秋は夕ぐれ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏のねどころへ行くとて(中略)飛びいそぐさへあはれなり。
古典文学の名作『枕草子』は、日本の季節美を讃える文章ではじまります。
春は曙、いまの季節(秋)は夕暮れ時がおもしろいというのです。
作者はご存じ、清少納言。
紡ぎだす繊細な文章とは裏腹に、彼女の逸話からは、猛女としての一面が顔をだしています。
あるとき、源頼親(摂津源氏の一族)の手の者が、清少納言の兄清原致信の屋敷を囲みました。
これは、致信の知人に“子分”を殺された頼親の復讐だったといいますから、ヤクザの抗争も顔負け。
平安時代でも、けっこう荒っぽいことがおこなわれていたのです。
それはともかく、致信の屋敷を囲んだ頼親の手勢は馬上の者七、八名と徒士の者十余人。
襲撃時、清少納言はたまたま兄の家に同宿していました。
そして、男法師と間違われ、殺されかけたというのです。
男と間違われる清少納言の容姿はどうだったのかと、思わず想像したくなりますが、このとき彼女はすでに宮仕えを引退したあと。
当時の推定年齢は五十歳。
清少納言は尼僧の恰好をしていました。
つまり、頼親の手勢は、尼僧(女)の彼女を僧侶(男)だと見誤ったのです。
このとき、清少納言はある破天荒な行動にでます。
(つづく)
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