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順の事を記事に書く

 その次の日、朝ごはんを食べた鉄三郎はトイレに行ってから、ノートパソコンの前に座って、順の事を書き始めて、昼過ぎに書き終わった。

 記事のほとんどが取材や順の女への第2次成長の過程の撮影の時に思った事を書いた。

 記事の終わりの方に、その前の順のデザイン事務所から帰ったから思った事を書いた。

記事の終わりの方の内容

 昨日、後輩のデザイン事務所から帰ったから、こんな事を思った。

 もしも後輩がいやらしいおじさんに襲われた事でエストロゲンの薬を飲まなくなって男に戻っていったら、性の悩みで悩む日々を待っていただろう。

 先ほど書いた妹さんに言われた事や後輩自身の考え方がだんだん変わっていった事で、これからの後輩の人生はバラ色の人生になると確信する。

 最後に、後輩に「元々の女の人が羨ましがるぐらいにいい女になったなあ」と言いたい。

 記事を書き終わった鉄三郎は、となりの部屋で今回の記事と雑誌に載せる写真を選んでいた昌を呼んだ。

 おーい、昌。

 なんじゃ、鉄。

 順の事についての記事を書き終わったよ。

 そうか。記事のチェックをしに行くよ。

 昌はそう言って、すぐに鉄三郎の部屋に行った。

 そして裕三郎のとなりに座って、記事のチェックをした。

 よし、いいだろう。今、いっしょに載せる写真を選んでくるから、待っていてくれよ。

 昌はそう言って、自分の部屋に戻っていった。

 そしてその10分後、順の写真を入れたUSBメモリを持ちながら、鉄三郎の部屋に戻ってきた。

 鉄、岡野さんの写真を添付して、七五山さんに送ってくれよ。

 はいよ。

 鉄三郎はそう返事して、昌のUSBメモリに入っている順の写真を雑誌社の七五山さんへのメールに添付して、自分が書いた記事といっしょに送った。

 その後、鉄三郎たちはこんな事を話した。

 鉄、岡野さんの体が女らしくなっていく過程を撮影して(体の性は性を作り出すホルモンでこんなにも変わるのか)とあらためて実感したさ。

 そうだなあ。順の体の変化の過程を撮影するだいぶ前に科学情報番組で「性はグラデーションだ」と言っていたけど、順の体の変化を見ていて(まさに性はグラデーションだなあ)と思っていたよ。

 美里さんが「私のお姉ちゃんであり続けてほしい」と言わなかったら、今ごろは岡野さんはどうなっただろうか?

 エストロゲンの薬の作用で作られた女らしさはエストロゲンの薬の作用無しではそんなにはもたないだろうから、もしも順が襲われた精神的な影響でエストロゲンの薬を飲まなくなったら、たちまち女らしさが壊れ始めて、今ごろは男にかなり戻っていったかもしれないなあ。

 美里さんに言われた言葉は、岡野さんにとっては奇跡の言葉だね。

 美里さんの言葉で、襲われた影響に負けずに小さいころからあこがれてきた自分の性でこれからもいられるから、まさに奇跡の言葉だなあ。

 そうだなあ。

 鉄三郎たちがそう話している部屋の窓の外には、夏の空にふさわしくセミがミンミンと鳴いていた。

                           完