「なぜ、一生懸命頑張っているのに結果が出ないのか?」 その答えは『知識の不足』ではなく、『思考のクセ』にあるかもしれません。このブログでは、ビジネスや日常生活で直面する問題を、認知バイアスや問題解決のフレームワークを使って紐解いていきます。

 

一歩引いた視点(メタ思考)を手に入れるだけで、人間関係の悩みや仕事の停滞が驚くほどスムーズに解消し始めます。みなさんの日常を『なんとなく』から『確信』に変えるヒントをまとめています。思考を整理して、心を少し軽くするための参考にしてみませんか。

 

あらためまして、こんにちは。

 

「自己実現に夢中になる人で満ち溢れた世界をつくる」そして、「自分らしく生きる人で満ち溢れた社会をつくる」その結果、

「自己実現した人にしか見られない風景を誰でも見られる世界をつくる」そんなビジョンを掲げる「未来価値創造パートナー」の渡邉敦です

 

今日は人を動かすのは期待の設計であるといった話をしてみます。

 

(今回の本文要約)

●聞く力と柔軟な思考が事業を前に進める

 

事業を考える際に最も重要なのは、自分の想いやアイデアを語ることではなく、相手の声を深く聞く姿勢です。多くの人は自分の価値を伝えようとするあまり、一方的に話してしまいますが、実際に価値が生まれるのは相手の課題や望みを正確に理解したときです。

 

人は他人に動かされるよりも、自分で言語化した考えに基づいて行動するため、相手に語らせることが意思決定を引き出す鍵となります。また、人を巻き込む際にも説得に頼るのではなく、自らが楽しんで取り組む姿を見せることで、自然と共感が生まれ、自発的に関わる人が増えていきます。こうした関係性は指示によるものよりも強く、継続的な協力につながります。

 

一方で、信頼を築くうえでは一貫した言動も欠かせません。発言と行動が一致している人は安心感を与え、周囲からの信用を得やすくなります。しかし、一貫性に固執しすぎると、状況の変化に対応できなくなる危険があります。

 

過去の判断に縛られ、誤った方向に進み続けてしまうことも少なくありません。人や環境は常に変化するため、それに応じて考えや行動を修正する柔軟さが求められます。大切なのは、一貫性を守ること自体ではなく、目的に照らして最適な判断を選び続けることです。聞く力によって相手の本質を捉え、柔軟な思考で変化に適応する。この両輪が、事業を前に進める土台となります。

 

~ここからが本文です~

 

(この記事から抜粋しました)

●自分のことばかり話しすぎていないか?

数年前にあった、講演会終了後のとある懇親会での話です。

 

ドリンク片手に私のところへやって来るなり、ものすごい勢いで話し始めた男性がいました。

 

彼は自分が保険会社の営業マンであること、そして、永松茂久の熱烈なファンであること、さらに、私の本と講演会でどれだけ勇気づけられ救われたかを、延々15分ほど話してくれました。

 

講演をなりわいの1つとしている身として、ファンの存在はかけがえのないものです。

 

わざわざ私の元へやってきて、熱っぽく話をしてくれたことは本当にうれしかったですし、心から「ありがとう」と思いながら聞いていました。

 

しかし、1つだけ、気になったことがありました。

 

ひとしきり自分のことを話し終えた彼は、今度は自分の仕事について話を始めたのです。保険会社の営業マンとして勉強を重ね、日々、努力していること。こんな方法や、あんな方法、いろいろ試していること……。

 

あまりに彼が熱心なので、私はなかなか話を止めることができず、ただひたすら聞いていました。

 

彼がひと呼吸おいたタイミングで、やっと「で、仕事はどうなの? 売れてる?」と聞いてみました。

 

すると彼は一瞬、沈黙しました。そして、私の問いに答えないまま、再び仕事の話を始めてしまったのです。

 

そこからは、保険の細かい種別や選び方など、どんどん話がマニアックになっていきました。さすがの私もたまりかね、

 

「あのね、ちょっと質問してもいいかな?」

 

と待ったをかけました。しかし彼は、

 

「ちょっと待ってください。ここまで話させてください」

 

と私を制して、なおも話を続けます。

 

そんな中、私が彼について思ったこと、それは、「おそらく彼は誰に対しても、こんな感じで話しているんだろうな」ということでした。

 

時間にして数十分過ぎた頃でしょうか。彼はようやく満足したと見えて、「ありがとうございました! いいお話が聞けました。最後、何かアドバイスがあったらください!」と言いました。

 

せっかく私の本を読んで、講演会、懇親会にまで足を運んでくださったファンの方です。私は正直に言いました。

 

「自分の話したいことを2割に抑えて、とにかくお客さんがあなたに何を求めているのかをしっかりとヒヤリングするスタイルに変えたら、売り上げが倍になりますよ。あなたはとても情熱家ですから」

 

●「聞き役」に徹すると売り上げが5倍に増えた

その後半年ほどして、その会場の隣の市で講演する機会がありました。

 

「あのときの彼は、来ているかな。来てくれたらその後の話を聞きたいな」と思っていたら、うれしいことに、その日も彼はいちばん前の席で私の話を聞いてくれていました。

 

そして懇親会。彼も参加してくれていました。

 

そこでまず驚いたのは、見た目や雰囲気が大きく変わっていたことでした。

 

最初に会ったときの押しの強そうな威圧的な雰囲気から、口角が上がって目尻の下がった、何とも親しみやすい顔つきに変わっていたのです。

 

話を聞いてさらに驚きました。

 

半年間で、なんと、営業成績が5倍に伸びたというのです。

 

その間、彼が試みたのは、私のアドバイスどおり、人の話に耳を傾けるようにしたこと、それだけでした。

 

彼はしみじみ私にこう言いました。

 

「永松さん、あのアドバイスの翌日から、私はスタイルをすべて変えました。とにかくお客さんが困っていることは何だろう、どんなふうにお役に立てるんだろう、そこだけに集中してお客さんのヒヤリングを始めたんです」

 

「すごいですね、即実践の方なんですね」

 

「はい、実は前回お会いしたとき、売り上げがあまりにも上がらなくて、転職を考えていました。しかし永松さんのアドバイスどおりにやると、どんどん成績が伸びました。自分がいかに見当違いな営業をやっていたかを痛いほど思い知らされました。おかげさまで順調です。先日表彰もされました。本当にありがとうございます」

 

と言って、スッと席を立ちました。

 

その懇親会の間中、私は遠目で彼をウォッチしていたのですが、ずっと笑顔で人の話をうなずきながら聞いていました。

 

すべては、「聞くこと」から始まります。

 

彼は、たった1つ、「聞く」ということをしていなかったがために伸び悩み、そしてたった1つ、「聞く」ということをしただけで、大きく飛躍できたのでした。

 

私は彼を通じて、「話を聞くこと」の重要性をあらためて、実感したのです。

 

社内やコミュニティー内でやりたいことがあるとき、周囲を巻き込もうという熱意が出すぎると、逆に人が集まらないという事態になることがあります。

 

これもセールストークと同様、アツい気持ちはあっても、自分優先で無理やり人を説得しにかかろうとすると、相手の気持ちは引いてしまいます。

 

そうはいっても、周りを説得しなければ、誰も協力してくれない。そんなふうに思うかもしれません。でも実際には、説得するよりも、もっと効果的に人を巻き込める方法があります。

 

●巻き込まれた人は「最強の協力者」になる

以前、こんな動画を見たことがあります。

 

人がたくさんいる広場で、突然、1人の男が音楽に合わせて踊り出します。

 

その男性を、けげんな目で見つめる人たち。見て見ぬ振りをして、足早に広場を後にする人もたくさんいます。

 

ところが、しばらくすると別の人が踊り始めます。

 

その後も1人、また1人と踊る人が増えていき、最終的に広場は、野外ダンスフロアさながらという状況になったのです。

 

最初は1人でも、楽しくしていると、自然と巻き込まれる人が増えていき、やがてそれは大きなムーブメントになる。この動画には、「楽しそうな人には巻き込まれたくなる」という人間心理が、明確に表れています。

 

人を説得しにかかるのは、無理やりダンスに引き込もうとするようなもの。

 

そうではなく、こちらが勝手に楽しんで踊っていると自ら飛び込んでくる人がやってくる、そういう状況を作ればいいのです。

 

この方式だと、説得するという労力を使わなくていいうえに、巻き込まれてくれる人たちの意欲も高くなります。

 

なぜなら、人は無理やり説得されて参加するよりも、「いいな」「楽しそうだな」と自ら参加したほうが、意欲高く取り組めるからです。

 

周囲の協力が必要なことでも、まずは自分がワクワクすること。

 

すると、必ず「何か手伝おうか?」と言い出してくれる人が現れるでしょう。彼らこそ、自ら巻き込まれてくれた「最強の協力者」というわけです(ここまで)。

この記事では、「話すこと」よりも「聞くこと」が人を動かす本質であることを見てきました。では、なぜ“聞くこと”がそこまで大きな影響力を持つのでしょうか。

 

その鍵となるのが、人が一度自分の考えや意思を言葉にすると、それに沿った行動を取り続けようとする心理です。人は他人に説得されるよりも、自分で語った内容に従うほうが強く動かされます。

 

つまり、相手に語らせることは、その人自身の意思決定を引き出す行為でもあるのです。ここで重要になるのが「一貫性」という人間の性質です。

 

この性質を理解することで、なぜ聞く姿勢が信頼や成果につながるのか、そのメカニズムがより明確に見えてきます。

●一貫性がないと信頼できない

皆さんは、「嫌いな上司のタイプは?」と問われたら、どんな人を挙げるでしょうか? よくあるのが、「責任逃れをする」「人の話を聞かない」「決断ができない」「細かいところにつっこむ」といったところ。加えて、必ず挙がるのが「言うことがコロコロ変わる」です。

 

指示命令が目まぐるしく変わる。相手や状況に応じて態度を変える。言っていることとやることが食い違っているなどなど。そんな人とは誰しも仕事はしたくありませんよね。

 

僕たちの社会では、言動や態度に「一貫性」が求められます。こちらの予測や期待を裏切ることがなく、信用して任せられるからです。その結果、誠実で信頼できる人、軸がブレない人、合理的な思考ができる人といった、高い評価を得ることになります。

 

そのため僕たちは、できるだけ一貫性を保とうとします。他者からの信頼を得るためだけではなく、自分のためにもそうしようとします。

 

一貫性があるほうが人格的に完成しており、コロコロと変わるのは自分の未熟な証しだと考えるからです。自分の中に確固たる軸ができると、判断に迷うことも少なくなります。ポリシーをしっかりと持っておけば、考える手間が省けます。

 

ところが、本来は望ましいものであるはずの一貫性も、行きすぎると逆効果になってしまいます。言動を変えるべきときまで、一貫性にとらわれて判断や行動を誤ってしまうからです。

 

●段階的に要求をつりあげていく

「一貫性の原理」を証明した有名な実験があります(R・チャルディーニ『影響力の武器』)。

 

地元の交通安全協会の人が高級住宅街に行き、「交通安全を訴える大きな看板を家の前庭に立てさせてほしい」と依頼して回りました。結果はあまり芳しくなく、17%の家だけが依頼を受け入れてくれました。

 

それに対して、「安全運転に関する小さくて目立たないシールを窓に貼らせてほしい」とお願いをすると、ほとんどの家は承諾してくれました。その2週間後に、大きな看板の設置をお願いすると、なんと承諾率が4倍以上の76%にもなったのです。

 

小さな要請を受け入れることで、「交通安全への意識が高い」という自己イメージができあがります。すると、二度目の依頼に対しても、一貫性のある行動を取ろうとして、進んで受け入れるようになるのです。

 

この原理を、交渉術に応用したのが、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」(段階的要請法)です。顧客を訪問したセールスマンが、わずかに開いたドアに足を入れる様からそう呼ばれています。先回紹介した「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」とあわせて覚えたい説得の技法です。

 

最初に、小さな要求をして相手に承諾してもらいます。それから少しずつ大きな頼みごとをしていき、最後に本当に飲ませたかった要求を持ちだすのです。「話だけ聞いてください」「ちょっと触ってみませんか」「しばらく使ってみませんか」「買ってもらえませんか」といった具合にエスカレートさせていくわけです。

 

●「変わってしまった」と嘆く前に

一貫性の原理は、自分の行動に影響を及ぼすだけでなく、人の行動を受け止めるときに働くことも少なくありません。

 

たとえば、同窓会などで知人と旧交を温めているときに、「こんな奴じゃなかったのに」と思った経験はありませんか。あるいは、長年連れ添ったパートナーに対して、「変わってしまったな」と感じた経験はないでしょうか。

 

ところが、月日も過ぎ環境も変ったのですから、変わって当たり前のはず。変わらないほうが、おかしいです。

 

にもかかわらず、自分のことは棚にあげ、相手の過去の態度や行動が現在も変わらずにあると思ってしまいます。一貫性を求める気持ちが、合理的な思考をゆがめてしまっているわけです。一貫性バイアスとも呼びます。

 

あるいは、一貫性を求めるあまり、後に引けなくなった、という経験はないでしょうか。たとえば、直感で「この商品は絶対に売れる」と言ったばかり、惨たんたる市場調査の結果をつきつけられても、簡単に引き下がれなくなってしまった。

 

そのせいで、自分に有利となる材料を断片的につなぎあわせて、一貫性があるように見えるストーリーを無理やりでっちあげてしまう。こうなってくると、一貫性を保つことが目的化してしまい、冷静な思考ができなくなっています。いわゆる「意地を通せば道理が引っ込む」です。

 

●人に一貫性を求めるのは間違い

最後に、一貫性の原理を考える上で、とても参考になる話を一つ紹介しておきましょう。

 

人の行動の一貫性に関して、心理学者のW・ミシェルが興味深い説を唱えています(W・ミシェル『マシュマロ・テスト』)。「個人の行動の全般的一貫性は、一般にあまりに弱過ぎて、ある種類の状況での振る舞いをもとにして、その人が別の状況でどう振る舞うかを正確に予想する目的では役に立たない」と言うのです。

 

ちょっと難しい表現ですね。分かりやすい例を挙げれば、「会社で誠実な人が、家庭でも誠実とは限らない」ということです。詳細は省きますが、さまざまな研究の結果にたどりついた結論です。

 

嘘だと思う方は、自分の胸に手を当てて考えてみてください。会社、家庭、学校、仲間内など、異なる状況において自分の言動にどれくらい一貫性があるでしょうか。自分はあると思っていても、周りはどう見ていますか。

 

なぜ一貫性がないかと言えば、人は状況に応じて振る舞いを変えるからです。要は、同じ状況に置かれたときに一貫性が生まれるわけです。状況に関わらず一貫性を期待するのは、勝手な妄想だと言わざるをえません。

 

そう考えれば、一貫性を崩すことへの抵抗が薄れます。それどころか、一貫性がないことは、臨機応変に対応していることの証しとなります。妙なとらわれを捨て去り、「君子は豹変(ひょうへん)す」(立派な人は時に応じて速やかに変化する)を心がけるのも、一つの生き方ではないでしょうか。

 

 

それでは、今日も笑顔あふれる素敵な一日をお過ごしください!

 

頑張り屋のみなさんを応援しています!

 

「A&W コンサルティング」
 代表・中小企業診断士 
    渡邉 敦 (Atsushi WATANABE)

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