『エレキの若大将』を観ました。
京南大学のアメリカンフットボール=アメラグ部は惜しいところで相手校に負けてしまった。
部のキャプテンに任命された雄一は、実家のすき焼き屋=田能久で先の試合の残念会を開催。その二次会の後、石山が運転する車が事故を起こしてしまう。
相手の車を運転していた澄子は軽傷で済んだものの、石山の身代わりになった雄一は罰金やら車の修理費を背負い込む羽目になるが、テレビのエレキギター合戦に出場し、賞金を狙う。
相手バンドに因縁を付けられた雄一たちは乱闘騒ぎを起こし、大学から1ヶ月の謹慎処分を言い渡される。
父である久太郎に勘当されて家を出て行く、そして学校を辞める決心をした雄一はエレキバンドのメンバーとして活動を始める。その中で、雄一と澄子の距離は徐々に縮まり……といったお話。
若大将シリーズ第6作です。
ここまでご都合的な展開の作品が続きましたが、今作はその極み。あり得ないシーンが続出で色々とツッコみたくなるというか、ツッコまずには生きていられません(笑)。
しかし、これをムキになって糾弾するのはダサダサな行為で、やれやれという気持ちを前提に、酒でも飲んでゲラゲラ笑いながら見るのも一興です。
若大将シリーズは青春モノの皮を被ったコメディであり、万人が楽しめるエンターテインメント作品ですからね。
自分がエレキギターとして参加するバンドの大会で、機材トラブルにより音が出なくなってしまった! ならば……♪僕のゆっく~とこ~ろへ~、ついてぇおいでよ~♪と歌い出す、しかも会場は拍手喝采で大受け。挙げ句にレコードデビューまで果たしちゃうという、ミラクルすぎるとんとん拍子(笑)。『嵐を呼ぶ男』もビックリだよ。
ちなみに、このバンドには石山=青大将がエレキギターとして参加しているんですが、いつものように足を引っ張る事もなくキチンと演奏できるんですよね(ド初心者の江口を見下せるレベル)。若大将と張り合って色んなスポーツに参加しても何一つモノにならない青大将が、最も才能を発揮できるのがエレキギターという意外さよ…!
にしても、若大将と青大将の奇妙な友情は相変わらず。
青大将からすれば若大将はライバルであり、たまに敵のようにも見ていますが、若大将にはそんな意識はなく、手は掛かるけどれっきとした友人であると認識しているようです。
青大将が悪い事をすればキチンと罰するし、そんな若大将には頭が上がらず罪を認めて反省もする。若大将にとって青大将は、江口以上に長く続く友情で結ばれているようにも感じますね。
ギターでの弾き語りは、今作あたりではもう恒例行事として定着してきました(作曲も弾厚作=加山雄三さんの別名義)。
澄子を演じていた星由里子さん曰く、加山さんが『君といつまでも』を歌うシーンの前後で不機嫌だったそうです。後年になってその理由を聞いたところ、澄ちゃんのために作った歌を初披露しているのに、その途中で澄ちゃんが割り込んできてデュエットになる(笑)のはおかしいだろうと加山さんが監督に異議申し立てをしたところ、結局はねじ伏せられたせいか、本番でも眉間にシワが寄ってるくらいにムスッとしていたそうです。詳しくはココで。
けど、こんな笑い話はあくまで観終えてから話せるもので、実際に観ている最中にはそんな不条理なんかさほども感じないほどにいいムードを感じませんか? 若大将シリーズを心底より楽しめるのは、こういうシーンを純粋に見れる人なんですよ。
後輩である青大将を脅して、エレキ合戦で勝利を狙うバンドのリーダー赤田。
銀行の頭取の息子で、経営不振が続く雄一の実家=田能久との取引先でもある事から、絶対にコイツは親の立場を活用してストーリーを引っ掻き回すような厄介キャラになるぜ?と推測する人は真面目な映画を見すぎです(笑)。
そんな設定はセリフだけ、久々に姿を見せたと思ったら、雄一の京南大学側の応援団に混じって演奏しているんだから、もうね(笑)。
恨みや憎しみという感情が存在しない温かい世界、それが若大将ワールド! ホント、見ている側も幸せな気分になれる映画なんですよ。
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“エレキの~”とタイトルで謳っておきながら、クライマックスはアメラグ(アメフトorラグビー?)というのもまたツッコめます。
劇伴で多用されているのがエレキギターで、これがイイ感じなんですよね。
劇伴だけでなく主題歌や挿入歌まで収録したサントラ、出ないかな~…。