『帰ってきた若大将』を観ました。
サザンクロス島を取材していたテレビプロデューサーの純子は、ピンチを救ってくれた雄一に再会する。
平和な国家を目指すサザンクロス島はアメリカからの独立を図り、自治政府顧問である雄一は自然に囲まれたこの島を心底より愛していた。純子はそんな雄一に心惹かれて行く。
帰国した純子は、取材した映像に対して不満があるというスポンサーの副社長である石山の元に向かう。純子に一目惚れし、ドライブに誘った石山だったが、その行き先で帰国した雄一と再会する。
実家に帰ったのも束の間、雄一はサザンクロス島独立の交渉のため、ニューヨークへ飛ぶ。大統領補佐官のシュナイダーと会う事はできたが、近々行われるニューヨーク・シティマラソンで自分に勝てば交渉の場を設けるという条件を出された雄一は……といったお話。
番外編じみた作品もあるようですが、若大将シリーズ第18作にして、本作を以てシリーズ完結となります。
前作の『若大将対青大将』でキャストの並び順=ビリングは一番最後=トメだったし、加山雄三さんもいよいよ引き際を考えていたんだろうと感じさせました。
それまでの勢いも薄まり、作品自体にもパワー不足を感じましたしね。
それから10年後に公開された本作。
特にシリーズ完結とは謳ってはいませんが、シリーズの集大成というか総括のような雰囲気は感じました。原点回帰というか、正統な若大将シリーズとしての王道を征くような内容です。
加山さんが歳を取ったからって、雄一が社会人として、会社の下っ端として働くのは似合わないというか、やっぱり若大将の名に相応しくないんですよね。それ故、本作では会社員ではなく、自治政府顧問というよく分かんない、まぁNPOみたいな活動をしていますが、こっちの方がよっぽど若大将らしい。
そして何より、二代目若大将なんてワードが全く出てこないのも清々しい(笑)。今に思えば、迷走の極みだったんだろうな、あれ。
やっぱり若大将シリーズと言えば、歌って走って恋をするのがお約束ですしね。
シリーズ終盤ではスポーツを意味する“走る”の部分が弱くなり、二代目若大将がこれを受け持つみたいな雰囲気がありましたが、やっぱり我々は加山さんがスポーツで汗を流す姿に期待しているし、憧れます。
シリーズ序盤でさんざん言われていた“頼まれたら断れない”、つまり他人に任せっぱなしにせず、あくまで自分が動くのが若大将の魅力。人好きのするキャラだからこそ、雄一の周りには男女問わず人が集まってくるんですよね。
そんな男も惚れるような男である雄一に最も惚れているのは石山=青大将。
シリーズ序盤にあったライバル要素もほとんど薄れ、世話ばかりかける憎めない旧友というポジションが定着してきました。ライバル要素と言えば、せいぜい勝ち目のない恋のさや当てくらいなものですが(笑)。
そんな青大将が雄一に対して厚い友情を感じているのは分かりますが、とうとう行き着くところまで来てしまったというか、友情の度が過ぎて一線を越えそうになるんだから、かなり衝撃的な展開です(笑)。
余談ながら、田中邦衛さんはこんなコミカルな役を演じていますが、本作が公開された1981年は『北の国から』が始まった年でもあるんだよな…。
前作『若大将対青大将』から10年後、1981年に公開されたという事で、シリーズとして連続で観ると当時の風景や風俗といった画的なものだけではなく、映画としても垢抜けた感じがします。
ヘリから落下した純子を追い、セスナからダイブした若大将がこれを救うシーンをアバンタイトルに持ってくるという、まるでOO7のような派手さ(笑)!
ず~っと劇伴が鳴りっぱなしというのも、この頃の映画っぽさがありますよね。
ところで、これは個人的な観測ですが、雄一って最低でも1度は離婚すると思うんですよ。
総じてマドンナはあんな感じの性格だし(笑)、だいたい若大将の子供なんて想像できなくないですか?
青大将も同様ですが、こちらは子供が生まれてから別れる感じ(笑)。
結局、若大将と青大将はお互いに一人やもめのまま、永遠にあんな関係を続けていくんだろうなと考えると微笑ましいですね。
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