陰陽師「安倍晴明」の正体②[道長の命を救う] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 鎌倉時代初めの説話集『宇治拾遺物語』になると、まるで魔法使いのような晴明が登場してきます。

 

 ある若い僧が「式神で人を殺せるか」と晴明に尋ねたことがあったそうです。

 

 すると晴明は「たやすくは殺せない。虫などは少しの術で殺せるが、無益な殺生をしたくない」と答えます。

 

 そこへ蛙が5、6匹、庭に姿を見せたので僧が「では、あの1匹を殺してみせてください」と挑発し、晴明は「無益なことだが、私を試そうというのであるからおみせしましょう」といい、草の葉を摘み取って蛙の上に覆いかぶせると、蛙はぺちゃんこになって本当に死んでしまいました。

 

 それを見た僧は震えあがったというのです。

 

 やはり鎌倉時代初めの『古今著聞集』では藤原道長の命を救った英雄として描かれています。

 

 道長が物忌み(一定の間、飲食・言行などを慎んで心身を清めること)の最中に瓜(うり)が献じられてきたので、道長は物忌み中であったために不審に思い、晴明に占わせました。

 

 すると晴明はその内の一つが毒瓜であることを見抜き、僧侶に加持祈祷させたところ、瓜が動き出したというのです。

 

 医師が二ヶ所に針を刺すと動かなくなりましたが、武者が刀で瓜を割ると、瓜の中で蛇がとぐろを巻き、両目に針がささっていたといいいます。

 

 以上はすべて説話です。

 

 ただし、晴明が生存中それだけ陰陽師として名を挙げたからこそ、このように伝説化したといえます。

(つづく)

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