こんにちは。
今日は「正確すぎるが故に何の役にも立たない」といった話を書いてみます。
今日は「地頭力のはじめ方」(細谷功著)より、抜粋しながら、仮説思考力を養う話をしていきます。面白い事例紹介があったので、それらもお伝えしたいと思います。
「仮説思考力」というのは、わかりやすくいうと、「結論から考える」です。ではみなさんも仮説思考力をチェックしてみましょう。YES/NOでお答えください。最後にYESの数をカウントしてみてください。
① 催促されることが多い
② 最終着点を確認せずに会議にのぞむことがある
③ 休日に「暇だ」「することがない」と思うことが多い
④ 3年後の自分の姿を想像したことがない
⑤ 言うことがコロコロ変わる人がいて困っている
⑥ 何度言ってもわからない人がいて困っている
⑦ 「道具(カタチ)から入る」タイプである
⑧ つねに完璧をねらうが完成(実現)しないことも多い
⑨ 「この状態では人に見せられない」と考えることが多い
⑩ 十分な情報がない場合は結論を出さない
細谷さんはYESが2個以下は仮説思考力がA、3~6個がB、7個以上をCとランク分けしています。とまり、仮説思考力が高い人ほどNOの数が多くなります。
仮説思考力で大切なのは、結論から考えることを妨げる力(阻害求心力)の強さであり、それを確認しました。阻害求心力とは、完璧主義(①⑧⑨)、情報依存症(⑩)、正確依存症などです。
「結論から考える」とは、自分ではなく相手(⑥)であり、手段ではなく最終目的(②⑤⑦)であり、現在ではなく将来(④)から考えられているか、あるいは時間やスピードに関する態度(③)はあるか、どいう点もチェックしています。
結論というのは言い換えれば最終的にたどり着く目的地のようなものです。結論から考えるというのはこの最終目的地を仮に設定して無理やりにでもそこに自分を置いてみる方法です。
今の自分を見ているもう一人の自分各目的地にいるか今の自分を目的地まで最も効率的に引き寄せる方法を考えるイメージです。
この思考法はできれば今の時間と到達すべき自分とのギャップを明確にすることができます。
具体的には、
①今ある情報で最善の結論を想定し、
②情報の精度を上げていきながら適宜その仮説を修正し、
③最終結論に至る思考プロセスのことを言います。
仮説思考することのメリットは結論をある程度想定しておくことで最小結論に至るまでの情報収集や分析の作業を最短かつ最小の労力ができることです。
最近の洗濯機でも動作を開始すると直ちに残り時間何分というのを表示していきます
仮説思考の応用です。はじめに出てくる残り時間というのはあくまでもその時点での最善の推測です。これが作業が進んで情報が増えてくるにつれてコロコロ変わることは経験済みです。
でもこういう動作をするものだと分かっていれば、何の情報がないよりはマシでしょう。これは仮説思考の根本にある考え方なのです。
思考とは現在地から目的地に自分の支店を離れさせて考えることです。ではこの向こう側に離れるという思考を妨げるのとは何なんでしょう。
まず1つ目は「完璧主義」です。私たちは知識中心の詰め込み教育の弊害からか、物事には常に正解があり、ある程度の精度がなければ話しても意味がないという発想を持ちがちです。ところが向こう側に離れるためには多少の不確実性を確保しなければなりません。「できない理由」がたくさんあってもまずは離れてみることが必要です。
2つ目が「情報の呪縛」です。私たちは何かの結論を出す時に(勝手に自分で思い込んだレベル)最低限の情報が必要だと暗黙のうちに思い込んでしまっています。そのために「今ある情報で結論を出す」ということができなくなってしまっているのです
私たちの身の回りで「仮説思考をしている」電子機器があります。答えは「カーナビ」です。仮説思考の目的である「最終目的地に最も効率的に到達すること」にあります。
①動作開始段階
・目的地を入力する
・カーナビは目的地までの最適な(時間が最短の場合や料金最低かなどはユーザーが設定できる)ルートを算出する。
・あわせて即座に「見込みの」到達時間を算出する。
②走行段階
・(当たり前ですが)つねに最終目的を記憶し、それを中心に情報を加工する。
・当日の渋滞情報を入手して到着時間を常に最新版に再計算する
・途中で事故があった場合など、必要に応じてルートを最適なものに変更する。
・場合によっては目的地そのものも変更可能
・その場合にはナビは直ちに新しい目的地に合わせてルートと見込み到達時間を変更する。
③目的地への到達
・最終目的地に到達したことをアナウンスする。
カーナビは全て、
・最終目的地に最適な方法で到達できることを「片時も忘れずに覚えて」いる。
・その時にある最善の情報を用いて、常にその時点での最適化を算出する。
・常に最新情報を入手して同社の答えをその都度更新していく。
などが挙げられます。
これはまさに仮説思考の基本精神と合致しています。
ちなみに私たちの脳の中のカーナビは、
・柔軟性があって「融通が利く」という長所がある半面で、
・気まぐれで、
・時に基本動作に充実でなく、「目的地」を忘れるところがあり、
・怠け者で時間があれば、つい寄り道をし、
・始めに決めたルートに固執するあまり、途中で最終目的地のことをつい忘れてそのルートを走ることが「目的化」してしまう、
といった「仕様」になっています。(ここまで)
ここからは、僕の考える仮説思考についてお話します。
まず、誤解があってはいけないのですが、仮説思考を使えば、必ず効率的に問題解決できるわけではありません。ピントはずれの仮説ばかり立てていると、いつまでたっても成り立つものが見つからず、「一から考えたほうが早かった」となるからです。
仮説思考のポイントは、限られた情報の中から、できるだけ「良い仮説」を立てることに尽きます。仮説検証のサイクルを回す回数は少ないにこしたことはありませんから。
そのためには、「ゼロベースで考える」「斬新な視点で考える」「見かけの情報にとらわれない」「検証可能な仮説を立てる」といったことが大切です。
要するに、「誰が見ても気づくような話は既に解決済みで、考えもしなかったところに本当の答えがある」という話です。正攻法では出てこない、ありきたりでない仮説を検証してこそ、仮説思考をやる意味があります。
良い仮説を生むための定式化した方法はありません。「目的から考える」「当たり前を疑う」「現場・現実・現物を見る」といったことを通じて、「センスを磨く」としか言いようがありません。分析力だけでは心もとなく、洞察力を研ぎ澄ます必要があります。
仮説思考のもう一つのポイントは、正しく検証することです。どうしても、仮説づくりにエネルギーをとられ、検証がおろそかになりがちになります。確証を得るには、事実に基づくエビデンスも必要だからです。
といっても、サイエンスの話をしているのではなく、100%完全に証明する必要はありません。ビジネスの場合、ざっくりと半分くらい検証できればスタートとしては十分です。多少、反証や反例があっても、大勢には影響がないからです。
検証するときに一番気をつけないといけないのが「バイアス」です。自分に都合のよい情報や、仮説を支持する情報ばかりを集める傾向に陥りがちなので。
たとえば、「顧客離れを起こしている」という仮説を立てたときに、顧客からの不満の声ばかり集めてしまうことがあります。そうではなく、顧客からの感謝の声や顧客でない人からの声など、幅広く情報を集めた上で、総合的に判断する必要があります。
仮説ができたら思いをいったん手放さないと、思い込みが強くなります。このスイッチの切り替えが仮説思考の難しいところなんだと思います。
冒頭の細谷さんの話にもありましたが、完璧主義、情報依存症、正確依存症などに当てはまる方は意識して目を離すような努力が必要ですので注意していきましょう。
それでは、今日も笑顔あふれる素敵な一日をお過ごしください!
頑張り屋のみなさんを応援しています!