観た、『怪談』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『怪談』を観ました。

日本に伝わる怪談は多々ある中、本作は小泉八雲さんが執筆した『怪談』の中から4編を映画化したオムニバス作品です。

 

いつもの粗筋はざっくり&短めに。

第1編『黒髪』

 貧しい暮らしに耐えかねて妻を捨てた男が帰ってくる話

第2編『雪女』

 吹雪の中で出会った女と瓜二つの女と結婚した男の話

第3編『耳無し芳一の話』

 平家の祟りに遭った、めくらの琵琶法師の話

第4編『茶碗の中』

 茶碗の水面に映った見知らぬ男が実際に現れる話

 

タイトルもズバリの怪談という事で、れっきとしたホラー映画なんですが……“ホラー映画”なんて現代的な言い回しに期待しながら見ると、大して怖さは感じないかもしれません。

でも、怪談の醍醐味って“ドキッ”とか“ヒヤッ”というより、ゾ〜ッとするような感覚の方が強いじゃないですか。ジワジワ来る不気味さというか。

とは言え、僅かながらもハッとするシーンもあるし、古いながらも恐怖映画としてのツボは抑えているので、静かな夜に一人で観るのがオススメです。

 

1965年の作品なので、もちろん古さはあるものの、画の雰囲気がクールなんですよ。オープニングクレジットも美しい。

つーか、昔の話なんだから古さを感じさせる要素が多い方が説得力も生まれますしね。

ちなみに尺は182分もあるので、1日の終わりに時間を気にせずゆっくり観るのがいいと思います。もしくは、オムニバス作品なので、1日1編づつ見るのもアリかもしれませんね。

 

全編を通し、ほぼ全てがセットなんですが、この出来が実にいい。

スタジオの広さも尋常ではなく、しっかり奥行きも感じさせてくれます。なおかつ、これらを画面サイズの横いっぱいに使って見せるので、これは映画館で観たかったなぁと思わせます。

そんなセットが、見ように寄っちゃチャチぃと感じる人がいてもおかしくはありません。所詮は屋内で撮ったものですから奥行きにも限界はあるし、例えば空を初めとする背景がモロに絵なのは白けそうなところです。

ただ、本作のベースが絵物語であり、その世界観を残しながら実写化=絵の雰囲気を再現したと言われれば納得できるどころか、むしろ巧い表現だなと。

『耳無し芳一の話』の序盤にある壇ノ浦の戦いや、『雪女』での夜空に浮かぶ目のようなものは、屋外で撮るものより雰囲気があって見入ってしまいます。

 

全4編中、最もフィーチャー度が高いのが『耳無し芳一の話』。尺が最も長いだけでなく、お話の流れとしても端折ってる感が全くなく、じっくり描いています。

芳一の幸薄さが可哀想すぎてね、涙を誘うものではないんだけど、見ていて胸が苦しくなるような感じ。

めくらで慎ましく暮らしているのに平家の霊に祟られるのも気の毒な話で、そんな芳一が全身に般若心経を書き写された姿は痛々しさすら感じます。子供の時分だったら、絶対に寝る前に思い出しちゃうやつ(笑)。

そこから悲劇に繋がるまでの話は割愛しますが……映画としてビジュアル化されると、大きな不条理がある事に気付きます。それ気付いてないワケないでしょ!と。住職さん、アンタの責任はずいぶん重いんだぜ…。

 

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あれ、配信版が出てこないなぁ。amazonのプライム会員であれば見れるんですが…。

俺ッチはNHKのBSプレミアムで放送したものを観たんですが、久しぶりに夏にでも放送しないかな?

何にせよ、本作を観る際は静かな夜に、かつテレビで楽しむのをオススメします。スマホの小っせぇ画面で見ても、何の感慨も湧かないつまんねぇ映画で終わりますよ?