『竹取物語』の作者はかの菅原道真か?(最終回)[富士の噴煙] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 道真がみずからの恨みを少しでも物語を通して晴らそうと、彼を讒訴したという時平の祖先、藤原不比等を車持皇子のモデルにしたという筋は成り立つように思います。

 

 事情が事情ですから、匿名で書いたのだとしたら、作者不詳の謎も解けます。

 

 しかし、ことはそう単純ではありません。

 

 月へ帰ったかぐや姫へ返歌を贈るため、帝が官人らを富士山に遣わし、噴煙に乗せて月に送り届けようとするラストシーンがあるからです。

 

 富士から噴煙が上がるのは貞観17年(875)頃に噴火したためですが、道真が左遷という悲劇を味わった延喜の頃すでに噴煙は上がっていなかったという説があります。

 

 このほかの理由からも、物語の成立を富士山噴火後の貞観の頃に定める説があり、そうなると、道真が生きた時代とあわなくなり、彼が作者だとすると説が否定されることになります。

 

 残念ながら、日本で最初に書かれた物語の作者はやはり、不詳というほかありません。

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