白河藩士を父にもつ沖田総司(幼名惣次郎)は麻布(港区)の白河藩邸で生まれ、9歳もしくは12歳の時、市谷柳町(新宿区)にあった天然理心流の試衛館道場へ入門します。
そこで、やがて道場を継ぐ近藤勇や土方歳三と出会い、文久3年(1863)2月、浪士隊結成に応じ、その二人らとともに上洛します。
その後、紆余曲折を経て、新選組は京都守護職会津藩お抱えの治安部隊となりました。
そして池田屋騒動が起きます。
ところが、事件3日後に近藤が残した書簡(前出)には総司の喀血や離脱のことは触れられていません。
総司の刀の帽子(切っ先部分)が折れたと細かく描写している近藤の書簡にしては不思議なことです。
書き忘れたとも思えません。
一方、近藤や総司とともに池田屋を襲撃した永倉新八の回顧録には「(沖田は)持病の肺患が再発してうち倒れた」と書いてあります。
ただし、ここでも喀血したとは書いていません。
沖田が肺結核であった事実は当然、永倉も知っています。
だから明治後に回顧した際、沖田が斬り合う間、何かの拍子に倒れたのを肺患いのためだと思いこんだのではないでしょうか。
(つづく)
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