車椅子のおじさんの小説630 | 車椅子のおじさんのブログ

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鉄三郎たちと順の会話

順 美里の介助で私は男のかっこから4日ぶりの女のかっこになったわ。

鉄三郎 美里さんは、おねえちゃんとしては初めての介助について何を言った?

昌 何を言いましたか?

順 男物の服を脱がせてもらったら「胸がものすごく大きくてきれいだから、ほんの1年ぐらい前までは男の胸だった事がとても信じられないわ」と言ってくれました。エストロゲンの薬で人工的に作られた胸だけど、自分でも(バストサイズは120で、きれいで、すてきだわ)と思いながら、時々手で自分の胸をさわってしまうぐらいに気に入っています。

鉄三郎 美里さんは男から女になったトランスジェンダーの人だったら、メチャクチャ喜ぶような事を言ってくれたね。

昌 美里さんにそうほめてもらって、よかったんですね。

順 4日ぶりにストッキングを穿かせてもらう時に(男物のソックスよりもストッキングの方がいいわ。すね毛だらけで汚かった足がエストロゲンの薬ですっかりすね毛が無くなって、ものすごくきれいになったから毎日ストッキングを穿かせてもらわないとものすごくそんするわ)と思っていました。

鉄三郎 俺の足はなんかしらんけどすね毛がぜんぜんまったくたくたく無くてきれいだけど、べつにストッキングを穿こうとは思わないなあ。もしかしたら順のその思いは、男から女になったトランスジェンダーの人しかない思いかもしれないなあ。

昌 俺もそう思いますよ。

 3人がそう話しているうちに、デザイン事務所の窓から見えるビルたちが夕陽色に染まっていた。

昌そろそろ帰るか。

鉄三郎 帰る前に、もう1つ順に聞きたい事があるけど、いい?

昌 いいよ。

順 私に聞きたい事は何ですか?

鉄三郎 いやらしいおじさんは服などを破いた後は、順をどうするつもりだったかがわかる?

順 わかります。担当した刑事さんが「犯人は服などを破いた後に、あなたにいたずらをするつもりみたいです」と教えてくれました。

鉄三郎 なるほどねえ。今の順は、へんなやつにいたずらをされてしまうほどにいい女だという事だなあ。

昌 岡野さんは、本当にいい女になりましたね。

順 襲われた直後は(ものすごくいやだから、もう襲われたくないわ)と思っていました。仕事をやりながら考えていたら(私がいい女になったから、へんなおじさんにいたずらをされるようになったわ。むしろこれは喜ぶべきじゃないか。襲われない方がいいけど、襲われる事を必要以上に恐れる事ではないわ)とだんだん考えが変わってきました。

鉄三郎 小さいころからあこがれてきた女という性が順にとっては自分の性だから、その考え方でずうっと女であり続けている方がいいと思うよ。

昌 俺もそう思いますよ。

順 私自身もそう思います。ちなみに男物の服は、美里が処分してくれました。

鉄三郎 その方がいいと思うよ。

昌 もう男物の服は着ないから、処分してくれた方がいいと思います。

鉄三郎 さあ、帰るか。

昌 帰ろう。

順 私の話を聞きに来てくださって、ありがとうございました。ここで失礼します。

昌 岡野さん、また会いましょう。

鉄三郎 また会おう。

 鉄三郎たちはそう言いながら、順のデザイン事務所から出ていった。