『網走番外地』を観ました。
北海道、網走駅に降り立った受刑者たち。橘を始めとする彼らの行き先は、雪に囲まれた網走刑務所。
極寒の雪山で伐木の労役に励む受刑者たち。同じ部屋の囚人たちと小さな諍いを起こしながらも橘は真面目に働き続け、刑期もあと半年を切った。
そんな橘に、母親が病に伏したという妹からの手紙が届く。保護司の妻木も、ひと目だけでも母に会いたいと願う橘に尽力する。
母の病状が次第に悪化している旨を綴った手紙を受け取るごとに焦る中、囚人たちが脱走計画を進めている事を知り、橘の気持ちは揺らぐ。
そして、作業に向かうトラックから数名が脱走を敢行。首謀者の一人でもある権田と手錠で繋がれ、否応なしに脱走せざるを得なくなった橘は……といったお話。
主人公の橘を演じるのは高倉健さん。
晩年のイメージが定着する以前の役、要は極道とかヤクザばかり演じていた頃の作品を観るのは初めてなんですが、ま~よく喋りますね。『ゴルゴ13』の1巻を思い出したよ(笑)。
オープニングクレジット(1分半もない!)のみならず、♪あばしり~ばんがい~ち~♪と、事あるごとに健さんの歌が流れるのも新鮮です。
刑務所が舞台という事で、囚人同士のイザコザやイビリを描いたTHE昭和(かつ東映)な雰囲気かと思いきや、そこまで陰気な感じはありません。
まぁ、多少の対立はあるけど、嫌いな者同士が殺し合うようなレベルにまでは達さず、意外と和気あいあいとやってます(笑)。
労役がチト辛そうなくらいで、これなら刑務所に入ってもいいと考える人もいたのかな…?
本作はモノクロで、そんなに昔の作品なの?と思いきや、実は1965年の作品との事。日本でも60年代にはとっくにカラー映画が作られていましたからね。
それ故、手錠で繋がれたままの脱走とか、手錠の鎖を切断するのに列車を利用したりとか、トロッコでのチェイスシーン(!)とか、洋画でよく見るシチュエーションの始祖なのかなと勘違いしがちです。中には、こっちの方が先駆けているものもあるんでしょうがね。
手錠で繋がれた橘を強引に連れて脱走するのが権田。豪放磊落ながら自己中心的で後先を顧みない人間で、序盤から橘を挑発する仮想敵のような存在です。
そんな反りの合わない者同士が手錠で繋がれ、否応なしに協力せざるを得ないまま逃亡を続けるのが後半の主な展開。
雪に覆われた山中を逃亡する中、洞穴で休息を取ろうとする際、二人は抱き合って体を温めようとします。男と女での、こういうシチュエーションはゴマンとありますが、男同士というパターンはなかなかありませんよね。
そういう流れだとムーディーな雰囲気になるものですが、なんと本作もその例に漏れず。ムラムラしちゃった権田は橘と抱き合うだけでなく、頬ずりまでしちゃうんだから困ったものです(笑)。
この時の橘のリアクションは見どころの一つで、まさか健さんが爆笑を誘うシーンなんてなかなか見れませんよ?
ド冬の北海道が舞台という事で、周囲を雪に覆われた殺風景な景色は大自然の中の恐怖すら感じます。
屋外のシーンではセットに見えるような光景は皆無に等しく、常に雪の中で撮影をしていたのかと思うと、こちらまで冷えてきますね。
どーでもいい話ながら、俺ッチは雪が降ってる日には『デイ・アフター・トゥモロー』を観がちなんですが、今度からは本作も候補に入れようと思ってます。
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