『蒼き流星SPTレイズナー』、テレビ放映版は観終えましたが、真にお話の決着が付くOVA版を観ました。
まずは『ACT.Ⅰ エイジ1996』、エイジとの出会いからグラドス艦隊との最終決戦までを描いた、いわば第1部の総集編です。
総集編と言えば、1話からウン話までの重要ポイントを順番通りにツギハギするものですが、そんなセオリーを無視した編集やら構成が実に大胆。各話にあった戦闘を1回分としてまとめたり、時系列が入れ替わっていたりとかね。
このシーンはあるのにあのシーンはないんだ?というものも多く、カットされたエピソードは全編中において大して重要じゃなかったのかと新たな発見も見い出せます。
ただ、ゴステロの登場シーンを全カット(!)する潔さには驚きです。ただでさえ『~レイズナー』という作品には敵のレギュラー(パイロット)が少ないのに…。
『ACT.Ⅱ ル・カイン1999』は第2部の総集編。
本編の印象があれだけ大きく印象が変わる前作に対し、こちらは一般的なツギハギ編集に始終しています。個人的に、本作の白眉とも言えるアンナの告白シーンをカットしたのは残念、というより勿体ないなぁと感じます。
そしてOVA版最大の目玉である『ACT.Ⅲ 刻印2000』。
テレビ版は全38話で、37話と38話間の連続性が飛躍しすぎていたため、本作はその間を繋ぐ37.5話とも呼べる作品……と思いながら観ていましたが、これはもう一つの38話ですね。
というのも、38話のものにシーンを追加して補完されている箇所もあれば、シーン自体がカットされたり差し替えられたりしている箇所も散見されます。
それはともかく、本作は打ち切り故に不自然な終わり方をしました。
一般的な打ち切り作品は「本当の戦いはこれからだ!」といった感じで中途半端に終わり、人気や余力があれば別メディアで真の最終回を展開するものです。
…が、本作の場合は最終回直前の話をすっ飛ばしてまで最終回を見せるという手法が斬新、かつ真摯です。
打ち切りという、唐突に完結を余儀なくされながらも、最終回はキチンと見せなければならないという義務感や使命感が伝わってきます。
まぁ、37話まで見ている人であれば、38話or『ACT.Ⅲ~』がどんな内容になるかはある程度の予測はできたと思います。
ただ、エリザベスの乱心は想定外すぎました。完結までもう時間がないのに、何を今さら言い出してんのよアンタ…(笑)。
あれだけド強気だったル・カインが弱々しい姿を晒すのは見どころの一つです。
父グレスコに甘やかされながら生きてきたものの、そんな後ろ盾を自らの手でなくしてしまった事でル・カインの心に変化が現れます。
ジュリアだけでなく、あれだけ見下していた地球人も優秀であればこちら側に迎えるようになったんですからル・カインも大人になりました。大人になるとは、妥協という言葉を言い換えたものでもありますからね。
支配は力、力は悪。支配者とは悪に徹する事でもあると説くグレスコの言葉は深いですね。自分がやっている事が正しいと信じ切っているル・カインとは対極的で、実に達観的。
自らを悪だと割り切るグレスコの真意に100%の悪意はないんですよ。
38話では明確に描かれていませんでしたが、『ACT.Ⅲ~』ではエイジとアンナが結ばれてお話は終わります。
本作も含め、そういえば『装甲騎兵ボトムズ』も『機甲界ガリアン』も、戦いが終わればヒーローとヒロインが結ばれ、その後も共に生きてゆくと感じさせるという綺麗な終わり方は高橋良輔さん作品のお約束なんですね。