙に調整されており、
      調和的な比率を保っています。

   ・量子(原子を構成する物質の最小単位)のレベルにおいても、
     驚くほど密接な相互関係が存在している

       相関関係をもった量子は、たとえ何億光年離れていようと
       瞬時に影響を及ぼしあいます。

   ・生体と環境の間で量子と同じく不思議な相互関係が
     発見されている

      環境がもたらす任意のストレスは、一瞬にして遺伝子に一連の
      複雑な変化(超・変異)を引き起こします。

   ・ひとりの人間と他の人間の心と身体のあいだの
     「超個的(トランスパーソナル)な結びつき」が存在する。


これらの結びつきと相互関係の謎を研究した博士は、宇宙には、物質とエネルギーのほかに、時間と空間の中ですべてのものを結びつける媒介としての「情報(in-formation)」がある、と語ります。

   ※単なる「情報:information」ではなく、その受け手に実際に形を与える
      (formation) という意味で、あえて「in-formation」と称している.
      物理学者のデヴィッド・ボームが提唱。

そしてその情報(in-formation)は、従来の量子物理学で言及されている重力場(Gフィールド)電磁場(EMフィールド)とともに、宇宙の全ての記録が記載されたアカシック・フィールドAフィールドという形で存在するのです。

博士によると、人間の脳は、常にこのAフィールドと情報交換を行っているのだそうです。
つまり人間の脳は、記憶の貯蔵庫ではなく、Aフィールドの情報を受信する受信機のようなもの。

そして、過去の人々の記憶も全て、このAフィールドに記録されており、私たちはそれらの情報の上に生を重ねていくのです。 さらに、私たちの体験や記憶もこのAフィールドに追記されていく…

それらの記録は宇宙の記憶として、その次の宇宙(京都大学の川合光教授らのサイクリック宇宙論によると今の宇宙は50回目の生まれかわりだとか)へと引き継がれていきます。
あらゆるものは、このAフィールドを通じて進化していくのです。

そして、このAフィールドの記録媒体となっているものが「量子真空」と呼ばれるもの。 宇宙はこの「量子真空」で満たされており、私たちはこの「量子真空」の海の中でつながっている存在なのです。
ちょうど、海の中で、誰かが波を立てると、その波は海水を通じて伝番していくように…
そこは「空」であると同時に「充溢」な世界なのです。

さらにこの本は、「情報体」としての宇宙を捉え、「我々はどこから来て、どこへ行くのか」「意識は死後どこへ行くのか」といった、人間の意識と宇宙の意識のかかわりにまで言及していきます。
情報場である宇宙のAフィールドは、宇宙に存在する万物の場(フィールド)であると同時に意識の場(フィールド)でもあるのです。


   私たちが経験することのすべてが、人類の集団的な
   記憶装置の一部となる。

   私たちは、現在生きている人々と、未来のすべての
   世代の人々の、
脳や意識の中で生き続けるのだ。


自分の体験や記憶は未来にどう生き続けるのだろうか? そして、どんな影響を与えていくのだろうか?
そんなことを考えさせる、とても深遠な本です。