信雄の前半生は“不肖”ぶりを如何なく発揮しているといえます。
しかし、意外な一面もありました。
清州会議で尾張と伊勢を与えられると、父信長さえできなかった土地制度改革に挑んでいるのです。
そのひとつが寺社領の没収でした。
信雄の領国には著名な伊勢神宮があって、日本中の尊崇を集めています。
信雄はその伊勢神宮の領地を没収して家臣に与えたのです。
これに驚いたのは伊勢神宮の神官。
信長の生前、すでに伊勢は織田家の領国となっていましたが、さしもの革命児・信長もこの“聖域”には手を出せませんでした。
ところが、突然の信雄の改革に伊勢神宮の神官は驚き、
「今般、神税をもって人給に付け置かるべく御定これある由、すこぶる驚怖の至りなり」
と絶句しています。
尊い「神」の税金を「人」(信雄の家臣)の税金に付け替えるとは、もはや、驚きや恐れ多いという次元を通り越しているというのです。
また、尾張でも信雄は、父信長の時代の土地制度を一歩進めた改革をおこなっています。
(つづく)
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