跡部蛮の「おもしろ歴史学」

跡部蛮の「おもしろ歴史学」

歴史ファンの皆さんとともに歴史ミステリーにチャレンジし、その謎を解き明かすページです(無断転載禁止)

 2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟』の主人公秀長は、秀吉の弟で豊臣政権のナンバー2(官位では徳川家康が上)。

 

 「公儀の事」は宰相である秀長に任されているという大友宗麟(豊臣政権下のキリシタン大名)の書状が語る通り、秀吉の名補佐役として歴史に名を残した人物です。

 

 秀長を秀吉の異父同母の弟とするのが一般的で、織田家の鉄砲足軽だった秀吉の実父木下弥右衛門の死去後、まだ幼い子らを抱えた母が織田家同朋衆(芸能集団)の竹阿弥と再婚して秀長が生まれたことになっています。

 

 ところが、姉の菩提寺が届け出た系図には、秀吉の父が天文12年(1543)正月2日に逝去したとあり、この系図が正しいなら、その3年前に生まれた秀長もまた、弥右衛門の実子であり、秀吉と秀長は父母を同じくする兄弟とみるべきでしょう。

(つづく)

 

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 残る13通の返書にも戦功を持ち上げるくだりが多くみられ、秀吉は、みずからの手柄が信長の耳に入るように側近らに宛て、戦地から手あたり次第、手紙を送っていた事実が窺われます。

 

 ここからはイメージ通り、信長に気に入られようとする秀吉の姿が浮き彫りになりました。

 

 一方、兵庫県たつの市の民家で発見され、市立龍野歴史文化資料館で調査した新史料は評価が分かれるところです。

 

 信長が本能寺で討たれ、秀吉が次の天下を目指し、ライバルらをことごとく蹴落としていた天正12年(1584)当時、小姓出身の武将脇坂安治(のちの龍野藩祖)に宛てた朱印状です。

 

 当時、大坂城の築城が始まっており、おそらく、その資材となる材木の調達を命じたものだと思われます。

 

 その朱印状には杉や檜といった材木の種類や数量などが記載され、在庫が途切れないよう早々に用意するようにと、まるで下っ端の役人が気遣うような内容になっています。

 

 苦労人で成り上がりの秀吉ならではのキメ細かさとみるか、それとも、神経質な秀吉の意外な一面とみるかの判断は、皆さんの判断に委ねたいと思います。

 

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 秀吉が信長から中国(毛利氏)攻略軍の司令官に任じられていた当時の話です。

 

 本能寺の変(1582年)で討ち死したとされる信長側近・野々村正成たちからの天正七年(1579)の返書にはこうあります。

 

「さりとては御手柄との申す事に候、天下においてその御取り沙汰にて御座候らえば(=大変なお手柄だと天下で評判になっています)」

 

 野々村らは、秀吉の手柄を誉めちぎっているのです。

 

 ちょうど秀吉が、毛利方へ寝返った別所長治の居城三木城(兵庫県)を囲んでいる頃にあたります。

 

 その合戦は、秀吉が城への補給路を絶ち、後に「三木の干殺し」として有名になります。

 

 つまり秀吉は、蟻の這い出る隙もない包囲陣を誇り、そのことが信長の耳に入ることを想定して側近たちに手柄を強調していたのです。

 

 結果、側近たちから以上の返書を受け取った次第。

 

 思惑通りの反応に満面の笑みを浮かべる秀吉の顔が思い浮かびます。

(つづく)

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