7時50分過ぎに名古屋の栄にある待ち合わせ場所のレストランに着いた。
レストランの地下駐車場に入った希花は、止まっている足だけで運転できるように改造されたウバルト595を見て、こんな1人言を言った。
その時の希花の1人言
赤いサソリのエンブレムのウバルト595が止まっている事は、すでに弓ちゃんが来ている事だわ。
私も急いで車を止めて、できるだけ弓ちゃんがいる所に早く行けなければいけないわ。
希花はそう言いながら、空いている所に車を止めて、レストランの正面玄関に向かった。
レストランのフロントで自分の名前を言って、「すみませんが、東本橋弓さんの席に案内してください」と頼んだ。
かしこまりました。すぐに東本橋弓さまの席へ案内させていただきます。
フロントの女はそう言って、希花を弓の席に案内した。
希花がその席の所に着いたら、華やかな大人のおしゃれな姿の弓が椅子に座っていた。
自分の方に來る希花を見た弓は、ニッコリした。
ここが東本橋弓さまの席です。それでは、私はこれで失礼させていただきます。
どうもありがとうございました。
希花はそう言って、フロントに去っていく女の人に頭を深く下げた。
希花お姉ちゃん、こんばんは。
弓ちゃん、こんばんは。
希花お姉ちゃん、大人の雰囲気のこんなレストランを知っているね。
そうだけど、弓ちゃんの今日のかっこがものすごく大人の雰囲気で、このレストランに合っているわ。
この時の弓の姿は、上は白いブラウスと真っ赤なネクタイで、下は本革の黒いテーラーカラー付きでダブルのあざやかな青のジャンバースカートと薄い青のストッキングと光沢がある赤のパンプスで、赤いマニュキュアを塗り、ほお紅を薄く塗り、赤い口紅を塗っていて、金縁と黒のハートのイヤリングを付けていて、赤いリボンで背中までの髪をポニーテールに縛っていた。
てるみお姉ちゃんにそう言ってもらえて、ものすごくうれしいわ。ありがとうね。
どういたしまして。もちろん、自分でコーディネートをしたでしょう。
もちろんそうだよ。家に来てくれたヘルパーさんに服を指定して着せてもらったり、お化粧をしてもらったり、リボンで髪をかわいく縛ってもらったわ。
弓ちゃんは自力では着替えないけど、人の手を借りれば、こんなにすてきな大人の女性の姿になれるんだね。
そう言ってくれて、ありがとうね。希花お姉ちゃん、いつまでもたって話していないで、希花お姉ちゃんも座って、いっしょにメニューを見よう。
うん、そうするわ。
希花はそう言って、席に着いた。
弓とメニューを見て、やってきたウェイターにイタリアンハンバーグのセットを注文した。
希花と弓は料理を待っている間に、こんな話をした。
ふと思い出したけど、弓ちゃんのご両親は愛知近未来科学大学の教授で、ブスの人が飲み続けると美人にだんだんなってくる薬を開発しているだっけ。
そうよ。
なんとなく興味があって(薬の開発は順調に進んでいるかなあ?)と思っていたけど、どうなの?
私はあまり知らないけど、難しい問題があったけど、なんとか解決して、もうちょっとで実用化するところまで進んできたみたいわ。
そんなに進んでいたの。
そうよ。自分がブスでも気にならない人はいいけど、ものすごく気になる人のために、この薬ができるだけ早く実用化できればいいと思うわ。
私もそう思うわ。
希花と弓がそう話していると、ウェイターが料理を運んできた。
希花が弓の食事介助をやりながら、おしゃべりと食事を2時間半ぐらい楽しんだ。
10時半過ぎにレストランの正面玄関の前で、希花と弓はこう言って、別れた。
希花お姉ちゃん、今夜はとても楽しかったわ。
私も楽しかったわ。夜遅いから運転に気を付けて帰ってね。
うん、そうするよ。
それじゃ、バイバイね。
希花お姉ちゃん、バイバイ。
希花と弓はそう別れのあいさつをして、それぞれの車の方に別れていった。
その1時間後に自分のスマホに弓からのSOSが入るとは、その時の希花はまだ知らなかった。